「甲南グループ」第4の闇:甲南医療センターにおける研修医自死事件(2022年)(2)

(2)甲南医療センターにおける研修医自死事件(2022年)の背景と民事裁判

事件の経緯を、前記事とは異なる少し詳しい年表形式で記すと以下のようになる。

高島晨伍さん 過労自死を巡る経緯(年表)

1)採用と初期研修の開始

2020年

  • 3月: 神戸大学医学部を卒業
  • 4月1日: 甲南医療センターに採用され、初期研修を開始

2)専門研修開始と自死、遺族の動き

2022年

  • 2月7日: 北海道での地域医療研修を終え、センターへ復帰
  • 4月1日: 消化器内科の専攻医(専門研修)として採用
  • 5月17日: 晨伍さんが自宅で過労自死
  • 9月8日: 遺族が西宮労基署へ労災申請
  • 12月19日: 遺族が労働基準法違反で運営法人(甲南会)および院長らを刑事告訴

3)労災認定、病院会見、行政の動き

2023年

  • 6月5日: 西宮労基署が労災認定
  • 8月17日: 報道を受け、病院側が記者会見を開催
  • 8月18日: 遺族側が記者会見を開催
  • 12月19日: 西宮労基署が運営法人などを労働基準法違反容疑で書類送検
  • 12月20日: 晨伍さんの母が共同代表を務める「医師の過労死 家族会」発足・初会合

4)民事訴訟の開始

2024年

  • 2月2日: 遺族が損害賠償を求めて運営法人(甲南会)を提訴
  • 4月22日: 民事訴訟の第1回口頭弁論

5)刑事処分の判断と裁判の継続

2025年

  • 2月4日: 神戸地検が刑事告発分について不起訴処分を決定
  • 12月26日: 民事訴訟の第2回口頭弁論

 

続いて、ここでも二つ新聞記事を引用する:第一は次である:

20231224 神戸新聞NEXT

<若き医師の⾃死 甲南医療センターで何が起きたか> (上)時間外207時間「もう無理」 外来、救急、学会…過酷勤務の果て

https://www.kobe-np.co.jp/news/society/202312/0017161841.shtml

この写真資料は上記の神戸新聞の記事より引用。

この記事によれば、当時は、同期がおらず最年少だった高島さんは、日中の外来・救急対応や病棟診療に加え、学会発表の準備に追われ、休日もなく深夜帰宅が続く過酷な勤務を送っていた。このような状況に精神的に追い詰められ、趣味を楽しむ余裕や自宅の衛生状態を保つ気力も消失。自死直前には家族に「もう無理」と号泣して訴え、2022年5月17日に自宅で命を絶った(遺書には両親や同僚への言葉が残されていた)。

その後、西宮労基署は、亡くなる直前1ヶ月間の時間外労働を労災認定基準(160時間)を超える207時間50分と算出。専攻医になった直後に、過重な業務と学会準備が重なったことによるうつ病発症と認め、労災認定した。この後、病院側、遺族側が相次いで記者会見を行った(2023年8月)。

(上)病院側の記者会見の様子

2023年12月19日、同労基署は労働基準法違反の疑いで病院の運営法人等を書類送検。母親の淳子さんは病院側に真摯な対応を求めており、提訴も視野に入れていた。しかし病院側(具英成院長)は、高島さん本人の自己申告(4月は30.5時間)を根拠に、「過重労働をさせた認識はない」と記者会見で主張、過重労働自体を否定した。この頑なで不誠実な態度が遺族による翌年(2024年2月)の提訴に繋がる。第一回口頭弁論の際、遺族は改めて記者会見を行っている。

次の記事は以下のものである:

20251227 m3.com記事

26歳専攻医の過労⾃殺、裁判⻑「双⽅の対⽴が⾮常に 激しい」

https://www.m3.com/news/open/iryoishin/1314012

この記事によれば、第二回口頭弁論では、裁判長により、両者の主張が真っ向から対立する四つの主要争点が提示された。それらを要約すると次のようになる: 

4つの主要争点と双方の主張

  • 1. 業務の該当性(研鑽・カルテ閲覧等の扱い)
    • 遺族側: 労災認定や第三者委員会報告書を踏まえ、学会発表準備や研修プログラム(J-OSLER)、業務上のカルテ閲覧・待機体制も指揮命令下・支配関係にあるため業務であると主張。
    • 病院側: 担当患者数や業務内容から「過大ではない」と反論。在院時間の長さは業務と無関係な膨大なカルテ閲覧が原因であり、学会準備等も指揮命令によるものではないと主張。
  • 2. 自死の業務起因性(心理的負荷・労働時間)
    • 遺族側: 月200時間超の長時間労働に加え、専攻医への環境変化や雑務などによる過重な心理的負荷がうつ病・自死の原因であると主張。
    • 病院側: 電子カルテのログを基準に試算した残業時間は月40〜63時間程度であり、刑事告訴も不起訴処分になったと指摘。父親(医師)による処方歴等も挙げ、業務起因性を否定。
  • 3. 病院の法的責任(過重労働の予見可能性)
    • 遺族側: IDカードやカルテログから勤務実態を把握する義務があり、安全配慮義務を怠っていたと主張。
    • 病院側: 本人の想定外の行動であり予見・予防は不可能な上、適切な労務管理体制は構築していたと反論。
  • 4. 損害賠償額の認定(過失相殺・素因減額)
    • 遺族側: 高島さんは独立した社会人であり、家族の関与や過失相殺の余地はないと主張。
    • 病院側: 仮に責任が認められる場合でも、本人や診察を行った父親ら両親側の過失や素因減額が認められるべきと主張。

裁判長の受け止め

双方の膨大な資料提出とプレゼンテーションを受け、林裁判長は「双方の対立が非常に激しい事件だ」と締めくくった。

公判は継続中で、引き続き動向を注視したい。

次の記事「『甲南グループ』第4の闇:甲南医療センターにおける研修医自死事件(2022年)(3)医療グループと学園グループを繋ぐもの」に続く。

「甲南グループ」第4の闇:甲南医療センターにおける研修医自死事件(2022年)(1)

(1)甲南医療センターにおける研修医自死事件(2022年)の概要

Geminiに「甲南グループ」について聞くと、三つの回答がある。一つ目が、いわゆる「甲南チケット」を創始した企業グループ、二つ目、三つ目が、医療法人「甲南会グループ(公益財団法人 甲南会)」、学校法人「甲南学園 / 甲南女子学園」である。

二つめには、甲南医療センター(旧 甲南病院)、六甲アイランド甲南病院、各種訪問看護ステーションや介護関連施設が含まれるが、本記事はこのグループに属する甲南医療センター(旧甲南病院)でおきた事件である。ちなみに、三つ目のグループには甲南大学、甲南女子大学、甲南学園甲南小学校などが設置されている。

本記事で「甲南グループ」といっているのは、上記二つ目と三つ目を合わせた総称である。医療機関と教育機関という、一見直接関係が無いような2つのグループが、実は歴史的にも結びつきが深く、その共通した組織運営思想が、人権意識とコンプライアンスに欠けた時代錯誤的なものになっていることを声を上げて指摘し、関係者(組織運営責任者、所属教職員、学生、在校生など)に警鐘を鳴らしたい。

これまでの「三つの闇」はいずれも甲南大学で起こった事件である。一つ目は30年来闘われたが現在は落ち着いている、語学教育系の多数の非常勤講師へのパワーハラスメント、二つ目は、2018年に起きた大学執行部による誤った指導がもたらした学生自死事件、三つめは少し前に記事を掲載した、中島先生への理不尽なパワハラ事件である。いずれも本ブログで追跡しているので、該当カテゴリーの一連の記事を参照されたい。

上記二つのグループの結びつきについては、このシリーズ第三稿で論ずるが、この第一稿では、まずは2022年に甲南医療センターで起きた青年医師自死事件について、その概要を見てみたい。

まずこの事件の発生から現在までの事実経過は以下のようなものである:

高島晨伍さん 過労自殺を巡る経緯

これらの写真資料は読売新聞の以下の記事(当時)から引用。

https://www.yomiuri.co.jp/national/20230817-OYT1T50021/

https://www.yomiuri.co.jp/national/20230817-OYT1T50021/2/

  • 2020年3月〜4月:勤務開始

神戸大学医学部卒業後、4月より甲南医療センター(2022年2月28日グランドオープン)で初期研修医として勤務を開始。

  • 2022年2月〜5月:専攻医就任と自死

北海道での地域医療研修を経て2月に同センターへ復帰。4月より消化器内科の専攻医として勤務を始めるが、5月17日に自宅で過労自死。

  • 2022年9月〜12月:遺族による申請と刑事告訴

9月に遺族が西宮労基署へ労災申請を実施。12月には労働基準法違反の疑いで運営法人および院長らを刑事告訴。

  • 2023年6月〜12月:労災認定と書類送検

6月5日に西宮労基署が労災認定。8月に病院側・遺族がそれぞれ会見を開き、12月19日に西宮労基署が運営法人などを書類送検。翌日にはご遺族(母)が共同代表を務める「医師の過労死 家族会」の初会合を開催。

  • 2024年2月〜4月:民事訴訟の発起

2月に遺族が損害賠償を求めて運営法人(甲南会)を提訴し、4月に第1回口頭弁論が行われる。

  • 2025年2月〜12月:刑事不起訴と裁判の継続

2月に神戸地検が不起訴処分とするも、12月に民事訴訟の第2回口頭弁論が行われるなど法廷闘争が継続。

以下に他の2つの新聞記事を見てみよう。一つ目は、

230817病院側記者会見 日本経済新聞記事

26歳医師⾃殺で労災認定 ⻑時間労働で精神障害か

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF176YK0X10C23A8000000/

で、病院側の第三者委員会による調査で、4月は約197時間、5月は約133時間に達する時間外労働が判明していて、長時間労働によるうつ状態と精神的ケア欠如が自殺に繋がった可能性が指摘された。ただし、この報告書は遺族側には未開示のまま、病院長(具英成氏)は「病院に居た時間には自主学習や睡眠も含まれ、過重労働の負荷があったとは認識していないとした。一方で病院は、労基署認定の労働時間(死亡直前1か月の残業時間207時間、3か月無休日を理由に労災認定)に基づく未払い残業代と同額の解決金、約130万円を遺族に支払った。

なお、2024年4月施行の改正労働基準法により、研修医らの残業時間には、年1,860時間(月平均155時間、過労死ラインの約2倍)の上限(罰則付き)が設けられた。

二つ目は、

230819 Business Journal 記事

研修医・専攻医の過労⾃殺、相次ぐ…医師の無償の⻑時 間残業で成り⽴つ病院経営

https://biz-journal.jp/medical-care/post_358459.html

で、日経新聞の記事にもあったように、死亡直前の働き方に関して労災認定されたにも関わらず、病院側は、出勤時間には「自己研鑽や休憩」が含まれると主張し、過重労働の認識を否定した。この主張の根拠となった「出勤時間」には残業が数十時間しか含まれていないことが記録に残っているが、遺族によると「生前、病院側から『収益減少』を理由に『常識的な残業申請』をするよう」指示されていたということである。病院側は公然とサービス残業を強要していたのである。

この病院側の冷徹な対応の背景には、若手医師を取り巻く労働環境がある。その第一は、後期研修医は、臨床で実質的な主治医として重い責任を負う一方、指導医との徒弟関係や専門スキル習得・学会準備などのため、長時間労働や上司の指示を断りにくい状況がある。第二は多くの病院が医師や看護師のサービス残業を前提として経営を成り立たせている(「収益」を確保する)実態がある。また、医師は本来は「個人事業主」としての性質が強いにもかかわらず、単なる「勤務労働者」として扱われているため、自己研鑽が「裁量労働」として扱われていない矛盾がある。すなわち、本来医師に払われるべき正当な対価が経営の都合により、削ぎ取られている実態がある。

(2)甲南医療センターにおける研修医自死事件(2022年)の背景と民事裁判に続く。

 

 

甲南大学教員への荒唐無稽なハラスメント事件、学生自死事件「不適切処理」と同時進行していた「教員処分(文科省への虚偽報告)」 (2)

甲南大学教員への荒唐無稽なハラスメント事件、学生自死事件「不適切処理」と同時進行していた「教員処分(文科省への虚偽報告)」 (2)

2.日本学術振興会による通知・公開とそれに対する行政訴訟

訴訟に至る経緯(どのような状況だったのか?)

前記事の事象時系列をおさらいすると、2019年9月からの甲南大学当局によるお粗末な研究不正使用に関する調査(この間一貫して私的流用は否定)を経て、翌20年8月、大学懲戒委員会より諭旨解雇の処分を受ける。処分理由に私的流用の記述がなかったことから、中島先生は事態の「平穏」のため処分を受け入れる。これ自体が、通常の意味で大学当局による不当な(1次)ハラスメントである。

ところが2か月後の静養中、日本学術振興会(学振)より、10年間の科研費応募禁止の処分を受け、困惑と恐怖に襲われる。「困惑」されたのは、まだこの時点では、6月に大学当局が(本人には知らせずに)「私的流用があった」旨の虚偽報告*を文科省にしていたことを知らなかったからである(この事実は2021年4月に提起する行政訴訟の中で初めて明らかになった!)。また「恐怖」を感じられたのは、多くの大学研究者にとって、科研費応募資格は、研究者の実績と将来に関わる科研費へのアクセスを閉ざされる致命的な意味をもつからである。すなわち、その獲得実績は所属分野=関連学会におけるステイタスを示すのみならず研究者の将来を決める(次職=ポジションを得るための)主要な実績になる。

*研究費の使途状況(私費で多額の金銭を研究に費やしていた状況など)や資産状況(調査当時も非常に恵まれていたこと)について把握していたにも関わらず,国には中島先生の研究費の使途状況や資産状況を全く伝えていなかった(意図的に隠していた)。

【科学技術振興機構本部の玄関】 

そして、当然であるが、行政訴訟の過程で、学振から甲南大学に対し、補助参加人になるよう強い要請があった。この要請は、20年6月に、秘密裏に大学当局によって行われた通報が、学振の処分の根拠になったことに起因する。すなわち、大学によって捏造された「私的流用」の報告は、当時印象の悪かった文科省に対する甲南大学の一挽回手段であったが、中島先生への悪質なハラスメント2次被害をもたらす結果となった。

 

 この間の経緯ともたらされた結果及び今後、についてまとめると以下になる:

1) 行政訴訟の経緯と「実質的勝訴」

  • 訴訟の提起:中島先生は、国(日本学術振興会・文科省)による10年間の処分取消を求め、2021年に大阪地裁へ行政訴訟を提起した(後に甲南大学も国側に補助参加)。
  • 裁判所の心証(勝訴的判断): 約2年の審理を経て、裁判所は「調査に重大な事実誤認があり、私的流用があったとは結論付けられない」との心証を開示。先生の冤罪が認められる形となった。
  • 和解協議の最終段階: 以降は裁判所の仲裁のもと、国との間で本邦法制史上でも極めて稀な「勝訴的和解」に向けた最終協議を行った。

2) 勝訴の代償(心身への影響)

  • 先生は、長期にわたる過酷な裁判闘争と当時の記憶の想起により、重いフラッシュバックやPTSD症状に苦しめられた(※現在は完治)。
  • 先生は、共同研究者に対しては、裁判手続きにより研究が一時停滞したことを謝罪され、今後研究を、時間を掛けてでも完遂する意志を示されている。

3) 甲南大学に対する姿勢と「2つの提案」

  • 未払い賃金の不請求: 大学を相手取ったさらなる訴訟は教職員や学生を傷つけ、大学の平穏を脅かすとして、バックペイ(未払い賃金)を法的請求する意思はないとした。
  • 大学への提案: 自身に支払われるはずの賃金相当額を、以下の用途に活用するよう大学側に強く要望している。
    1. 過去に自殺・自殺未遂をした教職員・学生および遺族への慰霊・追悼(過去の自責の念から)
    2. 大学の研究環境(特に社会科学系)の改善(第二の被害者を出さないため)

4) 結び

中島先生は手続き上の過ち自体への省察と謝罪を改めて述べつつも、関係者への敵意や処罰感情はなく、本件が日本の大学・研究機関のガバナンス改善と今後の平穏で地に足のついた研究活動に役立てられることを切に願っておられる。

この行政訴訟により、中島先生は「本邦法制史上例のない『勝訴的和解』を勝ち取られた。これにより、科研費応募禁止期間は短縮=実質ゼロになったが、その代償としての心身への影響は多大なものであり、また大学教員=研究者のキャリアが途切れるという甚大な被害をも被った。これは、中島先生の属する経済学分野において、極めて有用な人材の活躍が極度に制限されたのみならず、アカデミアにおいても取り返しのつかない損失である。一私立大学におるハラスメントが、善良かつ優秀な研究者の一生を左右する重大な事態を引き起こしたことを大学当局は冷静に勇気をもって反省すべきである。このようなことの繰り返しは、長い眼で見たとき所属組織の活力を奪い、その衰退への道に繋がることは誰が見ても明らかである。

文末脚注

文末脚注(注1〜注4)の要約

注1:研究費不正使用の認定に対する反論

認定された不正使用額(約100万円)を大幅に上回る私費(約600万円)を研究に投じており、私的流用は成立しない。調査委員会はこの指摘を無視し続けたのみならず、文科省への通報にも意図的に含めていない。

注2:大学側プレスリリースへの不信感

大学が公表したプレスリリース等は「私的流用による諭旨解雇」を思わせる誤解を招く内容になっている。しかし、事前に手渡された実際の解雇通知書に私的流用は処分事由として記載されておらず、極めて不誠実な対応である。

注3:現在の活動状況

現在中島先生は、私設の経済研究所と資産管理会社を運営されておられる。行政訴訟終了後には、1年の療養を経て,経済学の研究を再開され、学会発表や討論を積極的に行っておられるようである。また、所属教会のサポートの下、信徒説教者を目指して神学・宗教哲学の研究を行っておられるとともに、困窮者や避難者等の自立支援を支えるNPO活動にも携わっておられるようである。

注4:大学のハラスメント対応問題と学生自殺事件

2018年、事実無根の噂を広められた甲南大学の学生がハラスメント委員会に申し立てるも、不誠実な対応を遺書で告発して自殺した事件に言及されている。自身が無実の罪を着せられた体験と重ね合わせ、大学側に対し遺族の意思を尊重するよう求めるとともに、哀悼の意を表されている。

再び聖書の一説:

「知恵ある者は,その知恵を誇るな. 力ある者は,その力を誇るな.富ある者は,その富を誇るな.」 エレミヤ書9章23節」

甲南大学教員への荒唐無稽なハラスメント事件、学生自死事件「不適切処理」と同時進行していた「教員処分(文科省への虚偽報告)」 (1)

甲南大学教員への荒唐無稽なハラスメント事件、学生自死事件「不適切処理」と同時進行していた「教員処分(文科省への虚偽報告)」 (1)

本記事から数回にわたり、数年前から甲南大学で起きていた、教員に対するハラスメント事件についてレポートしていきたい。この件に関しては、既にご本人から、何件か比較的詳しい公開文書が発表されている(中島先生のHP: https://kiyotakasakura.wordpress.com/about/)ので、それらをもとにこのレポートを書いていく。公開文書の一つ目は

2023年9月28日(10月5日改定)付けの中島覚書である:

Nakashima_Notice_20230928_2ndRev1005

前半は英語であるが、後半に邦文版がある。

まずこの覚書により事件の概要を明らかにする。覚書は次の3部分で構成されている。

  • 事実経過と甲南大学による「処分」
  • 日本学術振興会(学振)による通知・公開とそれに対する行政訴訟
  • 文末脚注

順に見て行く:

1.事実経過と甲南大学による「処分」

本事案の事実経過を大まかに記したのが次の表1である。発端は、2019年9月中島先生の米国出張を呼び戻す形で開始された研究費不正使用の調査である。

覚書の邦文前半部(表1では2020年10月まで)の要約は以下になる:

1) 諭旨解雇処分の受け入れと経緯

  • 2020年8月、著者は研究費の使用手続きにおける不備を認め(私的流用は一貫して否定)、甲南大学の平穏を願って大学からの諭旨解雇処分を受け入れた。
  • 中島先生は、この処分は誠実な謝罪と反省が認められた結果であると受け止めていたが解雇事由には「私的流用」は含まれていなかった。

2) 国による厳罰処分と大学側の不透明な対応の覚知

  • 同年10月、学振・文部科学省(文科省)より10年間の研究費申請停止処分が唐突に下され、中島先生は研究者として極めて深刻な打撃を受けた。
  • その後の行政訴訟の過程で、解雇処分前の同年6月、大学側(中井学長ら)が中島先生の知らぬところで「本人が私的流用を認め、言い訳に終始していた」とする報告書を文科省等に提出し、国へ行政処分を進言していた事実が判明した。

3) 大学関係者への疑問・釈明の要求

  • 疑問1: なぜ解雇処分には「私的流用」を含めなかったにもかかわらず、国へは秘密裏に「私的流用」に相当する処分の進言を行ったのか。
  • 疑問2: 今回の諭旨解雇処分は、一般的な研究機関の懲戒基準に照らして正当と言えるのか。
  • 不満と主張: 大学側の意思決定により当事者や周囲に深刻な実害が生じた以上、納得のいく説明がなされない限り、関係者の道義的責任は免れない。

すなわち、大学側は自らの調査で研究費の私的流用を確定できていないにもかかわらず(諭旨解雇処分理由には私的流用は無い)、文科省(学振)には、私的流用があり本人も認めている旨の虚偽報告を行った上で、学振の2020年10月の行政処分に「誤った根拠」を意図的に与えた。これらの疑問について、調査委員会を統括していた学長ら主要役員への説明を要求した。なお、これらの役員は学生自死事件(⇒本ブログに記事多数)で一連の不誠実な対応にもあたっていた!

 実はこの時期の初期(2019年末~2020年初頭)は、本ブログで継続的に取り上げている、2018年の甲南大学学生自死事件の重大な局面と重なっている。すなわち、学生自死事件遺族と関連団体は、2019年11-12月に文科省に、大学に誠実対応を指導するよう求める要請行動を行った。その直後、学生自死遺族が事件の真相究明のための第三者委員会の設置を求めたのに対し、年末に大学側が拒絶・却下している。一方で、公的研究費受け入れに関わる履行の問題が甲南大学にあり,文部科学省から問題視されていたことも後の公判の過程で明らかになっている。ほぼ同時期の2019年12月に文科省から甲南大学に入った調査にはこれらの事情が関係している可能性が大である。さらに、中島先生は出張から帰国後しばらく個人的には配慮されるべき、大変厳しい個人的事情(お母様の体調悪化とご逝去)も抱えておられたという。

 このような状況下で強行された中島先生への大学側の「調査」とそれをもとに進められた、理不尽かつなりふり構わぬ大学側の行為=不当処分は、学生自死事件等文科省に対して減点となる一連の事案処理に焦っていた大学当局が、それらを挽回すべく、中島先生案件を姑息に捏造・利用したものと推定される。まさにアカデミアを標ぼうする組織として恥ずべき振舞である(他の多くの国公私立大学でも同様の例が散見されるが)。

筆者注1)大学教員の予算(一般論):大学教員が使える予算は大きく分けて、内部予算と外部予算がある。内部予算は所属組織から支給される比較的低額(<数百万円)なものであり、使途は割と自由である。外部予算には、色々な国の機関(省庁や研究所等)や民間団体、及び企業等に応募して獲得する助成金が含まれる。他に企業との共同研究経費、寄付金などもある。

筆者注2)予算の不正使用:これにはもちろんよくマスコミで話題になる私的流用も含まれるが、大部分は本来処理すべき予算項目を事務的ミスで間違えたというような軽微なもので、本来は有能な予算担当事務職員によって単なるミスとして処理される。一般に有能な研究者ほど、多額の予算、多くの研究予算費目を抱えているので、その種の事務的ミスはしばしば起こりうるし、本来研究者の倫理問題とは区別して考えられるべきものである。

筆者注3)大学の研究者が得られる外部資金として最も広範に配布され、(総額の)規模が大きいものが、文科省が管轄する、いわゆる科学研究費(科研費)であり、その募集、審査、配布などを主に担当しているのが日本学術振興会(学振)といわれる文科省の外郭団体である。

中島先生が引用する聖書の一説をここでも再掲する:

「あなたがたは,自分の裁く裁きで裁かれ, 自分の量る秤で量り与えられる.」 マタイ7章2節

 

次回では、覚書の後半部分(日本学術振興会による通知・公開とそれに対する行政訴訟)を扱う。

5月11日(月)、甲南大学との第三回目の調停が行われました。また、お蔭様で、Change org署名が6,000筆を突破しました。

5月11日(月)に、甲南大学との第3回の調停が行われました。また、本事件の当事者で現学長の中井伊都子氏は、われわれの訴えを無視し続け、何らの回答もせずに3月末に退任しました。その一方で、皆様のお蔭で署名は順調に増え続け、6,000筆を突破しました。この数は今や甲南大学の学生数を越えようとしています。

この間の調停における甲南大学の姿勢は相変わらず不誠実なものですが、今後も私たちは、本調停において、何度でも、被害学生を「指導死」させた経緯、甲南大学のその後の対応の不誠実さや文科省の度重なる「指導」も無視し続ける態度をさらに明らかにし、甲南大学の新執行部に前執行部の過ちを認めさせ、しっかりとした謝罪をさせたいと考えています。

今後、甲南大学新執行部のより誠実な対応と謝罪を勝ち取るべく、皆様のご協力でさらに署名数を積み増し(次の目標10,000筆)、遺族と代理人をより一層支援する態勢を強化したいと考えています。本署名の再度の拡散に向けた皆様のご協力をどうぞ宜しくお願い致します。

署名発信者

2月2日(月)、甲南大学との第一回目の調停が行われました。また、お蔭様で、署名が5,000筆を突破しました。

現在、甲南大学抗議学生自死事件に関連し、Change orgの署名を進めています。

署名ページ:https://c.org/ZJhtZLwsz4

その現状報告と2月から始まった甲南大学との調停についてお知らせします。

【神戸地方裁判所】

2月2日(月)に、甲南大学との第1回の調停が行われました。また、本事件の当事者で現学長の中井伊都子氏の退任時期も3月末に迫っています。皆様のお蔭で、署名数も5,000筆を突破しました。

今後私たちは、本調停において、自死に至った経緯や甲南大学の対応の不誠実さをさらに説明し、しっかりとした謝罪をさせたいと考えています。中井伊都子氏の無責任な退場は許すつもりはありません。

この調停において、出来れば中井氏在任中に、甲南大学のより誠実な対応と謝罪を勝ち取るべく、さらに署名数を積み増し、遺族と代理人を支援する態勢を一層強化したいと考えています。本署名の再度の拡散に向けた皆様のご協力をどうぞ宜しくお願い致します。

本ブログ編集者、署名発信者

甲南大学学生自死事件 文科省から新たな回答を得ました。

内閣が変わったので、新たな(文部科学大臣)に通知文を出していましたが、このほど以下が回答がありました。これまでと同じように、甲南大学に対し、遺族への丁寧な対応を要請しています。

 前記事にもあるように、10月末、遺族は神戸地裁へ調停申請をし、来年1月に調停が始まる可能性があります。このような要請をずっと受けているにもかかわらず、調停申請に関する朝日新聞の取材への返答にも誠意は見当たりません。すなわち、「相談を受けた当時から可能な限りの対応をとってきた、大学の対応に問題は無かった」と、一辺倒の回答を繰り返しています。
朝日新聞digitalの記事(11月19日掲載):
 現在本件のChange org署名(https://c.org/mcdnPKZ4V8)を続けています。文科省の度重なる要請を無視し続ける甲南大学に対し、真に誠実に「学生の死」に向き合うよう、この署名への賛同と拡散をお願いしています。署名数がどんどん伸びれば(12/1現在1500筆超)申請した調停を強力にバックアップするものになります。宜しくお願いします。

甲南大学抗議学生自死事件遺族、甲南大学に謝罪と損害賠償を求める調停申し立て

11月20日付け下記朝日新聞記事(朝日新聞大阪本社版朝刊より引用)の通り、神戸簡裁に調停を申し立てました。今後については進展が有り次第、また報告させて頂きます。

またAsahi Digitalにおける記事は昨日19日夜、既に掲載されました。

https://digital.asahi.com/articles/DA3S16347774.html?iref=pc_ss_date_article

pdf:消えないデマ、大学の責任は 自死した学生の母親が調停申し立て

甲南大学学生抗議自死事件、文科大臣が変わったため再度通知文書を作成し、文科省に送付しました。

高市政権発足により文科大臣が変わったこともあり、再度文書を作成し、文科相に送付しました。11月5日発送しましたので、もう着いていると思われます。

以下送付文書です:

                                   通知書(引き続きの対応の要請)

松本洋平文部科学省大臣 殿

前略 私は、神戸市東灘区にある私立甲南大学(学校法人甲南学園が設置)に通学していた●●の母〇〇の代理人をつとめる弁護士です。

平成30年3月、当時甲南大学一回生であった●●が所属していた同大学の〇〇部の部長及び前年度の部長が、●●が〇〇部において出店した学園祭の模擬店で売上金を横領した等という事実無根の名誉棄損情報を流し、根拠なく強制退部としました。この名誉毀損情報は、学内の数多くの文化部、文化部に所属する学生、さらには他の学生のほか、他大学の団体にも拡散し、●●は、多数の見知らぬ他者からの心無い中傷を口頭やSNSで受け、本人にとって大切な「信頼」という財産をぶち壊され、将来の社会的生命を絶つ取り返しのつかない事態を招きました。甲南大学は、当時、●●本人から相談を受けていたにも関わらず、適切な名誉回復措置をとらず、さらには、●●が当該名誉毀損情報の拡散がハラスメントであると申立をしたにも関わらず、大学のキャンパス・ハラスメント委員会はこれに該当しないと誤った判断をしたこと等から、●●は、平成30年10月に、抗議の自死に至りました。

【要望の趣旨】

 令和4年3月14日付で、御省から当職宛に「大学に対し、御遺族に対して丁寧に説明することなど、真摯に対応するように要請しております。こちらの要請に対して、大学からは、丁寧に対応していくとの回答をいただいております」とのご連絡をいただいており、令和7年9月22日付で御省の文書においても、大学から説明を受け遺族に丁寧な対応を行うよう改めて要請したとありますが、本日現在、未だに大学側からは、何の連絡もありません。

  • ●及び〇〇に対し、大学が真摯に事実関係を調査の上、謝罪するよう指導をしていただきたく改めて要請します。なお、この件について、母〇〇からのコメントがありますので、添付します(●●を被害学生と表記しております)。

 ※本要請に対する文部科学省についてなされた対応や文科省の考えを、本書到達後2週間以内に書面でご回答下さい。

 

 

「甲南大学学生自死事件」のChange org署名についての補足(署名の実名/匿名問題及び通知先での取扱い)

「甲南大学学生自死事件」のChange org署名へのご署名と拡散を引き続き宜しくお願いします!

【署名の実名/匿名問題及び通知先での取扱い】について

この問題に関し、以下に再度Change org helpから抜粋して引用します:

***********************************

Change.orgは実名主義をとっていますか?利用にあたって身分証明はされますか

Change.orgでは、「戸籍やパスポートなどに記載されている本名使用を義務化する」いわゆる実名主義はとっていません。ユーザーアカウントの身分証明は行っておらず、匿名でアカウントを作成することが可能となっているため、通名や芸名、ペンネームなど、望む名前を使ってアカウントを作ることができます。 Change.orgはオープンなプラットフォームとして、「職場に自分が署名活動・賛同していることが明かされることに不安を感じている」などの人に対して実名を出さずに自由に利用できるよう、どこに住んでいようと、また何を信条としていようと、誰もがサービスを使うことができるような運営体制をとっています。*註

署名を立ち上げるためには、団体名をアカウント名としてオンライン署名を立ち上げることが可能です。また賛同者の中で、署名ページで名前(アカウント名)が知られることが不安という方は、アカウント名とコメントを非表示することもできます。署名ページを開いていただいた上で、賛同するボタンを押す前に、「賛同した際、自分のアカウント名及びコメントを表示させる(チェックを外しても賛同はできます)」というチェックボックスがありますので、チェックを外すと、アカウント名とコメントは、オンライン署名発信者のみ閲覧可能となり、検索から表示がされなくなります。

(編集者注)結論: Chang org 署名は使用するアカウントに付随する匿名やペンネームなどで実名を明らかにせず行うことが出来ます。また、実名を書いても、署名の際チェックボックスを外せば、署名発信者(始めた人または団体)のみ閲覧可能となります。署名の提出先では、匿名、実名ともそのまま閲覧されますが、付随情報としての住所は詳細でないため、基本、個人の特定は難しいと考えられます。

Change.orgでは、「あなた固有の想い」や「あなた固有の経験」がシェアされ、つながり合うことが、変化をもたらす力になると信じています。オンライン署名発信者のパーソナルストーリーが多くの賛同者の心を動かし、また、賛同者から寄せられたコメントが社会を動かしてきた事例が多く見られています。

*註:あなたではない他者になりすましたアカウント開設は利用規約に違反します。また、複数のアカウントで同じ署名ページへ賛同することもコミュニティガイドラインにて禁じられています。