北大学長に文科省より解任通知(最近のアカデミックハラスメント例(6)北海道大学、琉球大学)

北大学長に解任通知(文科省) 学長「不当な処分」、北大教職員組合「説明不足」

NHK (https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200630/k10012489001000.html)や共同通信によれば、昨年7月より北海道大学の「学長選考会議」が解任を求めていた名和豊春学長について、文科省が解任を通知していたということである(6月30日付、本人談)。学長本人は「(事情聴取もなく)解任は不当な処分。この決定に至った審査過程について説明を求めるとともに、処分の取り消しの訴えを起こすことなどを検討したい」としている。

この事件についての最初の動きはどうも北大OBから開始されたものらしく、最初は地元の経済誌によりスクープされた形である。その経緯は本ブログの2年前の記事

北大総長にパワハラ疑惑!?

に既に紹介済である。

名和学長は2017年4月学長に就任したが、2018年10月頃からパワハラ騒動が明るみに出て問題視されたため、同年12月から休職していた。その後体調が回復したものの、昨年7月大学側が文科省に解任を申し出たため復職は実現していなかった。文科省の調査では、大学の役員や職員に対し、威圧的な言動など、合わせて28件の不適切な行為が確認されたため、「国立大学の学長に適していない」として30日付で解任処分をしたということらしい。7月1日の北大の記者会見の様子は後日詳報したい。

また、昨年3月29日付の毎日新聞

https://mainichi.jp/articles/20200329/k01/100/052000c

によれば、2018年末から2019年7月の解任申し出に至るパワハラ騒動のなかで、一般教職員や学生に対する経過と理由の説明などは一切なく、全く密室で進められたものらしく、このような「選考会議」を中心とする動きに教職員組合は強く抗議する声明を出している(2020年1月)。すなわち、どのようなパワハラがどの程度の規模であったのかなどは一切明らかになっていない。また、学長本人も述べているように、事情聴取について選考会議のレベルから果たして公平に行われていたのかという疑問にも何らのコメントさえないのが現状である。どうも低レベルな派閥争いに過ぎなかったのかも知れないが、1年半にわたる大規模国立大学における執行部の空白は、国民の負託を受けている多額の税金で運用されている公的機関としては、あまりにも不誠実かつお粗末であるような気がする(これについては続編予定)。

アカハラ事件と大学執行部(学長(総長)を含む役員)の責任の取り方ー辞職、解任は極めてまれ。開き直り、隠ぺいの張本人である場合も!-

この問題に関しては、奇しくも前の記事で、セクハラ処分に関する立教大学総長の引責辞任劇を扱ったところである。その中でも述べたが、一般に、学長を含む大学執行部がアカデミックハラスメント事件の責任を取ることは殆どない。仮にあっても、形式上の監督責任を果たしていなかったからとして、すべての責任を加害者に押し付けつつ、被害者のプライバシーに関わるという決まり文句で加害者のプライバシーを保護しつつ一定の処分をし(その妥当性についての説明は殆どない)、自らには極めて軽微な「処分」を課すだけである。

 それどころか今回の場合のように、大学や研究組織の執行部や役員自身がハラスメントの加害者になる場合も頻発している。別の言い方をすれば、パワーハラスメントやアカデミックハラスメントを公然と行ってきた教員がハラスメント批判を跳ねのけたり居直ったり事実を否定したりしたのち執行部の役員になっていることが残念ながらしばしばあるのである!

 そしてこの例のように、事件が教職員に対するパワハラ案件である場合は、事件の調査・解決に少し時間がかかっても(数年はかかるが)、被害者がそのまま在職でき(次例のように退職に追い込まれることもある)、加害者が処分されて被害者にも一定の利益がもたらされることはある(稀ではあるが)。しかしながら、ハラスメント加害者であるのに、居直って或いは隠ぺいして組織の役員になっている連中が隠ぺいや否定の対象にしているのは、殆ど男性教員が女子学生・大学院生に対して行ったセクハラ案件、或いはパワハラにより学生が自殺した場合が多い。国立大学も含め、ほとんどの大学がハラスメント相談窓口や調査組織などをもち、ときおり軽微な「処分」を発表しているが、その背景には多くの案件が調査委員会で(当事者の抵抗によって)滞留しており、被害学生の卒業や終了に伴い、うやむやにされてしまうケースが多々ある。留学生が被害者の場合も不安定な在留条件が隠ぺいに利用されることもよくある。また学生の自殺の場合は、2つ前の記事にもあるように、地方マスコミへの情報徹底非開示と親族の裁判提起を抑え込むあらゆる努力が大学・組織一体となってなされる場合さえある。このようにして、あらゆる手段をもって自身のハラスメントをなかったことにしたのち、組織を代表する役員についている教職員も多く、今回の文科省処分にビビっている連中も日本全国に結構存在することは間違いがない。

 こういう悪しき陋習を断ち切るためにもわれわれはこの間ずっと、重要ハラスメント案件には学内調査ではなく、外部の中立的人材を含む第三者委員会の設立とその主導による問題の調査・情報開示・解決を求めてきた。また、ハラスメントのやり得・逃げ得・隠ぺいを許さず、在学中や在職中に何ら報われなかった多くの被害者の無念を晴らすためにも、新しい「ハラスメント貯金」運動なるものを今後提唱して行きたい。(いずれ詳細は述べるが)これは、ハラスメント当事者がメモ、写真、動画など様々な手段でしっかりハラスメント現場を記録し、それらを周りの友人、知人、同僚や理解ある上司などに客観的に認定してもらうことから始める。これらのデータを組織ごとに(外部に)着実に蓄積し、ハラスメント常習者に関して逃げ得を許さず、機会があれば大衆的に暴露し責任を取らせることも視野に入れている。外国では既にやられていることではあるが。

 最近の情報では、本ブログで取り上げたセクハラとパワハラの常習者

二人同日に学生が自殺した大学

セクハラ常習教員(1)

セクハラ常習教員(2)

セクハラ常習教員(3)

が、相次いでそれぞれの組織で役員になっていることが分かっている。この組織名(大学名)は、本ブログへ問い合わせして頂ければ開示する。但し、問い合わせた方が、現在または今後、その組織に関連して人権にかかわるような不利益を被る恐れがある場合を想定します。くれぐれも該当する恐れのある組織・大学に近いうちに就職や進学を考えている方は、一見派手な表面ではわからないその組織の内部のハラスメント環境をぜひ(ネットで)調べてみて、自分の大切な将来を決める参考にすることをお勧めする。本来輝かしくかけがえのない若い貴重な数年を無駄にするどころか地獄の日々にしてしまう可能性もあるので。

琉球大学医学部教授のパワハラに対し、那覇地裁が賠償命令

琉球新報の最近の記事

https://this.kiji.is/604486214556157025

によれば、同大学医学研究科の男性教授2人が、男性講師に対して退職を迫るなどのパワーハラスメントを繰り返していたとして、男性講師が教授2人と琉大を相手に損害賠償計730万円を求めた訴訟で、琉大に100万円の支払いを命じていた。教授2人ん対する請求は国賠法上の対象とならないとして退けられたため、原告は福岡高裁に控訴。琉大側も判決を不服として控訴している。初回期日は4月15日であったらしいがどうなったのであろうか。

判決によると、元々教授2人が講師のデータを無断で論文などで発表し不和になっていたところ、(講師の)科研費非常勤の申請に不備が見つかり、これ乗じて原告を退職に追い込むような発言があったと事実認定したという。これを「ハラスメント行為というべきである」としているらしい。

この事件についてもまた続報をお届けしたいと考えている。