甲南大学での学生自死事件、その後 (1)

昨年(2020年)4月本ブログに掲載の甲南大学についての記事

甲南大学で学生が自殺 サークルのトラブルに大学が責任をもって関与せず/新潟大学/群馬大学(最近のアカデミックハラスメント例 (4))

の続報を、ご家族の手記を引用する形で掲載したいと思います。

本件は一個人の問題でなく、社会問題として検証する必要があると考えます。そのために、当事者学生ご家族のご協力を得て、本記事の掲載が実現されました。事件よりほぼ2年余りが経過しようとする今、大学側からの誠意をもった対処がない一方で、学内的にも社会的にも事件が忘れられようとしています。事件発生から現在に至るまでの甲南大学の表の顔と裏の顔の使い分けに、ご家族は強い嫌悪感と憤りを抱いておられます。この記事では、ご家族提供の事件の資料などをご紹介しつつ、そのような目的に添うべく、本事件を振り返ってみたいと思います。

(1)ご家族の手記

 はじめに

甲南大学の学生が抗議の自死を行った。

その学生の母親が現在の心境を語ってくれた。

まずはその母親の言葉から、連載を始めたい。

母親の言葉

甲南大学は、多額の学費を徴収しながらアカデミックハラスメントを行った。

最愛の息子は、延々と甲南大学に振り回され、自分の尊厳を守る最終手段として「抗議の自死」に至った。自死から、2年と2か月が経過したが息子の魂は今も生きている。

抗議の自死直後の甲南大学の倫理観が欠如した対応

息子の抗議の自死の後、甲南大学から私には、一本の電話、弔電、弔問等一切無い。息子の自死後、甲南大学が先ず実行したことは、「甲南全職員に被害者に個別に接してはいけない」という箝口令である。その後私が甲南大学に様子確認で訪れた折、中村英雄学生部事務部長、中井圭吾学生課長らと遭遇したが、彼らは無言で私の顔を睨みつけ、不敵で無礼極まりなかった。息子の自死直後に、ある祝賀会の場で「喜びに溢れる」という言葉の公への発信があったが、息子の命の尊さを土足で踏みにじる耐え難いものであった。

(自死後1ヶ月に満たない時期に開催された文化会表彰式・祝賀会)

表彰式・祝賀会が開催された11月16日は、抗議の自死からまだ一月も経っていない時期である。この日の表彰式・祝賀会は、自死前にアカデミックハラスメント対応をした学生部 (秋宗学生部長) 主催で、吉沢理事長も出席した。抗議自死の遺書には「甲南大学の対応 (中略 )文化会での名誉毀損行為、」という記載も残されている。

かけがえのない最愛の存在を失い、私たち遺族には、言いようのない怒りと虚無感、悲しみで息をするのもつらい時間がこれからも続く。

純真な学生が大学に被害を訴え、必死で対応を求め続けたにも拘わらず、その後の甲南大学のアカデミックハラスメント対応が学生を自死にまで追いやった。不祥事の自覚症状がないのか、甲南大学の倫理観の欠如は、怒りを通り越して気持ちが悪い。

抗議の自死に対し、原因の調査すらしようとしない。無神経な態度は続いている。

抗議の自死から1年が経過し、私は代理人弁護士を通じて甲南大学に第三者委員会設置を申し入れた。甲南大学吉沢理事長からは、「甲南大学の対処に問題はない。審議を了しており、今後調査するつもりはない。」という内容の手紙を代理人経由で受け取った。

息子の存命中から自死後も、一連の無礼な甲南大学の態度は、被害者である息子の尊厳と家族の心身を深く傷つけ続けた。息子の自死から約1年半後、私はようやく代理人を通じて、「甲南大学」吉沢理事長・長坂学長を大阪弁護士会館に呼び出したが、吉沢理事長は遺族との面会を拒否したまま、誠意ある対応は一切なく現在に至る。

自死後遺族と対面した際の学長の姿勢

2019年3月14日の大阪弁護士会館での吉沢英成理事長面会拒否・長坂学長との対面では、いかにして最愛の息子の平和な学生生活が破壊されていったか、抗議自死までの経緯を確認した。「甲南大学は、学生生活の安全を確保すべきではなかったのか、悪質なパワーハラスメントから被害者を守るどころか加害者に何の処罰も行わすハラスメント自体を無かった事とした。その名誉棄損によって平和な学生生活が破壊され、聴力を失う等、取り返しのつかない被害を受けた上に、大学の傲慢で杜撰な対応は、被害者学生を抗議の自死にまで至らせた。」という内容について、そして、これまでの甲南大学対応の異常性経緯を改めて息子が残した言葉等生きた足跡の爪痕を見せながら、代理人と共に、長年家族ぐるみの付き合いがある母の友人立会いの下、遺族の生の声で訴え抗議した。

「なぜこのような学生自死事件が起こったと考えるか。」と対面の長坂悦敬学長(現理事長)に私が問い詰めたところ、長坂学長は、「対応した彼ら彼女らにも問題があるかもしれないが、学生全般のレベルが低いから。」という言葉を口ごもりつつ残して去っていった。同席で息子の担任教授は、「責任感のある学生だった。もっと適切な対応が成されるべきだった。」と長坂学長の隣で発言してくれた。その後、甲南大学代理人から口頭で「香典にしては多額、命の値段には程遠い金額」の提示があったが、命の尊さを無視した内々の陳腐なもので、遺族としては到底受け入れられない。

更に呆れることには、被害者学生を自死へと追い詰めた甲南大学関係者達は、その後昇格人事で、中井学長の紅白スーツ姿笑顔の写真が(自死報道後、写真差し替え)ネット上に掲載されていた。

(中井伊都子学長就任写真・甲南大学人事決定写真)

代理人による記者会見と甲南大学によるさらなる追い打ち

吉沢元理事長を筆頭に、長坂当時学長(現理事長)、中井当時副学長(現学長)の『表の顔・裏の顔』のギャップには強い嫌悪と憤りを感じる。

学生の「命がけの抗議」に対し、甲南大学は、反応しないまま風化を望みつつ、遺族には組織権力という暴力を振り回した。

甲南大学に入学したことは、我が息子とその家族にとって、人生の痛恨の極みである。

甲南大学学生自死事件は、個人の不幸な問題という範疇ではなく、社会問題として世の中に問いかける必要性を遺族は痛感し、代理人が記者会見を開き、新聞・テレビ報道へと踏み切り、報道がなされた。

「甲南大学生抗議自死」新聞報道に至るまで事件は隠蔽され、遺族には面会拒否の裏側で、吉沢理事長は祝辞で「人間的な豊かさを持たすには、直接的なフェイスtoフェイスの関係を豊かにすることが重要になる。」同じ壇上での長坂学長の祝辞は「正志く強く朗らかに進んでいきたい。」と公言している。尊い命を悼むことなく、大学幹部らが笑顔で繰り返し開催する盛大な祝賀会開催・乾杯の様子は、遺族の心情を深く傷つけた。

(2019年4月21日、吉沢英成理事長、長坂学長ら、久本神戸市長、井戸兵庫県知事と共に神戸ポートピアホテルパーティ会場壇上にて盛大に鏡割り・祝賀会)

被害者学生を抗議の自死に至らせてもなお、甲南大学の反省、被害者学生と遺族に対する誠意ある対応は全く無い。それは一般社会の常識では考えられない惨憺たるものである。

しかも、各種報道の後、メディア・ネットによる甲南大学の名誉棄損発言、低俗で稚拙なSNSへの書き込みがなされた。これは被害者学生の尊厳をさらに深く傷つけるものであり、今後、遺族は毅然とした態度で対応する。

(ニュース映像写真)

(毎日新聞記事)

https://mainichi.jp/articles/20200308/k00/00m/040/328000c

https://mainichi.jp/articles/20200329/k00/00m/040/206000c

:昨年4月の本ブログ記事に抜粋を掲載しています。

(朝日新聞)

https://www.asahi.com/articles/ASN3B72LCN3BPIHB028.html

(神戸新聞)

https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/202003/0013180260.shtml

(産経新聞)

https://www.sankei.com/west/news/200310/wst2003100004-n1.html

以上の「ご家族の手記(母親の言葉)」は、ともすれば一時の感情に任せて書かれたものと思われがちだが、次に示す一連の事件の経過に対応したものである。