文科省、指導死児童についての初の実態調査へ(3/3)なぜ甲南大学学生自死事件に取り組み続けるのか?

(3)なぜ甲南大学学生自死事件に取り組み続けるのか?

本ブログでは、この間、いわゆる2018年度に起こった甲南大学における学生自死事件とその後について、今日に至る一連の経過を報告してきました。

【事件の経緯ー再録】 2018年3月、被害学生は甲南大学:学生部に部活動ハラスメント被害を訴えたが放置され、同4月には当時所属していた部の部長名で全ての甲南大学公認文化会ー関西圏10大学合同活動する団体へと「名誉毀損:誤情報」が流布された。秋宗秀俊学生部長(当時)による黙認で被害が拡大したため、同5/22、被害学生は甲南大学キャンパスハラスメント防止対応委員長(当時):中井伊都子氏に直接苦情処理を申し出た。同5/26には、被害学生母親が長坂学長(当時)ー吉沢理事長(当時)に被害救済を訴えたが被害学生の名誉回復には至らず結果的に放置された。同9/19、中井伊都子ハラスメント委員会委員長は、被害学生を学内に呼び出し「今もなお問題になっているとは言えないと判断している、学長から学生部長に対し部の指導指示が出されている、強制退部手続きの問題としての指導は行うが恐らく処罰はくださない」との説明(残された記録引用)があり、被害に対する名誉毀損救済は皆無となった。「誤情報拡散、強制退部はハラスメントではないのか、大学のどこに言えばいいのか」と訴える被害学生の声は無視され、大学側の高圧的な態度で事件は隠蔽された。同委が「ハラスメントと認定しない」との結論を出した約1か月後に被害者学生は命を絶った。「自殺に至った主な原因は3月に起こった部および文化会による名誉棄損による精神的ダメージ(中略)甲南大学の対応も遅く私は限界となりました。以上のことにより3月より精神が著しく削られ私は自殺します」との遺書を記し被害者学生が自殺したその翌年、中井伊都子氏は、甲南大学学長:甲南大学理事へと昇進。2023年現在に至るまで甲南大学側から遺族への対応は皆無で、第三者委員会設置拒否、文科省からの対応要請にも無反応のままである。

以下は2020年の新聞記事です:

甲南大生自殺、ハラスメント委調査「闇のまま」 議事録非開示 外部専門家参加せず  毎日新聞 2020年3月29日

「横領」誤情報で甲南大生自殺/上 ハラスメント認定せず 遺族が検証要望も拒否 /兵庫  毎日新聞 2020年4月5日

甲南大生自殺 ハラスメント委の調査過程、客観性乏しく不透明のまま  毎日新聞 2020年4月6日

「横領」誤情報で甲南大生自殺/下 調査過程、不透明のまま 客観性乏しい学内委 /兵庫  毎日新聞 2020年4月6日

(1/3)で述べた文科省の決定に関し、この事件の遺族は次のようにその思いを述べておられます:

【ブログ「管理人」様 **(弁護士)先生

今日の夕方のニュースで教師の不適切な指導による学生(児童・生徒)の自殺「指導死」の実体を文科省が調査するという速報が流れました。今回は高校生までが調査の対象ですが、ようやく山が動き出したように思います。(これまで30年近く)文科省へ遺族が被害を訴え続けてようやく今回の調査につながりました。当事者家族らとは、学校事故を語る会で何度かお話ししましたが、現在大学生の家族として声をあげているのは当方だけです、、、「大学が文科省の指導対象外である理不尽な事実」を是非取り上げて欲しいです】

また、

【私立大学の自殺者数が表に出て来ないのは、そもそも、大学側が外部に学生死亡の事実を隠蔽し、報告していないからです。】

とも仰っておられます。(2/3)の記事からも分かる通り、文科省は自死大学生に関する統計調査は、国立大学のみしかやっておらず、ましてや個々の事例に関し、詳細な調査は一切行っていません。前述の、関連団体による全国の国公市私立大学に関する調査も昨年度やっと2回目であり、回答率は約80%であることから、2割の(私立?)大学が調査要請を無視、あるいは無回答していることがわかります。以下の甲南大学の文書からは、おそらく甲南大学もこの種の調査には応じていない可能性が指摘できます。ましては、専修学校(看護学校など含む)に関しては、文科省以外の管轄でもあるので、さらに(全国的)統計などが無いのが現状かと思われます。

実際、代理人弁護士からは

【甲南の代理人から私になされた回答のうち、そもそも死亡事故について大学内には文書が存在せず、その理由として、報告する義務が無いからだとする文書を(もらっているので)それを添付しました。(以下に画像)】

という連絡もあります。まさに「無かったこと」として文科省とマスコミ・世間に都合の悪い(大学の評判を落とす)事実を隠蔽し続ける態度は「ハラスメントはなかったとする」大学当局の「結論」以降、全く変わっていません。

続いてご遺族は【文科省の指導死調査も大学は枠外に置かれており、指導死を行った人物の学長就任や耳障りの良い公言はどこからも正される事無く、被害者学生とその遺族は悲痛な泣き寝入りを現在も強いられています。文科省は(私立大学の自己採点:自治に任せて助成金や補助金支給の増額を検討するのではなく)、早急に大学指導死の実態調査を行い、大学において指導死を出した私立大学には、その責任を負うよう指導してください。よろしくお願いいたします】

と再度文科省への要望を述べられています。

 2年前の国会質問後には文科省は「指導した」と言っていますが、大学は何らそれに対する誠実な対応はしていず、相変わらずご遺族無視の学生の命の存在すら無かったかのような姿勢を続けるのみです。われわれはこの種の事案を粘り強く発信し現状を何とか変えるべく、文科省や各大学に引き続き訴えていきたいと考えています。

 もし身近に、似たような自死例をご存知あるいは経験され、大学当局や文科省にまともに取り合ってもらえず、無視(無かったことに)されたり裁判を思いとどまるよう説得されたようなご経験をお持ちの方は、是非情報をお寄せ下さい。古い事案でもこれからまだやれることがあるかも知れません。