LGBT差別にまつわるハラスメント (3)

各大学におけるLGBT対応指針

 こうした動きを背景に、LGBTなど性的少数者の学生への対応についてガイドラインを策定する大学が増えている。学籍簿の名前の扱い、トイレの使用、就職支援など学生生活に関わる幅広い分野で具体的な対応策を示し、セクシュアルティー(性のあり方全般)を理由とする差別や不利益をなくすのが狙いである。留学生の増加等大学の国際化が進む中、LGBTを始めとする多様性の尊重はますます重要となって来ている。以下幾つかの大学の取り組みを簡単に見ていく。

【名古屋大学】「LGBT等に関する基本理念と対応ガイドライン」を制定し2018年9月に公表。ガイドラインは情報管理、錠業、留学、環境整備等8項目に分類され、それぞれ具体的な方針が示されている。例えば「情報管理」では、学籍簿や証明書、学位等に自認する性に基づく通称名を利用できることや学生向け名簿等の文書には性別欄を外すこと、「授業」では、スポーツ授業での性別グループ分けの有無、身体的接触、合宿等宿泊を伴うイベント等に事前情報明記、等が挙げられている。また予算を伴うトイレや更衣室の改修や拡充を工夫して進める(多目的と入れマップの配布等)こと等も述べられているようである。

 職員についても、先例を参考にしつつ福利厚生や人事制度にも踏み込んでいる。例えば、職員にパートナーがいる場合、自治体の証明書や海外のパートナーシップ契約が確認できる書類があれば、配偶者がいる職員と同様の福利厚生や人事制度の対象となる。

【国際基督教大学】2012年、ジェンダー研究センターが性的少数者の学生向け生活ガイドを発行(現在9版?まで改訂)。16年には位置づけを見直して、名前を「できることガイド」に変え、セクシュアリティの観点から現在利用可能な制度の中で役立つ情報(授乳室の利用方法など)を紹介している。

【筑波大学】「カミングアウト」についての項目を設けている点が特徴で、当事者への支援だけでなく、カミングアウトされたときに周囲がどう対応するかも説明している。さらに「アウティング(カミングアウトの内容の本人の意に反しての暴露)」に対し、「自殺といった最悪の結果を招きかねない」などと厳しい表現を使い、ハラスメントと認定している点も注目に値する。

【京都精華大学】2016年に、異なる境遇や価値観をもつ他者への理解を深め、共助の精神を身につける環境作りに努める「ダイバーシティ推進宣言」を公表。

【早稲田大学】2017年、性的少数者の相談支援、交流、啓発等を行うGS(ジェンダー&セクシュアリティ)センターを設立。

【大阪大学】2017年、性的指向と性自認の多様性と権利を認識し、偏見と差別をなくす啓発活動を行うとする基本方針を提示した。

【お茶の水大学】戸籍上は男性でも性別を女性と認識しているトランスジェンダー学生の入学を20年4月から認めると発表。

 これから大学への進学を考えている高校生の皆さんやその父兄の方々には、入試の偏差値や就職率、もしくは授業料などに加えて、是非色々な大学のハラスメント状況を調べてみてはどうだろうか?各大学のホームページには意外とハラスメント関係の様々な情報が記載されているものである。青春の貴重な一時期に自分自身や友人・子弟が思いがけない悲惨な境遇に陥らないために是非とも事前の情報収集に努め、大学選択の重要基準として活用されることをお勧めします!

*9 LGBT差別禁止 首都圏に広がる 自治体、条例など明文化 (東京新聞 2018/4/23)https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201804/CK2018042302000128.html

*10 様々な性 大学でも支援を キャンパス・セクハラ全国ネット福岡で9月1、2日 教育の場、改善できる点は(西日本新聞、2018/8/17)https://www.nishinippon.co.jp/feature/life_topics/article/441904/

*11 LGBT「大学の連携大切」 筑波大がシンポ 毎日新聞 2018/10/27)

https://mainichi.jp/articles/20181028/ddl/k08/040/084000c

*12 教育の窓 大学にLGBT対応指針 学生生活の具体例明記 (毎日新聞 2018/11/19)https://mainichi.jp/articles/20181119/ddm/013/100/015000c