ご家族の代理人弁護士が文部科学省に要請書を提出(2023年1月)−甲南大学学生自死事件(2018年)

このブログでも報告して来たように、本事件のご家族と代理人は文部科学省に対し、この数年間、事件への誠実な対応に関し、甲南大学を適切に指導するようたびたび申し入れてきた。しかしながら、文科省職員と甲南大学職員との事務的なやり取りはあったであろうが(と信じたい)、甲南大学の姿勢には何ら変化はなく、相変わらずダンマリ(無視?)を決め込んだままである。

こうした状況を変えるべく、年明けの1月30日、代理人弁護士が文科省に対し、以下のような「通知書(対応の要請)」を送付した。文科省による早急かつ具体的な対応、すなわち甲南大学に対し、自死家族への一刻も早い誠実な諸対応をすべく指導することを強く希望するものである。

以下に「通知書」を掲載する:文科省宛「通知書」pdf版

文部科学省正面玄関

通知書(対応の要請)

文部科学省 高等教育局 学生・留学課厚生係 御中

前略 私は、神戸市東灘区にある私立甲南大学(学校法人甲南学園が設置)に通学していた○○○○君の母○○○○の代理人をつとめる弁護士です。貴省に対し、甲南大学に対し、以下のとおり、適切な指導をするよう要請します。

1 2018年、甲南大学に在学中の○○○○君が大学への抗議の自死を行い、その翌年の2019年には、甲南大学のウェブページに下記の内容が掲載されています。

すなわち、「Student First 教職員のための学生支援ガイドブック

【2019年改訂版】第4部 学生支援事例集」

https://www.konan-u.ac.jp/life/student_counseling/teachers/ において

  Q8. 脈絡のない言動をする不安定な様子の学生がいたとき

としてQを作成し、「統合失調症のような心の病が原因である可能性も考えられ、その場合は専門的な援助を必要とするので注意が必要です。」としたうえでの回答を掲載していますが、これは、亡くなった○○○○君本人及び遺族の感情を著しく損なうものであり、不適切であると考えますので、指導いただきたいと考えます。

2 ○○○○君は甲南大学に在学中に、別紙の経過を経て、抗議の自死をしました。未だに大学において、第三者による死亡の検証等は行われておりません。

この間、甲南大学関係者は、学生をハラスメント被害から救済するのではなく、「(○○○○君が横領した等という虚偽情報が学内に拡散したため他の文化部の入部を拒否された場面に関し)○○○○君から脈絡もなく、攻撃的に話をしたことから、あのような状況になったと思われる」等と発言し、○○○○君の必死の訴えを封じ込めようとしたこと、ハラスメント被害事態すら無かったとしました。

このような、被害者からの訴えを脈絡がない等と決めつける甲南大学組織の高圧的なハラスメント隠蔽の結果が、被害者学生を自死に至らせました。

3 生前には、被害者学生の発言をその真意を十分検討することもなく、ハラスメント被害を法テラスや弁護士にも相談していた○○○○君に対して、当大学は「脈絡のない発言」という言葉を用い耐え難い心労を与え、さらには、抗議自死の翌年に「話す内容が理解しづらく脈絡のない独り言のようである」場合に統合失調症の可能性があるなどとする上記の記述は、内容においても、ハラスメント対応問題点の根本的な差し替えが行われており、本人の尊厳を著しく傷つけるという点からも、極めて不適切であると考えます。

 この点、御省から、しかるべき指導をされたく本書を送付した次第です。

4 また、当該自死事案に関する遺族への対応について、令和4年3月14日付で、御省が「大学に対し、御遺族に対して丁寧に説明することなど、真摯に対応するように要請しております。こちらの要請に対して、大学からは、丁寧に対応していくとの回答をいただいております」とのご連絡をいただいておりますが、未だに大学側からは、何の連絡もなく、この点も引き続きしかるべく指導をしていただきたいと考えます。

以 上

添付資料(省略)

  甲南大学関係者による「何の脈絡も」ないと決めつけた発言の記録

  前回の御庁からの回答書

令和5年1月30日

また、事件の概要も再掲する:別紙「事件の概要」pdf版

兵庫県庁旧庁舎

【事件の概要】

○○○○君は、平成29(2017)年4月、甲南大学に入学し○○部に所属しました。

1年生にもかかわらず、学園祭企画を発案・成功させ、次年度の部長予定者となり、関西圏の10の大学で結成する課外活動団体である「△△会」の会長に就任するなど、統率力を発揮し真面目に活動したがゆえに、不運にも部内の上級生に嫌われる結果となりました。

 平成30(2018)年3月、甲南大学○○部の歴代部長を中心とした上級生は、○○○○君を一連の課外活動から排除する目的で、計画的なハラスメント行為に及びました。その内容は、甲南大学学園祭・平成29(2017)年11月に○○部が出店した模擬店の売上金を1年生の○○○○君が横領した等と経理上なんの根拠もないにもかからず、事実無根の誤情報を捏造し、その名誉棄損情報を○○部内に吹聴し、○○○○君は強制退部となりました。平成30(2018)年3月18日、甲南大学公認の○○部・部長名によって、○○○○君が会長を務める△△会宛に、「○○○○君を強制退部とした」との通知を発しました。

○○○○君は、直ちに甲南大学学生部へ被害を訴えたにもかかわらず、甲南大学の適切な対応が行われず、被害はより拡大していきました。

○○部長は、部長名で甲南大学公認の全文化活動団体と任意活動の各種団体に「入部拒否の要請」を発しました。同年4月11日、甲南大学秋宗秀俊学生部長(教授)及び中村英雄(職員)学生部部長の監督下にある甲南大学公式文化会において、それが受理されたことにより、○○○○君による横領がなされたとの虚偽の情報が関西一円の学内外に爆発的に広まってしまいました。

甲南大学学生部では、事件発生直後からの○○○○君本人からの被害の訴えが無視されたばかりでなく、被害者学生への安全配慮の重大な違反があり、○○○○君は甲南大学ハラスメント委員会へ被害を届けざるを得なくなりました。

実際には、横領の事実はなく、最終的には○○部部長もこれを認めているにも関わらず、その後の学生部及びハラスメント委員会における職員とのやり取りは、被害者を被害者として認めず実質泣き寝入りを促すもので、耐えがたい心的ダメージを被害者学生とその家族に与える結果となりました。

ハラスメント委員会委員長であった当時の副学長・中井伊都子氏(現学長)は、同委員会において「ハラスメント行為はなかった」との判断を行い、加害者学生たちへの懲戒処分もなされませんでした。事件発生から7カ月間に渡り、○○○○君は甲南大学に適切な対応を求め続けましたが、大学は、大学のブランドを守ることを優先し、大学組織によって事件は隠蔽されました。

 

2018年10月、○○○○君は、最終手段として、自身の尊厳を守るための自死を決行しました。「名誉棄損による精神的ダメージ(中略)甲南大学の対応の遅さにより神経が著しく削られ私は自殺します。」と遺書を記し、その被害の記録一式を残しています。

甲南大学において当時必死に甲南大学に被害を訴えていたにも関わらず、中井伊都子氏(当時副学長・現学長)ら大学幹部からは被害者として扱われず、高圧的な態度で泣き寝入りを強いられ、それまでの平和な学生生活は破壊され、結果的に、自身を名誉棄損からの尊厳を守る手段として、まじめな学生が抗議の自死に至りました。中井伊都子氏は不適切なハラスメント対応を行った大学側の中心人物の一人ですが、学生死亡の直後には学長に就任しています。そして、大学は、大学の不適切な対応のため学生自らが命を絶ったという事実があるにも関わらず、いまだこれを検証しようとすらしていません。

その一方で甲南大学当局は、事件当時学内「ハラスメント委員会」の委員長を務め、この事件について「ハラスメントではない」という結論を出した現学長中井伊都氏を先頭に、「人物教育を理念として掲げる甲南大学」と公言し、学生集めのキャンペーンを続けている。

例えば、以下は「大学コンソーシアムひょうご神戸」http://www.consortium-hyogo.jp/ の関連ページに掲載されている、昨年12月7日に行われた「賛助会員と加盟校の懇親会」の内容抜粋である。中井伊都子氏はこのコンソーシアムの理事長を務め、大学の宣伝(合同進学説明会等)にも利用している。

12月7日(水)18:00より神戸ポートピアホテルにて、『賛助会員と加盟校の懇親会』を開催しました。当日は、賛助会員企業28社49名、加盟校25校39名、神戸市長代理1名他97名にご参加頂きました。

【理事長挨拶】

先ず、甲南大学学長の中井伊都子理事長より開会の挨拶があり、「大学コンソーシアムひょうご神戸は、地域ひょうごで活躍する人材を育てていくため、ひょうご神戸で学ぶ学生たちの活動の場と学修の機会を益々豊かなものにするべく、産官学連携のプラットフォームとして今後も引き続き尽力する」との決意を述べられました。

理事長 中井伊都子氏の挨拶

最初に述べた「通知書」は上記の産官学連携の間の中心である兵庫県(知事)にも送付されている。