甲南大学学生自死事件(2018年)の責任者は誰か?

甲南大学被害者学生は、なぜ、どのような経緯で、死ななければならなかったのか。甲南大学で、学生へのハラスメント被害はどのようにして隠蔽されていったのか。

今後の学生が安心して過ごせる学校となるために、学生を死に至らせた甲南大学の不適切な対応を改めて糾弾せざるを得ない。

 被害者学生の遺書には「自殺に至った主な原因は、(中略)文化会による名誉毀損などによる精神ダメージです。(中略)甲南大学の対応も遅く私は限界となりました。以上のことにより3月より精神が著しく削られ私は自殺します。」と記されている。(遺書に名前記載がある)加害者学生への適正な処分も大学からは行われていない。事件隠蔽の中、甲南大学は被害者学生死亡のわずか5日後、半年を切った100周年を盛り上げるキャンペーンを大学HPでアナウンスし(下1枚目写真)、更に約1ヶ月後には文化会表彰式:祝賀会を開催しており(下2枚目写真)、在校生に死者を出した当事者・責任者として何の反省も無いどころか事件の無視・隠蔽をしている。
 
 しかしながら、抗議自死の翌年(2019年)、ハラスメント対応当事者である中井伊都子氏は、甲南大学の学長就任、同時に国連人権理事会諮問委員にも就任している!自分の大学の学生の人権さえ守れない人物がどうして国連人権関連組織の諮問委員なのか?なお、歴代甲南大学学長(長坂氏、中井氏)の定番挨拶締めの言葉として「是非とも、甲南関係者からの苦言、提言、ご意見をよせていただきたい。皆さまのご意見に耳を傾けて人物教育してまいります」という文言がある。事件当時、それを信じた被害者学生と家族は、どれだけ甲南大学側に直訴したことか。(甲南大学/中村英雄氏、秋宗秀俊氏、中井伊都子氏、長坂悦敬氏、父母の会経由で吉沢秀成氏、ハラスメントメント委員会の複数教授陣、中村圭吾氏、その他事務員らに直訴)。しかし、逆に圧迫面談で神経を削がれ無駄に時間ばかり引き延ばされた末、見殺しにされて抗議の自殺に至ったのである。その後の遺族からの言葉も無視されたままである。

当該学生が所属していた文化会表彰式:祝賀会(当該学生被害抗議自死後1ヶ月未満で開催)(前列左から、1人目:秋宗秀俊(元文化会学生部長)、4人目:長坂悦敬(元学長)、5人目:吉沢秀成(元理事長)

 甲南大学が公言している「人物教育」とは程遠いこれらの対応は社会的に不適切であり、被害者学生の「人権」は今現在も踏み躪られたままである。被害者学生と遺族にとっては、遺憾以上の気持ちで、これまでの経緯は命に関わる辛い「精神的虐待」である。2019年の一連の新聞報道、2021年5月国会での発信(参議院文教委員会での質問)-文科省大臣答弁(本ブログバックナンバー2021年6月6日記事参照)の後も、風化による泣き寝入りを待つだけの当大学の姿勢を、元在校生の家族として大変恥ずかしく思う。2021年12月に甲南大学に向けて出された文科省からの「遺族に真摯に対応するように要請しております」という通達すら大学当局からは無視されたままである。これらを考えると、被害者学生の遺族は上に明らかにした大学執行部・幹部らの責任をどこまでも追求し続けると共に、そもそも「大学自治」自体に問題があり、重大なアカデミックハラスメント事件を適切に解決できない(私立を含む)大学に対しては「被害者学生の権利を守る法」を国会において是非早急に整えてもらいたいと考えている。

甲南大学から(学生死亡後4年経って)初めて遺族に封書届く!

①甲南大学から被害者遺族への手紙: 

 4年放置後にやっと届いた紙一枚!?

2018年の甲南大学によるハラスメント被害者である学生の死亡に対し甲南大学は自死学生への最低限の処理も放置してきた。最近、その事実を遺族が(全国)大学生活共同組合に連絡したところ、甲南大学から、(学生死亡後4年も経って)初めて遺族に封書で手紙が直接届いた。その内容は、「学生カードに入金されている残高を返金する」というもので、所定の用紙が入っていたが、添えられた手紙が遺族に送付するには全くふさわしくないイラスト印刷の紙片であった。

甲南大学から最近送られてきた「紙片」

この4年間、甲南大学から学生死亡に対する弔意は一切皆無で、それ自体著しく常識が欠けているが、今度は、大学生協から送付されたメッセージ用紙が、遺族に全く配慮のないイラスト付のものであり、遺族の気持ちをさらに逆なでしている。当ハラスメント事件は2021年国会で問題となり(本ブログ記事)、その後文科省から甲南大学へ、「遺族に対して真摯に対応するよう要請しております」という文章が出されている。その文科省要請に「はい」と甲南大学側は返答したものの、その後も放置を続けていることは許せない行為である。抗議自死した元在校生やその遺族には文科省の要請をも無視した厚かましい恥知らずな姿勢を示す一方で、高校生、新入生・在学生やその父兄、OBの教員、財界人には、恣意的な誤った薔薇色のイメージのみを宣伝して学生集めに汲々としている。まさに、大学広報内容と遺族に対する態度の間には甚だしいギャップがあり、この「恐ろしい二枚舌」で世の中に偽りの大学像を発信し続けている(最近の大学HPでも顕著)

②有識者会議を経た「学校法人制度の法改正」への文科省の動き

最近、文科省有識者会議の一つでは、次のような議論がなされている:

「学校法人制度の概要及び私立学校法の改正について」(令和4年度学校法人監事研修会)

https://www.youtube.com/watch?v=eLGiHaYHZeQ(資料)

このyoutubeから抜粋して、少し述べたい:

資料17ページ

(赤枠部抜粋)

学校法人における自律的なガバナンスの改善に資する仕組みを構築するため、理事畏の解職に関する規定の追加を検討するなど、社会の変化を踏まえた学校法人制度の在り方について不断の見直しに努めること。また、学校法人の不祥事や不正等が繰り返されることのないよう.これらに対する告発が隠蔽されずに適切に聞き入れられる仕組みの構築等、より実効性のある措置について速やかに検討すること。

衆参両議院の委員会において、以上のような附帯決議がなされたにもかかわらず、甲南大学では4年前の学生自死事件に関し、依然として何ら誠実な対応をしていない。そもそも、当時「ハラスメント委員会」を主導し、当該学生を抗議自死に追い込む、「ハラスメントではない」という結論を導いた人物(中井伊都子氏)がなぜその後、常任理事、学長に就任できるのか?遺族の悲痛な声が国会に取り上げられても学内の誰もこのことを指摘し問題化出来ないのか?公共性・公益性を有する学校法人は社会に説明責任を果たす必要がある。

中井伊都子氏近影

私立大学法人では不祥事発生の背景となるガバナンス不全の構造的リスクがしばしば見受けられ(資料p19)、それゆえに法律の成立いかんにかかわらず、今後この法人=甲南大学が社会の信頼を得るためにも改革を先んじて取り入れてほしい(資料p21)と考える。

資料19ページ
資料21ページ

私学ガバナンス会議の議論に関連し、家族が文科省に申し入れ―甲南大学事件―

最近相次ぐ私立大の不祥事(理事長が逮捕された日本大学の事件を含む)を受け、私立大学のガバナンス強化をめざし、いわゆる「私立学校法改正案」が昨年から文科省の有識者会議で議論されてきた。まず20年1月に設置された有識者会議は21年7月に改革会議となり、12月に改正案を示したが、私学側の猛反発に会い、今年1月新たな会議*を作った。

*学校法人制度改革特別委員会https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/daigaku/010/index.html

3月に明らかにされた報告書案では、

  • 理事会に対する評議委員会の監督権限の強化
  • 私立学校法に贈収賄罪や特別背任罪を新設すること

が盛り込まれている。すなわち、理事長への権限集中や評議委員会(現行制度では理事長に諮問機関)のチェック機能形骸化を防ぐ仕組みづくりを提言している。

https://news.yahoo.co.jp/articles/4cd329c30246204c05a29b7683340b28387d4df1

具体的には、理事の解任について評議委員会の関与を強化し、法令違反など問題のある理事は評議委員会が理事会に解任請求し、放置された場合は訴訟を起こすことが出来るとした。また、これまで認められてきた、理事と評議員の兼任も禁止する。

これに関しては、早大総長の田中愛治氏、元衆議院議員の塩崎恭久氏、東大大学院教授の両角亜希子氏がそれぞれの立場から意見を述べている次の記事が興味深い。

https://digital.asahi.com/articles/ASQ1G2W2XPDFUPQJ01C.html?oai=ASQ5B53M1Q5BUTIL00Q&ref=yahoo

 学校法人制度改革特別委員会第4回会議には、全私学連合から「学校法人ガバナンス改革に関する考え方」なる文書が資料として提出され、

それについての説明を上記田中愛治氏が会議の中でも行っている:

第4回会議議事録

われわれが注目する文言は、この資料の「なお書き」の中にある、以下の文書である:

○ 理事に法令違反もしくは社会的規範から逸脱した行為があったと相当の根拠をもって疑われる事態が発生した場合、もしくは監事による理事会への是正勧告に理事会が従わないなど理事会が自浄作用を発揮出来ない場合には、評議員会が理事長または理事、もしくはその双方を解任する権限を認める。

同様の項目が評議員、監事に対しても続き、いわゆる「三すくみ」の仕組みを提案している。両角亜希子氏の上記論評によれば、大学に自浄作用が期待出来ないとき、或いは行政指導で改善が見られない場合、文科省は「立ち入り検査や、理事・幹事の退任勧告といった措置を取ることができる」ということです。

しかしながら現状では、問題のある大学幹部に対する文科省からの言葉のみによる指導には強制力がありません。

上記のような議論の進展を前提にすれば、既に各地の私学で数多く頻発している様々な不祥事に対し、本法律を先取りする形での文科省からの強い働きかけ・指導があって然るべきではないだろうか?

 

大学ハラスメント被害学生の家族による切実な申し入れは以下のような形で行われた:

文部科学大臣、及び学校法人制度改革特別委員会委員各位 殿

 

 大学理事の社会通念に反する誤りが是正されていない事実を、大学ハラスメント被害抗議自死学生遺族としてご報告します。新聞社の調査報道による根拠のある情報、遺族の言葉として、甲南大学において学生を自死へと追い詰めた人物が学長・理事に就任し、大学から学生の死への対応が一切 皆無である事実を「アカデミックハラスメント情報室」HPに投稿しています。 大学として間違いがあったにも拘らず是正されていない実例として、文科省と学校法人制度改革特別委員会委員の皆様に (本事例を) ご承知おきいただきたく存じます。よろしくお願いします。

 

2022年5月10日

甲南大学事件被害学生家族

 

結局は5月に、文部科学省はこの改正案を今国会へ提出することを見送った。

https://digital.asahi.com/articles/ASQ3K6JTDQ3KUTIL031.html?oai=ASQ5B53M1Q5BUTIL00Q&ref=yahoo

夏の参院選との絡みはあるが、1日も早くこの種の法律が成立・施行され、殆ど野放し状態にある、理事や大学執行部へのガバナンス強化への第一歩として機能することを期待したい。

最近甲南大学のホームページで公表されているKONAN TODAY 58には次のような記述がある:

「人間教育率先の理念をより高いレベルで実践する意欲と経験に満ちた新たな布陣」?「前例のない危機も乗り越える100年かけて培われてきたKONANの土台の確かさ」?「ハラスメントを放置したまま『人間教育』などと笑顔で世の中に発信するギャップに、抗議自死学生の家族としてやり切れない思いです」(被害学生家族)。

キャンパス・スクールセクハラ性暴力前科者への警告ー(1)

昔のことだから、大したこともしてないから 逃げられると思っている多くの「隠れ加害者へ」ーいつ告発が来るかもしれません!謝罪は今からでも遅くないのでは?

(1)朝日新聞の一、二面記事

https://digital.asahi.com/articles/DA3S15167368.html?_req

学内セクハラ、整わぬ相談体制 大学が被害調査、説明・謝罪なし

https://digital.asahi.com/articles/DA3S15167321.html?_req

ハラスメント対応、募る不信感 教授「俺の女に」、懲戒処分なく

☝️某医療系大学のキャンパス

 これらの記事では、九州にある医療系の大学(九州保健福祉大学、延岡市)を相手取り、損害賠償請求訴訟を起こしている宮崎県の女性と、東京都内の私立大学の大学院生のとき教授によるセクハラにより中退させられ、やはり損害賠償請求訴訟を起こしている女性が取り上げられている。

最初の事件は以下にも詳しいが、

https://mainichi.jp/articles/20211014/ddl/k45/040/277000c

https://mainichi.jp/articles/20211029/ddl/k45/040/221000c

http://university.main.jp/blog/

(以下引用)

 指導教授からセクハラを受け始めたのは、母校の大学院に入学した6年前である。入学から半年後辺りから、タクシーの中で手や足を触られたり、忘年会の二次会で体を触られるようになり無理やりキスされた。そのため、精神的に不安定になり、心療内科を受診。うつ病と診断される。

 しかし大学にはハラスメント相談窓口が無く、ホームページ掲載の、兼務で相談に乗る教員に相談したところ、調査委員会への申し立てが必要と言われた。その後躊躇していると、その教授が、女性とのことは男女間のもつれだったと大学に説明したことを耳にする。怒りがこみ上げ、(2017年8月)調査委員会に訴えたが、3か月たっても大学からは何の説明もなかった。不安が募り弁護士を通じて尋ねると、やっと調査委員会の開催された日時、報告書がまとまったこと、処分については検討中、処分になったら通知する、という内容の書面が示された。調査委員会は、教授のセクハラを認め、懲罰委員会は教授を停職1か月の懲戒処分とした(2018年1月。女性がこのことを知らされたのはさらに3週間後)。

 大学からはこれまで謝罪の言葉はなく、相談後も、申し立てるまでは対応してくれなかったことに納得できず、2018年3月訴訟に踏み切る。2021年10月に出た宮崎地裁延岡支部の判決は、教授の行為をセクハラと認め、教授と大学に慰謝料など132万円の支払いを命じた。一方で、大学が適切な事後対応を取らなかったという点については認めなかった。女性と大学はともに控訴している。

 これに関連して、大学側の更に許せない点は、その教授の懲戒処分直前(2017年12月)に、この女性とパートナーを含む4人にいきなり雇止めを通告してきたことである(2018年1月5日)。表向きの理由は博士号が無いこと等としているが、セクハラ告発に対する報復以外の何ものでもないことは明らかである。懲戒処分を受けた教授は在籍したままであるのに。この雇止めに対する地位保全の請求に関し、2019年2月に同延岡支部は雇止め無効の仮処分を下している。これに対し大学側は、仮処分決定に応じない上、更に裁判で争う姿勢である。ちなみに、2020年6月に九州保険福祉大学運営の学校法人の理事長に就任したのは、加計勇樹氏という人物で、名前からもわかるとおり、岡山で岡山理科大学を経営し、安倍の後ろ盾で強引に香川県に獣医大学を作った加計一族の一員である。岡山、香川と同様に、地域で存在感のあることを良いことにやりたい放題である。まさに一族の醜い体質が現れていて、今後の裁判闘争にも注目し、厳しい眼を向けていかねばならない。現在、大学のHPにはキャンパスハラスメントへの注意喚起が呼びかけられているが、

九州保健福祉大学HPにあるハラスメントへの取り組みページ

まずはこの問題に関し、関連被害者らの復職・未払い賃金の支払いと加害教授の解雇を進め、公的予算の支援を受けている延岡地域・宮崎県の住民に説明責任を果たすべきであろう。加害教員も大学の強硬姿勢に隠れて逃げ切りを謀るべきでなく、即刻辞任すべきである。被害職員や心ある学生や地域の人々は決して忘れない。

https://digital.asahi.com/articles/ASM346JXHM34TNAB00S.html?iref=pc_ss_date_article

(2019/3/6) 雇止め無効の仮処分、元助教ら会見「大学に憤り」

https://digital.asahi.com/articles/ASM345R22M34TNAB00K.html?iref=pc_ss_date_article

(2019/3/6) 助教夫妻、同時に無職に 第2子出産…大学と争った1年

https://digital.asahi.com/articles/ASM4K42R7M4KTNAB00B.html?iref=pc_ss_date_article (2019/4/17) 雇い止めで大学を提訴 セクハラ告発の元助手ら4人

https://digital.asahi.com/articles/ASMDR31PHMDRTNAB003.html?iref=pc_ss_date_article (2019/12/28) 九保大雇止め訴訟 仮処分1年、まだ復職出来ず

https://digital.asahi.com/articles/ASN105HZ0N10TNAB00H.html?iref=pc_ss_date_article

(2020/2/1) 大学側の異議申し立て認めず 雇止めで地裁支部

(以下引用)

 2番目の事件では、被害者の女性は大学院生の時指導する男性教授方セクハラを受けた(「俺の女にしてやる」など暴言)。コース主任の教授に相談したら、「あまり外では言わない方がいいよ」と言われ(その結果)、女性は教授への恐怖や大学への不信感からほとんどの授業に行けなくなり、中退した。

 中退後の2018年4月、意を決して大学のハラスメント防止室に相談。だが、中退者の申立は受けない場合もあると伝えられ、家族と一緒に書面で大学の総長に直訴した。大学側は申し立てから1か月後に教授の調査報告書をまとめ、「俺の女、、、」発言などはセクハラに当たると認定し、教授を解任した(退職金は出る!)。主任については「隠蔽の事実は認められないが、誤解を招く発言があった」として訓戒処分とした。

 だが、女性と教授・主任の言い分の食い違う部分は認められなかった。なぜ懲戒処分ではないのか?主任は(ハラスメントを)隠蔽しようとしたのでは?これらについて納得がいかず、調査委員会のメンバー構成を尋ねたが、「外部の弁護士も加えたとは伝えられたが詳しい構成は教えてもらえず。再調査を求めても認められなかったため、2019年6月、女性は元教授と大学を相手取り、損害賠償を求める訴訟を起こした。現在は、係争中を理由に、元教授も大学もダンマリを決め込んでいる。この訴訟の行方も是非注目していきたい。

 この事件については改めて詳しく扱うが、なぜこういうことが今頻発しているのか。この点に関し記事の最後では、全国のほとんどの大学でハラスメント対策が実施されていて(ハラスメントの定義が成文化され、防止についての呼びかけ、研修などを行う)相談窓口も設置されているのに、それらが実質的に機能していないことを挙げている。本ブログでも、開設当初からその問題点は一貫して指摘続けてきた。この問題を克服するためには、現状では、当事者には多大な精神的・経済的負担になるが、司法の場に持ち込むしかないかも知れない。まさに、次の記事がその典型であるが。

質問書に文科省から回答! 甲南大学事件(本ブログでこの間の経緯を紹介中)

2021年11月10日に、末松信介文部科学省大臣宛に、甲南大学ハラスメント抗議自死学生の母として代理人から質問書を送付し同年1130日までに回答を求めたところ、文部科学省省(高等教育局 学生・留学生課 厚生係)から回答がありました。以下に質問書の抜粋と回答書を公開します。赤線は、ご家族によるもので、回答の重要と思われるところです:

(文部科学省HPより)

 

質問書(抜粋)

質 問 書

末松信介文部科学大臣 殿

(所管 高等教育局)

前略 私は、神戸市東灘区にある私立甲南大学(学校法人甲南学園が設置)に通学していた*****君の******の*******です。以下の点をについて、ご質問しますので、令和3年11月30日までにご回答下さい。

次の点をふまえ、質問をします。

【事件の概要】

 自らの大学に所属する学生が、大学公認の活動がきっかけとなり、また、その後大学による適切な相談支援がなされない中で抗議の自死をしたにも関わらず、

 甲南大学では、大学に学籍があった当該学生の死に際して、一般社会の常識からかけ離れた対応がまかり通っています。その後、**君に自死の原因となる対応を行った当事者である中井伊都子氏が大学の象徴的存在である学長に就任し、公には「甲南大学は、みなさんの健康・安全と学修を守るために全学を挙げてサポートシステムを展開してまいります。ぜひ安心してください。」と笑顔でコメントを発信しています。

 現在に至っても、被害者自死学生に対する甲南大学からのお見舞やお花等、弔意の意思・謝罪は一切皆無で、重大な人権侵害に対する何らの問題意識・反省はありません。

 遺族の告発によって、2020年3月の新聞・TV報道で事件が明るみになりましたが、その際、甲南大学は「大学の対応には問題は無い」とのコメントを行っており、更に酷いことには「**君が問題になるような発言をしていた」とメディアを通じて発信しており、被害者が死に至っても大学による名誉棄損被害を受けています。

 私どもの要望する第三者による公正な調査を拒否し、未だに検証作業すらも行われていません。

【国会での質疑】

 この問題は、令和3(2021)年5月13日に開かれた参議院文教科学委員会においても取り上げられています(本ブログ6月の記事を参照して下さい)。(以下略)

【毎日新聞の報道】(略)

【遺族の訴え】

 わが国において、少子高齢化、子どもの自殺等が社会問題とされ、安心して子どもを産み育てられる環境を実現することの重要性が指摘されています。

 しかし、親が大切に産み育てた子どもが、大学生にまで成長し、高額な学費を支払った教育の場で、パワーハラスメントによって平和な学生生活が破壊され、やむなく遺書を残して自死に至っても、事実関係を調査し、再発を防止する制度等は公に検討されておらず、個人の問題として放置されています。

 また、私立大学の自治の名の下に、学生の命を守るという基本的な事項について、大学に対する国または地方公共団体からの適切な指導監督がなされておらず、本件では、深刻な被害が隠蔽され、被害者が泣き寝入りを強いられる一方で、アカデミックハラスメントに加担した当事者が学長に就任している現状さえあります。このような営利優先の無責任な教育方針下では水面下での学生の被害や自殺者が後を絶つことはないでしょう。「改めなければ、今後も同じことが起こってしまう」と生前、被害学生が大学に直訴しています。命をもって抗議した学生の存在を被害者として大学は今も扱いません。国として、私立学校に対する適切な監督のあり方について考え直すべき時期に来ているのではないでしょうか。

【質問事項】(以下の回答文を参照して下さい)

(1/6頁)

(2/6頁)

(3/6頁)

(4/6頁)

(5/6頁)

(6/6頁)

 

 

 

中井伊都子氏(甲南大学長、人権委員会委員)への対応求める、国連人権委員会へ送付した書簡(日本語版)を掲載します。

2つ前の記事の書簡(英語版)に対応する日本語文は以下の通りです:

************************************

国連人権理事会 御 中

結 論

1 国連人権理事会諮問委員会委員(任期2019年10月~2022年9月)としての中井伊都子氏(現甲南大学学長)の委員任命の撤回を要望する。

2 中井伊都子氏の前項の任命について、国連特別報告者による見解表明と勧告の実施を要請する。

国連特別報告者に対する要望

A)自らが学長を務める学内の人権問題にさえ誠実に対応して来なかった中井氏を、国連の諮問委員として任用している理由及びその適格性についての見解を明らかにして下さい。

B)現在、中井氏を学長とする当大学は、今回の事件を検証するための第三者委員会の設置を拒否しています。この設置を求めるとともに、大学が加害者として学生を抗議の自死に至らせたことへの責任を認め、誠実に対応すべきことを中井氏と甲南大学に促してください。

理 由

中井氏の不適切なハラスメント対応によって、2018年10月17日、一人の大学生が自死に追い込まれた。中井氏は、自殺の原因となった重大な人権侵害行為に加担している。

甲南大学が公認する文化会部の課外活動において、被害学生が所属する部の部長を中心とした上級生が、被害学生を活動から排除するため、名誉棄損情報を捏造し吹聴した。

被害学生は、1年生ながら、部活動で統率力を発揮したことによって上級生に嫌われ、半年前の大学の学園祭においてクラブが出店した模擬店の売上金を横領したとの事実無根の疑惑が同クラブに所属する部長らによって、根拠のないまま、大学内外の関係団体にながされた。その結果、被害学生の「強制退部」、更には「入部拒否の要請」が発出され、この大学公認の通知によって、被害学生による横領がなされたとの虚偽の情報が関西一円の学内外に爆発的に広まってしまった。

実際には、横領の事実はなく、最終的には加害学生もこれを認めているにも関わらず、中井氏はハラスメント委員会委員長として「ハラスメント行為はなかった」との判断を行い、加害者学生たちへの処分もなされなかった。被害者学生は中井氏(当時副学長で、現在は学長)を中心とする甲南大学への適切な対応を求め続けたが、甲南大学は、大学のブランドを守ることを優先し、被害者を被害者として扱うこともなく、事件は隠蔽された。

被害者学生は、最終手段として、自身の尊厳を守るための自死を決行した。被害学生は、

「名誉棄損による精神的ダメージ(中略)甲南大学の対応の遅さにより神経が著しく削られ私は自殺します。」と遺書を記し、その被害の記録一式を残している。

当該学生の自死から現在まで、中井氏からの弔意の意思表示・行動は一切皆無である。遺族の告発によって、2020年3月の新聞・TV報道で事件が明るみになったが、取材に際し、中井氏を学長とする甲南大学は「大学の対応には問題は無い」とのコメントを行っており、重大な人権侵害に対する何らの問題意識・反省もない。

中井伊都子氏が国連人権理事会諮問委員に相応しいと言えるのか重大な疑問がある。

2021年8月15日

被害学生の* ****

連絡先:****、*******

*****************

 

付記

1 当問題は、2021年5月13日、日本の国会(参議院文教科学委員会)において審議されました。審議の内容を資料して添付しました。

また、日本の代表的なメディアの一つである毎日新聞がこの事件をとりあげていますので、参考資料として添付します。なお、日本の主要メディアである朝日新聞、産経新聞でも大きく報道されています。

2 甲南大学とは

兵庫県神戸市に本部をおく日本の私立大学。1951年設置。人文・社会科学と自然科学、いわゆる文系と理系両方の学部を備えた総合大学です(5つのキャンパスをもち、学生数約9000名、教職員数約500名の中規模大学)。

3 中井氏の経歴

中井氏は、本件事件当時、甲南大学のハラスメント委員会の委員長及び副学長の地位にあり、自らの対応により死者を出した当事件から一年も経過していない2019年10月10日に、国連人権理事会(UNHRC)諮問委員に就任しました。就任に際して、この事件に中井氏が関与していることは隠されたままで、中井氏に帯する倫理的な側面に関する事前調査が不十分であったと考えられます。

同時期、今回の事件について、何の検証もせず、死者を出した責任も明らかにしないまま、甲南大学の大学長・理事に就任しています。

今回の学生自死について、甲南大学は、文部科学省や大学が所在している兵庫県に対して、死亡事故報告を行っていません。現在に至っても、被害学生の命の尊さは軽視されたままです。

相手によって、態度や言葉を変える中井伊都子氏に国連人権委員の資格はありません。

************************************

また最近、日本私学連盟が行った「大学の未来へ ー継承と発展ー」と題するオンライン座談会で、中井伊都子氏は次のような発言もしている:

1-4人の痛みを自らの痛みとして知ることができる人間に

植木 さまざまな社会問題を自分事として捉えることの重要性など、田中先生と各務先生のお話は非常につながっていると感じました。中井先生は、国連人権理事会諮問委員会委員を務めるなどのご経験からグローバルリスクを意識する機会も多いかと思いますが、いかがでしょうか。

中井 私は、2020年の4月からこの職に就いており、国際人権法を専門としています。専門の関係で、国連の活動にも一部参加させていただいておりますが、残念ながらコロナ禍で国連の活動はほとんど止まってしまいました。人権、人道問題については危機的な状況を迎えているにも関わらず、意思決定の部分で国連が動けないという残念な状況になってしまっています。私の専門から発言をしたり、学生に伝えたりする際に心掛けているのは、世界で何が起こっているのかを考えるときに、自分と異なる属性や考えを持った人でも、等しく大切だと思える人になってほしいということです。
それを具体的に実践していくことは難しいですが、本学ではさまざまな課題について、すべての学部の学生が混じり合いながら考えることができる基礎共通演習という場を設定しています。また、各専門分野に分かれた後もこれらの問題を自分事として捉え、もっと深く掘り下げたいと考えた時には、どの時点、どの学部からでもプラスアルファで学べるような、より彩り豊かな共通教育の構築を検討しているところです。今地球の裏側で起きていることも自分のことだと、海の中にたくさんのプラスチックがあることは、昨日の自分の行動の帰結なのだと、そういった痛みを感じられるような人間を育成するための仕組みを考えています。

 

3-4これからの社会に向けた大学教育のあり方
中井 人が集う場としての大学の意味も、より一層重要になるのではないかと考えています。多様な人々を受け入れていけるキャンパス、例えば子育て支援や心のケアの場など、多様な役割を探り、実現していけたらと思います。
被害者学生の人権と、人命に何の配慮もないまま、公へは満面の笑顔で理想論を語る。まさに厚顔無恥としか言いようがない。まずは自らが「具体的に実践」、「実現」して欲しいものである。

大学生へのハラスメント 文科省、学内の第三者相談体制巡り初の調査 – 毎日新聞

甲南大学事件に関連して5月に行った、国会参議院文教委員会での立憲国会議員と文部科学大臣・局長との間で行われた質疑

【『甲南大学のハラスメント・2018被害者学生自死事件』を2021年国会の場で問う】

に関し、毎日新聞に新しい記事が掲載されましたので紹介します(2021年9月8日):

毎日新聞記事

甲南大学事件、国連人権委員会に書簡を送付し、中井伊都子氏(甲南大学現学長、国連人権理事会諮問委員)への対応求める

甲南大学の事件を詳報してきた一連の記事にあったように、事件当時の学内ハラスメント委員会のトップであり、この事件について「大学の対応について問題は無く」、「ハラスメントにはあたらない」と結論を下した張本人、中井伊都子現学長が2019年より、国連人権理事会諮問委員会の委員を務めていることに関し、異議を申し立てると同時に何らかの対処を求める書簡を9月初めに国連人権委員会に提出した。申し立ての書簡と受取の返信をここに紹介する。

まず書簡であるが、人権理事会宛のものを以下に示す。特別報告者宛のものもほぼ同じなので、省略する:

1/6頁

2/6頁

3/6頁

4/6頁

5/6頁

6/6頁

国連人権委員会からの返信

地方(国立)大学はどこを向いているのか?(誰が監視しているのか?)

暫く前の案件であるが、やはり地方の国立大学で信じられないような重大なハラスメント事件が起きていた。管理者は殆ど知らなかったが、今回その詳細を知るに至り、見逃せない事件と考えられたので、関連情報をここに提供する:

国立大にパワハラを捏造され、解雇通告を受けた教授の告白

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/51266?imp=0

宮崎大学珍事件

https://jun-jun1965.hatenablog.com/entry/20170409

また関連した記事として

同志社大学の名物教授が「突然の退職」を通告されるまで

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/51247

事件はいまだ完全に解決しているとは言えないらしいが、それも関係者(特に最初の大学)のやる気のなさと怠慢が放置に繋がった結果であろう(他の国立大学でもよくある話であるが)。

一般に日本の多くの地方(国立)大学は、その地方、もしくは近隣自治体ではある程度その動向が注目されるが、全国レベルでそのスキャンダル・関連事件などが報道されることは殆ど無い。それどころか、各地方、或いは都道府県での地方紙や放送局に大学自らが裏から手を回し、「不祥事」の情報自体の報道・拡散を潰してしまうこともしばしばである。

こういう地方の特殊性を隠れ蓑にした、本来公開されるべき地方大学の情報の意図的な隠蔽は、特に税金で運営されている国公立大学では許されないものである。残念なことではあるが、地方の住民一人一人にも、もっと大学などの動向に関心を持ち、地方のマスコミを突き上げるなどして大学を監視していくことが求められているのではないだろうか?

教職員間での(同僚に対する)ハラスメントがこの酷さであるから学生・大学院生がおかれているアカデミックハラスメントの状況はさぞ救いようのないものではと想像・危惧される。

 

甲南学園から「回答」届く

引き続き甲南大学についての投稿が続きます。

代理人弁護士によると「申し立ての前段階として、最終の通知を甲南側に送付しましたが、先ほど返事がきました」ということです。

 甲南学園の代理人からの連絡は

「本学としての一連の対応において不適切な点があったとは考えておらず」、これを「前提とするこのたびの各申し入れにつきましては、お請けすることはできません」

というものでした。

************************************

 2017年(平成29年)甲南大学入学式の時点では、甲南大学の「朗らかに」という言葉とKONAN♾無限大の校章を見聞きし、親子してこれからの将来へ♾の可能性を信じていた。
 まさか1年後に、真面目に活動したが故に、逆に「部活上級生パワーハラスメント」、更には「大学組織による事件隠蔽のためのアカデミックハラスメント」という、とんでもない人権問題に自分達が被害者として遭遇し、救けを求めた大学ハラスメント窓口の暴言に疲弊し、息子が名誉毀損への抗議自死に追いやられ、最愛の息子への弔意もなく、大学によって真実さえ捻じ曲げられ隠蔽されるとは。まさに悪夢としか言いようがなく、できることなら、甲南大入学以前に時間を巻き戻したい。

(写真は、甲南大学2017年4月1日入学式におけるクラブ紹介の様子)

現在日本各地の大学で報道されているハラスメント被害はおそらく氷山の一角に過ぎない!
 被害者遺族になった後で知ったことだが、(2017、1/12河野太郎氏ブログ記載既に2017年、文部科学省には大学ハラスメント実態調査の必要が指摘されているが、現状の細かい調査は行われていない。大学ハラスメント対応窓口に被害を申し出た被害者の大半が窓口で相談を握り潰されたり、加害者側からさらなる不利益を被り、ハラスメント被害が長期化することで解決が難しくなり、自殺に追いやられた悲惨な事例は後を絶たない。そして「全国学校事故を語る会」を通じて知った更にショッキングな事実は、学校側の主張によって遺書が無いこと等を理由として「明らかに自殺」であっても「変死」として闇に葬られ、被害者としてその申し立てもできず泣き寝入りを強いられている遺族さえいるという実態である。
 失意のどん底で被害者遺族は、やむなく民事訴訟を起こす羽目になる。加害者側に無罪判決の出るリスクを背負った長期間の裁判に気力を奪い取られつつ、最愛の子供の尊厳を守るために命がけで闘っている被害者遺族達の声に日本の社会はもっと耳を傾けてほしい。
 「学生間のハラスメント」及び「学校組織によるハラスメント隠蔽」は、命さえ奪う犯罪行為であり、社会全体の問題である。現日本では、先進国として学生をハラスメント被害から守る人権擁護システムが整っていない。ハラスメントを隠蔽し学生を自死に追いやっても、その大学職員には何の制裁も無いばかりか昇進が約束される。そして有ろう事か、その加害当事者が、大学のみならず、国を代表するリーダーとして特別な理由もなく「国連の人権委員」に就任していることは、日本人として恥ずべきことであると思われる。

 われわれは、今後の対応も見据え、これまでの記事「甲南大学の学生自死事件、その後 (1)~(5)」の中で、匿名扱いをしていた甲南大学事務部門の何名かにつき、実名掲載へと踏み切リました。詳細は、お手数ですが、各記事、特に(1)の再読をお願いしたいと思います(2021年7月10日)