甲南大学教員への荒唐無稽なハラスメント事件、学生自死事件「不適切処理」と同時進行していた「教員処分(文科省への虚偽報告)」 (2)

甲南大学教員への荒唐無稽なハラスメント事件、学生自死事件「不適切処理」と同時進行していた「教員処分(文科省への虚偽報告)」 (2)

2.日本学術振興会による通知・公開とそれに対する行政訴訟

訴訟に至る経緯(どのような状況だったのか?)

前記事の事象時系列をおさらいすると、2019年9月からの甲南大学当局によるお粗末な研究不正使用に関する調査(この間一貫して私的流用は否定)を経て、翌20年8月、大学懲戒委員会より諭旨解雇の処分を受ける。処分理由に私的流用の記述がなかったことから、中島先生は事態の「平穏」のため処分を受け入れる。これ自体が、通常の意味で大学当局による不当な(1次)ハラスメントである。

ところが2か月後の静養中、日本学術振興会(学振)より、10年間の科研費応募禁止の処分を受け、困惑と恐怖に襲われる。「困惑」されたのは、まだこの時点では、6月に大学当局が(本人には知らせずに)「私的流用があった」旨の虚偽報告*を文科省にしていたことを知らなかったからである(この事実は2021年4月に提起する行政訴訟の中で初めて明らかになった!)。また「恐怖」を感じられたのは、多くの大学研究者にとって、科研費応募資格は、研究者の実績と将来に関わる科研費へのアクセスを閉ざされる致命的な意味をもつからである。すなわち、その獲得実績は所属分野=関連学会におけるステイタスを示すのみならず研究者の将来を決める(次職=ポジションを得るための)主要な実績になる。

*研究費の使途状況(私費で多額の金銭を研究に費やしていた状況など)や資産状況(調査当時も非常に恵まれていたこと)について把握していたにも関わらず,国には中島先生の研究費の使途状況や資産状況を全く伝えていなかった(意図的に隠していた)。

【科学技術振興機構本部の玄関】 

そして、当然であるが、行政訴訟の過程で、学振から甲南大学に対し、補助参加人になるよう強い要請があった。この要請は、20年6月に、秘密裏に大学当局によって行われた通報が、学振の処分の根拠になったことに起因する。すなわち、大学によって捏造された「私的流用」の報告は、当時印象の悪かった文科省に対する甲南大学の一挽回手段であったが、中島先生への悪質なハラスメント2次被害をもたらす結果となった。

 

 この間の経緯ともたらされた結果及び今後、についてまとめると以下になる:

1) 行政訴訟の経緯と「実質的勝訴」

  • 訴訟の提起:中島先生は、国(日本学術振興会・文科省)による10年間の処分取消を求め、2021年に大阪地裁へ行政訴訟を提起した(後に甲南大学も国側に補助参加)。
  • 裁判所の心証(勝訴的判断): 約2年の審理を経て、裁判所は「調査に重大な事実誤認があり、私的流用があったとは結論付けられない」との心証を開示。先生の冤罪が認められる形となった。
  • 和解協議の最終段階: 以降は裁判所の仲裁のもと、国との間で本邦法制史上でも極めて稀な「勝訴的和解」に向けた最終協議を行った。

2) 勝訴の代償(心身への影響)

  • 先生は、長期にわたる過酷な裁判闘争と当時の記憶の想起により、重いフラッシュバックやPTSD症状に苦しめられた(※現在は完治)。
  • 先生は、共同研究者に対しては、裁判手続きにより研究が一時停滞したことを謝罪され、今後研究を、時間を掛けてでも完遂する意志を示されている。

3) 甲南大学に対する姿勢と「2つの提案」

  • 未払い賃金の不請求: 大学を相手取ったさらなる訴訟は教職員や学生を傷つけ、大学の平穏を脅かすとして、バックペイ(未払い賃金)を法的請求する意思はないとした。
  • 大学への提案: 自身に支払われるはずの賃金相当額を、以下の用途に活用するよう大学側に強く要望している。
    1. 過去に自殺・自殺未遂をした教職員・学生および遺族への慰霊・追悼(過去の自責の念から)
    2. 大学の研究環境(特に社会科学系)の改善(第二の被害者を出さないため)

4) 結び

中島先生は手続き上の過ち自体への省察と謝罪を改めて述べつつも、関係者への敵意や処罰感情はなく、本件が日本の大学・研究機関のガバナンス改善と今後の平穏で地に足のついた研究活動に役立てられることを切に願っておられる

この行政訴訟により、中島先生は「本邦法制史上例のない『勝訴的和解』を勝ち取られた。これにより、科研費応募禁止期間は短縮=実質ゼロになったが、その代償としての心身への影響は多大なものであり、また大学教員=研究者のキャリアが途切れるという甚大な被害をも被った。これは、中島先生の属する経済学分野において、極めて有用な人材の活躍が極度に制限されたのみならず、アカデミアにおいても取り返しのつかない損失である。一私立大学におるハラスメントが、善良かつ優秀な研究者の一生を左右する重大な事態を引き起こしたことを大学当局は冷静に勇気をもって反省すべきである。このようなことの繰り返しは、長い眼で見たとき所属組織の活力を奪い、その衰退への道に繋がることは誰が見ても明らかである。

文末脚注

文末脚注(注1〜注4)の要約

注1:研究費不正使用の認定に対する反論

認定された不正使用額(約100万円)を大幅に上回る私費(約600万円)を研究に投じており、私的流用は成立しない。調査委員会はこの指摘を無視し続けたのみならず、文科省への通報にも意図的に含めていない

注2:大学側プレスリリースへの不信感

大学が公表したプレスリリース等は「私的流用による諭旨解雇」を思わせる誤解を招く内容になっている。しかし、事前に手渡された実際の解雇通知書に私的流用は処分事由として記載されておらず、極めて不誠実な対応である。

注3:現在の活動状況

現在中島先生は、私設の経済研究所と資産管理会社を運営されておられる。行政訴訟終了後には、1年の療養を経て,経済学の研究を再開され、学会発表や討論を積極的に行っておられるようである。また、所属教会のサポートの下、信徒説教者を目指して神学・宗教哲学の研究を行っておられるとともに、困窮者や避難者等の自立支援を支えるNPO活動にも携わっておられるようである。

注4:大学のハラスメント対応問題と学生自殺事件

2018年、事実無根の噂を広められた甲南大学の学生がハラスメント委員会に申し立てるも、不誠実な対応を遺書で告発して自殺した事件に言及されている。自身が無実の罪を着せられた体験と重ね合わせ、大学側に対し遺族の意思を尊重するよう求めるとともに、哀悼の意を表されている。

再び聖書の一説:

「知恵ある者は,その知恵を誇るな. 力ある者は,その力を誇るな.富ある者は,その富を誇るな.」 エレミヤ書9章23節」

甲南大学教員への荒唐無稽なハラスメント事件、学生自死事件「不適切処理」と同時進行していた「教員処分(文科省への虚偽報告)」 (1)

甲南大学教員への荒唐無稽なハラスメント事件、学生自死事件「不適切処理」と同時進行していた「教員処分(文科省への虚偽報告)」 (1)

本記事から数回にわたり、数年前から甲南大学で起きていた、教員に対するハラスメント事件についてレポートしていきたい。この件に関しては、既にご本人から、何件か比較的詳しい公開文書が発表されている(中島先生のHP: https://kiyotakasakura.wordpress.com/about/)ので、それらをもとにこのレポートを書いていく。公開文書の一つ目は

2023年9月28日(10月5日改定)付けの中島覚書である:

Nakashima_Notice_20230928_2ndRev1005

前半は英語であるが、後半に邦文版がある。

まずこの覚書により事件の概要を明らかにする。覚書は次の3部分で構成されている。

  • 事実経過と甲南大学による「処分」
  • 日本学術振興会(学振)による通知・公開とそれに対する行政訴訟
  • 文末脚注

順に見て行く:

1.事実経過と甲南大学による「処分」

本事案の事実経過を大まかに記したのが次の表1である。発端は、2019年9月中島先生の米国出張を呼び戻す形で開始された研究費不正使用の調査である。

覚書の邦文前半部(表1では2020年10月まで)の要約は以下になる:

1) 諭旨解雇処分の受け入れと経緯

  • 2020年8月、著者は研究費の使用手続きにおける不備を認め(私的流用は一貫して否定)、甲南大学の平穏を願って大学からの諭旨解雇処分を受け入れた。
  • 中島先生は、この処分は誠実な謝罪と反省が認められた結果であると受け止めていたが解雇事由には「私的流用」は含まれていなかった

2) 国による厳罰処分と大学側の不透明な対応の覚知

  • 同年10月、学振・文部科学省(文科省)より10年間の研究費申請停止処分が唐突に下され、中島先生は研究者として極めて深刻な打撃を受けた。
  • その後の行政訴訟の過程で、解雇処分前の同年6月、大学側(中井学長ら)が中島先生の知らぬところで「本人が私的流用を認め、言い訳に終始していた」とする報告書を文科省等に提出し、国へ行政処分を進言していた事実が判明した。

3) 大学関係者への疑問・釈明の要求

  • 疑問1: なぜ解雇処分には「私的流用」を含めなかったにもかかわらず、国へは秘密裏に「私的流用」に相当する処分の進言を行ったのか。
  • 疑問2: 今回の諭旨解雇処分は、一般的な研究機関の懲戒基準に照らして正当と言えるのか。
  • 不満と主張: 大学側の意思決定により当事者や周囲に深刻な実害が生じた以上、納得のいく説明がなされない限り、関係者の道義的責任は免れない

すなわち、大学側は自らの調査で研究費の私的流用を確定できていないにもかかわらず(諭旨解雇処分理由には私的流用は無い)、文科省(学振)には、私的流用があり本人も認めている旨の虚偽報告を行った上で、学振の2020年10月の行政処分に「誤った根拠」を意図的に与えた。これらの疑問について、調査委員会を統括していた学長ら主要役員への説明を要求した。なお、これらの役員は学生自死事件(⇒本ブログに記事多数)で一連の不誠実な対応にもあたっていた!

 実はこの時期の初期(2019年末~2020年初頭)は、本ブログで継続的に取り上げている、2018年の甲南大学学生自死事件の重大な局面と重なっている。すなわち、学生自死事件遺族と関連団体は、2019年11-12月に文科省に、大学に誠実対応を指導するよう求める要請行動を行った。その直後、学生自死遺族が事件の真相究明のための第三者委員会の設置を求めたのに対し、年末に大学側が拒絶・却下している。一方で、公的研究費受け入れに関わる履行の問題が甲南大学にあり,文部科学省から問題視されていたことも後の公判の過程で明らかになっている。ほぼ同時期の2019年12月に文科省から甲南大学に入った調査にはこれらの事情が関係している可能性が大である。さらに、中島先生は出張から帰国後しばらく個人的には配慮されるべき、大変厳しい個人的事情(お母様の体調悪化とご逝去)も抱えておられたという。

 このような状況下で強行された中島先生への大学側の「調査」とそれをもとに進められた、理不尽かつなりふり構わぬ大学側の行為=不当処分は、学生自死事件等文科省に対して減点となる一連の事案処理に焦っていた大学当局が、それらを挽回すべく、中島先生案件を姑息に捏造・利用したものと推定される。まさにアカデミアを標ぼうする組織として恥ずべき振舞である(他の多くの国公私立大学でも同様の例が散見されるが)

筆者注1)大学教員の予算(一般論):大学教員が使える予算は大きく分けて、内部予算と外部予算がある。内部予算は所属組織から支給される比較的低額(<数百万円)なものであり、使途は割と自由である。外部予算には、色々な国の機関(省庁や研究所等)や民間団体、及び企業等に応募して獲得する助成金が含まれる。他に企業との共同研究経費、寄付金などもある。

筆者注2)予算の不正使用:これにはもちろんよくマスコミで話題になる私的流用も含まれるが、大部分は本来処理すべき予算項目を事務的ミスで間違えたというような軽微なもので、本来は有能な予算担当事務職員によって単なるミスとして処理される。一般に有能な研究者ほど、多額の予算、多くの研究予算費目を抱えているので、その種の事務的ミスはしばしば起こりうるし、本来研究者の倫理問題とは区別して考えられるべきものである。

筆者注3)大学の研究者が得られる外部資金として最も広範に配布され、(総額の)規模が大きいものが、文科省が管轄する、いわゆる科学研究費(科研費)であり、その募集、審査、配布などを主に担当しているのが日本学術振興会(学振)といわれる文科省の外郭団体である。

中島先生が引用する聖書の一説をここでも再掲する:

「あなたがたは,自分の裁く裁きで裁かれ, 自分の量る秤で量り与えられる.」 マタイ7章2節

 

次回では、覚書の後半部分日本学術振興会による通知・公開とそれに対する行政訴訟を扱う。