甲南大学教員への荒唐無稽なハラスメント事件、学生自死事件「不適切処理」と同時進行していた「教員処分(文科省への虚偽報告)」 (1)

甲南大学教員への荒唐無稽なハラスメント事件、学生自死事件「不適切処理」と同時進行していた「教員処分(文科省への虚偽報告)」 (1)

本記事から数回にわたり、数年前から甲南大学で起きていた、教員に対するハラスメント事件についてレポートしていきたい。この件に関しては、既にご本人から、何件か比較的詳しい公開文書が発表されている(中島先生のHP: https://kiyotakasakura.wordpress.com/about/)ので、それらをもとにこのレポートを書いていく。公開文書の一つ目は

2023年9月28日(10月5日改定)付けの中島覚書である:

Nakashima_Notice_20230928_2ndRev1005

前半は英語であるが、後半に邦文版がある。

まずこの覚書により事件の概要を明らかにする。覚書は次の3部分で構成されている。

  • 事実経過と甲南大学による「処分」
  • 日本学術振興会(学振)による通知・公開とそれに対する行政訴訟
  • 文末脚注

順に見て行く:

1.事実経過と甲南大学による「処分」

本事案の事実経過を大まかに記したのが次の表1である。発端は、2019年9月中島先生の米国出張を呼び戻す形で開始された研究費不正使用の調査である。

覚書の邦文前半部(表1では2020年10月まで)の要約は以下になる:

1) 諭旨解雇処分の受け入れと経緯

  • 2020年8月、著者は研究費の使用手続きにおける不備を認め(私的流用は一貫して否定)、甲南大学の平穏を願って大学からの諭旨解雇処分を受け入れた。
  • 中島先生は、この処分は誠実な謝罪と反省が認められた結果であると受け止めていたが解雇事由には「私的流用」は含まれていなかった

2) 国による厳罰処分と大学側の不透明な対応の覚知

  • 同年10月、学振・文部科学省(文科省)より10年間の研究費申請停止処分が唐突に下され、中島先生は研究者として極めて深刻な打撃を受けた。
  • その後の行政訴訟の過程で、解雇処分前の同年6月、大学側(中井学長ら)が中島先生の知らぬところで「本人が私的流用を認め、言い訳に終始していた」とする報告書を文科省等に提出し、国へ行政処分を進言していた事実が判明した。

3) 大学関係者への疑問・釈明の要求

  • 疑問1: なぜ解雇処分には「私的流用」を含めなかったにもかかわらず、国へは秘密裏に「私的流用」に相当する処分の進言を行ったのか。
  • 疑問2: 今回の諭旨解雇処分は、一般的な研究機関の懲戒基準に照らして正当と言えるのか。
  • 不満と主張: 大学側の意思決定により当事者や周囲に深刻な実害が生じた以上、納得のいく説明がなされない限り、関係者の道義的責任は免れない

すなわち、大学側は自らの調査で研究費の私的流用を確定できていないにもかかわらず(諭旨解雇処分理由には私的流用は無い)、文科省(学振)には、私的流用があり本人も認めている旨の虚偽報告を行った上で、学振の2020年10月の行政処分に「誤った根拠」を意図的に与えた。これらの疑問について、調査委員会を統括していた学長ら主要役員への説明を要求した。なお、これらの役員は学生自死事件(⇒本ブログに記事多数)で一連の不誠実な対応にもあたっていた!

 実はこの時期の初期(2019年末~2020年初頭)は、本ブログで継続的に取り上げている、2018年の甲南大学学生自死事件の重大な局面と重なっている。すなわち、学生自死事件遺族と関連団体は、2019年11-12月に文科省に、大学に誠実対応を指導するよう求める要請行動を行った。その直後、学生自死遺族が事件の真相究明のための第三者委員会の設置を求めたのに対し、年末に大学側が拒絶・却下している。一方で、公的研究費受け入れに関わる履行の問題が甲南大学にあり,文部科学省から問題視されていたことも後の公判の過程で明らかになっている。ほぼ同時期の2019年12月に文科省から甲南大学に入った調査にはこれらの事情が関係している可能性が大である。さらに、中島先生は出張から帰国後しばらく個人的には配慮されるべき、大変厳しい個人的事情(お母様の体調悪化とご逝去)も抱えておられたという。

 このような状況下で強行された中島先生への大学側の「調査」とそれをもとに進められた、理不尽かつなりふり構わぬ大学側の行為=不当処分は、学生自死事件等文科省に対して減点となる一連の事案処理に焦っていた大学当局が、それらを挽回すべく、中島先生案件を姑息に捏造・利用したものと推定される。まさにアカデミアを標ぼうする組織として恥ずべき振舞である(他の多くの国公私立大学でも同様の例が散見されるが)

筆者注1)大学教員の予算(一般論):大学教員が使える予算は大きく分けて、内部予算と外部予算がある。内部予算は所属組織から支給される比較的低額(<数百万円)なものであり、使途は割と自由である。外部予算には、色々な国の機関(省庁や研究所等)や民間団体、及び企業等に応募して獲得する助成金が含まれる。他に企業との共同研究経費、寄付金などもある。

筆者注2)予算の不正使用:これにはもちろんよくマスコミで話題になる私的流用も含まれるが、大部分は本来処理すべき予算項目を事務的ミスで間違えたというような軽微なもので、本来は有能な予算担当事務職員によって単なるミスとして処理される。一般に有能な研究者ほど、多額の予算、多くの研究予算費目を抱えているので、その種の事務的ミスはしばしば起こりうるし、本来研究者の倫理問題とは区別して考えられるべきものである。

筆者注3)大学の研究者が得られる外部資金として最も広範に配布され、(総額の)規模が大きいものが、文科省が管轄する、いわゆる科学研究費(科研費)であり、その募集、審査、配布などを主に担当しているのが日本学術振興会(学振)といわれる文科省の外郭団体である。

中島先生が引用する聖書の一説をここでも再掲する:

「あなたがたは,自分の裁く裁きで裁かれ, 自分の量る秤で量り与えられる.」 マタイ7章2節

 

次回では、覚書の後半部分日本学術振興会による通知・公開とそれに対する行政訴訟を扱う。