文科省、指導死児童についての初の実態調査へ (1/3)30年遅れた対策、「第三者委員会」のひどさ

  • 30年遅れた対策、「第三者委員会」のひどさ

去る3月3日のN H Kの報道https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230303/k10013997881000.html

によれば「教員による不適切な指導によって児童や生徒が自殺に追い込まれる、いわゆる『指導死』について、文部科学省が初めて実態の把握に乗り出す」(以下「…」は記事からの引用)ことがわかったということです。

 いわゆる児童同士、生徒同士のいじめ問題については、いまだに地方に丸投げ気味で不十分ですが、ある程度の「指導」(調査への介入や職員の派遣等)をしてきた文部科学省ですが、教員が絡む、或いは教員のいじめ・パワハラが原因の児童・生徒の「自死」事案に関しては、これまでは児童・生徒・若者自殺全体の統計に含めるのみで、その数や個々の事案の詳しい実態解明については殆ど無視・放置の姿勢を続けてきました。すなわち「毎年、児童や生徒の自殺の件数や当時の状況などについて、全国の教育委員会を通じて調査しているが、教職員による不適切な指導があったかどうかを回答する項目はなかった」ということです(例えば、文科省資料「いじめの状況及び文部科学省の取り組みについて」令和4年11月24日)。

資料2-1

 近年、特に部活動等での指導者の暴力により、多くの児童・生徒が自死に追い込まれる事件が頻発していることを考えると信じられない鈍い対応だと考えられます。このような対応は、いまだに一部の教員と父兄に残るに古い聖職論を隠れ蓑にしたものであり、教員自らが崩壊させた教育現場におけるサボタージュ・責任逃れ、或いは現場からの逃亡と言っても過言ではありません。

 この動きに関し「自殺した児童や生徒の遺族らは、教職員の不適切な指導によって自殺に追い込まれることを指導死と呼び、実態の解明を求める活動をして来ました」ということです。実際、ご子息の(教師からの暴行後の)自死をきっかけにほぼ30年前からこの問題に取り組んで来られた内海千春さん(全国学校事故・事件を語る会代表世話人)は、ご自身の経験も含め「多くの自殺や死亡事故で遺族は学校側から十分な情報提供を受けられず、その延長線上で設置される第三者委員会に不信感を抱くのは当然だ」としています。このような実態は2019年に同会と毎日新聞の共同で行われたアンケート結果からも明らかです:

学校事故アンケート 国は被害者に聴け 全国学校事故・事件を語る会代表世話人、内海千春さん – 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20191109/ddm/003/040/137000c

学校事故アンケート 寄り添わぬ第三者委 委員に市の元顧問弁護士 名乗らず、聞き取り調査 – 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20191109/ddm/003/040/136000c

ここで一番の問題は、「事故」に際して全国各地で設置されている第三者委員会で、「実態が明らかでなく課題が多い」とする遺族側に対し、行政は「対応はうまく行っている。批判的な声をあげているのは一部の被害者でしかない」と考えており、その溝は深いと言えます。

【上記の毎日新聞記事より引用】

子供の自殺が起きたときの背景調査の指針(改訂版)【概要】

子供の自殺が起きたときの背景調査の指針(改訂版)

 このタイミングで開始される国の実態調査においては、これまで置き去りにされてきた被害を受けた当事者側(自死遺族)側から話を聞くということをぜひ真剣に進めてもらいたいと思います。この点に関しては、これまでも再三当事者の方から文部科学省に要望がなされています:

「第三者委実態調査を」 学校事故、文科省に被害者の会 – 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20191213/ddp/041/040/016000c

学校事故・自殺めぐる第三者委は「被害者への配慮」を忘れてはいないか – 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20191108/k00/00m/040/305000c

「こうした中、文部科学省は(やっと)今年度分(令和4年度?)の調査から、自殺した児童や生徒の状況の選択肢に『教員による体罰、不適切指導』という項目を新たに設け、初めて実態の把握に乗り出す」ということです。教科書の検定問題や道徳教育には執拗に「指導」を続ける文科省がこと教職員が行ってきた差別・いじめ・パワハラには、何も「指導」が出来ないのはどういう理由があるのでしょうか?