大学教員採用時ハラスメント処分歴の調査・確認・対処徹底の動き!現教員、特に幹部(執行部)教員へこの動きを速やかに拡大すべき!?(2)

大学教員採用時ハラスメント処分歴の調査・確認・対処徹底の動き!現教員、特に幹部(執行部)教員へこの動きを速やかに拡大すべき!?(2)

民間のDBS議論

NHKの解説記事

https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/700/487681.html

によれば「日本版DBS」とは、子どもと接する職業に就く際、性犯罪歴がないことの証明を求める新たな仕組みであるとされている。(以下記事から、文章と図面を引用)、、、「DBS(=Disclosure and Barring Service)」はディスクロ―ジャー・アンド・バーリング・サービス、前歴開示・前歴者就業制限機構の略で、それぞれの単語の頭文字をとって「DBS」と呼ばれています。子どもに接する仕事に就く人に性犯罪歴がないことを確認する制度で、すでにイギリスで導入されています。
 制度の概要は、まず子どもに関わる職業や活動を行う事業者が就業を希望する人の承諾を得てDBSに性犯罪歴などのチェックを依頼します。DBSは裁判所や警察の情報などを照会し、仕事に就きたい人本人に証明書を発行。事業者にも通知します。これによって性犯罪歴がある人の採用を未然に防ぐことができます。

現在のところ、子ども家庭庁の有識者会議から制度の方向性を示す報告書が出された段階であるが、議論が煮詰まらず先の国会での法案提出・成立には至らなかった。今後議論を詰めるべき課題としては、制度の対象をどの範囲まで広げるか、或いは過去の犯罪歴を遡るとき、どの時点まで問題にするのかなどがある。

これらの資料を見ると、制度適用の範囲として1)教育に関する職種(いわゆる教員から関与する事務職員、雑用係まで?)と2)「性犯罪の中身」(通報、不起訴・起訴、執行猶予、無罪・有罪)についての慎重な議論と線引きが必要になると考えられる。その一方で、大学教員についてはどうあるべきなのか?われわれの見解は

新採教員のセクハラ歴のチェックだけで十分か?大学版DBSの導入を!?

というものである。以下その方針と理由を説明する:

具体的には、この調査・確認・対処方針を次の3つの方向に拡張すべきである:

1)新たに教員として採用しようとする人をチェックするなら、その前にチェックする側、即ち全ての国公市立大学現教員のハラスメント調査を並行してやり、結果を公表すべきである。

2)特に(まずは)全所属教員を「管理指導」する立場の執行部メンバーのハラスメント履歴を丁寧に調査し、結果を速やかに(一般教員の結果より先に)公表すべきである。何故なら、執行部教職員は、教育・研究者としての高い実務能力に加え、高度な管理能力と道徳的規範や倫理性が求められる立場にあるからである。また公的・私的に発言する機会も多くその社会的影響力は無視出来ない。まさに、鯛は頭から腐るからである。

3)そして、ハラスメントの処分歴のある者は言うまでも無く、以前通報されたもの、疑わしい事例に関与したものへは、過去事例の徹底再調査をさらに進め明確なハラスメント行為が確認された場合は、直ちに辞職勧告を行うべきである。

 即ち、新規(若手)教員の採用時に前歴を調査し選考の基準の一つに使うなら、まずは今大学に籍のある教員・研究者がその資質に関し自ら点検する姿勢が必要である、と考えられる。なぜなら、このブログでも散々指摘してきたように、現教職員によるハラスメントにより、日々学生や教職員の被害者が再生産され続けており、自死事件も度々起こっているからである。さらなる問題は、次の点である:文科省の「指示」により、全ての大学でハラスメント相談を受け付ける機関や相談について「審議」する組織は一応設置されているが、現場の声を聞くと、事実上機能していない場合が殆どである。原因は「加害者」の抵抗により、「審議会」で問題が棚上げにされたり放置されている間に、被害者学生・教職員は卒業・自死・強制退職していき、加害者側はハラスメントがなかったことになるという状況が再生産されている。この意味で、残念ながら大学にはこれらの問題に関し、当事者能力は皆無で、その状況を解決するための第三者委員会は大学では殆ど設置されない。また時々噂を聞く、大学の学長選考に関する派閥争いや軋轢は大規模なパワーハラスメントの格好の舞台であり、大学全体の力が著しく削がれていることも多い。

 ハラスメント問題に関して大学という知の殿堂、或いは高い教育理念を持つ組織にふさわしい当事者能力を絶えず形成・更新して行く第一歩として、まずは自らのハラスメント履歴の点検・公開・それに基づく処分を早急に進めるべきである。近い将来、この面での大学の姿勢が研究成果や学生・大学院生を育てる実績以上に、受験生・保護者のみならず社会から評価されるときの重要な指標となると考えられる。或いは大学評価の重要な位置基準になると考えられる。

 このことは、多くの会社・メーカーの社会的評価が色々な面(原材料の調達・サプライチェーン、廃棄物排出が及ぼす環境影響、労働者の働き方・広義の労働条件など)で人権を尊重する姿勢が一貫しているか、で議論され始めているのと対応している。

 

大学教員採用時のハラスメント処分歴の調査・確認・対処徹底の動き!現教員、特に幹部(執行部)教員へ速やかに拡大すべきでは!?

大学教員採用時ハラスメント処分歴の調査・確認・対処徹底の動き!現教員、特に幹部(執行部)教員へこの動きを速やかに拡大すべき!?(1)

性暴力やハラスメントの処分規定、詳細把握へ 文科省が 国立大調査 2023年6月2日 朝日新聞

 (以下一部引用)全国の大学で性暴力やハラスメントによる教員 らの懲戒処分の公表が相次ぐ中、文部科学省が 国立大学を対象に、具体的な処分規定の有無や 公表の基準などについての実態調査を始めたということである。 相談窓口の設置状況(全ての大学に設けられてはいるが)については隔年で調査して いたが、処分規定の詳細など、より具体的な取り組み状況を把握する調査は初めて、ということである。

 調査は昨年11月の通知「セクシュアルハラスメント を含む性暴力等の防止に向けた取組の推進について」を受け各大学の取り組み状況を把握するもので、結果は(2023年)夏をめどにまとめるようである。今後、公私立大にも対象を拡大して調査する方針も出されており、今後調査結果(以下の記事)にも注視していく必要がある。

https://digital.asahi.com/articles/ASR625RPZR62UTIL01Z.html

この調査結果(の一部)と思われる報道が以下の2つの記事である:

教員の採用時 国立大の6割は性暴力や懲戒処分歴を確認せず…文科省は対策強化を求める 2023年9月29日 読売新聞

   (以下引用)【文部科学省は29日、国立大学でのセクハラや性暴力防止の取り組み状況について初の調査結果を公表】 国立大の約6割が、教員の採用時に学生への性暴力による懲戒処分歴を確認していなかったという。この結果を受け、文科省は同日、大学に通知を出して対策強化を求めた。公立や私立大に対しても同様の調査を行う方針らしい。調査は6月に実施され、全国立大86校が回答した。教員採用時に、過去の懲戒処分歴について具体的な申告を求めていたのは32校で、50校が実施していなかった。残りの4校は一部の部局だけで申告を求めていた。全86校が、セクハラや性暴力が懲戒処分の対象であると学内規則などで示していると回答。悪質性の高いセクハラや性暴力について重い処分を行うことを明記しているのは70大学だった。懲戒処分の基準に、学生に対するハラスメント行為も適用対象となることを記載していない大学は31校あったという。文科省は通知で、▽セクハラと性暴力を区別した上で、

▽処分の基準や学生に対する行為も処分の対象となることを学内規則に明記

▽懲戒処分を原則公表

▽教員採用時に懲戒処分歴を確認――

などを各大学に要請したという。文科省は「社会全体で性暴力への厳正な対処や被害の防止が求められている。大学でも学生が安心して学べる環境を確保したい」としている。

https://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/kyoiku/news/20230929-OYT1T50289/

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230930/k10014211691000.html

 これらの結果を受けて国立大学協会は2023年10月13日、国立大学におけるセクシュアルハラスメントを含む性暴力等の防止について (声明)を発表した。以下にその全文を関連記事と共に示す:

国立大学の教員採用で「セクハラや性暴力による懲戒処分歴の確 認」求める。国大協が声明、50校で未実施 2023年10月23日 Huffpost日本版

(以下引用)国立大学協会は10月23日までに、国立大での性暴力を防 ぐため、教員の採用段階で過去にセクハラや性暴力を理由 とする懲戒処分歴がないか確認することを各大学に求める 声明を発表した。教員の採用の際、性暴力が理由の処分歴の申告を求めてい ない国立大は過半数を占めることから、多くの大学が対応 を迫られる見通し。【金春喜 / ハフポスト日本版】

 国大協の永田恭介会⻑(筑波大学⻑)は声明で「大学での学生に対するセクハラを含む性暴力などは、学生の心身と尊厳を傷つけ、人権を侵害する行為で、断じて許されるものではない」と指摘。その上で、「セクハラや性暴力などを決して見逃さず、許さないという姿勢と実効的な取り組みを一層明確にする必要がある」と述べた。具体的な対策として、教員採用の際に処分歴を確認することのほか、加害者側への懲戒処分の基準を迅速に明示することなどを挙げた。各大学で「遺漏なく、確実に進めることを強く希望する」と強調した。

 この調査結果を踏まえ、同省は9月、全国の国公私立大に積極的な対策を求める通知を発出。 学内規則の見直しや、採用プロセスでの処分歴の確認を含む加害者側への厳正な対処を要 請した。

https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_65321cc3e4b00cb3c696e196

 この国立大学協会の声明は、極めて妥当な内容であり、世間では「当たり前になりつつあること」を確認しているに過ぎない。今これが出されたのは、昨年来文科省がこの問題に関連して相次いで通知を出してきたことを背景にしている一方、遅々として進まない各大学の鈍い動きに危機感を感じたからに他ならない。この意味で、各大学はこの問題に真摯に取り組まざるを得なくなったと言える。近い内に「取組」の検証もあると思われる。

 ここで一つ気になるのが最近議論が増えている小中学校や塾などの「教職員」に関する民間のDBS議論である。(2)ではDBS議論の確認と各大学がこの問題に関して今後、取り組みを継続し、発展させるべき方向について議論・提案する。

キャンパス・スクールセクハラ性暴力前科者への警告ー(1)

昔のことだから、大したこともしてないから 逃げられると思っている多くの「隠れ加害者へ」ーいつ告発が来るかもしれません!謝罪は今からでも遅くないのでは?

(1)朝日新聞の一、二面記事

https://digital.asahi.com/articles/DA3S15167368.html?_req

学内セクハラ、整わぬ相談体制 大学が被害調査、説明・謝罪なし

https://digital.asahi.com/articles/DA3S15167321.html?_req

ハラスメント対応、募る不信感 教授「俺の女に」、懲戒処分なく

☝️某医療系大学のキャンパス

 これらの記事では、九州にある医療系の大学(九州保健福祉大学、延岡市)を相手取り、損害賠償請求訴訟を起こしている宮崎県の女性と、東京都内の私立大学の大学院生のとき教授によるセクハラにより中退させられ、やはり損害賠償請求訴訟を起こしている女性が取り上げられている。

最初の事件は以下にも詳しいが、

https://mainichi.jp/articles/20211014/ddl/k45/040/277000c

https://mainichi.jp/articles/20211029/ddl/k45/040/221000c

http://university.main.jp/blog/

(以下引用)

 指導教授からセクハラを受け始めたのは、母校の大学院に入学した6年前である。入学から半年後辺りから、タクシーの中で手や足を触られたり、忘年会の二次会で体を触られるようになり無理やりキスされた。そのため、精神的に不安定になり、心療内科を受診。うつ病と診断される。

 しかし大学にはハラスメント相談窓口が無く、ホームページ掲載の、兼務で相談に乗る教員に相談したところ、調査委員会への申し立てが必要と言われた。その後躊躇していると、その教授が、女性とのことは男女間のもつれだったと大学に説明したことを耳にする。怒りがこみ上げ、(2017年8月)調査委員会に訴えたが、3か月たっても大学からは何の説明もなかった。不安が募り弁護士を通じて尋ねると、やっと調査委員会の開催された日時、報告書がまとまったこと、処分については検討中、処分になったら通知する、という内容の書面が示された。調査委員会は、教授のセクハラを認め、懲罰委員会は教授を停職1か月の懲戒処分とした(2018年1月。女性がこのことを知らされたのはさらに3週間後)。

 大学からはこれまで謝罪の言葉はなく、相談後も、申し立てるまでは対応してくれなかったことに納得できず、2018年3月訴訟に踏み切る。2021年10月に出た宮崎地裁延岡支部の判決は、教授の行為をセクハラと認め、教授と大学に慰謝料など132万円の支払いを命じた。一方で、大学が適切な事後対応を取らなかったという点については認めなかった。女性と大学はともに控訴している。

 これに関連して、大学側の更に許せない点は、その教授の懲戒処分直前(2017年12月)に、この女性とパートナーを含む4人にいきなり雇止めを通告してきたことである(2018年1月5日)。表向きの理由は博士号が無いこと等としているが、セクハラ告発に対する報復以外の何ものでもないことは明らかである。懲戒処分を受けた教授は在籍したままであるのに。この雇止めに対する地位保全の請求に関し、2019年2月に同延岡支部は雇止め無効の仮処分を下している。これに対し大学側は、仮処分決定に応じない上、更に裁判で争う姿勢である。ちなみに、2020年6月に九州保険福祉大学運営の学校法人の理事長に就任したのは、加計勇樹氏という人物で、名前からもわかるとおり、岡山で岡山理科大学を経営し、安倍の後ろ盾で強引に香川県に獣医大学を作った加計一族の一員である。岡山、香川と同様に、地域で存在感のあることを良いことにやりたい放題である。まさに一族の醜い体質が現れていて、今後の裁判闘争にも注目し、厳しい眼を向けていかねばならない。現在、大学のHPにはキャンパスハラスメントへの注意喚起が呼びかけられているが、

九州保健福祉大学HPにあるハラスメントへの取り組みページ

まずはこの問題に関し、関連被害者らの復職・未払い賃金の支払いと加害教授の解雇を進め、公的予算の支援を受けている延岡地域・宮崎県の住民に説明責任を果たすべきであろう。加害教員も大学の強硬姿勢に隠れて逃げ切りを謀るべきでなく、即刻辞任すべきである。被害職員や心ある学生や地域の人々は決して忘れない。

https://digital.asahi.com/articles/ASM346JXHM34TNAB00S.html?iref=pc_ss_date_article

(2019/3/6) 雇止め無効の仮処分、元助教ら会見「大学に憤り」

https://digital.asahi.com/articles/ASM345R22M34TNAB00K.html?iref=pc_ss_date_article

(2019/3/6) 助教夫妻、同時に無職に 第2子出産…大学と争った1年

https://digital.asahi.com/articles/ASM4K42R7M4KTNAB00B.html?iref=pc_ss_date_article (2019/4/17) 雇い止めで大学を提訴 セクハラ告発の元助手ら4人

https://digital.asahi.com/articles/ASMDR31PHMDRTNAB003.html?iref=pc_ss_date_article (2019/12/28) 九保大雇止め訴訟 仮処分1年、まだ復職出来ず

https://digital.asahi.com/articles/ASN105HZ0N10TNAB00H.html?iref=pc_ss_date_article

(2020/2/1) 大学側の異議申し立て認めず 雇止めで地裁支部

(以下引用)

 2番目の事件では、被害者の女性は大学院生の時指導する男性教授方セクハラを受けた(「俺の女にしてやる」など暴言)。コース主任の教授に相談したら、「あまり外では言わない方がいいよ」と言われ(その結果)、女性は教授への恐怖や大学への不信感からほとんどの授業に行けなくなり、中退した。

 中退後の2018年4月、意を決して大学のハラスメント防止室に相談。だが、中退者の申立は受けない場合もあると伝えられ、家族と一緒に書面で大学の総長に直訴した。大学側は申し立てから1か月後に教授の調査報告書をまとめ、「俺の女、、、」発言などはセクハラに当たると認定し、教授を解任した(退職金は出る!)。主任については「隠蔽の事実は認められないが、誤解を招く発言があった」として訓戒処分とした。

 だが、女性と教授・主任の言い分の食い違う部分は認められなかった。なぜ懲戒処分ではないのか?主任は(ハラスメントを)隠蔽しようとしたのでは?これらについて納得がいかず、調査委員会のメンバー構成を尋ねたが、「外部の弁護士も加えたとは伝えられたが詳しい構成は教えてもらえず。再調査を求めても認められなかったため、2019年6月、女性は元教授と大学を相手取り、損害賠償を求める訴訟を起こした。現在は、係争中を理由に、元教授も大学もダンマリを決め込んでいる。この訴訟の行方も是非注目していきたい。

 この事件については改めて詳しく扱うが、なぜこういうことが今頻発しているのか。この点に関し記事の最後では、全国のほとんどの大学でハラスメント対策が実施されていて(ハラスメントの定義が成文化され、防止についての呼びかけ、研修などを行う)相談窓口も設置されているのに、それらが実質的に機能していないことを挙げている。本ブログでも、開設当初からその問題点は一貫して指摘続けてきた。この問題を克服するためには、現状では、当事者には多大な精神的・経済的負担になるが、司法の場に持ち込むしかないかも知れない。まさに、次の記事がその典型であるが。

大学生へのハラスメント 文科省、学内の第三者相談体制巡り初の調査 – 毎日新聞

甲南大学事件に関連して5月に行った、国会参議院文教委員会での立憲国会議員と文部科学大臣・局長との間で行われた質疑

【『甲南大学のハラスメント・2018被害者学生自死事件』を2021年国会の場で問う】

に関し、毎日新聞に新しい記事が掲載されましたので紹介します(2021年9月8日):

毎日新聞記事

地方(国立)大学はどこを向いているのか?(誰が監視しているのか?)

暫く前の案件であるが、やはり地方の国立大学で信じられないような重大なハラスメント事件が起きていた。管理者は殆ど知らなかったが、今回その詳細を知るに至り、見逃せない事件と考えられたので、関連情報をここに提供する:

国立大にパワハラを捏造され、解雇通告を受けた教授の告白

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/51266?imp=0

宮崎大学珍事件

https://jun-jun1965.hatenablog.com/entry/20170409

また関連した記事として

同志社大学の名物教授が「突然の退職」を通告されるまで

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/51247

事件はいまだ完全に解決しているとは言えないらしいが、それも関係者(特に最初の大学)のやる気のなさと怠慢が放置に繋がった結果であろう(他の国立大学でもよくある話であるが)。

一般に日本の多くの地方(国立)大学は、その地方、もしくは近隣自治体ではある程度その動向が注目されるが、全国レベルでそのスキャンダル・関連事件などが報道されることは殆ど無い。それどころか、各地方、或いは都道府県での地方紙や放送局に大学自らが裏から手を回し、「不祥事」の情報自体の報道・拡散を潰してしまうこともしばしばである。

こういう地方の特殊性を隠れ蓑にした、本来公開されるべき地方大学の情報の意図的な隠蔽は、特に税金で運営されている国公立大学では許されないものである。残念なことではあるが、地方の住民一人一人にも、もっと大学などの動向に関心を持ち、地方のマスコミを突き上げるなどして大学を監視していくことが求められているのではないだろうか?

教職員間での(同僚に対する)ハラスメントがこの酷さであるから学生・大学院生がおかれているアカデミックハラスメントの状況はさぞ救いようのないものではと想像・危惧される。

 

LGBT差別にまつわるハラスメント その後(2)

最近の新たな動き

  • パワハラ防止義務付け関連法が可決(2019年5月)

【概要】

 職場でのパワハラ防止を(企業に)義務付ける関連法が昨年5月29日、参院本会議で可決成立した。併せて、今後策定されるパワハラ対策指針にSOGIハラ(注1)およびアウティングの防止も盛り込まれることになった。パワハラ防止対策の一環として各企業に義務付けられる(取り組みが求められる)。

 パワハラ関連法は、働きやすい職場環境を整え、社員の退職や意欲低下などを防ぐのが狙いで、労働施策総合推進法、男女雇用機会均等法、女性活躍推進法、育児・介護休業法など計5本の法律を改正するものである。パワハラを「職場において行われる優越的な関係を背景にした言動」などと定義し(具体的にどのような行為がパワハラに当たるのかについては、厚生労働省策定の指針(注2)による)、企業に相談窓口の設置や発生後の再発防止策を求め、社員がパワハラをした場合の処分内容を就業規則に盛り込むほか、相談者のプライバシー保護の徹底も求める。

 罰則規定は見送られたが、パワハラが常態化しており勧告しても改善が見られない場合には企業名を公表する。大企業は2020年4月、中小企業は2022年4月に対応が義務付けられる。

【LGBT法連合会】

https://www.outjapan.co.jp/lgbtcolumn_news/news/2019/5/16.html

同連合会は、「大きな前進として評価できる」との声明を発表した(以下要約)。

 「衆議院、参議院の議論では、与野党各会派から、SOGIハラやアウティング対策を進めるべきであるとの意見が出された。この内容を盛り込んだ付帯決議が与野党全員賛成の全会一致という形で、国会の決議に実を結んだことは大きな一歩である。LGBT法連合会としても、求める施策の重要な一つであるハラスメント対策の実現に向け、この間精力的な働きかけを行ったが、日本全国の事業主に対する義務付けの方向で結実したことについて、関係各位の尽力を讃え、喜びを分かち合いたい。他方、具体的な対策の内容については、今後、厚生労働省の審議会の議論に委ねられることとなり、注視していく必要がある。特に、就職活動中の学生や、インターンシップ生、実習生等に対して、どのような対策が行われるかが注目されるものである」また、以下の点についても言及している。
 「LGBT法連合会は、1日も早いSOGIハラやアウティングの根絶に向け、今後も働きかけを強めていく。また、今回のハラスメント対策の対象とならない、労働以外の分野におけるハラスメントや、差別的な職場異動や退職勧奨、解雇などの、いわゆる差別的取扱いへの対策に向けて、領域を問わない差別禁止法の制定を引き続き求めていく」
また、次のようなコメントも付与されています。
 『なお、国がどのようなことをSOGIハラであると定めるかは、今後の指針の策定を待たなくてはいけませんが、現時点でSOGIハラが一般的に(LGBTコミュニティにおいて)どのようなことを指すとされているのか知りたいという方は、「なくそう!SOGIハラ」のサイトをご覧ください。また、7月12日発売の『はじめよう!SOGIハラのない学校・職場づくり』は、たくさんの事例を交えながら解説した決定版・保存版的な一冊になっています。ぜひお手元に置いておくことをお勧めいたします』

(注1)SOGI:SOGIは、Sexual Orientation(性的指向)とGender Identity(性自認)の英語の頭文字をとった頭字語(イニシャル言葉)です。読み方は「ソジ」が一般的ですが、「ソギ」とも言うようです。
 LGBTという言い方では、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアルは性的指向についてのマイノリティ、トランスジェンダーは性自認についてのマイノリティであるということが伝わらず、「ゲイの人は心は女性で、女性になりたがっている」などという誤解を招くこともある(性的指向と性自認がごっちゃになりがちである)ため、「性的指向および性自認」という概念(性の要素、尺度)を表す言葉として生み出されました。
 また、性的指向および性自認は、セクシュアルマイノリティに限らずすべての人に関わる(ヘテロセクシュアルもシスジェンダーも含む)概念であることから、「LGBTの問題であってストレートには関係ない話」ではなく、誰にでも関係があることなんですよ、と言いやすくなります。「SOGIについて考えてみると、異性愛は多様な性的指向の一つにすぎず、シスジェンダーも多様な性自認のありようの一つであることがわかる」というように。
2011年頃から国際社会で使われるようになり、日本でも2015年頃から紹介されはじめました。2017年のレインボー国会では、SOGIに関連する差別やいじめ、いやがらせ、ハラスメントを指す「SOGIハラ」という言葉が提唱されました。なお、SOGIは、LGBTに代わる新しいセクシュアルマイノリティの総称ではありませんので、「SOGIの人」といった言い方は誤りです。「SOGIに関するマイノリティ」とか「SOGIに関する差別の解消」「SOGIハラ」という使い方になります。ちなみに、LGBTが現在、LGBTQとかLGBTQ+といった言い方になってきているように、SOGIについても、SOGIEという言い方に変わってきています。EはGender Expression(性表現)のEです。

SOGIハラ:性的指向・性自認(SOGI)に関するハラスメントのことを「SOGIハラ」と言います。
 2017年3月9日に衆議院第一議員会館で開催された、LGBTへの差別をなくし、世間の人たちに理解を深めていただき、より公正で平等な社会をつくるための法制定を国会議員に求める「レインボー国会」という院内集会で初めて「SOGIハラ」という言葉が提唱されました。

 2019年、職場でのパワーハラスメント(パワハラ)防止を義務付ける関連法が成立したことに伴い、厚労省が「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(以下「指針」)を策定し、SOGIは個人情報やプライバシーであると明記され、SOGIハラならびにアウティングもパワハラであると見なされることになりました。
 これにより、すべての企業等や自治体がSOGIハラ・アウティング防止施策の実施を義務付けられることとなりました。これは「措置義務」であり、もし対策を怠った場合、都道府県労働局による助言・指導・勧告等が行われることになります。

 指針にパワハラ防止施策として定められた措置義務の内容は、以下の通りです。これらの措置がすべてSOGIハラおよびアウティングにも適用されることとなりました
(1) パワハラがあってはならない旨や懲戒規定を定め、周知・啓発すること
(2) 相談窓口を設置し周知するとともに、適切に相談対応できる体制を整備すること
(3) パワハラの相談申し出に対する事実関係の確認、被害者への配慮措置の適正実施、行為者への措置の適正実施、再発防止措置をそれぞれ講じること
(4) 相談者・行為者等のプライバシー保護措置とその周知、相談による不利益取り扱い禁止を定め周知・啓発すること

 各企業等や自治体は、2020年6月以降(中小企業等は2022年4月以降)の措置の実施が義務づけられています。また、いわゆるカスタマーハラスメントや、就活生・インターンシップ生・フリーランス等へのハラスメントについても、上記の(1)〜(4)の取組みを行うことが望ましいとされましたが、これらにもSOGIハラ・アウティングの防止が含まれることとなります。なお、法の履行確保のため、都道府県労働局による助言・指導・勧告等の規定も整備されました。

 指針で示されたSOGIハラの例として、以下のようなことが挙げられます。
・相手の性的指向・性自認に関する侮辱的な言動を行うことを含め、人格を否定するような言動を行うこと。
・SOGIを理由に、労働者に対して、仕事を外し、長期間にわたり、別室に隔離したり、自宅研修させたりすることや、一人の労働者に対して同僚が集団で無視をし、職場で孤立させること(SOGIを理由にした仕事からの排除はパワハラに該当すると国会で答弁されています)
・「彼氏(彼女)はいるの?」など交際相手について執拗に問うこと(厚労省はパートナー関係のようなプライベートに関するハラスメントを「個の侵害」に当たるパワハラとして周知してきました。パートナーが同性である場合、より深刻であると言えます。

 指針を踏まえると、「オカマ」「ホモ」「レズ」などの差別用語はもちろん、「ひょっとしてこっち系?」などと手の甲を反対側の頬に当てる仕草や、職場でのLGBTQに対する中傷やいじめ(陰口)全般がSOGIハラに含まれますし、中性的な人を営業職や店頭での仕事から外すなどの排除なども該当します。

 

(注2)厚生労働省作成の指針:以下に資料pdfを貼り付けておきます。

厚生労働省 指針

いずれもOUT JAPAN Co. Ltd. https://www.outjapan.co.jpのLGBTコラム等より。

2)LGBTQ当事者を支援する「プライドフォーラム」が一橋大でスタート(2019年8月)

https://www.huffingtonpost.co.jp/entry/hitotsubashidai-pride-bridge_jp_5d4bcc93e4b01e44e4753536

https://www.outjapan.co.jp/lgbtcolumn_news/news/2019/8/9.html

 これらの記事によれば、一橋大アウティング事件をきっかけに、LGBTQ当事者支援をめざすプログラム「プライドフォーラム」が同大でスタートしたという。プログラムを立ち上げた任意団体「プライドブリッジ」が2019年8月8日に発表。

 「プライドフォーラム」は、一橋大学がジェンダー社会科学研究センター(CGraSS)とプライドブリッジが共同事業として立ち上げた。具体的な活動内容としては、大学内にLGBTQ当事者や支援者(アライ)が立ち寄ったり、っジェンダーやセクシュアリティに関する情報を得たりすることができるリソースセンターを設けるほか、性の多様性を学ぶための寄付講座を開始する、ということである。

 キーパーソン(の一人)である松中権さん(注3)によると、団体設立の経緯は次のようであったと言う。

安心・安全な場所をつくる

 「二度と同じような悲しい出来事が一橋大学で起こらないようにしたい」そう思った松中さんは、一橋大学のキャンパスをLGBTQの学生や教職員にとって安心・安全な場所に変えるために、プライドブリッジを立ち上げることを決意。同大学の在校生・卒業生に呼びかけて、賛同者を募った。現在までに129名が賛同しており、今回の立ち上げにつながった。プライドフォーラムの最初のアクションとして9月に学内に作られるリソースセンターでは、ジェンダーやセクシュアリティに関する資料を準備し、集まってきた人が資料を読んだり交流したりするほか、小規模イベントなども開催する予定だ。

 松中さんは一橋大学ではカミングアウトしていなかったが、大学在学中に留学したメルボルン大学で、LGBTQの当事者が集まるための部屋を見つけ、そこでカミングアウトすることができた。その時に「こういう場所があったらいいな」と思ったという。

 また、同じく9月にスタートする「ジェンダー・セクシュアリティとライフデザイン」という全13回の寄付講座では、LGBTQの当事者や支援者などをゲストスピーカーとして呼び、企業やNPOなどによるジェンダーやセクシュアリティの先進的な取り組みなどを学ぶ。それ以外にも、LGBTQフレンドリーな教育環境整備のための実態調査や、学生と教職員の定期的な意見交換会などの開催も予定しているという。

 ハフポスト日本版への寄稿の中で、LGBTQの当事者にとって「安心」した場所をつくることと同時に、何かがあった時に頼れる、何かを事前に食い止められる「安全」な場所があることも大切だと訴えた松中さん。9月からスタートするプライドフォーラムで、「LGBTQの学生や、働く人がいて当たり前だということが共有できる流れができてほしい」と語った。

(注3)ブライドブリッジ会長で、同大学の卒業生。ハフポスト日本版への寄稿で、一橋大学アウティング事件に大きなショックを受けた、と綴った。現在はゲイを公表し、学校の中にLGBTQの人たちをサポートするNPO法人「グッド・エイジング・エールズ」などの代表を務めるが、大学在学中にはカミングアウトしていなかった。松中さんは「私が大学生の時は、カミングアウトは選択肢に入っていませんでした。学校の中に相談できる場所があったら良かったと思いました」と語っている。

(注4)プライド(PRIDE):
 世界中で開催されているLGBTのパレードはしばしば「プライド」と呼ばれます。ニューヨークのパレードであればニューヨーク・プライド、サンフランシスコのパレードであればサンフランシスコ・プライドといった具合に。LGBTのパレードは(優勝祝賀パレードでもエレクトリカルパレードでもなく)LGBTの「プライド」を示すパレードだからです。

 では、LGBTの「プライド」とはいったいどのようなものでしょうか? 日本語でプライドというと「プライドが高い」「プライドが傷つけられた」というように、ネガティブな意味合いをイメージする方も多いと思います。「沽券」に近いニュアンスです。欧米で言うところの本来の「プライド」は「誇り」であり、自らを恥じない、堂々と自信を持っているという意味です。Appleのティム・クックCEOがカムアウトした際に「私はゲイであることを誇りに思っている(I’m proud to be gay)」と述べたように、pride, proudは肯定的な(とてもgoodな)意味で用いられます。
 アメリカでは過去に、赤狩りの急先鋒を務めたロイ・コーン検事(当時)やFBI初代長官のJ・E・フーバーらが有名ですが、クローゼット・ゲイの公人が保身のために(自身がゲイだとバレないように)率先してゲイを脅したり、破滅させたりしてきたという黒い歴史があります。今やそうした卑劣さこそ恥ずべきことと見なされています。自分がセクシュアルマイノリティであることを恥じることなく受け容れ、堂々とカミングアウトしよう、胸を張って生きていこうとする心意気が「プライド」です(OUTも同様の意味で使われています。OUT JAPANの社名の由来です)。

【附録】

この間、コロナで多忙で(言い訳)投稿が途絶えてしまい申し訳ありませんでした。ただ、最近ずいぶん元気が出ることが続いたので、幾つかコメントしたいと思います(A)。

*1 少し旧聞に属しますが、皆様もご存じの通りNEWS WEEKの今年の100人に大阪ナオミさん,伊藤詩織さんが選ばれました!特に伊藤詩織さんに関しては、恥ずべき国内世論を乗り越え、#Metoo運動の日本の先駆者=世界標準として認められました。

*2   Congratulations 大阪都構想廃案。

*3 Congratulations @JoeBiden and @KamaraHarris.

*4 今回のアメリカ大統領選挙と並行して進められた議会議員選挙で多くのLGBTQメンバーが立候補し、当選しました。

特に*3,4はまた記事として投稿する予定です。

LGBT差別にまつわるハラスメント その後(1)

事実経過 (再)

 昨年4月、このテーマについて記事を書いてから、ほぼ1年半が経とうとしている。この間、コロナによる激変があったが、特に「一橋大学アウティング事件」などをめぐるその後はどうなったのか。前記事にはリンク切れも多くなっており、少し気になったので調べてみた。なお、弁護士ドットコムの一連の関連したニュースを参考にしている。

まずは「一橋大生のアウティング事件」の経緯を再度確認してみよう。

2015年4月  一橋法科大学院の男子学生、同級生に恋愛感情を告白。

同年6月    その同級生に、約10人参加のLINEアプリグループに同性愛者だと実名を挙げて書き込まれ、心身に不調をきたす。その後、担当教授やハラスメント相談員らに相談したが、大学はクラス替えなどの対策をせず。

同年8月24日 講義中にパニック状態になり校舎から転落死。

2016年    両親は同級生と大学(がアウティングに対し適切な対応を取らなかったとして)に損害賠償を求めて提訴。

2018年1月  同級生と和解。

*同年7月    証人尋問。証言者は、大学側から、学生が被害を相談した教授、ハラスメント相談室長、学校医。遺族側から、父、母、妹の計6人。但し、当該学生と最も密にやり取りしていた相談室の専門相談員は、事件後に退職しており、証人として呼べなかったという。

裁判で遺族側は、専門相談員が、アウティング被害に悩む学生に対し、同性愛者であることに悩んでいるかのような対応をとったことを問題視している。加えて、ゲイの学生に対し、性同一性障害の治療(が必要か?)で有名なメンタルクリニックをすすめており、性的思考と性自認を混同していたのではないか、と指摘している。

この点について、相談員に請われてこのクリニックを紹介した校医は、「個人情報の関係で、セクシャリティによる悩みとしか聞いていなかった」と語ったという。いっぽうで、性的思考の問題だったとしても、「精神医学の対象ではない」ものの通常のクリニックに比べれば、「手厚く対応してくれる」と思っていたそうである。つまり、個人情報保護の問題で(職員間の)連携がうまくいかなかった、と言いたいようである。

一方遺族側は、事件後の大学の対応について証言したという:【父親】学生がなくなった翌日、大学側との面談の中で「ショックなことを申し上げます。息子さんは同性愛者でした」と言われ、「(息子が亡くなったのに)何を言っているのだろう」と憤慨した。また、学生(息子)がハラスメント相談室に行っていたことは知っていたため、相談内容を教えて欲しいと伝えたが、「守秘義務」を理由に拒まれた。後日、学生の遺品から相談内容の写しが出てきたので、大学側に説明を求めたが、やはり回答は得られなかった。49日を過ぎて改めて説明を求めたところ、大学側が報告に来ることになったが、「弁護士を同席させる」と伝えたところ、予定はキャンセルになり、大学側からの連絡は途絶えた。「息子のことを知りたかったが、大学側に拒否されて、裁判するしか無かった」。

【母親、妹】学生の死後、彼が高校時代にも同級生の男性生徒に告白し、断られていたことを知った。しかしその相手とは、亡くなる直前まで一緒に遊ぶなど、親しい関係が継続していたという。「同性愛を苦にしていたのなら、高校の時に自殺していた」(母親)。「兄は同性愛を苦にしていたのではなく、アウティングを苦にしていた」(妹)。大学側は遺族側に対し、反対尋問は行わなかったという。

*同年10月     31日、弁論終結。この日も学生の両親が出廷。2016年8月の報道以来、傍聴席には毎回、裁判を支援する当事者や一橋大OBの姿があったという。両親は(閉廷後)傍聴席に向かって一礼。母親は「いつもありがとうございます」と述べ、目頭を抑えていたということである。

2019年2月27日

東京地裁(鈴木正紀裁判長)請求を棄却。「大学が適切な対応を怠ったとは認められない」(被害を相談した教授について「クラス替えをしなかったことが安全配慮義務に違反するとは言えない」とし、相談員についても「クラス替えの必要性を教授らに進言する義務は無かった」と認定)とした。

その後現在までの主な経過は次のようになるかと思われる。

2019年3月7日

上記判決を不服として遺族側が控訴。担当弁護士は「(学生の)相談への対応は、ことに重大性によって変わるはずだが、地裁判決はアウティング(暴露)の重大性・危険性に言及していない。どれほど酷いことをされたかを改めて主張することになる」と話している。

*2020年6月   三重県が「アウティング禁止条例」制定に向けた動き。3日、鈴木英敬知事が県議会本会議の知事提案説明の中で表明。年内の制定を目指すという。この条例には、都道府県として初めて、本人の了解なく性的思考や性自認を暴露するアウティングやカミングアウトの強制の禁止を盛り込む方針。一部報道で「罰則の検討」も報じられたが、県ダイバーシティ社会推進課は(弁護士ドットコムニュースの取材に)「罰則は現時点で未定。実効性の担保について議論していく」と回答。アウティングの禁止をめぐっては、一橋大の事件がきっかけとなって、東京都国立市で、2018年全国に先駆けた条例が施行されている。

【この三重県の方針に関する担当弁護士の意見】

アウティングはなぜダメか? アウティングとは、情報の暴露により社会や他人に自分をどう見せるのかという「情報コントロールの自由」を奪うこと。だからアウティングは、時に人間関係を破壊し、孤立を引き起こす。現実にそうならなくとも、本人は「そうなるかも知れない」という恐怖と不安に苛まれる。

性の問題に限らず、出自や家族の事情、健康や疾病についての情報など、個人が隠したいと思う情報を勝手に暴露するアウティングは、いずれも人権侵害。「誰も気にしていないのに大げさだ」「堂々とすればよいことなのに」「いつまでもクヨクヨせず早く元通りになりなよ」などという反応は、アウティングで奪われるもの(アウティングによりもたらされるダメージ、損失)に対する無理解。

-アウティングを条例で禁止することの意味は? アウティングが「ヒドいこと」だということについて、伝わる人には伝わるのに、伝わらない人には全然伝わらないジレンマの中、「あぁ、法律や条例で、アウティングは違法だと書いてくれていたら!」と思うことはある。しかし、伝わらない人に「法律(条例)に書いてあるからダメなんですよ!」と言ってみても、それは「ただ怒られた」「なんだか住み心地が悪くなってきた」と思わせるだけかもしれない。結果として、その人が口をつぐんでも、それは「怒られるから口をつぐむ社会」になるだけ。

-罰則を盛り込むことについては? 罰則をつけると、かえって問題の本質が理解しにくくなるのではないか。「アウティングをしたら犯罪者になる」という入口と出口しか見えない。本質を理解することが重要な問題であるからこそ、罰則によらなくても、たとえば、国立市の条例のように、アウティングが違法であると確認するようなかたちのほうが穏当ではないか。                           ピンとこない人をむやみに萎縮させることなく、「自分は平気だと思っていたけど、他人もそうだとは限らないのだ」と、その想像力に働きかける。自分が自分を中心に生きているように、他人もその人を中心に生きている。自分が自由であるのと同じように、他人も自由である。言い尽くされた「当たり前の人権」をポロッと忘れたときに起こるのがアウティング。

現在、和解に向けて進んでいるという情報もある。

北海道大学、琉球大学の事例(6)の補足(最近の例(7))

北海道大学

名和氏の言い分

 名和氏は、学長選考会議による調査時期(2019年初頭?)からパワハラを否定し、「調査」の過程で事情聴取や弁明をする機会が全くなかったことを訴えている。また、文科省への「解任申し出」があった後もその主張を繰り返し、文科省の事情聴取(解任に向けた審査を進めるにあたり手続き上必要)に応じた陳述

名和氏の陳述書(文科省聴取2020年3月16日)

で一連の経過を述べている。その中で、手続きに関する多くの瑕疵を指摘している。主なものは、調査委員会設置までの手続きの瑕疵として、公益通報に関するもの(「公益通報」があったとして選考会議議長と顧問弁護士にいきなり総長室に乗り込まれ、辞任を迫られるという、公益通報規定を明らかに無視した行為があった)と監査報告に関するもの(パワハラ等があったとする年度の監査報告には、ガバナンスなどに関し、1例を除き指摘すべき事項は認められない、特に指摘すべき事項は認められない、とされており、監事は(問題視された事項に関し何故か知らされていなかった)が挙げられている。また、調査委員会の調査手続きの瑕疵(選考会議が設けた調査委員会は、一度も本人への聴取を行わず弁明の機会も与えられなかった。また、調査対象事実の告知や委員会に提出された証拠の閲覧さえできなかった)や総長選考会議の事実認定と評価に関する疑問点と誤りも述べている。さらに、これまでのハラスメント事件についての裁判例も付与されていて、これまでに類似事件による大学役員レベルの解任や罷免の例はないとしている。この陳述書のみを読む限りでは、名和氏の言い分にも一理あると思わせるような部分もある。

 また、この問題に関連して、「資源有志の会」により2020年3月頃より、change.orgにおいて「名和総長の不当解任申し出への反対と名誉回復を訴える」キャンペーン(署名運動)が展開されている。現在のところ大体1,000名の賛同者が集まっているようである。「資源有志の会」は恐らく北大の一部OBの集団であると推測出来るので、「選考会議」の告発時の議長も北大工学部OBであることから、有り体に言うと、(工学部?)卒業生を2分するような形での派閥争いであるのかも知れない。

そもそもの発端は?大学の運営路線の違い(派閥争い)?

上記の「陳述」の中の「2 総長に立候補した経緯等」には、全総長の人件費削減方針に対する異議が立候補の主要な動機であったと述べられている。毎日新聞の記事

https://mainichi.jp/articles/20200329/dd1/k01/100/052000c

によれば、2017年当時、選考会議の意向を受け前学長が提案した人員削減案に反対し、名和氏は寄付金など外部資金調達で削減を大幅に(約15%を約半分に)圧縮したという。

パワハラ内容や調査結果の不開示 やはりプライバシー保護?

しかしながら、いずれにしても名和氏本人も含め、教職員や学生に対してもパワハラの詳細や解任申出に至った理由などはこれまでほとんど説明がなかった。これはある意味、選考会議が密室で学長の解任手続きを進めた、と言えるかもしれない。学内外に無用な不安や混乱を引き起こすことは不適切で、国の公的機関としては組織の私物化などあってはならないことだと思われる。実際教職員組合は、以下のような機関誌や声明

北海道大学教職員組合機関紙2019年9月25日号

北大教職員組合 意向投票1回化の撤回を求める声明(2020年5月15日)

を発表して学内世論の喚起を図っており(成功はしていない?)北海道大学新聞も文科省の処分にあたって号外

北大新聞号外(2020年7月2日)

を出しているが、選考会議からの説明不足から他のマスコミ発表をなぞったものに留まっている。また解任申出書も一部不開示となっている。

解任申出書一部不開示決定

文科省の認定

文科省の発表で気になる点は、事実確認した行為に関して「一般的なパワハラと認定しているものはなく、不適切な行為が行われたというところで確認をしているもの」と担当者が話した、とされていることである。調査の結果同省が事実確認したのは28件あり(①役職員に対する総長として不適切な行為 18件、②対外的な大学の信用失墜行為 5件、③大学代表者、研究者としての問題行為 3件、④総長としての資質を疑われる行為 2件)、不適切な行為としては、威圧的な言動や叱責があったとしているが、詳細については明らかにしていない。官僚特有の作文で真意不明であるが、パワハラ以外にも不適切な点が多々あったと言いたいのであろうが、認定の仕方としては申出書を追認した、極めて雑で荒っぽい感じがする。

7/1記者会見と「今後の方向性」 学長の業務執行状況の点検?副学長も(担当がある故に)

大学発表(2020年7月1日)

この文書では、極めて大雑把な経過説明の後、常套句の「関係者のプライバシー保護」が不開示の理由であったことは述べられているものの、やはり今回も詳細な説明は無い。ただ少し唖然とするのは、選考会議が文部科学大臣に解任の申し出を行ったことを、「本学に自らを律する能力が備わっていることの証であると認識している」とする下りである。本来自律能力・自助能力があるならどうして非民主的に一貫して説明をしないまま密室で事を進める必要があったのであろうか?

大学による経緯説明(2020年7月1日)

この文書では、もう少し詳しい経過報告があるが、選考会議をいう開いたとかいう類の情報と文科省発表内容が繰り返されているだけで、どのようなハラスメントや不適切行為があったのかなどについては依然として謎のままである。

今後に関しては、この文科省判断が出る半年以上前の2019年12月に、総長選考会議は総長選考方法を変更すると決定している。その内容は、教育研究評議会からの推薦を可能にすること(これまでは20人の推薦人で可能?)、意向投票を1回限りとすることが主な内容らしい。これに対し、教職員組合は5月15日になって、この撤回などを求める声明を出している(上掲)。

また、記者会見の最後では、今回の事態を踏まえ、学長選考にあたって管理能力を重視した方法に変更し、学長の業務執行状況の点検を評価する方針も示されたという。即ちこれまで4年目に実施していた業務執行状況の点検を2年目以降毎年行う。点検内容も管理能力に重点を置くという。

これらの方向性は、一定程度評価できるのではないだろうか。なぜなら、国立大学を含む多くの大学では(外国では常識の)執行部の業務点検は殆ど行われて来なかったからである。即ち、今までは(国立大学では、普通意向投票を参考に選考会議で決定するというような手続きを経て)一度学長になると、全体の融和を重視するのでなく、自分のお気に入り(ゴルフ仲間や同じスポーツジムの常連などのお友達?)を副学長に据え、あとは執行部全員で外国出張などを含めやりたい放題というのが良くあるパターンである(どこかの内閣と酷似!)。この意味で、以前述べた、学長立候補或いは就任前の身体検査に加え、学長業務の頻繁な点検と不祥事や不適切行為があった場合の罷免を可能にする制度が早急に整備されねばならない。また、担当を明確にして任命されることの多い副学長についても任務分担を意識した業務の点検がやはり厳しく行われるべきである、と考えられる

今回の文科省の処分にビビっている学長・総長も結構いるかも知れない。自分の業務遂行に自信があり、自ら点検制度を構築するような学長がいれば良いのだが。

 

琉球大学

医学部だけでも度々繰り返されて来たハラスメント 医療現場は大丈夫か?

 「医学部教員の独り言」なるブログ

https://smedpi.hatenablog.com/

などによれば、琉球大学医学部のハラスメント事件は」この20年ほど繰り返し起こっているようである。大学執行部のこの種の問題に関する取り組みが真剣に行われていない証拠でもあるような気がするのだが、、、。

例1:「研究で嫌がらせを受けた/琉大医学部助教授、指導教授を提訴(琉球新報1999年11月23日付)

琉球大学医学部のB教授から約8年間研究活動などで嫌がらせを受け、大学側もその嫌がらせに対し適切な措置を怠ったとして同大のA助教授がB教授と大学側を相手取り、550万円の損害賠償を求める訴訟を22日、那覇地裁に起こした。

訴状によると、A助教授は1991年10月頃、雑誌への論文投稿に関し、B教授から「自分も著者に加えないと論文発表を許さない」などの要求を受け、これを拒否したのが発端となり、物品購入や同大紀要への業績掲載の妨害、実験・事務機器利用妨害など数々の嫌がらせを受けたという。このため、A助教授は九州まで出向いて研究を行わざるを得ない状況に追い込まれるなど「B教授の私怨、腹いせで学問研究の自由や人格権を侵害された」としている。これに対し、B教授、ふき山医学部長(当時)は「訳が分からない、覚えがない」、「内容がよく分からない」などと述べていたという。

那覇地裁は2003年2月12日、原告の訴えを認め、国に約55万円の支払いを命じた。教授への請求は棄却。

例2:教授相手に今日提訴/琉大医学部講師等2人(琉球新報2001年6月27日)

琉球大学医学部の不当な医局人事や研究妨害で精神的苦痛などを被ったとして、同大医学部講師と元研修医の2人が国と同大教授を相手に計2000万円の損害賠償を求める訴えを、それぞれ那覇地裁に起こした。

訴状によると元研修医は1997年に県立八重山病院に赴任中、人手不足に加え切迫した家庭の事情などから応援医師派遣を要請したが、無視された上その後の移動でも不当な扱いがなされたため退職。民間病院への転職でも妨害があったなどと主張している。また同大医学部講師は「上司の教授が権限を乱用して外来診療の担当を妨害している」と主張。新規患者の割り当てから排除されたことで研究活動を制限され、医師本来の診療ができない、不当、不合理な立場におかれている」と訴えていた。いずれも地裁判断などは不明。

例3:琉球大学、医学部の男性教員を停職10ヶ月の処分(時事通信2013年3月21日)

琉球大学は21日、セクハラやアカハラをしたとして、医学部の50代男性教員を定食10ヶ月の処分にしたと発表した(処分は19日付)。同大によると、教員は2007~10年頃、元大学事務職員の女性と女子研究生に対して繰り返し性的な発言をしたり、静的な関係を迫ったりしたほか、優位な立場を利用して指示を出したという。

例4:「琉大パワハラ」職場改善で和解 那覇地裁 大学側と技師合意(2014年3月27日沖縄タイムス、28日琉球新報)

2011年に提訴された、医学部附属病院の検査技師ら5人が、同病院の検査部長と輸血部長を併任する医学部教授に職務から排除されるなどのパワハラを受けたとして、琉球大学(大城肇学長)と教授に計825万円の損害賠償を求めていた訴訟で、27日までに那覇地裁(鈴木博裁判長)で和解が成立した。職場環境の改善に向けて合意書を交わしたと言う。

合意書では、琉大側に職務分担の改善やハラスメント調査の適正な実施のほか、他大学の指針などを参照した上での防止策の策定や合意書の職員への通知などを求めている。原告側は「職場環境の改善を求める主張が全面的に盛り込まれた」と歓迎。「ハラスメントは学内で他にもある。大学が合意内容を履行するおよう注視していきたい」と話した。大城学長も「大学は今後とも各部署の全職員が働きやすい職場になるよう努力していく」とのコメントを発表した。

合意書(北大教職員組合HPから)

 

北大学長に文科省より解任通知(最近のアカデミックハラスメント例(6)北海道大学、琉球大学)

北大学長に解任通知(文科省) 学長「不当な処分」、北大教職員組合「説明不足」

NHK (https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200630/k10012489001000.html)や共同通信によれば、昨年7月より北海道大学の「学長選考会議」が解任を求めていた名和豊春学長について、文科省が解任を通知していたということである(6月30日付、本人談)。学長本人は「(事情聴取もなく)解任は不当な処分。この決定に至った審査過程について説明を求めるとともに、処分の取り消しの訴えを起こすことなどを検討したい」としている。

この事件についての最初の動きはどうも北大OBから開始されたものらしく、最初は地元の経済誌によりスクープされた形である。その経緯は本ブログの2年前の記事

北大総長にパワハラ疑惑!?

に既に紹介済である。

名和学長は2017年4月学長に就任したが、2018年10月頃からパワハラ騒動が明るみに出て問題視されたため、同年12月から休職していた。その後体調が回復したものの、昨年7月大学側が文科省に解任を申し出たため復職は実現していなかった。文科省の調査では、大学の役員や職員に対し、威圧的な言動など、合わせて28件の不適切な行為が確認されたため、「国立大学の学長に適していない」として30日付で解任処分をしたということらしい。7月1日の北大の記者会見の様子は後日詳報したい。

また、昨年3月29日付の毎日新聞

https://mainichi.jp/articles/20200329/k01/100/052000c

によれば、2018年末から2019年7月の解任申し出に至るパワハラ騒動のなかで、一般教職員や学生に対する経過と理由の説明などは一切なく、全く密室で進められたものらしく、このような「選考会議」を中心とする動きに教職員組合は強く抗議する声明を出している(2020年1月)。すなわち、どのようなパワハラがどの程度の規模であったのかなどは一切明らかになっていない。また、学長本人も述べているように、事情聴取について選考会議のレベルから果たして公平に行われていたのかという疑問にも何らのコメントさえないのが現状である。どうも低レベルな派閥争いに過ぎなかったのかも知れないが、1年半にわたる大規模国立大学における執行部の空白は、国民の負託を受けている多額の税金で運用されている公的機関としては、あまりにも不誠実かつお粗末であるような気がする(これについては続編予定)。

アカハラ事件と大学執行部(学長(総長)を含む役員)の責任の取り方ー辞職、解任は極めてまれ。開き直り、隠ぺいの張本人である場合も!-

この問題に関しては、奇しくも前の記事で、セクハラ処分に関する立教大学総長の引責辞任劇を扱ったところである。その中でも述べたが、一般に、学長を含む大学執行部がアカデミックハラスメント事件の責任を取ることは殆どない。仮にあっても、形式上の監督責任を果たしていなかったからとして、すべての責任を加害者に押し付けつつ、被害者のプライバシーに関わるという決まり文句で加害者のプライバシーを保護しつつ一定の処分をし(その妥当性についての説明は殆どない)、自らには極めて軽微な「処分」を課すだけである。

 それどころか今回の場合のように、大学や研究組織の執行部や役員自身がハラスメントの加害者になる場合も頻発している。別の言い方をすれば、パワーハラスメントやアカデミックハラスメントを公然と行ってきた教員がハラスメント批判を跳ねのけたり居直ったり事実を否定したりしたのち執行部の役員になっていることが残念ながらしばしばあるのである!

 そしてこの例のように、事件が教職員に対するパワハラ案件である場合は、事件の調査・解決に少し時間がかかっても(数年はかかるが)、被害者がそのまま在職でき(次例のように退職に追い込まれることもある)、加害者が処分されて被害者にも一定の利益がもたらされることはある(稀ではあるが)。しかしながら、ハラスメント加害者であるのに、居直って或いは隠ぺいして組織の役員になっている連中が隠ぺいや否定の対象にしているのは、殆ど男性教員が女子学生・大学院生に対して行ったセクハラ案件、或いはパワハラにより学生が自殺した場合が多い。国立大学も含め、ほとんどの大学がハラスメント相談窓口や調査組織などをもち、ときおり軽微な「処分」を発表しているが、その背景には多くの案件が調査委員会で(当事者の抵抗によって)滞留しており、被害学生の卒業や終了に伴い、うやむやにされてしまうケースが多々ある。留学生が被害者の場合も不安定な在留条件が隠ぺいに利用されることもよくある。また学生の自殺の場合は、2つ前の記事にもあるように、地方マスコミへの情報徹底非開示と親族の裁判提起を抑え込むあらゆる努力が大学・組織一体となってなされる場合さえある。このようにして、あらゆる手段をもって自身のハラスメントをなかったことにしたのち、組織を代表する役員についている教職員も多く、今回の文科省処分にビビっている連中も日本全国に結構存在することは間違いがない。

 こういう悪しき陋習を断ち切るためにもわれわれはこの間ずっと、重要ハラスメント案件には学内調査ではなく、外部の中立的人材を含む第三者委員会の設立とその主導による問題の調査・情報開示・解決を求めてきた。また、ハラスメントのやり得・逃げ得・隠ぺいを許さず、在学中や在職中に何ら報われなかった多くの被害者の無念を晴らすためにも、新しい「ハラスメント貯金」運動なるものを今後提唱して行きたい。(いずれ詳細は述べるが)これは、ハラスメント当事者がメモ、写真、動画など様々な手段でしっかりハラスメント現場を記録し、それらを周りの友人、知人、同僚や理解ある上司などに客観的に認定してもらうことから始める。これらのデータを組織ごとに(外部に)着実に蓄積し、ハラスメント常習者に関して逃げ得を許さず、機会があれば大衆的に暴露し責任を取らせることも視野に入れている。外国では既にやられていることではあるが。

 最近の情報では、本ブログで取り上げたセクハラとパワハラの常習者

二人同日に学生が自殺した大学

セクハラ常習教員(1)

セクハラ常習教員(2)

セクハラ常習教員(3)

が、相次いでそれぞれの組織で役員になっていることが分かっている。この組織名(大学名)は、本ブログへ問い合わせして頂ければ開示する。但し、問い合わせた方が、現在または今後、その組織に関連して人権にかかわるような不利益を被る恐れがある場合を想定します。くれぐれも該当する恐れのある組織・大学に近いうちに就職や進学を考えている方は、一見派手な表面ではわからないその組織の内部のハラスメント環境をぜひ(ネットで)調べてみて、自分の大切な将来を決める参考にすることをお勧めする。本来輝かしくかけがえのない若い貴重な数年を無駄にするどころか地獄の日々にしてしまう可能性もあるので。

琉球大学医学部教授のパワハラに対し、那覇地裁が賠償命令

琉球新報の最近の記事

https://this.kiji.is/604486214556157025

によれば、同大学医学研究科の男性教授2人が、男性講師に対して退職を迫るなどのパワーハラスメントを繰り返していたとして、男性講師が教授2人と琉大を相手に損害賠償計730万円を求めた訴訟で、琉大に100万円の支払いを命じていた。教授2人ん対する請求は国賠法上の対象とならないとして退けられたため、原告は福岡高裁に控訴。琉大側も判決を不服として控訴している。初回期日は4月15日であったらしいがどうなったのであろうか。

判決によると、元々教授2人が講師のデータを無断で論文などで発表し不和になっていたところ、(講師の)科研費非常勤の申請に不備が見つかり、これ乗じて原告を退職に追い込むような発言があったと事実認定したという。これを「ハラスメント行為というべきである」としているらしい。

この事件についてもまた続報をお届けしたいと考えている。

 

立教大学総長の引責辞任と日本大学におけるサークル活動の闇(最近のアカデミックハラスメント例(5))

立教大学 セクハラ対応の拙さを認め総長が引責辞任

最近の毎日新聞やCheristian Todayなどによれば、2018年に発覚したセクハラについての初期対応の誤りで、郭洋春(カクヤンチュン)総長が引責辞任する(今年度末=来年3月)という。

https://mainichi.jp/articles/20200515/k00/00m/040/197000c

https://mainichi.jp/articles/20200516/ddm/012/040/061000c

https://www.christiantoday.co.jp/articles/28055/20200515/rikkyo-university-sexial-harassment.htm

https://www.christiantoday.co.jp/articles/27012/20190711/rikkyo-university-tw-vice-presidents-resigned.htm

記事から拾った経緯はまとめると大体次のようになると思われる:

*2018年6月、1件目の被害深刻。郭氏は当時の副総長二人に対応を指示。副総長らは加害教員の所属学部と調査し(人権ハラスメント対策センターに相談しないまま)、

*2018年12月、学部長による厳重注意処分とした。加害教員は当時学内で要職を務めていたが、郭氏は解任しなかった。しかし、

*2019年3月、学内の「人権ハラスメント対策センター」が「処分は軽すぎる」と指摘したため、郭氏はこの時点で加害教員を要職から外した。再調査の途中の

*2019年7月、加害教員が厳重注意処分を受けた後に2件目のハラスメント事件を起こしていたことが発覚。

 その後大学は外部有識者を交えた委員会を設立し(今年3月まで)、郭氏(総長)らの一連の対応についても検証した結果、二人の副総長に加え、被害申告があった後も加害教員を要職に留まらせた早朝にも責任があるとの結論に至ったという。

*2020年3月(23日付)、2件のハラスメント事案を起こした教員を懲戒解雇。

2020年5月(8日)、学校法人立教学院の理事会で、ハラスメント行った教員の任命責任と監督責任、また初期対応の責任を重く受け止め、任期途中での辞意を表明。同日理事会が申し出を受理。その結果、郭氏は新型コロナウイルス感染拡大に伴う対応にめどをつけて今年度末で(副総長を)辞任することになったという。なお、初期対応に当たった副総長二人、池上岳彦教授(経済学部、統轄副総長=後任は野沢正充教授(法学研究科))、松尾哲久教授(コミュニティ福祉学部)も誤りを認め、既に辞任している(2019年6月30日付、7月4日の学部長会議で承認)。

 しかしながら、大学はこの間の経緯(事案の中身や加害教員の氏名等)については「被害者のプライバシー保護のため」として公表してないので、詳細は不明のままである。

 

 郭総長は1959年東京都で生まれている在日朝鮮人である。加害者教員も韓国人教員であったらしく、そのため当初処分をしなかったのでは、という憶測もある。また、ネットでは、「ハラスメントで執行部の、特に総長が引責辞任することは珍しい」という反応もあるらし。確かに、日本全国の他大学では、もっぱら加害者に責任を押し付けるのみで、任命・監督責任を明確化しケジメをつけたという例は私の知る限りはでなく、率直に評価すべきかもしれない。ただ注意すべきは、副総長二人も含め、彼らは大学を辞めるのではなく単にその地位を退くだけである点である。大学全体の評価を著しく下げたという意味では管理責任はもっと大きい気もするのであるが、それでも他大学よりはマシというべきか。

 

日本大学 アメフト事件の1年前にサークル活動で起こっていた悲惨な事件

またも週刊文春であるが(2020年5月7・14日号)、アメフト部で例の「悪質タックル事件」がおきた2018年の前年、もっと悲惨な事故が日大のサークルである「プロレス研究部」で起きていた。被害者Aさんの父の話:「息子は就職することもかなわず、ずっと自宅やリハビリ施設での両様生活を余儀なくされているます。しかい、大学側は真摯に事故原因を究明することもなく。『こちらに責任はない』と言い切った。『ふざけるな』という気持ちでいっぱいです。

 他の記事なども参照して、大体の経過をたどると以下のようであるらしい。

*2015年、Aさん(他の私立大学の2年生)日大のプロレス研究会「NUWA」に入る。

Aさんによると「プロレスが昔から好きで、ネットでたまたまNUWAのホームページを見つけたんです。『他大学も歓迎』とあったので、入会しました」。それから週に2回ほど、日大法学部6号館で開かれる練習に参加。

*2017年、当時サークル内で、Xという学生にいじめられていた(Aさんの脛をたたく、食費を出させる、の他に、Aさん(4年生で就活中)をサークルに残らせるために「留年しろ」と脅す、授業に出るため練習を断ったAさんにしつこく「出て来い」と連絡するなど)が、ある日Xから「試合でバックドロップをかけられるように」と言い渡され、Xの後輩のY(体格は良いが試合は未経験)との練習を強要された。当時Aさん(身長166cm、63kg)はそれまで主に「お笑い試合」に出場しているようなメンバーだった。

注1)サークルNUWA:日本大学のプロレス研究会(他大学の関連団体ともにときどき学園祭等で「興行」を行ってきた。学生プロレスはコミカルなお笑い的プロレス等を含む趣味的な興行が主流であったが、若干のOBが芸能人になったことも有り、次第に社会的に認知されるようになった。この事故を受けNUWAは、現在は活動停止から解散になっている。

注2)バックドロップ:相手の背後から脇の下に首を入れ、相手のタイツのベルトを掴んで後方に投げ飛ばす荒っぽい危険な技。受け身をとれない状態で技を受けると頸椎の重大な損傷に繋がり、プロの試合でも実際に負傷者が出ている。

*2017年8月1日 それまでの練習中もXは、受け身を取るのは格好悪いので「首から落ちろ、首から!」というような命令を再三強要していたらしいが、この日はYがAさんに3度バックドロップをかけた後、Xの「見栄えが悪い。振りぬく感じが足りない」という指示がさらにあり、YはAさんを思いきり後方に投げ飛ばした。周囲のメンバーも「Aさんが完全に上半身をフリーに(受け身を取らずに?)投げられる技を受けるのは初めてだったので『大丈夫かよ』と心配していたという。

 投げられた後、首の脱臼による凄い痛みのため意識はあったが、急に息苦しくなりそのまま救急車で病院に搬送された。診断は重症の脊髄損傷。緊急手術が施され何とか一命はとりとめたが、今も首から下が自力で動かせない全身不随の状態になった。

*2017年8月~2018年12月 その後周囲の助けもあって大学は卒業したが、体の状態は戻らなかった。また、事故についての調査と見解を日大側に求めたが、「サークル活動中に起こった不慮の事故」との見解を口頭で告げられただけで、まともに取り合ってもらえなかった。Yは一度見舞いに来たがから謝罪は無かったという。

*2018年12月、Aさんは日大とX、Yに対し、5000万円の損害賠償を求める(民事)裁判を起こした。司法関係者によると、日大は「サークルの連絡会を開催して活動内容について注意喚起した。大学として十分な措置を講じた」と反論し、真っ向から争う姿勢を見せている。XとYはAさんを「長年の経験者」とし、Aさんが怪我をした投げ技についても「Xの指示はなかった」と主張しているという。

 ちなみに、6月に管轄の神田警察署に被害届を提出。2020年3月10日に、XとYは業務上過失傷害の疑いで書類送検されている。初公判は5月21日に予定されていたらしいが、果たして開かれたのであろうか?

 文春の最近の取材申し込みに対しても、Yは携帯で今回の事故の件を尋ねると「ちょっと今忙しいので後ほどで」と切れ、その後は不通。Xは携帯に出ず、留守電とメールで取材を申し込むも締め切りまでに応答無し。日大企画広報部広報課は「係争中であるからお答えを控えさせて頂く」と回答があったようである。

学生同士のいじめ・トラブル

 この事件は、学生同士のサークル活動に絡む「いじめ」に端を発し、大学当局の放任ともいえる無責任な管理体制の中で、取り返しのつかない結果を招いてしまったと言う点で、極めて残念な事件である。小中高でのいじめの体験を相対化できないまま大学に来てもいじめを続けている大学生には、大学・サークル活動の自治等を牧歌的に与えるのではなく、これらの点をしっかり教育するか厳格に管理することが大学には求められよう。また、被害を受けた当事者・家族には、被害の訴えに対し誠実に対応してくれるところが殆ど無い現状がある。両事件とも既に裁判が進んでいるので、今後の動向もしっかり追跡したい。

大学側の不誠実な対応

 日大は、Aさんが日大生ではなくプロレス研究会の会員でもないので(事前に提出するべき研究会名簿に名前が入っていなかった)、保険対象ではないため(賠償金を払いたくないため?)ひたすら練習中の事故で片付けようとしているとも推測される。研究会の顧問は法学部の教員が配置されており、大学としてのサークル活動の管理責任はあったと思われる。事件について公表し、加害学生を処分し、謝罪を行わせるべきである。

 この点についても、前記事の甲南大学の例と似ており、何らかの不都合な理由により謝罪と賠償責任を果たすべき問題からひたすら逃亡しようとしている。

なぜか大手のマスコミ(新聞テレビなど)には取り上げられず!?どこかからの圧力か?