大学生の自殺について (2)-2

大分大学のケース (2)

この経過は実は特筆すべきものであることに注意したい。なぜなら、

  • 本人が死亡し加害者が退職後も、大学が代理人(親族)の申し立てを受け入れ、第三者委員会を設置して調査を進めたこと。これは従来、日本の大学等で一般的であった、ハラスメント事案の調査を内部的な狭い範囲の調査のみで済ませ、その間に遺族を説得して外部調査の要求や裁判を放棄させるやり方とは明らかに一線を画した取り組みである。
  • 大学は、調査結果を比較的詳しく公開し、多角的に認定したハラスメントにつき大学の責任を認めると同時に関係者の処分を行ったこと。第三者委員会を設けて調査しても、外部は言うまでも無く、組織内部や遺族にさえ公開が制限されるケースは珍しくない。加害当事者のみでなく監督責任者の処分まで公開するのは前向きの姿勢である。これらはコンプライアンス的にもしっかりした対応であり、遺族との示談成立を後押ししたのではないかと推測される。

実際対照的なケースとして、「日大生の連続【アカハラ自殺】」が挙げられる。日大の獣医学部が背後にアカハラがあったと思われる2人の学生の自殺者を出し、その内一人の院生の遺族が調査委員会の設置と教授会での議論を求めたものの、執行部は無視を続けた。学部関係者はアカハラによる自殺を組織的に隠した疑いを示している。関係ネット媒体による「遺族が望む調査委を設けない理由」を問う取材に、「事件」の起きた学部の学部長は「取材拒否」の文書を返送した。

私たちの自己紹介でも述べたように、高等教育研究機関自らによる、様々なハラスメント事案についての客観的な調査=自浄能力は、殆ど期待できないのが現状である。第三者機関による調査とハラスメント認定、関係者の処分(公表が望ましい)を問題解決の標準的なプロセスとすべく、今後も継続的な努力が必要である。(A)