20年間続くパワーハラスメント(甲南大学)(5)

まず、2022年に発生したパワハラ事案のこの間の経緯を簡略にまとめると:

1.2022年9月末、子供の手術で(講義の)担当者会議 (年2回前期と後期の初めに、昼休みの30分間行われる毎回同じ内容の会議) に欠席した件で、非常勤講師Sさんに、脅迫メールの送信と共に、15分に亘り暴言を吐き続けたK教授のパワハラ事案発生ー記事(4)参照

2.10月中旬、パワハラを受けた非常勤講師Sさんが学校側に報告

3.学校側の相談手続きを経て、11月末、Sさんが正式に監査部にハラスメント調査を申立てる。

4.2023年1月末、K教授の行為に対し、学校の調査チームによるパワハラ認定が行われた。

5.2月初め、K教授が不服申立て

6. 不服申立てによる再調査開始

7.6月中旬、再調査により、再びパワハラ認定

8.ハラスメント対応委員会設置

9.9月中旬、再発防止策が決定、パワハラ被害者のSさんに通知、一段落へ。

事の発生から一段落するまで、1年という長い月日がかかりました。

 ここまで長引いたのは、調査チームの「パワハラ認定」に対し、K教授が不服申立を行ったからです。この不服申立により、再調査チームが作られ、振出しに戻ってまた一から調査する局面になったとか。そもそも、K教授には、自分が非常勤講師にやっている行為がパワハラに該当するという認識が欠如しているので、不服申立をするだろうと予想はしていました。しかし、K教授の不服申立から再調査チームの「パワハラ認定」までかかった時間は、何と4か月(23年2月から6月)です。慎重を期するというのは重々承知の上でも、その間の被害者Sさんの心境はどんなものだったのでしょう。今まで何度もパワハラ事案で学校を騒がせ、裁判で平気で嘘を付くような人物の不服申立に、再調査の必要性が果たしてあったのだろうか率直に疑問に思います。

 4か月にも亘る再調査が終了し、6月に、再び「パワハラ認定」が下されてから3カ月が過ぎました。その間、「ハラスメント対応委員会」が設置され、再発防止策について議論が行われたようです。その内容について、9月中旬、Sさんに大学側から再発防止措置についての説明があり、書面を渡されようやく一段落しました。

学校側が提示した再発防止措置の大まかな内容は以下の通りです:

「パワハラ行為を繰り返しているK教授には、非常勤講師の採用や委嘱、時間割編成に一切関わらないものとする担当者会議にも出席できない。非常勤講師との直接の連絡・応対は禁止

 会議にK教授を出席させないこと、教授のポストにありながら採用や時間割編成を出来なくさせること等、学校側の苦悩が垣間見れるものと言えるでしょう。しかし、これらの項目が、いつまで、どのレベルまで守られるかに関しては、今後も注意する必要があります。

 何故なら2007年のパワハラ事案発生後、大学側は「非常勤講師との直接の連絡・応対は禁ずる」と約束しましたが、全く守られなかったからです。K教授はいつの間にか完全復活し、やりたい放題で、学校側も見て見ぬふりでした。

 果たしてK教授のパワハラ問題が、決着付く日は訪れるのでしょうか。K教授はこれまでの20年間同様、いずれ学校の目を盗んで、何等かの形で、弱い立場の非常勤講師にハラスメントをするに違いありません。K教授が完全に退場するまで、終わりのない戦いのような気がします。

 それから何よりも再発防止のために必要なのが、「ハラスメントの厳罰化」だと強く思います。K教授は「おれが非常勤講師をいじめても、どうせまた厳重注意で終わるだろう」と思っているからこそ、20年以上ハラスメント行為を続けられたのでしょう。2007年の1回目のパワハラ事案で、学校がきちんと対応し、「厳重注意」ではなく、もう少し厳重な処分をしていたならば、その後の被害者の数はここまで多くなかったと思います。その後のパワハラ裁判で敗訴しても、学校側はK教授に「厳重注意」しかしていない事実、世間離れしているこの軽い処分をしてきた学校側は、「パワハラを野放しにしている大学」という不名誉なレッテルを貼られても仕方がないでしょう引っ切り無しにパワハラ行為を繰り返し、大学の名誉を大きく傷つけたK教授に、今回こそ、パワハラ言動に相応しい処分を下してほしいと思います。今後の処分内容に注目すべきです。

 今回、大学側が、ある程度踏み入った再発防止措置を講じた背景には、K教授のパワハラ行為に遭っても、只泣き寝入りせず、勇気を出して学校や労基署に告発して下さった数人の非常勤講師の方々がいたからだと考えます。パワハラ訴訟を起こし、3年間、壮絶な戦いをした先生がいたからです。この蓄積があったからこそ、大学側も、もう野放しにはできないと判断したのだと考えます。

 今後、今までハラスメントを見て見ぬふりをしてきた甲南大学が、パワハラK教授にどんな処分を下すか、どのように生まれ変わるのか、引き続き注目していきたいと思います。

20年間続くパワーハラスメント(甲南大学)(4)

昨年、初めて本ブログに掲載した「20年間続くパワーハラスメント(甲南大学)」シリーズですが、最近新しい展開があったので、本来は春に掲載予定であった記事を(4)として、また最近の報告を(5)として順次掲載していきたいと思います。

甲南大学が、K教授のパワハラを容認していると言える根拠(経過)

  • 1999年、現K教授、甲南大学の非常勤講師として勤務開始
  • 2002年1月准教授(当時の名は助教授)に内定

内定をもらった途端から現K教授は豹変し、一緒に働いていた同僚である他の非常勤講師等に対するハラスメントがスタート、非常勤講師が学校に相談。にもわらず、2002年4月予定通り准授へ昇格

  • 2007年耐え兼ねた非常勤講師6人が「非常勤講師組合」に助けを求める。しかし、その後もパワハラ事案は後を絶たず。学校の調査でハラスメントがあったと結論。にもわらず、2011年4月准授に昇格
  • 2015年、K教授の長年によるパワハラが原因でうつ病を発症した非常勤講師が労働基準監督署に労災を申請、学校にパワハラ調査を申し立てる→残念ながら、うつ病の原因が必ずしもパワハラとは認められず。
  • 2016年別の非常勤講師がパワハラ民事訴訟を起こす。
  • 2019年パワハラ裁判でK教授敗訴。

にもわらず、2021年K授は所属長に昇格

 2007年と2016年の事案で、ハラスメントがあったと認定されたにもわらず、分はいつも最もい「重注意」のみ。「重注意」っていうのは、普通刻を何回か繰り返す社員に下すような分。これじゃ、校がK授を擁護しているにしか見えなくないでしょうか?つまり、パワハラしても良いですよ~と言っているのと同じじゃないでしょうか?

  • そして2022年、新たなパワハラ事件が起きた!

大学側がK教授を野放しにしているので、パワハラは決して止まない。K教授は相変わらず、非常勤講師に威圧的な態度を取っている。そもそも「ハラスメント」という概念すら眼中にないので、反省は不可能に近い。2020年にも、一人の非常勤講師が学校側に訴え、「再発防止を約束する」という書面をもって和解した。しかし、2022年新たなパワハラ事件が発生。その内容がまた「非常勤の声」に載った。一体何度目?パワハラという認識すらないので、これからもずっと続くこと間違いなし。大学側は、どこまで野放しにするつもりなんでしょう?

多くの非常勤講師を苦しめ、大学側の名誉を著しく傷つけたにも関わらず、未だ反省の欠片もないK教授に、今度こそ適正な処分が下られることを願っている。

「看護学校パワハラ撲滅プロジェクト」始動!

「すべての看護学生が夢や希望を持って看護師になれること」を目指します

1昨年来、北海道立江刺高等看護学院、千葉の木更津看護学院、岐阜県の看護専門学校などで教員による理不尽なパワーハラスメント、アカデミックハラスメントが相次いでいることは新聞やTVで度々報道されていますが、相次いで自殺者が出る事態に至っており、問題は深刻です。

報道例には

看護学院のパワハラ自殺、北海道が遺族に謝罪 母「許していない」毎日新聞 2023年5月16日

木更津看護学院 ハラスメントあった? 第三者委調査報告で会見 2022年12月28日 NHK千葉放送局 ちばweb特集

等があります。

現場のハラスメントに対する意識が極めて低い一方で、看護学校を管轄する都道府県には、小中学校・高校での児童・生徒のいじめに関する「重大事態」に類するものへ対応する機能や人材、あるいはハラスメントのガイドラインなどもほとんど無いという現状です。

このような状態を何とかすべく、最近の事案をきっかけに、この4月「看護学校パワハラ撲滅プロジェクト」が発足し、活動が開始されました。是非、下記ホームページを参照して頂ければ幸いです:

https://change-school.org/

詳細は上記HPに譲りますが、その最初の重要な活動の一環として、SNSを通じた看護学生の実態調査を行っています。また、その回答に基づくレポートが順次HP上で公開されています。

もし身近でそのような例を見聞きする方々がおられましたら、ぜひ調査にご協力頂くとともに、孤立している当事者・家族の皆様が、必要に応じて相談などをされることをお勧めします。

文科省、指導死児童についての初の実態調査へ(3/3)なぜ甲南大学学生自死事件に取り組み続けるのか?

(3)なぜ甲南大学学生自死事件に取り組み続けるのか?

本ブログでは、この間、いわゆる2018年度に起こった甲南大学における学生自死事件とその後について、今日に至る一連の経過を報告してきました。

【事件の経緯ー再録】 2018年3月、被害学生は甲南大学:学生部に部活動ハラスメント被害を訴えたが放置され、同4月には当時所属していた部の部長名で全ての甲南大学公認文化会ー関西圏10大学合同活動する団体へと「名誉毀損:誤情報」が流布された。秋宗秀俊学生部長(当時)による黙認で被害が拡大したため、同5/22、被害学生は甲南大学キャンパスハラスメント防止対応委員長(当時):中井伊都子氏に直接苦情処理を申し出た。同5/26には、被害学生母親が長坂学長(当時)ー吉沢理事長(当時)に被害救済を訴えたが被害学生の名誉回復には至らず結果的に放置された。同9/19、中井伊都子ハラスメント委員会委員長は、被害学生を学内に呼び出し「今もなお問題になっているとは言えないと判断している、学長から学生部長に対し部の指導指示が出されている、強制退部手続きの問題としての指導は行うが恐らく処罰はくださない」との説明(残された記録引用)があり、被害に対する名誉毀損救済は皆無となった。「誤情報拡散、強制退部はハラスメントではないのか、大学のどこに言えばいいのか」と訴える被害学生の声は無視され、大学側の高圧的な態度で事件は隠蔽された。同委が「ハラスメントと認定しない」との結論を出した約1か月後に被害者学生は命を絶った。「自殺に至った主な原因は3月に起こった部および文化会による名誉棄損による精神的ダメージ(中略)甲南大学の対応も遅く私は限界となりました。以上のことにより3月より精神が著しく削られ私は自殺します」との遺書を記し被害者学生が自殺したその翌年、中井伊都子氏は、甲南大学学長:甲南大学理事へと昇進。2023年現在に至るまで甲南大学側から遺族への対応は皆無で、第三者委員会設置拒否、文科省からの対応要請にも無反応のままである。

以下は2020年の新聞記事です:

甲南大生自殺、ハラスメント委調査「闇のまま」 議事録非開示 外部専門家参加せず  毎日新聞 2020年3月29日

「横領」誤情報で甲南大生自殺/上 ハラスメント認定せず 遺族が検証要望も拒否 /兵庫  毎日新聞 2020年4月5日

甲南大生自殺 ハラスメント委の調査過程、客観性乏しく不透明のまま  毎日新聞 2020年4月6日

「横領」誤情報で甲南大生自殺/下 調査過程、不透明のまま 客観性乏しい学内委 /兵庫  毎日新聞 2020年4月6日

(1/3)で述べた文科省の決定に関し、この事件の遺族は次のようにその思いを述べておられます:

【ブログ「管理人」様 **(弁護士)先生

今日の夕方のニュースで教師の不適切な指導による学生(児童・生徒)の自殺「指導死」の実体を文科省が調査するという速報が流れました。今回は高校生までが調査の対象ですが、ようやく山が動き出したように思います。(これまで30年近く)文科省へ遺族が被害を訴え続けてようやく今回の調査につながりました。当事者家族らとは、学校事故を語る会で何度かお話ししましたが、現在大学生の家族として声をあげているのは当方だけです、、、「大学が文科省の指導対象外である理不尽な事実」を是非取り上げて欲しいです】

また、

【私立大学の自殺者数が表に出て来ないのは、そもそも、大学側が外部に学生死亡の事実を隠蔽し、報告していないからです。】

とも仰っておられます。(2/3)の記事からも分かる通り、文科省は自死大学生に関する統計調査は、国立大学のみしかやっておらず、ましてや個々の事例に関し、詳細な調査は一切行っていません。前述の、関連団体による全国の国公市私立大学に関する調査も昨年度やっと2回目であり、回答率は約80%であることから、2割の(私立?)大学が調査要請を無視、あるいは無回答していることがわかります。以下の甲南大学の文書からは、おそらく甲南大学もこの種の調査には応じていない可能性が指摘できます。ましては、専修学校(看護学校など含む)に関しては、文科省以外の管轄でもあるので、さらに(全国的)統計などが無いのが現状かと思われます。

実際、代理人弁護士からは

【甲南の代理人から私になされた回答のうち、そもそも死亡事故について大学内には文書が存在せず、その理由として、報告する義務が無いからだとする文書を(もらっているので)それを添付しました。(以下に画像)】

という連絡もあります。まさに「無かったこと」として文科省とマスコミ・世間に都合の悪い(大学の評判を落とす)事実を隠蔽し続ける態度は「ハラスメントはなかったとする」大学当局の「結論」以降、全く変わっていません。

続いてご遺族は【文科省の指導死調査も大学は枠外に置かれており、指導死を行った人物の学長就任や耳障りの良い公言はどこからも正される事無く、被害者学生とその遺族は悲痛な泣き寝入りを現在も強いられています。文科省は(私立大学の自己採点:自治に任せて助成金や補助金支給の増額を検討するのではなく)、早急に大学指導死の実態調査を行い、大学において指導死を出した私立大学には、その責任を負うよう指導してください。よろしくお願いいたします】

と再度文科省への要望を述べられています。

 2年前の国会質問後には文科省は「指導した」と言っていますが、大学は何らそれに対する誠実な対応はしていず、相変わらずご遺族無視の学生の命の存在すら無かったかのような姿勢を続けるのみです。われわれはこの種の事案を粘り強く発信し現状を何とか変えるべく、文科省や各大学に引き続き訴えていきたいと考えています。

 もし身近に、似たような自死例をご存知あるいは経験され、大学当局や文科省にまともに取り合ってもらえず、無視(無かったことに)されたり裁判を思いとどまるよう説得されたようなご経験をお持ちの方は、是非情報をお寄せ下さい。古い事案でもこれからまだやれることがあるかも知れません。

文科省、指導死児童についての初の実態調査へ(2/3)増えている若者の自殺、調査範囲をハラスメント自死大学生、専門学校生にも速やかに拡大を!

 

(2)増えている若者の自殺、調査範囲をハラスメント自死大学生、専門学校生にも速やかに拡大を!

最近のニュース記事

「去年の全国で21,881人がみずから命絶つ児童・生徒は過去最多」

2023年3月14日NHKニュース

によれば、厚生労働省発表の確定値で、昨年(R4年=2022年)1年間の自殺者総数は21,881人、その内児童生徒の自殺者数は計514人(高校生354人、中学生143人、小学生17人)で、統計がある昭和55年(1980年)以降、初めて500人を超え、過去最多となったということです。厚生労働省は「子供や中高年男性で増えていて、各種相談支援をさらに進めるほか、会計省庁と連携して対策を進めたい」としています。

関係する背景(統計)

  • 若年層の死因に占める自殺の割合

 厚生労働省「人口動態統計」によると、R2年における我が国の年齢階級別にみた死因は、10~39歳(男女計)の全年齢階級で第1位が「自殺」であった。その割合は「10~14歳」では全死亡の約29%を、15~29歳では、50%以上を占め、「不慮の事故」や「悪性新生物」による 死亡を大きく上回った(下図)。とくにこの50%という数字は深刻に捉えるべきであろう。

  • 外国との比較

 世界保健機関の令和元年のデータによる と、我が国の15~24歳の自殺死亡率は経済協力開発機構(Organisation for Economic Co-operation and Development, OECD)加盟国38か国中、男性は第9位、女性は第7位 となった。なお、国によって一部欠損している期間も あるが、確認できた期間の傾向として、いず れの年齢階級においても日本は、韓国、アメ リカ及びカナダとともに、ヨーロッパ諸国 (イギリス、イタリア、ドイツ及びフランス) と比較すると高くなったことがわかっている。

  • 過去10年程(2009~2021)の児童生徒及び学生等*自殺者数の推移

*小学生は 「児童」、中学生と高校生は「生徒」、大学生と専修学校生等は「学生等」と表記。

最近のデータとしては次の2つの図表が挙げられる(少し古いが):

2011年の大津いじめ自殺報道以降、現在のコロナ禍中に至るまで、自殺者数、自殺率(10万人当たりの自殺者数)とも急激に上昇していることがわかり、その原因究明が早急に必要であるが、報道のあり方も関係している可能性がある。

上のグラフは、近年のこの上昇傾向が学生等(学生+専門学校生)の自殺者数にも同様に現れていることを示している。上昇が始まっている平成30年(2018年)はコロナ禍以前であり、やはりこの原因もはっきりしない。

また、大学生、専修学校生などの自殺についての統計には、

a) 令和 3 年度 国立・公私立大学死亡学生実態調査

b) 令和 3 年度 国立・公私立大学死亡学生実態調査ー結果まとめ

などがある。これまで国立大学に関する統計は存在したが、広く公私立大学(短期大学含む)にまで拡大された調査結果はどうも令和2年が初めてだったらしく、上記の報告は2回目(令和2年の実態を反映)のものである。資料a)の1ページ目を載せる:

これによると、回答があった932大学(学生数約280万人、回答率82.5%)のうち、死亡学生数は636人、自殺又はその疑い331人となっている。回答率約80%考慮すると、実際の自殺者数は約400人と推定できる。これらの調査は、問題意識をもつ関係者によって自主的になされた調査の結果であり、「結果まとめ」にも個々のケースについての詳しい報告は無い。本統計の関係者は詳細の報告を受けていないか、それ自体各大学に任され、明らかにさされていないと思われる。即ち、これまで、文部科学省は大学生の死亡や自死事件に関して、何ら調査をすることもなく、ましてやそれらの実態についての詳しい調査や原因究明に関しては、当事者=大学等に任せて放置してきたと言うことである。「大学の自治」に任せるという言い訳がこれまで度々都合良く使われたきたが、このブログでも散々述べてきたように、これらの問題に関しては、残念ながら大学あるいはその教職員等は自己保身や文科省対策のため事件の隠蔽を図るのみで、学問の府としての良識を期待することは到底望めない。それどころか、大学執行部は学生の自殺や覚せい剤関連の事案については、しばしば(特に地元の)マスコミにはかん口令を敷くことは日常茶飯事である。小中高校では、いまや普通に設置される、外部のメンバーが参加した自殺事案に関する第三者委員会は、大学についてはこれまで一度も設けられたことは無く、学内関係者のみの調査委員会が作られ、大学に都合の良い「結論」を出して終わりということが多い。

 文部科学省は、これまで置き去りにされてきた、ハラスメント自死学生・専門学校生の諸事案に対する調査を大学に強力に指導することから始め、第三者委員会の設置を促してその調査活動を具体化させ、委員会の報告・結論・提言に積極的にコミットするべきである。

 最後に、 大学生・専修学校生等の自殺をめぐ る状況(原因・動機)に触れておこう。少し古い(~2014)資料:

第2節 若年層の自殺をめぐる状況

によれば、次のような考察がなされている。

 ”大学生の原因・動機をみると、男性におい ては、「学業不振」、「その他進路に関する悩 み」、「うつ病」、「就職失敗」の比率が高い。 自分の将来の進路、就職、それらに大きな影 響を与える学業を悩みとするものになってい る。専修学校生等の男性の自殺者においても 男性の大学生と同じ傾向である。 平成26年の全年齢の完全失業率35が3.6であ るのに対して、15歳~24歳の年齢階級での完 全失業率は6.3であるように、若者の就職をめ ぐる環境が依然厳しい中で、就職や進路が大 きなプレッシャーになっていることがうかがわ れる。  女性の大学生や専修学校生等の自殺の原 因・動機をみると、大学生と専修学校生等と では、その両者には大きな違いはない。男性 の大学生や専修学校生等と比較すると、「うつ病」が高くなっている一方、「学業不振」、 「その他進路に関する悩み」、「就職失敗」は 低くなっている。 景気の変動に伴い就職状況が厳しくなった り、あるいは競争の中で、学業の成績や就職 が期待したものにならなかったりすること は、学生の努力だけでは避けがたい面がある。”

 現在(2023)においては上記理由のみならず、大学生自殺の原因として「指導死」(ハラスメント)もあるとの報告が、被害者学生の家族から文科者や自治体に伝えられている。当ブログ管理人にも被害者学生遺族からの悲痛な訴えが寄せられており、次回記事でその詳細を再度明らかにしていきたい。

 

 

文科省、指導死児童についての初の実態調査へ (1/3)30年遅れた対策、「第三者委員会」のひどさ

  • 30年遅れた対策、「第三者委員会」のひどさ

去る3月3日のN H Kの報道https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230303/k10013997881000.html

によれば「教員による不適切な指導によって児童や生徒が自殺に追い込まれる、いわゆる『指導死』について、文部科学省が初めて実態の把握に乗り出す」(以下「…」は記事からの引用)ことがわかったということです。

 いわゆる児童同士、生徒同士のいじめ問題については、いまだに地方に丸投げ気味で不十分ですが、ある程度の「指導」(調査への介入や職員の派遣等)をしてきた文部科学省ですが、教員が絡む、或いは教員のいじめ・パワハラが原因の児童・生徒の「自死」事案に関しては、これまでは児童・生徒・若者自殺全体の統計に含めるのみで、その数や個々の事案の詳しい実態解明については殆ど無視・放置の姿勢を続けてきました。すなわち「毎年、児童や生徒の自殺の件数や当時の状況などについて、全国の教育委員会を通じて調査しているが、教職員による不適切な指導があったかどうかを回答する項目はなかった」ということです(例えば、文科省資料「いじめの状況及び文部科学省の取り組みについて」令和4年11月24日)。

資料2-1

 近年、特に部活動等での指導者の暴力により、多くの児童・生徒が自死に追い込まれる事件が頻発していることを考えると信じられない鈍い対応だと考えられます。このような対応は、いまだに一部の教員と父兄に残るに古い聖職論を隠れ蓑にしたものであり、教員自らが崩壊させた教育現場におけるサボタージュ・責任逃れ、或いは現場からの逃亡と言っても過言ではありません。

 この動きに関し「自殺した児童や生徒の遺族らは、教職員の不適切な指導によって自殺に追い込まれることを指導死と呼び、実態の解明を求める活動をして来ました」ということです。実際、ご子息の(教師からの暴行後の)自死をきっかけにほぼ30年前からこの問題に取り組んで来られた内海千春さん(全国学校事故・事件を語る会代表世話人)は、ご自身の経験も含め「多くの自殺や死亡事故で遺族は学校側から十分な情報提供を受けられず、その延長線上で設置される第三者委員会に不信感を抱くのは当然だ」としています。このような実態は2019年に同会と毎日新聞の共同で行われたアンケート結果からも明らかです:

学校事故アンケート 国は被害者に聴け 全国学校事故・事件を語る会代表世話人、内海千春さん – 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20191109/ddm/003/040/137000c

学校事故アンケート 寄り添わぬ第三者委 委員に市の元顧問弁護士 名乗らず、聞き取り調査 – 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20191109/ddm/003/040/136000c

ここで一番の問題は、「事故」に際して全国各地で設置されている第三者委員会で、「実態が明らかでなく課題が多い」とする遺族側に対し、行政は「対応はうまく行っている。批判的な声をあげているのは一部の被害者でしかない」と考えており、その溝は深いと言えます。

【上記の毎日新聞記事より引用】

子供の自殺が起きたときの背景調査の指針(改訂版)【概要】

子供の自殺が起きたときの背景調査の指針(改訂版)

 このタイミングで開始される国の実態調査においては、これまで置き去りにされてきた被害を受けた当事者側(自死遺族)側から話を聞くということをぜひ真剣に進めてもらいたいと思います。この点に関しては、これまでも再三当事者の方から文部科学省に要望がなされています:

「第三者委実態調査を」 学校事故、文科省に被害者の会 – 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20191213/ddp/041/040/016000c

学校事故・自殺めぐる第三者委は「被害者への配慮」を忘れてはいないか – 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20191108/k00/00m/040/305000c

「こうした中、文部科学省は(やっと)今年度分(令和4年度?)の調査から、自殺した児童や生徒の状況の選択肢に『教員による体罰、不適切指導』という項目を新たに設け、初めて実態の把握に乗り出す」ということです。教科書の検定問題や道徳教育には執拗に「指導」を続ける文科省がこと教職員が行ってきた差別・いじめ・パワハラには、何も「指導」が出来ないのはどういう理由があるのでしょうか?

ご家族の代理人弁護士が文部科学省に要請書を提出(2023年1月)−甲南大学学生自死事件(2018年)

このブログでも報告して来たように、本事件のご家族と代理人は文部科学省に対し、この数年間、事件への誠実な対応に関し、甲南大学を適切に指導するようたびたび申し入れてきた。しかしながら、文科省職員と甲南大学職員との事務的なやり取りはあったであろうが(と信じたい)、甲南大学の姿勢には何ら変化はなく、相変わらずダンマリ(無視?)を決め込んだままである。

こうした状況を変えるべく、年明けの1月30日、代理人弁護士が文科省に対し、以下のような「通知書(対応の要請)」を送付した。文科省による早急かつ具体的な対応、すなわち甲南大学に対し、自死家族への一刻も早い誠実な諸対応をすべく指導することを強く希望するものである。

以下に「通知書」を掲載する:文科省宛「通知書」pdf版

文部科学省正面玄関

通知書(対応の要請)

文部科学省 高等教育局 学生・留学課厚生係 御中

前略 私は、神戸市東灘区にある私立甲南大学(学校法人甲南学園が設置)に通学していた○○○○君の母○○○○の代理人をつとめる弁護士です。貴省に対し、甲南大学に対し、以下のとおり、適切な指導をするよう要請します。

1 2018年、甲南大学に在学中の○○○○君が大学への抗議の自死を行い、その翌年の2019年には、甲南大学のウェブページに下記の内容が掲載されています。

すなわち、「Student First 教職員のための学生支援ガイドブック

【2019年改訂版】第4部 学生支援事例集」

https://www.konan-u.ac.jp/life/student_counseling/teachers/ において

  Q8. 脈絡のない言動をする不安定な様子の学生がいたとき

としてQを作成し、「統合失調症のような心の病が原因である可能性も考えられ、その場合は専門的な援助を必要とするので注意が必要です。」としたうえでの回答を掲載していますが、これは、亡くなった○○○○君本人及び遺族の感情を著しく損なうものであり、不適切であると考えますので、指導いただきたいと考えます。

2 ○○○○君は甲南大学に在学中に、別紙の経過を経て、抗議の自死をしました。未だに大学において、第三者による死亡の検証等は行われておりません。

この間、甲南大学関係者は、学生をハラスメント被害から救済するのではなく、「(○○○○君が横領した等という虚偽情報が学内に拡散したため他の文化部の入部を拒否された場面に関し)○○○○君から脈絡もなく、攻撃的に話をしたことから、あのような状況になったと思われる」等と発言し、○○○○君の必死の訴えを封じ込めようとしたこと、ハラスメント被害事態すら無かったとしました。

このような、被害者からの訴えを脈絡がない等と決めつける甲南大学組織の高圧的なハラスメント隠蔽の結果が、被害者学生を自死に至らせました。

3 生前には、被害者学生の発言をその真意を十分検討することもなく、ハラスメント被害を法テラスや弁護士にも相談していた○○○○君に対して、当大学は「脈絡のない発言」という言葉を用い耐え難い心労を与え、さらには、抗議自死の翌年に「話す内容が理解しづらく脈絡のない独り言のようである」場合に統合失調症の可能性があるなどとする上記の記述は、内容においても、ハラスメント対応問題点の根本的な差し替えが行われており、本人の尊厳を著しく傷つけるという点からも、極めて不適切であると考えます。

 この点、御省から、しかるべき指導をされたく本書を送付した次第です。

4 また、当該自死事案に関する遺族への対応について、令和4年3月14日付で、御省が「大学に対し、御遺族に対して丁寧に説明することなど、真摯に対応するように要請しております。こちらの要請に対して、大学からは、丁寧に対応していくとの回答をいただいております」とのご連絡をいただいておりますが、未だに大学側からは、何の連絡もなく、この点も引き続きしかるべく指導をしていただきたいと考えます。

以 上

添付資料(省略)

  甲南大学関係者による「何の脈絡も」ないと決めつけた発言の記録

  前回の御庁からの回答書

令和5年1月30日

また、事件の概要も再掲する:別紙「事件の概要」pdf版

兵庫県庁旧庁舎

【事件の概要】

○○○○君は、平成29(2017)年4月、甲南大学に入学し○○部に所属しました。

1年生にもかかわらず、学園祭企画を発案・成功させ、次年度の部長予定者となり、関西圏の10の大学で結成する課外活動団体である「△△会」の会長に就任するなど、統率力を発揮し真面目に活動したがゆえに、不運にも部内の上級生に嫌われる結果となりました。

 平成30(2018)年3月、甲南大学○○部の歴代部長を中心とした上級生は、○○○○君を一連の課外活動から排除する目的で、計画的なハラスメント行為に及びました。その内容は、甲南大学学園祭・平成29(2017)年11月に○○部が出店した模擬店の売上金を1年生の○○○○君が横領した等と経理上なんの根拠もないにもかからず、事実無根の誤情報を捏造し、その名誉棄損情報を○○部内に吹聴し、○○○○君は強制退部となりました。平成30(2018)年3月18日、甲南大学公認の○○部・部長名によって、○○○○君が会長を務める△△会宛に、「○○○○君を強制退部とした」との通知を発しました。

○○○○君は、直ちに甲南大学学生部へ被害を訴えたにもかかわらず、甲南大学の適切な対応が行われず、被害はより拡大していきました。

○○部長は、部長名で甲南大学公認の全文化活動団体と任意活動の各種団体に「入部拒否の要請」を発しました。同年4月11日、甲南大学秋宗秀俊学生部長(教授)及び中村英雄(職員)学生部部長の監督下にある甲南大学公式文化会において、それが受理されたことにより、○○○○君による横領がなされたとの虚偽の情報が関西一円の学内外に爆発的に広まってしまいました。

甲南大学学生部では、事件発生直後からの○○○○君本人からの被害の訴えが無視されたばかりでなく、被害者学生への安全配慮の重大な違反があり、○○○○君は甲南大学ハラスメント委員会へ被害を届けざるを得なくなりました。

実際には、横領の事実はなく、最終的には○○部部長もこれを認めているにも関わらず、その後の学生部及びハラスメント委員会における職員とのやり取りは、被害者を被害者として認めず実質泣き寝入りを促すもので、耐えがたい心的ダメージを被害者学生とその家族に与える結果となりました。

ハラスメント委員会委員長であった当時の副学長・中井伊都子氏(現学長)は、同委員会において「ハラスメント行為はなかった」との判断を行い、加害者学生たちへの懲戒処分もなされませんでした。事件発生から7カ月間に渡り、○○○○君は甲南大学に適切な対応を求め続けましたが、大学は、大学のブランドを守ることを優先し、大学組織によって事件は隠蔽されました。

 

2018年10月、○○○○君は、最終手段として、自身の尊厳を守るための自死を決行しました。「名誉棄損による精神的ダメージ(中略)甲南大学の対応の遅さにより神経が著しく削られ私は自殺します。」と遺書を記し、その被害の記録一式を残しています。

甲南大学において当時必死に甲南大学に被害を訴えていたにも関わらず、中井伊都子氏(当時副学長・現学長)ら大学幹部からは被害者として扱われず、高圧的な態度で泣き寝入りを強いられ、それまでの平和な学生生活は破壊され、結果的に、自身を名誉棄損からの尊厳を守る手段として、まじめな学生が抗議の自死に至りました。中井伊都子氏は不適切なハラスメント対応を行った大学側の中心人物の一人ですが、学生死亡の直後には学長に就任しています。そして、大学は、大学の不適切な対応のため学生自らが命を絶ったという事実があるにも関わらず、いまだこれを検証しようとすらしていません。

その一方で甲南大学当局は、事件当時学内「ハラスメント委員会」の委員長を務め、この事件について「ハラスメントではない」という結論を出した現学長中井伊都氏を先頭に、「人物教育を理念として掲げる甲南大学」と公言し、学生集めのキャンペーンを続けている。

例えば、以下は「大学コンソーシアムひょうご神戸」http://www.consortium-hyogo.jp/ の関連ページに掲載されている、昨年12月7日に行われた「賛助会員と加盟校の懇親会」の内容抜粋である。中井伊都子氏はこのコンソーシアムの理事長を務め、大学の宣伝(合同進学説明会等)にも利用している。

12月7日(水)18:00より神戸ポートピアホテルにて、『賛助会員と加盟校の懇親会』を開催しました。当日は、賛助会員企業28社49名、加盟校25校39名、神戸市長代理1名他97名にご参加頂きました。

【理事長挨拶】

先ず、甲南大学学長の中井伊都子理事長より開会の挨拶があり、「大学コンソーシアムひょうご神戸は、地域ひょうごで活躍する人材を育てていくため、ひょうご神戸で学ぶ学生たちの活動の場と学修の機会を益々豊かなものにするべく、産官学連携のプラットフォームとして今後も引き続き尽力する」との決意を述べられました。

理事長 中井伊都子氏の挨拶

最初に述べた「通知書」は上記の産官学連携の間の中心である兵庫県(知事)にも送付されている。

20年間続くパワーハラスメント(甲南大学)(3)

公判概要(後半)(引き続き新世紀ユニオン「委員長のブログ」からの引用)

この裁判は甲南大学とK教授を被告とするが、甲南大学側はほとんど争わず、書面も出さない。K教授側は全面的に争い、判決まで行くすう勢にあったが、この勇気ある証人C先生の登場で長年非常勤講師にパワハラを繰り返してきたK教授が敗訴することは決定的となった。原告のBさんは判決を望んでいたので、解決金が高額なものでない限り、裁判官が考えている和解が成立する可能性はなくなった。

 また、原告は2017年2月17日に甲南大学キャンパスハラスメント調査委員会の調査報告書の「提出命令申立書」を提出していた。この調査報告書は原告のB先生が個人で大学に開示を求めて拒否されていたものである。この「調査報告書」が2017年3月に開示された。

  • 2018年12月、大阪地裁で判決、部分的勝利!

判決主文は

1 被告らは、原告に対し、連帯して55万円及びこれに対する平成28年9月9日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。

2 原告のその余の請求を棄却する。

3 訴訟費用は、これを4分し、その3を原告の負担とし、その余を被告らの負担とする。

4 この判決は、第1項にかぎり、仮に執行することができる。

との内容であった。

 部分的な勝利に終わった原因は1名の証人が尋問の段階で証人に出るのをドタキャンしたことによる(証人尋問で原告のBさんは2名の証人を用意し陳述書も出来ていた。ところが不思議な事に、原告弁護士が「1名でよい」といい、この結果裁判官が被告側の証人の証言を採用した)。

 B先生は支持者と相談した結果、原告としては費用等の面から控訴しなかった。被告の内甲南大学は判決を受け入れるとの意向が弁護士に伝えられたが、パワハラの調本人である被告のK教授は高裁に控訴するとともに、金40万円の保証金を積んで強制執行の停止を申請し、裁判所はそれを認めた。高裁ではK教授の控訴人側との争いとなったが裁判の中で甲南大学側が提出した調査委員会報告は、K教授のパワハラを部分的に認めており、この点に限り勝訴となった。被告の甲南大学側が控訴しなかったのもこの報告がパワハラを部分的に認めていたためであろうと推測できる。

  • 2019年5月、大阪高裁で勝訴判決!

 甲南大学K教授の権威主義に基づくパワハラについて、大阪地裁での一部勝訴事案で、一方の甲南大学側が判決を受け入れ、慰謝料を支払ったのとは対照的に、他方の被告側のK教授が控訴した事案の判決が、5月17日大阪高裁であった。(この事案では被控訴人側は代理人なしで闘った)。

 この控訴審では、K教授は非常勤講師達に白紙の紙に署名させたうえで証拠を偽造し、パワハラを否定する戦術に出てきたが、証拠の偽造に反発し怒った何人かの非常勤講師が勇気を奮い起し、陳述書を提出したことが勝訴につながった。判決は、主文「本件控訴を棄却する、訴訟費用は控訴人の負担とする」という、被控訴人(=パワハラの被害者のB先生)の勝訴となった。

 

  • 甲南大学に団体交渉を申し入れ

 2019年7月、ユニオン側は団体交渉申し入れ書を送付した。大学への団体交渉はたいてい時間が取れる夏休みになる。それはこちらの参加希望者も大学関係の組合員が多く、夏休みが都合がよいと判断したからである。

団体交渉の議題は、大阪地裁判決ならびに高裁判決の確定を受けて、パワハラの再発防止、並びに原告側の証人となった、また陳述書を提出した非常勤講師への報復の阻止等になる予定だった。

 

申し入れを撤回!?

しかし、甲南大学のコンプライアンス担当中井 伊都子 氏より、組合員の加入通知書を求められたので、やむなく団体交渉申し入れを撤回した。ユニオン側が送った書面の内容:

2019年7月14日

神戸市東灘区岡本8-9-1

甲南大学副学長

コンプライアンス担当

中井 伊都子 殿

 

 

大阪市福島区鷺洲3丁目9番13号

新世紀ユニオン

執行委員長 ***

 

通知書

2019年7月8日付け貴大学に申し入れました団体交渉は、当ユニオンの組合員であるB先生を原告とする大阪地裁平成28年(ワ)第8478号 損害賠償事件の判決について貴大学は争うことをしませんでしたが、同じく被告の貴大学のK教授は大阪高裁で敗訴し、高裁判決はすでに確定しています。

当ユニオンが貴大学に団体交渉を申入れたのは、このパワハラ事案の再発防止と事案の争議を終結させ、委員長のブログ上の貴大学関連の記事の削除を行うための手続きであり、他意は有りませんでした。当ユニオンは組合員やサポーター組合員が貴大学に何人いるかなどは現時点で公表できません。

したがって貴大学が既に退職している***氏以外に、当ユニオンの加入通知書を求めても現段階では期待に応えられません、つまり労使関係を証明できません。それゆえ、今回の団体交渉申し入れを撤回することとします。

当方は、貴大学の立場上ネット上に甲南大学関連の記事が残る事態はよくないと判断し、団体交渉を申入れたものであり、貴大学が団体交渉を望まないのであれば、決して無理強いするものではありません。

なお、当ユニオンは団体交渉以外の交渉は行わない決まりになっており、したがって団体交渉以外の交渉は致しません、ご了承下さい。なお、この書面への返信は必要ありません。以上

20年間続くパワーハラスメント(甲南大学)(2) 

 

  • 2002年以降現在まで、K教授によるハラスメント行為は止んでいない!

具体的には:(項目別を優先、必ずしも時系列ではない)

1. 以前のパワハラ事案で、非常勤講師に個人的にメールや電話をしてはいけないルールを決めたにも関わらず、なりふり構わず続けている。

2. 少しでも自分の気に入らない行為(翌年度の要望調査に、現の週2回出講から1回に変更したり、K教授が会長を務める学会に出席しなかったり)をした講師を研究室に呼んで白紙を渡し、その場で「辞職願」を書かせる。

3. 一人の非常勤講師宛てのメールを、自分の権威・怖さを示そうと、故意に非常勤講師全員に転送し、恐怖を与える。

4. 非常勤講師に自分の前で、模擬授業をさせる。教え方が下手だと言いがかりをつけ怒鳴る。また、模擬授業の際、いきなりキレてマーカーを投げる。

5. 非常勤講師に、授業ごとに毎回授業報告書を書かせ、提出させる。

6. 翌年度授業調査に関する要望欄に「できれば〇〇科目を担当させて頂きたい」と書いただけで、電話して怒鳴る。

7. 自分が会長を務める「○○学会」への入会を強要する。学会に出席しない非常勤講師に嫌がらせをする。ある講師は、夜8時頃研究室に呼び出され、北区の自宅から1時間かけて甲南大学K教授の研究室まで行ったが、K教授は不在で何度も電話をしたが出なかったと言う。その後もこの件に関し、何の弁明も謝罪もない。

8. 担当者会議ごとに、名指しはしないものの、必ず非常勤講師の授業に関して非難・叱責をする。例えば、「読解の授業なのに、会話をする先生がいる」、「シラバス通りにしない先生がいる」、「授業で歌を教えている先生がいる」など。そもそもこれらのコメントもでっち上げかもしれない。

9. 担当者会議の際、些細なミスをした一人の講師をみんなの前で非難する。また、担当者会議に、やむを得ない事情で欠席した非常勤講師に「どんな事情であれ、欠席した者は今後措置を取る」と脅す。

10. 学生評価が悪かったという嘘をつき、授業数を減らす。

11. 妊娠した先生に、年度の途中で妊娠したら辞めることになっていると嘘をつく。

12.  非常勤講師に「お前には能力がない」、「お前を首にする」という発言を繰り返す。

13. いきなり教室に押しかけて来たり、突然電話して研究室に来るように命令する。

次項で述べる2016年に起こされたK教授のパワハラを告発する裁判に関して:

14. パワハラ裁判で、パワハラはあったと事実を述べた非常勤講師に、巧妙かつ陰湿な手口で(授業の)コマ数を減らさざるを得ないように仕向ける。

15. パワハラ裁判の時、非常勤講師を一人ずつ研究室に呼び、争点となったメールを受信していない旨を記した文書にサインしろと、証拠隠滅を図る。

まさに「やりたい放題」?である。大学は管理能力ゼロなのだろうか?

 

  • 2016年、勇気ある一人の非常勤講師(Bさん)が訴訟を起こした!

公判概要 前半(新世紀ユニオン* 委員長ブログ**から引用。次の記事で概要後半、詳細な中身を示す予定)

*https://21c-union.com/

**http://shinseikiunion.blog104.fc2.com/

2015年、非常勤講師Bさんは2ヶ月にわたるK教授によるパワーハラスメントを受け、体調を崩して退職させられた。加害者がなんの処罰もされず、自分が被害を受けただけの結果の不当性に怒りが湧き、甲南大学に質問・パワハラの調査報告書の開示などを求めた。しかし甲南大学はパワハラ調査報告書の開示を拒否。加害者には注意だけ、被害者は退職という、被害者救済の視点が微塵もないことに怒りを覚え、2016年8月、Bさんはやむなく大阪地裁に損害賠償請求訴訟を起こした。この間大学指導部はこのK教授を放置。

この提訴に対し、10月、甲南大学側から不可解な答弁書が出る:K教授のハラスメント行為と使用者責任を認めながら、「その余は争う」との態度を示す。すなわち、「原告は自主退職で賃金を失ったのであり」逸失利益については「因果関係がない」として争う、としている。K教授の弁護士からも答弁書が出るが、「認否反論の準備ができていない」として、追って準備書面で行う、として認否を行わず。11月、K教授側の認否(=準備書面1)が出る。パワハラを「全面否認・争う」内容。

2017年2月、裁判官から和解の提案有り。甲南大学は裁判官に「新世紀ユニオンが委員長のブログに書くから裁判書面は提出しない」と表明したぐらい早く終わらせたい様子。大学はパワハラについても管理責任も認めているので和解で裁判を終わられたい意向のよう。できれば原告が求めている「調査報告書」も開示したくないと思われる。

K被告側の主張は、教授と非常勤講師の関係を労働契約に基づく業務上の指揮命令権として捉えており、パワハラも業務命令として正当化している。原告の「非常勤講師と言えども、独立した教育者であり、教育権があるし、人格権を侵害するハラスメントは指導ではない、パワハラである」との考えと真っ向から対立している。

2017年3月、原告側の陳述書(証人のC先生)提出:この陳述書はキャンパスハラスメントを全面否定しているK教授の主張を打ち砕く決定的内容で、その赤裸々な陳述書が示しているのは甲南大学が加害者のK教授を擁護してきた姿勢の誤りを明らかにする内容でもある。

陳述書の内容:例えばK教授が、多くの先生が「過去に辞めていったこと」(に関し、)「忠実でないなら辞める勇気を持たなければならない」という趣旨の発言をしたこと。各非常勤講師が模擬授業をすると、K教授のコメントは授業内容とは関係の無いもので、大勢の前で教師の癖を指摘して恥をかかせるようなものであったこと。K教授の言動が高慢で、とても威圧的であったこと。突然マーカーを放り投げるなどするので、K教授と働く多くの非常勤講師が「多大な恐怖心を抱いていた」ことなどが記述されている。

大阪地方裁判所・高等裁判所

20年間続くパワーハラスメント(甲南大学)(1)

最近、甲南大学における新たなパワーハラスメント事件の通報と告発が本ブログにありました。その当事者Sさんによると、この事案の根っこは何と20年前に遡ることができ、加害者教員は一度裁判で敗訴したにもかかわらず現在もハラスメントは続いており、被害者も相当な数に登るようです。

われわれは、この常態化した悪質なケースの詳しい経緯を紹介し、その実態の徹底的な暴露・告発を進めたいと思います。そして、その案件の本質的解決(加害者の退場と職場の正常化)をめざします。

  • 甲南大学専任教員であるK教授は、2002年准教授だった時から多数の非常勤講師へのパワーハラスメントを続けていた。その結果、まず2007年、耐え兼ねた非常勤講師数人が「関西圏非常勤講師組合」(以下「組合」)に助けを求めた。

 ここで、当時の「組合」の機関誌を引用する:

 

関西圏大学非常勤講師組合機関紙「非常勤の声」第12号

  • 2008年甲南大学側と「組合」側が話し合い、(一旦)パワハラ問題は決着(2008年4月1日)

「組合」の見解は:

甲南大学で 6 年前から専任教員Kによって複数の非常勤講師へパワーハラスメントが行われ、被害者である組合員 Aさんの訴えにもとづいて、組合が大学側に調査と適正な処分を要求していた問題で、2007年2月の団体交渉で、大学側は調査委員会の設置を約束していたが、2008 年3月13日にその最終報告が組合に対して行われた。大学は組合の申し立てをすべて事実として認め、非常勤講師 A さんに謝罪するとともこの専任教員を懲戒処分にしたと報告した。

また、このパワハラ問題の被害者であり、今回の調査に協力をしてくれた元非常勤講師の人たちに対しても、大学から報告と謝罪をする予定であることを明らかにした。

こうした問題は再発防止策をとることが重要であり、これについても組合が要求していたが、

1 .非常勤講師との話し合いの席には可能な限り第三者に同席してもらうこと。

2.「減ゴマ・雇い止め」もしくは「減ゴマ・雇い止めを連想させる表現」

(たとえば「いっしょに仕事ができない」とか言った表現)を不用意に用いないこと。

3.減ゴマ・雇い止めを非常勤講師にお願いしなければならない事態にいたった場合には、教授会に諮り、非常勤講師にその理由を十分に伝えた上で了解を求め、処理を進めること。

4.専任教員 Kは A 組合員に文書で謝罪すること。

以上の 4 点が確認された。

専任教員が自分の好悪の感情や、自分の言いなりになるかならないかというような基準で非常勤講師の担当コマ数を増やしたり減らしたりすることから生じる減ゴマ・雇い止めのトラブルが後を絶たない。

そもそも専任教員には人事権はないのだが、専任教員は非常勤講師の担当する授業をコーディネートすることから、専任教員の中にはあたかも自分が人事権を持っており、好きなように非常勤講師の担当を増やしたり減らしたりする権限を持っているかのように錯覚している場合がある。それがこうしたトラブルの原因になっている。

大学自身が、非常勤講師に授業を担当させるということは、有期雇用契約にあたるということを正しく理解することが必要であるのは言うまでもないが、さらに専任教員のさじ加減ひとつで非常勤講師の雇用を左右できるものではないということを、専任教員にきちんと教育しなければならない。

 

「非常勤の声」第15号

  • しかしそれ以降も、組合と大学側が合意した4項目は守られて来なかった!この間ずっと大学当局はこの教員Kを擁護し、パワハラを容認!

合意が無視されてきた具体的な状況は以下のようであった:

1 .非常勤講師との話し合いの席には可能な限り第三者に同席してもらうこと。

⇨担当者会議に、センター長と事務室の方一人が同席しているが、K教授が非常勤講師を理不尽な理由で叱責しても誰も止めに入らない。まったく同席する意味がない。

2.「減ゴマ・雇い止め」もしくは「減ゴマ・雇い止めを連想させる表現」(たとえば「いっしょに仕事ができない」とか言った表現)を不用意に用いないこと。

⇨担当者会議に、体調不良と子供の手術で欠席せざるを得なかった非常勤講師にK教授は「どんな事情であれ、会議に欠席した者には僕なりの措置を取るしかない」と脅した。全く変わっていない。つまり、反省していない。

3.減ゴマ・雇い止めを非常勤講師にお願いしなければならない事態にいたった場合には、教授会に諮り、非常勤講師にその理由を十分に伝えた上で了解を求め、処理を進めること。

⇨教授会に諮られたことは一度もないと思われる。先にK教授が直接非常勤講師に電話をかけ、「時間調整上、仕方ない」と言うので、講師は受け入れるしかない。その後、K教授が事務室に連絡し、事務室から非常勤講師にメールが来る。

4.専任教員 K は A 組合員に文書で謝罪すること。

⇨K教授からの謝罪は何の意味もない。この合意が成された2008年以降も、パワハラ行為が止むことはなかった。むしろ、更にエスカレートしている。K教授は勿論のことそれを放任した学校側にも管理責任が問われる。