キャンパス・スクールセクハラ性暴力前科者への警告ー(1)

昔のことだから、大したこともしてないから 逃げられると思っている多くの「隠れ加害者へ」ーいつ告発が来るかもしれません!謝罪は今からでも遅くないのでは?

(1)朝日新聞の一、二面記事

https://digital.asahi.com/articles/DA3S15167368.html?_req

学内セクハラ、整わぬ相談体制 大学が被害調査、説明・謝罪なし

https://digital.asahi.com/articles/DA3S15167321.html?_req

ハラスメント対応、募る不信感 教授「俺の女に」、懲戒処分なく

☝️某医療系大学のキャンパス

 これらの記事では、九州にある医療系の大学(九州保健福祉大学、延岡市)を相手取り、損害賠償請求訴訟を起こしている宮崎県の女性と、東京都内の私立大学の大学院生のとき教授によるセクハラにより中退させられ、やはり損害賠償請求訴訟を起こしている女性が取り上げられている。

最初の事件は以下にも詳しいが、

https://mainichi.jp/articles/20211014/ddl/k45/040/277000c

https://mainichi.jp/articles/20211029/ddl/k45/040/221000c

http://university.main.jp/blog/

(以下引用)

 指導教授からセクハラを受け始めたのは、母校の大学院に入学した6年前である。入学から半年後辺りから、タクシーの中で手や足を触られたり、忘年会の二次会で体を触られるようになり無理やりキスされた。そのため、精神的に不安定になり、心療内科を受診。うつ病と診断される。

 しかし大学にはハラスメント相談窓口が無く、ホームページ掲載の、兼務で相談に乗る教員に相談したところ、調査委員会への申し立てが必要と言われた。その後躊躇していると、その教授が、女性とのことは男女間のもつれだったと大学に説明したことを耳にする。怒りがこみ上げ、(2017年8月)調査委員会に訴えたが、3か月たっても大学からは何の説明もなかった。不安が募り弁護士を通じて尋ねると、やっと調査委員会の開催された日時、報告書がまとまったこと、処分については検討中、処分になったら通知する、という内容の書面が示された。調査委員会は、教授のセクハラを認め、懲罰委員会は教授を停職1か月の懲戒処分とした(2018年1月。女性がこのことを知らされたのはさらに3週間後)。

 大学からはこれまで謝罪の言葉はなく、相談後も、申し立てるまでは対応してくれなかったことに納得できず、2018年3月訴訟に踏み切る。2021年10月に出た宮崎地裁延岡支部の判決は、教授の行為をセクハラと認め、教授と大学に慰謝料など132万円の支払いを命じた。一方で、大学が適切な事後対応を取らなかったという点については認めなかった。女性と大学はともに控訴している。

 これに関連して、大学側の更に許せない点は、その教授の懲戒処分直前(2017年12月)に、この女性とパートナーを含む4人にいきなり雇止めを通告してきたことである(2018年1月5日)。表向きの理由は博士号が無いこと等としているが、セクハラ告発に対する報復以外の何ものでもないことは明らかである。懲戒処分を受けた教授は在籍したままであるのに。この雇止めに対する地位保全の請求に関し、2019年2月に同延岡支部は雇止め無効の仮処分を下している。これに対し大学側は、仮処分決定に応じない上、更に裁判で争う姿勢である。ちなみに、2020年6月に九州保険福祉大学運営の学校法人の理事長に就任したのは、加計勇樹氏という人物で、名前からもわかるとおり、岡山で岡山理科大学を経営し、安倍の後ろ盾で強引に香川県に獣医大学を作った加計一族の一員である。岡山、香川と同様に、地域で存在感のあることを良いことにやりたい放題である。まさに一族の醜い体質が現れていて、今後の裁判闘争にも注目し、厳しい眼を向けていかねばならない。現在、大学のHPにはキャンパスハラスメントへの注意喚起が呼びかけられているが、

九州保健福祉大学HPにあるハラスメントへの取り組みページ

まずはこの問題に関し、関連被害者らの復職・未払い賃金の支払いと加害教授の解雇を進め、公的予算の支援を受けている延岡地域・宮崎県の住民に説明責任を果たすべきであろう。加害教員も大学の強硬姿勢に隠れて逃げ切りを謀るべきでなく、即刻辞任すべきである。被害職員や心ある学生や地域の人々は決して忘れない。

https://digital.asahi.com/articles/ASM346JXHM34TNAB00S.html?iref=pc_ss_date_article

(2019/3/6) 雇止め無効の仮処分、元助教ら会見「大学に憤り」

https://digital.asahi.com/articles/ASM345R22M34TNAB00K.html?iref=pc_ss_date_article

(2019/3/6) 助教夫妻、同時に無職に 第2子出産…大学と争った1年

https://digital.asahi.com/articles/ASM4K42R7M4KTNAB00B.html?iref=pc_ss_date_article (2019/4/17) 雇い止めで大学を提訴 セクハラ告発の元助手ら4人

https://digital.asahi.com/articles/ASMDR31PHMDRTNAB003.html?iref=pc_ss_date_article (2019/12/28) 九保大雇止め訴訟 仮処分1年、まだ復職出来ず

https://digital.asahi.com/articles/ASN105HZ0N10TNAB00H.html?iref=pc_ss_date_article

(2020/2/1) 大学側の異議申し立て認めず 雇止めで地裁支部

(以下引用)

 2番目の事件では、被害者の女性は大学院生の時指導する男性教授方セクハラを受けた(「俺の女にしてやる」など暴言)。コース主任の教授に相談したら、「あまり外では言わない方がいいよ」と言われ(その結果)、女性は教授への恐怖や大学への不信感からほとんどの授業に行けなくなり、中退した。

 中退後の2018年4月、意を決して大学のハラスメント防止室に相談。だが、中退者の申立は受けない場合もあると伝えられ、家族と一緒に書面で大学の総長に直訴した。大学側は申し立てから1か月後に教授の調査報告書をまとめ、「俺の女、、、」発言などはセクハラに当たると認定し、教授を解任した(退職金は出る!)。主任については「隠蔽の事実は認められないが、誤解を招く発言があった」として訓戒処分とした。

 だが、女性と教授・主任の言い分の食い違う部分は認められなかった。なぜ懲戒処分ではないのか?主任は(ハラスメントを)隠蔽しようとしたのでは?これらについて納得がいかず、調査委員会のメンバー構成を尋ねたが、「外部の弁護士も加えたとは伝えられたが詳しい構成は教えてもらえず。再調査を求めても認められなかったため、2019年6月、女性は元教授と大学を相手取り、損害賠償を求める訴訟を起こした。現在は、係争中を理由に、元教授も大学もダンマリを決め込んでいる。この訴訟の行方も是非注目していきたい。

 この事件については改めて詳しく扱うが、なぜこういうことが今頻発しているのか。この点に関し記事の最後では、全国のほとんどの大学でハラスメント対策が実施されていて(ハラスメントの定義が成文化され、防止についての呼びかけ、研修などを行う)相談窓口も設置されているのに、それらが実質的に機能していないことを挙げている。本ブログでも、開設当初からその問題点は一貫して指摘続けてきた。この問題を克服するためには、現状では、当事者には多大な精神的・経済的負担になるが、司法の場に持ち込むしかないかも知れない。まさに、次の記事がその典型であるが。

伊藤詩織さんの事件に関連して留意すべきこと二つ

前記事で、伊藤詩織さんが米国「TIME」誌の2020年版「世界で最も影響力のある人100人」に選ばれたことに触れた。伊藤詩織さんに関するネットやマスコミ上の記事や言説はフェイクや中傷も含め枚挙に暇がないが、現在今一度再確認したいことは次の2つである。詳細な全体像はデイリー新潮の一連の記事(44件)

https://www.dailyshincho.jp/search/?kw=伊藤詩織さん&disp_page=1&sid=ergc7tnolmlq0gjqclk5u7t7h5

に詳しいのでそちらに譲り、肝心な部分のみ下記に抜粋してまとめる。

1.本事件はもとTBSワシントン支局長山口による卑劣な性犯罪=性暴力事件である!

事件の簡単な経過を上記デイリー新潮の記事の引用で見てみよう:

(https://www.dailyshincho.jp/article/2019/12250800/?all=1)

(https://www.dailyshincho.jp/article/2019/12260800/?all=1&page=2)

「2015年4月3日、TBSのワシントン支局長だった山口記者が一時帰国した折、ニューヨークで知り合い、TBSに働き口を求めていた詩織さんと会食した。山口記者のホームグラウンドである東京・恵比寿で2軒目までハシゴしたところから意識を失った彼女は、その後タクシーに乗せられた。タクシーはシェラトン都ホテルへ。山口記者の部屋に連れ込まれ、翌日未明、性行為の最中に目が覚めた」

「4月30日に警視庁高輪署が詩織さんからの刑事告訴状を受理。捜査を進めた結果、裁判所から準強姦(当時)容疑で逮捕状が発布された。6月8日、アメリカから日本に帰国するタイミングで山口記者を逮捕すべく署員らは成田空港でスタンバイした。しかし、その直前に逮捕は中止。捜査員は目の前を行く山口記者をただ見つめることしかできなかった。中止の命令は、当時の警視庁刑事部長で現・警察庁ナンバー3、官房長の中村格(いたる)氏によるもので、彼自身、「(逮捕は必要ないと)私が決裁した」と本誌(週刊新潮)の取材で認めている」

「(中村格=)官邸絡みのトラブルシューター・守護神・番犬たる部長。その命を受け、捜査の仕切り直しを担った警視庁本部からの書類送検を受けた東京地検は、ほぼ1年後の16年7月に不起訴と判断。詩織さんは17年5月、検察審査会に審査申し立てを行なったものの、9月に「不起訴相当」の議決が出ている」

「勝訴判決の前、詩織さんは週刊新潮の取材に応じてくれた。まずは、17年5月の実名による告発会見から振り返って、

『あの時は、自分の生活がこれからどうなってしまうのか全く想像ができないままその場に臨みました。時間が経過し、今は自分の生活や仕事も少しずつ取り戻しながらも、この事件に向き合えていることは私にとって大きなことで、周囲の支援してくださる方に感謝しています。この民事訴訟を通じ、私が求めていたのは裁判の判決自体ではなく、それまでの刑事事件の手続きでは分からなかった部分を明らかにすることでした。ホテルのドアマンの方がお話ししてくださるようになったのも、訴訟を提起したからだと思っています』

 法廷で、山口記者が事件後に詩織さんに宛てたメールと陳述書の中身に齟齬があることなどが明らかになったのも、訴訟を提起した成果と言える。

『裁判で色々な証言や主張が公になり、そうしたことからも、訴訟はとても有意義なものでした。またこの間の様々な出会いから、事件のトラウマにどう向き合えばいいのかヒントを貰うこともできました。性犯罪に関する刑法の規定はまだまだ改善の余地があり、見直しは必要だと思っています。他にも被害者のサポートなど変えなければいけない部分はかなりあるはずです。でも、2年前と比べると、こうした議論が活発になってきたのは本当に良かったことだと思いますし、あの頃に見ていた景色とは確実に変わってきている部分もあるなと感じています』」

「去る(2019年)12月18日の10時30分、東京地裁709号法廷。時の宰相とそれにかしずく官邸官僚トップを巻き込んだ裁判に審判が下った」「12月18日に東京地裁が下した判決は、山口記者は詩織さんに対し、330万円の金員を支払えというもの。詩織さんの全面的な勝訴であるが、会見で山口記者は控訴の意向を示している。だから、2020年以降に両者は、東京高裁で更なるお上の裁きを待つことになる」

他の諸記事も合わせて読むと、山口の行きつけの店に2件付き合わされた伊藤さんは、ホテルに向かったタクシーの中で吐いたり殆ど歩けなかったようなかなり酷い状態であった(逮捕状請求に向け警視庁で捜査が進んでいた際、ホテルのドアマンが証言した「幻の陳述書」に詳しい。現在進行中の控訴審で重要な役割を果たすと予想されている)。これに関して伊藤さんは、飲んでいる際にデートレイプドラッグを使われたという強い疑いを持っている。また、事件後伊藤さんに宛てたメールの中で、山口は、レイプに際して避妊具を使わなかったことを認めた上で「自分の精液は薄いから妊娠の心配はない」などど嘯いている。これは正しく卑劣な性犯罪以外の何物でもないだろう!

写真はたまたま本事件の現場となったホテル。風評被害補償は山口氏に請求されるべきであるが、誠実なベテランドアマンの証言が近いうちにホテルの評判を取り戻すことに貢献するであろう。

2.準強姦容疑による山口逮捕もみ消しは菅総理(当時官房長官)側近=中村格官房長(警察官僚出身)により行われ、中村は次期警察庁長官への昇格が濃厚!

上に引用したように、中村氏の意図的な介入は彼自身が認めている:(再引用)

「4月30日に警視庁高輪署が詩織さんからの刑事告訴状を受理。捜査を進めた結果、裁判所から準強姦(当時)容疑で逮捕状が発布された。6月8日、アメリカから日本に帰国するタイミングで山口記者を逮捕すべく署員らは成田空港でスタンバイした。しかし、その直前に逮捕は中止。捜査員は目の前を行く山口記者をただ見つめることしかできなかった。中止の命令は、当時の警視庁刑事部長で現・警察庁ナンバー3、官房長の中村格(いたる)氏によるもので、彼自身、「(逮捕は必要ないと)私が決裁した」と本誌(週刊新潮)の取材で認めている」

この中村格は事件当時、警察官僚の交代劇が進みつつある中で、次のような位置(No. 3)にあり、現在は次期警察庁長官への昇格が噂されている。自ら「警察いらん!」を地で行くようなこういう人物が警察のトップになることは、black jokeであるのみならず、まさしく警察の権威そのものの大失墜であろう。以下引用(https://www.dailyshincho.jp/article/2020/01120600/)

「2019年12月26日の「首相動静」欄に、こんな文言が掲載された。

『警察庁の栗生俊一長官、松本光弘次長、北村博文交通局長、大石吉彦警備局長、警視庁の三浦正充警視総監、斉藤実副総監と会食』

『首相が警察幹部を労った、いわゆる“お疲れ様会”ですね。すでに官邸には、新しい長官と総監の人事が伝えられています』

 順当に行けば、1月のどこかの閣議で人事が了承されることになる。

 具体的には、栗生俊一長官が退任し、その後に松本光弘次長が、三浦正充警視総監が退任し、斉藤実警視庁副総監が、それぞれ新たに就任する。両者の人事は同時ではなく少しずれる可能性はある。そして、この会食の場にはいなかったあの中村格官房長が警察庁ナンバー2である次長の席に就任予定なのだが、そこに触れる前に、長官人事について説明しておこう。

 栗生氏は2018年1月に就任し、任期は2年ということになる。就任前にはパチンコ業者からの付け届けを示唆する怪文書が出回ったこともあった。2017年12月19日配信記事「警察庁幹部がパチンコ業者から付け届け!?“告発”の裏で繰り広げられる人事の暗闘」では名を伏せて報じられているが、このときターゲットになったのが、長官就任前の栗生氏だった。

「栗生さんは最終的には官房副長官のポストに就きたいと思っている。このポストは長らく内閣情報官を務め、国家安全保障局長に就いた北村滋さんも関心を示している。栗生さんは昭和56年入庁で、北村さんは55年入庁。1年違いの二人は犬猿の仲なんですよ」(同)

 その栗生氏の跡を襲う松本氏は、警察庁外事情報部長時代には『グローバル・ジハード』(講談社)という書籍を上梓し、その後、警備局長→官房長→次長と順調に出世すごろくのマスを進んできた。もっとも、さる警察庁関係者によると、

「警察庁出身で官邸を仕切る杉田さん(和博官房副長官)が『松本長官』には難色を示してきました。ウマが合わないと言ってしまえばそれまでですが、杉田さん好みの報告の仕方があって、松本さんはそれに馴染まなかったことが確かにありましたね。ただ、仮に松本さんが退任、あるいは総監に就いた場合、栗生さんが3年目に突入することになる。“いつまでやるんだ!!”って声はかなり聞こえてきていました。オリパラ警備で何かあったら最低でも長官・総監のどちらかは詰め腹を切らされますから、なかなかつらい役回りとも言えますね」

「中村氏は菅義偉官房長官の秘書官を長らく務め、その絶大な信頼を得てきた。山口氏逮(その官邸ベッタリぶりもデイリー新潮の記事に詳しい)の中止命令をする一方、安倍首相元秘書の子息による単なるゲームセンターでのケンカに捜査一課を投入し、相手を逮捕するという離れ業もやってのけたのは「週刊新潮」が報じた通り。官邸絡みのトラブルシューター・守護神・番犬たる部長が、いよいよ警察庁長官の座に手をかけたということになる

 準強姦逮捕状の握り潰しが露見した当時、国会議員だった元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士は、その頃から捜査の大きな問題点を指摘していた。

『この事件では、そもそも逮捕状が出ていたのに、当時の刑事部長が途中で捜査を止めてしまうというまったく異例の判断がされました。そのことが起点となり、法治国家としてはあるまじきその後の流れができてしまったのだと考えています。というのも、刑事事件の捜査においては、強制捜査の有無が証拠の集まり方を左右することになるからです。被疑者が逮捕されていないのに、被疑者と親しかったり、利害関係を有している関係者が、捜査に積極的に協力することは、はっきり言ってあまりありません。やはり被疑者を逮捕してはじめて、関係者たちはことの重大さに気づき、捜査にきちんと協力するようになるものなのです』(週刊新潮19年12月26日号に寄せたコメント)」

最後に指摘しておきたいのは、この事件、裁判の進展に関する日本のマスコミの報道の仕方とネット世論の動向である。マスコミは最初から被害者による「稀な」告発としてその正当性を正面から報道しようとせず、「売名行為だ」というネット世論盛り上げに大きく貢献した。そこから端を発したネット民(特に安倍政権支持者)は、日本の#MeToo運動は政化したことにより、進化・発展しなかった」と主張するに至っている。果たして事件を政治化したのはどちらの側なのか?そして、真実を述べているのはどちらなのかを、日本の世論より遥かに早く判断し報道して来たのが、世界のマスコミ・世論であろう

DAYS JAPAN広河隆一氏による「性暴力事件」について (4)-3

―デイズジャパン検証委員会による報告書(2019/12/26公開)についてのコメント(3/3)―

4) ハラスメント発生の原因

a) セクシャルハラスメント(2/3)

b) パワーハラスメント

  • 独自の経営理念・組織観 DAYS JAPAN社の「崇高な」理念は、広河氏の次のような言葉に現れている『初期の中心メンバーはボランティアであった。DAYSは労使関係や、搾取などという資本主義の常識が合わない企業を目指して誕生した。それはむしろ運動体という言葉があっていた』。このような理念は本人にとっては「崇高な」ものであったかも知れないが、報告書が指摘しているように、こうした理念に基づく企業活動は、目標の実現に向けて自己犠牲や滅私奉公を厭わないものとなる。その結果人事管理は困難を伴うものになっていたようである。

 いわゆる無借金経営も広河氏が自慢した来たことの一つで あるが、これもパワハラを生み出す原因の一つであった。すなわち、DAYS JAPAN創刊こそ事前に多くの定期購読者を集めることにより達成できたが、その後の持続的運営において、最初の規模の「死守」が至上命題となり、様々なコストの徹底的削減がなされた。その中には勿論人件費に関するものも多く含まれていた。

 これ以上詳細には立ち入らないが、今回の広河氏の事例は、まさには、自ら起こした企業は自分個人のものであり、自分の自由意志でどのようにでも運営できると思い込む、ワンマン社長の典型例である、と報告書も指摘している。ただ本人も無理な組織運営には困難さを自覚していたらしく、度々自分の後任(代表取締役)を探していたらしいが、結局ワンマン性故に設定した高いハードルを超える人材を見つけられなかったようである。

  • 労働者の権利主張を認めない経営 報告書では、広河氏の労務管理の特徴の一つに極端な労働組合嫌いが挙げられる、と述べている。これは極端に強く、偏見とさえいえるほどで、彼の発言の随所に現れている。すなわち、労働組合の存在自体が会社経営に好ましくなく、(労働争議等を経て)会社倒産につながりかねない、という認識をもっていたようである。これはまさに中小零細企業の(ワンマン)経営者によく見られる傾向で、普通の例よりさらに過敏であるとも指摘されている。いうまでもなく、労働者=従業員の権利を守る意識から遠く離れた位置にあると言える。

 また、先ほどの経営規模の問題との関連で、特に人件費の増大が経営を圧迫するという強迫観念から、労働者の犠牲で成り立つあらゆる経費削減を従業員全員に強いていたことも指摘さ れている。これを理由に、多くの無給、或は低賃金のボランティア、インターン、協力者を抱え、それらの人々の奉仕に依拠して会社を運営してきた。休日手当や残業代はいうに及ばずであった。労組嫌いとあいまって、このような凄まじいパワハラが会社=組織存続のため継続されてきたと言えよう。

 広河氏は、このような経緯に関し「反省の弁(この時代に急速に労働環境が変化していることに無自覚であった、DAYS JAPANは広河事務所のような徒弟制度ではなく、会社組織であった、等等)」を述べているらしいが、報告書は端的にも「デイズジャパン社創業時に既にあった労働関係法令を遵守して来なかったと言うにすぎない。近代的労使関係を受け入れようとせず、前近代的で労働者の権利を尊重しない徒弟制のような感覚でデイズジャパン社の経営に当たっていた」と本質を喝破している。

5) デイズジャパン社のコンプライアンス

 役員らおよびデイズジャパン社は、以下のような責務を負っていたはずである。

  • 役員の監視義務等

 法令及び最高裁判例で定められている役員らの義務は以下のようなものである。

取締役:会社法355条 法令遵守義務。(相互の)監視義務(最高裁判決)

監査役:会社法382条 (取締役の)適法性監査

取締役・監査役:会社法423条1項 株式会社に対する損害賠償責任。同429条1項 第三者に対する損害賠償責任(悪意または重過失が要件) 

  • 事業者のハラスメント防止義務等

 まず、ハラスメントにより、身体、名誉感情、人格権などが侵害された場合は、当該行為者とともに使用者も、不法行為(民法709、715条)や安全配慮義務違反(雇用契約上の債務不履行、民法415条)として損害賠償責任を負う。また労災保険の支給対象になる場合、さらにはハラスメント行為者が刑事責任を問われることもありうる。

 これに加え、ハラスメントについては、事業者の措置(防止)義務がある。セクハラについては、雇用機会均等法(2006年改正)11条1項は、「・・・適切に対応するために必要な体制の整備そのほかの雇用管理上必要な措置を講じなければならない」と規定し、厚労省指針(2006年)は事業者の措置義務として次のような項目を示している:

① (セクハラについての)事業者の方針の明確化およびその周知・啓発

② 相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

③ 事後の迅速かつ適切な対応(事後措置・調査義務・被害拡大回避義務・再発防止義務・被害回復義務)

④相談者・行為者のプライバシー保護、不利益取扱いの禁止

 さらにパワハラに関する事業者の責務として、厚労省により「雇用管理上講ずべき措置等に関する指針素案」(2019年10月)において、パワハラについての労働者の関心と理解を深めること、研修の実施その他の必要な配慮をすること、役員は自らもパワハラ問題に関する関心と理解を深め、労働者に対する言動に必要な注意を払うように努めなければならないこと、などが指摘されている。

6) ハラスメントへの抗議とデイズジャパン社の対応

  • 抗議と対応の例

 報告書では、このようなデイズジャパン社の負うべき上記諸責務の履行状況を、ほぼ創刊後間もない時期からあった様々なハラスメントへの抗議とデイズジャパン社の対応を記録・追跡する中で検証している。先に述べた守谷監査役がネガティブに絡むケースもあり、少し辟易するので、ここでは、典型的な1例とそれに対するデイズジャパン社(広河氏)の対応のみを取り上げておく。

 ある女性社員は、ボランティアの女性から広河氏から(セクシャル)ハラスメントを受けたことを聞き、広河氏に「彼女たちにしたことはセクハラです」と抗議したが、認めようとしなかった。また、新しく入ってくる女性社員やボランティアがセクハラ被害に遭わないように、注意喚起の趣旨で「広河さんはそういう問題行動をすることがあるから気をつけて」と伝えるようにしていた。ところが、その後外国出張に同行した女性社員に「注意喚起した」ことが広河氏の知るところとなり、激怒していたと聞いた。

 これに対するデイズジャパン社の対応としては、本来退職時に買い取ることになっていた未消化の有給休暇が、結局退職時には大幅に減らされていた。この措置は、上記の「注意喚起」に対する報復としか考えられない。問題にしても疲弊することが予測されたため、結局諦めた。広河氏は、セクハラの告発にも至らないような社員間の情報共有にさえ過敏に反応し不機嫌となり、報復的措置を取ることもあった訳である。十分な確信犯的振る舞いである。

  • 役員らの監視義務の履行状況

 報告書では、川島、土屋、小川取締役、守谷監査役それぞれについて精密な聞き取り報告があるが、それ以前に、役員全体の状況として、

  • 会社としてハラスメント防止方針を策定して周知したり、相談体制を整えるというようなことも、発想自体なかった、
  • 立場上、広河氏の違法行為や不正行為について監視する義務に対する自覚が乏しく、その履行を怠っていた、ことに加え、
  • 広河氏(の実績)に対する信頼と敬意にもとづく一種のバイアスがあり、「多少の私的不品行」には目を瞑るというような感覚があった。
  •  告発の声が上がりづらかった事情

 報告書では以下の3つの要因を挙げている:

  • 社員らは広河氏の様々なハラスメントを疑うことはあっても、その圧倒的なワンマン経営故に自浄作用が機能しない組織内で、正面から強い告発の声を挙げることは困難であった。
  • 被害告発の抑圧や広河氏を消極的に擁護する言動も一部社員にあった。これはいわゆる「社会正義」の実現をハラスメント被害告発より上位に置く、という発想によるものだと思われる。
  • 「特別扱い」の社員が存在し、唯一の中間管理職的立場であったのに、広河氏のパワハラを批判する態度は見られず、残業代不払いについても積極的に問題視はしなかった。また、労働組合活動には否定的な態度が顕著で、労使交渉前には役員に組合員の勤務時間中の態度の問題を指摘するなど労働組合員に反発する態度を取っていた。これらは、広河氏に対し、少人数の組織の中で労働者が一体となって抗議して声を上げるという動きを阻害した恐れがある。

 広河氏の個人的資質に加え、以上述べてきた役員らの状況と上記の諸事情により、広河氏の様々なハラスメントが温存・助長され、関連した被害を拡大長期化させていった原因になった、ということであるようだ。

7) 広河氏の現状と広川氏、デイズジャパン社が果たすべき責任

a) 広河氏の現状と責任

  • 「謝罪のための事実確認」を求める態度

 報告書によると「検証作業期間中、広河氏は様々な迷いを見せたが、最後まで謝罪については逡巡を続け、最終的には『謝罪をしない』という選択をしたようである』となっている。その根拠となっている広河氏自身の説明は、一言で言うと「謝罪することは週刊誌報道のすべてを認めたことになり、さらなるバッシングを受けるだけだ」ということらしい。その理由として、「記憶が定かでないまま謝罪することはできない」という「正論」めいたことを言い、週刊誌に報道された件の女性と会って話して記憶を喚起しながら事実を被害者に確かめたい、と言っているらしい。これは結局、自らの犯した罪と責任に向き合うどころか、むしろ逆に被害者に二次被害を与えるような主張にこだわり、「そこにあったはずの合意の証」を得たいという思惑である

 更に見逃せないのは、自分のやってきた数々の性暴力については、「記憶があいまい」「断片的な事実しか思い出せない」と誤魔化す一方で、自分に有利な事情は「記憶が戻ってきた」として後に追加して弁明する態度など、検証作業期間全体を通じた状況として、供述態度が全体に極めて不誠実、という印象であったらしい。

  • 「性的関係には女性と合意があった」という思い込み

 検証の過程では、広河氏に対し何度も「あなたがしたことは女性の意に反する性暴力であり、女性たちは合意していなかったと言っていて検証委員会もそれが真実だと認定した」、「あからさまな暴力を振るったわけではなくても、優位な立場を使って相手がNoと言えない状況に乗じて性暴力を振るうという類型があり、あなたがしたことはまさにそれである」と伝えて来たにもかかわらず、氏はあくまで「合意があったはず」、、という主張にこだわり続け、「20代の女性たちが次々に6 0代後半の男性の自分に恋愛感情を持ったのだという恋愛観を堂々と披瀝したらしい。どうしても「優越的な地位によって強制した関係ではなく、個人的に惹かれあった男女の自由な関係であるということにしたい」というところから中々離れようとしないばかりか、「自分は文春の商業主義、もしくはMeToo運動に乗った時代の犠牲者である」とさえ認識していた節があったという!

 この広河氏の現状を踏まえ、報告書は広河氏に以下の、ハラスメントについての責任履行勧告を述べている。最低限の項目であると思われるが以下に再掲する(詳細略)。

1. 判明した被害者への謝罪と慰謝

2. デイズジャパン社の責任履行への協力

3. 二次加害をしないこと

 そしてこれらが、広河氏にできる、社会的意義ある最後の仕事である、としている。

b) デイズジャパン社、役員らの責任

  • 株式会社は、代表取締役その他の代表者がその職務を行うについて第三者に加えた損害を賠償する責任を負うことが定められている(会社法350条)。代表取締役であった広河氏が行った女性たちへのハラスメントはまさにこれにあたり、損害を賠償すべきことになる。従って、会社清算においては、被害者らへの損害賠償を検討し、プライバシーに配慮した上で具体的な慰謝の策を講じるように努力すべき、と報告者は指摘している。
  • 役員らは、先に述べた雇用機会均等法11条1項に基づく事業者の措置義務を怠り、特に代表取締役への監視義務を履行しなかったことは重大であり、被害者に謝罪すべきであること、また、個々の件に関し、被害者から申し出があった場合には、誠実に調査して必要な医者の措置を講ずるべきである、としている。

8) 事件の教訓

a) 本事件の特徴

 本事件は、「広川氏特有のキャラクターが原因となって起こされたという性格はあるものの、反権力を掲げる組織内で、ある場面では「人権派」と称され、実際に社会正義のために活動する人が、他の場面では周囲に対してセクシャルハラスメント、パワーハラスメントを繰り返すという現象はしばしば見受けられる」が故に、この問題を広川氏個人の問題として片付けるのでなく、そうしたケースに共通する教訓を指摘する必要がある、検証委員会は述べている。この点に留意してまず本事件の特徴を以下のようにまとめている。

  • 「小権力」に鈍感な組織になっていた。この点について報告書は、「大きな権力に向けた戦い」のなかでは「小さな権力」の乱用が過小評価されやすいこと、「小権力」を掌握する者は大きな権力に対峙する局面では、他者への強者性の自覚が乏しくなることなどを指摘している。
  • 閉鎖的な組織になっていた。報道写真という専門分野を扱う組織であったという専門性は、一般社会との距離が生じ組織の閉鎖性を高めやすい。また閉鎖的な組織におけるリーダーとしての資質はカリスマ性にまで高まりやすく、周囲の人たちを容易にコントロールしてしまい、リーダーのやり方の誤りを周囲が認知できなくなるという恐れも指摘されている。
  • トップに権限が集中しやすくなっていた。独自の専門分野に特化した組織では、経験や知識のあるトップに権限が集中しやすい。その結果、徒弟制に近い上下関係のもと、縦割りに組織された部下たちは容易にトップに掌握され、横の連帯を深めにくくコントロールされやすい状況が生まれた。その結果トップへの批判や非難が組織の規律違反と捉えられやすい状況が生まれていた、と報告書では指摘されている。
  • 内部での監督・抑止機能が働かない組織になっていた。通常の組織であれば組織内の苦情相談を受けて解決にあたるべき人や部署も、今回のケースでは、組織防衛意識が強く働き内向きとなっていた。むしろ受けた苦情を押さえ込んで不適切に処理する機能を果たしてしまい、組織全体に悪影響を与えるとともに自浄力の低下を招いていた。そこで告発しようとしても組織の大義を守ろうとする人々が幾重にも立ちはだかり、結局被害者が声を上げることができなかった、と報告書では述べられている。

b) 教訓

 これらを踏まえ、報告書では以下の3点の教訓が提示されている。

  • 外部への相談の重要性を知る。自浄性がない組織内部でハラスメント告発の難しさが存在するときは、外部への相談が極めて有効である。例えば、労働組合、行政、弁護士、性被害相談窓口などが大切であり、それを可能にするための相談先情報についての広報啓発は必要不可欠である。
  • 内部で解決できる体制も重要であることを再確認する。性被害の外部への告発に関しては心理的ハードルが高く、今回のケースでは広河氏の「業績」の毀損に関する躊躇からくる葛藤などが無視できなかった。一般的にも外部への相談のハードルは必ずしもまだ低いとは言えないので、組織内部に相談窓口があるか、役員がコンプライアンス遵守の意識を持って職責にあたるなどの体制も重要である。
  • 「セクハラはするが仕事はできる人だ」とういうような加害者への甘い対応を許さず、被害者、告発者を二次被害などから徹底的に防衛できる、社会的土壌形成を意識的に進めるべき。これらについて真剣に改善策を講じることがハラスメント根絶には不可欠である。

以上、報告書の要約とコメントはかなり長くなったが、もともと報告書は大部の力作であったため、省略した箇所も多い。例えば、会社解散決定に至る経緯と問題点、労働組合結成とデイズジャパン社の対応等には殆ど触れていない。是非報告書を直接お読みになることをお勧めする (https://daysjapan.net/)

 容易に推測できることであるが、報告書は独善的に運営されている組織(中小企業や大組織における一部門(大学の学部や研究室等)におけるハラスメント問題についての格好の教科書になっていることも指摘しておきたい。今加害者になっていそうな人、被害に苦しんでいる人々にも大変「役に立つ」気がする。

 なお、ハラスメント加害者の「業績」についての私の個人的見解は、「個人、あるいは組織のいかなる局面における「業績」もそのもたらす負の面についての検証無しに無条件に認められることはない」と考える。即ち、負の面も「業績」に含まれるのであり、「業績」を理由にその個人、組織がもたらした不利益、不正・不当な行為が正当化されたり、免罪されたり、ましてや帳消しになることはない、と考えるものである。 

 報告書の公表を受けてデイズジャパン社は以下のメッセージも掲載している。デイズジャパン社は今後どうするのか、について殆ど記述が無いのが大変残念である。今後についてのコメント等が近い将来出されることを期待する。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

デイズジャパン検証委員会の報告書を受けて

デイズジャパン検証委員会から、2019年12月26日付報告書(以下、「検証報告書」といいます。)の提出を受けました。検証報告書の中では、広河隆一氏(以下、「広河氏」といいます。)による深刻な性被害をはじめとする多数のセクシャルハラスメント及びパワーハラスメントの認定がなされています。

当社は、この検証報告書を非常に重く受け止めました。検証報告書に記載されているとおり、長年にわたって当社で代表取締役を務めた広河氏による行為については、当社の責任の重さを痛感しており、広河氏による行為の被害に遭われた方々に、深く謝罪いたします。

また、当社は、検証報告書にあるとおり「加害者としての自制と責任の履行を公にすることこそが、広河氏にできる、社会的意義ある最後の仕事」であると考えます。当社としては、広河氏に対し、「まずは自分が行ったことを直視し、独善的で自己中心的な弁明を公の場で行うことは控え、これ以上被害者らに恐怖と苦痛と不安感を与えるような言動は絶対にしないよう、行動を自重することを強く求める」との勧告を遵守するよう求めます。

検証報告書を受けて、当社として、被害に遭われた方々への相談窓口を設置いたします。広河氏の被害にあわれた方については、下記(問い合わせ先)にご連絡ください。被害にあわれた方については、プライバシーに配慮した上で、当社として誠実に対応してまいります。

最後に、改めて、被害に遭われた方々に深く謝罪いたします。

2019年12月27日

株式会社デイズジャパン

代表清算人 川島 進

(問い合わせ先)

days@legalcommons.jp

弁護士 竹内  彰志

弁護士 河﨑 健一郎

 

DAYS JAPAN広河隆一氏による「性暴力事件」について (4)-2

―デイズジャパン検証委員会による報告書(2019/12/26公開)についてのコメント(2/3)― 

(1/3)に引き続き、報告書の要約とコメントする作業を進めてみたい。

3)ハラスメント実態と労働環境の酷さ

a) 広河氏によるセクシャルハラスメント

  • 概況

 ハラスメントの具体的事項は、最も古いもの(2004年)から最も新しいもの(2017年)まで、デイズジャパン社設立以降のほぼ全期間に渡る。被害者の属性は、デイズジャパン社社員、ボランティア、インターン生、フォトジャーナルズム学校(一時デイズジャパン社が企画していた一般向け講座)、受講生、広河事務所社員、アルバイト等多岐に渡る。また、検証委員会に寄せられた被害態様を纏めると以下のようになる(2014-17年):性交の強要 3人/性交には至らない性的身体的接触 2人/裸の写真の撮影 4人/言葉によるセクハラ(性的関係に誘われる等) 7人/環境型セクハラ(AVを社員が見える場所におく) 1人。

 特に指摘すべき点として、「被害者らが抱いていた広河氏への尊敬の念に乗じてセクハラに及んだこと」「被害者らが広河氏の精神的圧力を感じて性的要求に応じざるを得なかったり、明白な拒絶はできずやんわりとかわすしかなかった」と言う点を挙げている。また、狡猾な戦略として、特に程度が深刻なハラスメントは、社員以外のボランティアやアルバイトの女性が狙われていた可能性も指摘されている。

  • セクシャルハラスメントに関する証言

 検証報告では、先の被害態様別に多くの具体的な表現が記録されている。最初の週刊誌記事や、その後の新聞・web記事等とも重なるので、ここでは引用はしないが、極めて悪質であることはいうまでもない。またデイズジャパン社と深い関係にあった守屋氏及びアウレオ社からの派遣社員が被害者へ二次被害を及ぼしたり、ハラスメントのもみ消し等に一役買っていたことも報告されている。

 そして最も重要な点は、収録された証言は検証委員会の客観性についてのチェックを経て、全て信用性があると認定されている点である。これに対し、広河氏になされた検証委員会からの幾つかの質問、「女性たちがあなたに向けていた好意は敬意やあこがれであって、異性としての好意とは別物だったと述べているが」、「被害女性たちは祖父に近い年齢であるあなたを本当に性愛の対象としてみていたのか」、「この女性にこのようなことをしなかったのか」に対し、「当時はそう思った」、「そういう(老人を対象にする)人もいますよ」、「その女性(の存在自体)を憶えていない」と言う、曖昧な、抽象的なさらにはごまかすような回答に終始したため、検証委員会は「証言されたいずれの件についても『相手の女性の合意は無かった』」と認定し、「広河氏の説明の信用性は極めて低く不誠実であるとしか言いようがない」と結論づけている。

b) 広河氏によるパワーハラスメント

1. パワハラの定義

  • 厚生労働省「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」提言(2012年3月)等

=『同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為』

  • いわゆるパワーハラスメント防止法*(2019年5月)30条の2第1項

=『職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの』とし、『それによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない』と規定。

*略称「労働施策総合推進法」

  • 雇用管理上講ずべき措置等に関する指針素案(厚労省2019年10月)のパワーハラスメントに該当する行為についての例示

=(一部抜粋)

<脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)>

(該当すると考えられる例)人格否定発言(性自認に関する侮辱含む)、長時間にわたる厳しい叱責を繰り返し行う、他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責など、能力否定、罵倒の電子メール等を複数宛に送信する。

<業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害(過大な要求)>(例)新卒採用者に必要な教育を行わないまま到底対応できないレベルの業績目標を課し、達成できなかったことに対し厳しく叱責すること、業務との関係の無い私的な雑用の処理を強制的に行わせること。

2. 概況

  • 「ほぼ全員が日常的に被害者だった」と述べるほど日常的かつ深刻。
  • 労働環境:長時間労働をせざるを得ず、時間外手当や休日出勤手当の不払など労働基準法違反が恒常的。問題視されると「裁量労働制だから」と言い張るなどした。
  • 気に入らない社員の不当解雇や退職に追い込むなども無頓着に行われていた。これに対する問題意識も経営陣全体に乏しかった。
  • ハラスメントの態様:「怒鳴る」「いらいらしてスイッチが入ってしまうと激高する」。これらは厚労省指針素案の「厳しい叱責を繰り返し行うこと」や「他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責」の類型に該当する。

3. 証言と認定

  • 精神的な様々な攻撃:感情の起伏が激しくいきなり嵐のように怒鳴り散らすことが日常的、これに対し皆萎縮している印象(確信犯的?)。全てを管理しないと気が済まないが、面倒臭い人事や事務はしたくない。自身でも継続困難を感じていたらしく、会社を閉じたいと考え出した頃から様々なことへの投げやり感や、人格崩壊が加速、などが証言されている。
  • 業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、過大な要求:関係のない編集会議に参加させられる、「残業をするな」という一方で過重な量の業務を与える、広川氏のために病院に薬を取りに行く、などが証言されている。
  • 寄せられたこれらの証言の具体性、数の多さ、証言間の整合性などから広川氏が日常的に社員らに対しパワーハラスメントに及んでいたことは明白である。これにより社員らに対して違法な労務環境への不当な忍耐を強いようとしていた。また、労働関係法令違反も慢性化していた と言える。

4. 労務管理

  • 時間外労働・休日労働に関する協定書 2017年6月締結、7月渋谷労基署に届出。
  • 裁量労働制 編集・取材業務に従事する従業員について専門業務型が適用されていた。協定締結 2015年6月。2016年4月~支払い確認。
  • フレックスタイム制協定書締結 2017年6月。
  • 始業時刻午前10時、就業午後6時、休憩1時間。
  • 裁量労働制導入以降は、ほとんどの従業員に一定時間相当分(毎月40時間程度)の残業代相当額を裁量手当として支給していた。

5. 労働実態

 詳細は省略するが(「報告書」をぜひ読んで頂きたい)、残業代、休日出勤手当の不払い/退職強要、不当解雇/広河氏の認識/残業代不払の実態などについての証言が数多く寄せられている。これにたいする広河氏の認識は、特に社員の離職があまりに頻繁だった状況に対しては、「退職していく個人の勝手で引継ぎが大変になり会社が大迷惑を被った」、「むしろやめていく側に能力が足りなかった」と捉えるという労務管理についての知識もなく反省もしない酷いものであった。

 実際は、数々の証言が示しているように、退職理由の多くは表向きは家族の事情という体裁は取っていたとしても、実際には劣悪な労働条件や広河氏の人となりに触れて失望したり、あるいはハラスメントを受けたからというものであった。 

 また、大手出版社による買収が不成立であった理由は、「大手出版社では、DAYSでやるのと比べ、人件費も経費も数倍かかり確実に赤字になるだろう」ということであったらしい。このことは、通常の出版社でかかる人件費よりはるかに少ない条件でやっていたこと、言い換えると、広河氏が自慢していた「無借金経営」は不当なまでの人件費抑制により成り立っていたことを示す。

4) ハラスメント発生の原因

 「今回の一連の出来事は、、、彼が自ら作り上げた『王国』に君臨し何らの抑止力が働かない組織の中で、人事権を乱用し、日常的なハラスメントを働くなど身勝手な行動を繰り返してきたことが事の本質である。」と報告書もこの項の冒頭で述べている。報告書に従い、広河氏個人にまずは焦点を当て、もう少し詳しく以下の2つの観点から見てみよう。組織としての問題は後述される。

a) セクシャルハラスメント

  • 周囲の評価―「妄想癖」「認知症」「強い被害者意識」 ここもあまり深入りはしないが、「被害者意識」についてだけ簡単にコメントしておく。社員の一人によれば、「常に被害者意識があった。被害妄想がひどく、記憶を自身の都合の良いように書き換え、自身の嘘を信じ込みながら他人を批判することが常だった。加害者であることが明らかな場合でも、自身が被害者だと信じ込んでいるように見えた。この状況を確信犯だという人と、無意識だという人がいた。個人的には全て自己防衛に集約するのではないかと考える」ということであったらしい。結局「自分しか見ていない」ということであろう。実際、別の複数の証言から検証委員会としては、「ハラスメントの背景に、何らかの自らの抑制の効かない(病的?)要因があった可能性は極めて低い」と断じている。

 この被害者意識は、「ハラスメント加害者」として指摘を受けたときに極端な動揺とともに顕著に現れ、自分が「(ハラスメントに関する)価値観が変動する時代の流れについていけなかった被害者」であるかのような口ぶりで語ることがあり、以前から許されていなかったことをしてしまったに過ぎないのだということを正面から受け入れられない要因の一つとなっている。

  • 「立場」という権力の無自覚 広河氏は、「(自分は)限られた狭い世界のスペシャリストで、世間的には金も権力もなく」従って、セクハラの背景となるような立場でもないし権威もない、とメモなどでしばしば言っているらしい。しかし、狭い世界であっても自分の王国を作り、好き放題にやればそこには権力が生じている。セクハラではあからさまな地位をかさにきた権限を振るったり、強引に相手をねじ伏せたりすることは必ずしも必要でない。一旦、そのような「権力」関係に陥れば、下位者からの迎合は上位者からは「自発的な合意」「積極的な合意」に見えてしまうことがある。上位者は常に自分の立場の権力性に敏感でなければならない。一見するとVoluntary(自発的)だが、実は「余儀なくされた合意」であり、無言の強要によるUnwelcome(望まない)なものとなる。この鈍感さが広河氏自身の「性的合意」のハードルを著しく下げていた原因であろうと指摘されている。

ご都合主義的な権力利用 報告書は、この広河氏の「相手への優越性」を否定し、実際には存在しない「相手との対等な関係性」を自分の都合の良いように場面ごとに主張するご都合主義は、彼の特性でありパワーハラスメントや労務管理においても度々顔を出す、と指摘している。例えば、広河氏は次のような言葉を述べている、「DAYSは、労使関係や搾取などという資本主義の常識が合わない企業を目指して誕生した。それはむしろ運動体という言葉があっていた」。

 広河氏は、週刊文春の記事にある、何度も性交を強要されたと述べている女性の「広河氏から口止めされた」という趣旨の言葉には一貫して強い反発を示している。そして「口止めなどしていない。事実ではないことを書かれている。反論したい」と繰り返し、この女性の意に反する性的関係を強要したことを否定したがる。これに対し検証委員会は、仮に口止めをするなど明白な地位利用の外形行為がなかったとしても、(圧倒的に優越的な人間関係にあるなかで性的関係に誘っているのだから)その一時のみをもって、行為の悪質さに本質的な差異があるということはできない」とし、ヒアリングしたこの女性からの証言は信用性があると認定し、この女性が「口止めをされた」と感じたことは事実であるとしている(加えて、この女性の裸の写真も撮っている)。

 他の幾つかの証言なども考慮して、検証委員会は「広河氏は、客観的には明らかに優越的な地位を利用して性的関係を迫っていたにもかかわらず、その自覚が無かった、あるいはある程度自覚はあっても、それを認めることは自らを不利な立場に置くと考えて否定しているのではないかと思われる」、つまり「一方では、自分の権力を自覚的に振りかざし、他方では、これに頓着せず明らかに自分より劣位にある女性たちに対し対等な関係であるかのように振る舞うという、自分に都合のいい独善的な態度を取っているとしか言いようがない」と結論している。

  • 性暴力についての理解と女性蔑視 「広河氏は、戦場での女性の性被害などを取り上げているのに」という疑問が各方面から投げかけられているが、それに対して、氏はそもそも女性に人権などわかっていなかった、で済ませるのでなくもう少し普遍的に考えられるべきテーマがあると検証委員会は指摘する。その理由は、「女性への性被害を問題視するような言動を取りながらその一方で女性に対し性暴力をふるい、それが本人の中で同居してしまうという現象が、広河氏に限らず、人権侵害と闘うことや社会正義をテーマに掲げる組織の中で繰り返し起こされてきた事件でもあるから」。

 確かにDAYS JAPANではこれまで、スーダン・難民女性の苦難、日本軍「慰安婦」問題、コンゴのレイプ被害者シェルター、段ボールハウスの少女、暴力ポルノ、アダルトビデオの中の犯罪、アフリカ・レイプにおびえる女性たち、のような様々な性暴力をテーマとして扱ってきたが、検証委員会の指摘は、それらはわかりやすい「あからさまな暴力」であるという点である。他方広河氏が被害者らに行ったのは明白な性暴力だが、相手に対する優越的な地位に乗じるという手段によるものであって、「あからさまな性暴力」があったわけではない。このことは自身の性暴力の正当化のための弁「私はそうした暴力的なことはやっていない。あくまで合意によるものであり、決して性暴力などというものではない」に都合よく利用されている。すなわち、性暴力の理解の偏りが顕著である。

 また、広河氏の性的誘いに対し、毅然として拒否した女性たちに、様々な嫌がらせや脅しまでもかけたりしていることから、検証委員会は、そもそも女性を対等な存在として認めていなかったと推測している。さらには、職場という、仕事を媒介につながっている人間関係において、個人的に親密な関係が築かれることも無かったままいきなり性的関係に誘うということ自体が、女性というだけで性的対象・存在として扱うという女性蔑視意識の表れだとも指摘している。

 さらには、検証委員会は、広河氏の男女関係観・恋愛観には、いわゆる「フリーセックス」論が自己の性的行為を正当化する論拠の一つであった可能性も指摘している。広河氏によれば、被害女性らとは「つきあっていた」のであり「大人の男女の関係」ということであったらしいが、仮にそうであったとしても、妻がいながら親子以上に年齢の離れた若い女性を次から次へと「恋愛関係に誘った」というのはそれ自体非常識で異様なことであるのでは、という指摘に対しては「不倫関係を周囲に隠す」という意識は全くなかったとし、まさに「フリーセックス」を実践していたという自己主張にも聞こえる回答をしている。すなわち氏は、「フリーセックス」論を、若い女性を一方的に性的存在とみなす女性蔑視意識や自分の立場が持つ優位性を都合よく無視して性的関係を強要したことを糊塗する手段として、主観的に利用していたということであろう。

  • 「性的関係への合意」と認知の歪み 広河氏による「合意の拡大解釈」に向けた作業は様々なテクニックを駆使して行われたことが広く証言されている。例えば、やんわりとした「性的な関係についての話題」や「フリーセックスについての議論」を投げかけたり、相手の交際状況などの性的な経験を聞き出すことで、許容範囲を探ろうとしていた。また、仕事である写真家としての技術や経験も動員して性的な誘いかけをしていた。さらには、「仕事のための二人だけの合宿」の提案、「仕事のアシスタントとしての同伴」なども計画していた。

 問題は、こうしたテクニックを駆使したり、仕事に絡む誘いをしておいて、相手が喜んで応じた時点で、勝手に「性的関係に脈がある」と捉えていた点である。仕事や指導の誘いに応じたことを「性的関係への合意」と解釈することはあまりにも独りよがりであった。結局、広河氏が断片的に思い返し繰り返すところの「性的合意に繋がるサイン」は客観的にはそうは言えないものばかりであり、現に被害女性たちも強く否定している

 すなわち、若い女性を一方的に性的存在として扱う視線と女性からの性的な承認によって自信を得たいという氏の願望が「性的関係への合意を得たと認識するハードル」を極端に下げる方向で作用した結果生まれたのがこの認知の歪みである。

DAYS JAPAN広河隆一氏による「性暴力事件」について (4)-1

―デイズジャパン検証委員会による報告書(2019/12/26公開)についてのコメント(1/3)― 

 報告書(デイズジャパン社のホームページhttps://daysjapan.netからダウンロード可能)はかなり長文(A4 112頁)で詳細なものであり多岐に渡っているので、まず以下に目次を引用する。なお委員会の委員は金子雅臣(職場のハラスメント研究所 代表)、上柳敏郎(弁護士)、太田啓子(弁護士)の3氏である(同名記事 (1)参照)。

第1 調査経過

第2 デイズジャパン社及び広河隆一氏の概要等

第3 広河氏によるハラスメント行為

第4 ハラスメント発生の原因

第5 デイズジャパン社の労働環境

第6 会社解散決定に至る経緯

第7 労働組合結成とデイズジャパン社の対応

第8 会社解散の問題点—「偽装解散」だったのか

第9 一般財団法人日本フォトジャーナリズム協会の現状についての状況

第10 デイズジャパン社のコンプライアンス

第11 広河氏の現在の考え方と検証委員会の意見

第12 ハラスメントの責任履行の勧告

第13 デイズジャパン社の事件から得られる教訓 

  まず初めに、この報告書自体はかなりの期間(9ヶ月?)をかけたせいもあり、詳細かつ客観的な(デイズジャパン社との独立性が担保されている)ものとなっており、事件前後の経過もある程度追うことができて、十分評価できると思われる。この種の社会的に話題となった事件で、ここまでの詳細な報告は恐らく初めてではないだろうか。大学などでのアカデミックハラスメントでは、被害者のプライバシー保護を隠れ蓑にして、被害実態や加害者の詳細がうやむやにされ、結果的に加害者を擁護したり、被害者に二次被害を与えるることは日常茶飯事である。報告書の内容で印象に残った点の主観的要約と幾つかの項目へのコメントを試みてみたい。

 1)調査過程

 2018年末の、週刊誌による広河氏のハラスメント告発以降、当初はデイズジャパン社の依頼により直後に会社代理人に就任した弁護士と年末まで編集長であった人物による調査、面談が開始された。しかしながら「調査に熱心すぎた」その弁護士は2週間足らずの2019年1月13日、デイズジャパン社により解任されたようである。その後、検証結果を掲載するという最終号の期限(3月)が迫る中、会社代理人とは別の第三者に検証作業を依頼することになり、2月上旬に発足したのがこの検証委員会である。

 調査を進めるにあたって、デイズジャパン社と重要な関係をもつと思われる広河事務所、日本フォトジャーナリズム協会などにも委嘱・調査の対象を拡げることになった。調査期間は(結果的に)2月中旬から12月20日までとなったようである。調査は資料調査とヒアリングが行われたが、一言で言ってそれらの作業は多くの制約を受けた困難なものであったようで、その要因として挙げられているのは次の3つである。

a) デイズジャパン社からの情報提供の不足

 特に過去に在籍していた社員などについての情報が未整理で混乱していて、そのため関係者の名簿作りから始めざるを得なかったようであるが、社員以外にも多くの(短期)ボランティアやインターン、果てはなんら契約関係のない一時的な「アシスタント」という職種も存在し、曖昧でほとんど記録も無い状況であったらしい。すなわち、調査しながら調査対象を発掘し、その範囲を決めていくような作業であったという。当初判明したデイズジャパン社の関係者数はおよそ以下のようであったという:

  • デイズジャパン社元従業員;82名
  • 広河事務所元従業員;11名
  • ボランティア;13名
  • 役員;5名
  • 協力会社アウレオ社*の出向社員;6名

*監査役 守屋祐生子氏が代表取締役を務める健康食品販売会社

 そして最終的なヒアリングの実施人数は45名(デイズジャパン社元社員11名、広河事務所元社員4名、元インターン1名、アウレオ社出向社員2名、役員及び元役員5名、フリーランス編集スタッフ4名、デイズジャパン社顧問税理士1名、顧問社労士1名、その他ジャーナリストら広河氏と交際があった者12名)であった。

b) デイズジャパン社役員らの言動等への不信感の影響

 まずそのきっかけとなったのは、先に述べた、最初に会社代理人になった弁護士の1月中旬での解任である。熱心にハラスメント実態の解明に取り組もうとしていた弁護士を解任することは執行部への不信感増大につながった。これと関連して、当時労働組合を結成していて会社解散に伴う退職時期を交渉していた一部社員が、最終号の編集などから排除されたという事情も大きい。当初は年末退職の予定であった社員らも、広河氏のハラスメント告発による混乱の中で、最終号が検証委員会による(中間)報告と外部スタッフによる(セクシャル)ハラスメントについての企画記事で構成されることになったため、改めて編集に参加する意欲を見せていたらしいが、全員排除されたらしい。

 さらに同名記事 (1)でも触れたが、1月末の本検証委員会の発足にあたり、その(社員に対する)説明の中で、川島氏(取締役)が、社員からの「検証に応じてなされた証言を役員が検閲するか」という質問に対し、「会社に不利益になるものは載せないのが当然である」と回答するという事態が発生。これを聞いたものは検証委員会の公正性に疑念を抱くことになった。デイズジャパン社からの独立性を保証する形で委嘱され発足した検証委員会の正当性を委嘱者自らが否定するという体たらくである。この発言は、元社員有志により結成された「DAYS」元スタッフの会のHP

https://days-former-staffs.jimdofree.com/

で発表された声明(2019/3/22付)で初めて指摘された(検証委員会もこの時初めて知り、直ちに川島氏ら幹部に確認している。彼らは当初否定していたがその後認めるに至った)。このことについて検証委員会は「一部の関係者に対し事情を説明して理解を求めるための時間と労力は相当なものを要することになってしまったのは事実である」としている。なお、最終号掲載(2019年3月号)の検証委員会作成記事については、以下のようなコメントがある。「全貌把握には至っていないため、、、『中間報告』という形式をとることは控え、その時点での広河氏の説明及びこれについての批判的考察を入れて報告するに留めざるを得なかった」。

c) 広河氏の非協力

 結局デイズジャパン社からの情報提供によっては、広河氏から性的被害を受けた女性達の多くには接触できなかった。それに加え、広河氏本人は、過去に性的関係をもった女性達については「記憶がない」としてその女性達の名前を明らかにすることはせず、『被害者が誰であるか把握すること自体に相当の時間と労力を要した』という状況であったらしい。

 また、検証委員会が会社の解散決定に関連して広河氏が出資し(500万円)2018年11月に設立した」一般財団法人フォトジャーナリズム協会について調査しようとしたが、設立時の役員が2019年6月に変更された後の新役員について、広河氏は明確な回答を避け続け、やっと11月に登記で明らかになるという事情があった。さらにその後においても、「協会」は度重なるヒアリングの申し込みにも応えず文書による回答も得られないという状況が続き、検証作業の著しい遅れに繋がった。

 検証委員会の次の指摘はある意味本事案の大きなポイントであるかも知れない:広河氏、及び役員らによる非協力的態度は、デイズジャパン社は既に解散が決定しており清算段階に入った会社であるという、本件の特殊性に由来するところもある。すなわち一般的には、「会社等が組織内の不祥事について第三者による検証を依頼するのは、(客観的調査によって)組織の問題を糾して社会的信頼を回復し、その後の事業を健全かつ円滑に行うことが目的である。今回の場合は、デイズジャパン社には今後に事業継続が無いという事情から、広河氏及び役員間で信頼回復のモチベーションが働かなかった、と結論している。

 2)広河氏、デイズジャパン社の概要等

a) 広河氏の概要

  • 1943年中国天津市で出生。早稲田大学を卒業後、1967年5月にイスラエルで取材を開始し3年間滞在。以降、パレスチナ難民を巡る中東問題、核、チェルノブイリや福島の原発事故等の問題について各地で取材を行い、フォトジャーナリストとして活躍。
  • 1987年から1990年まで講談社の「DAYS JAPAN」編集部に参画し、1990年1月廃刊後はフリージャーナリストとして活動。「DAYS JAPAN」復刊のため2003年にデイズジャパン社を設立し、以降2014年9月まで「DAYS JAPAN」の編集長を努めた。以降は発行人(下記b)の経過参照)。
  • 広河氏には、講談社出版文化賞(1989)(チェルノブイリとスリーマイル島の原発事故報道)、読売写真大賞(1992)(レバノン戦争とパレスチナ人キャンプの虐殺事件報道)、土門拳賞(2002)(写真記録パレスチナ)など著名な賞の受賞歴がある。また、「パレスチナ瓦礫の中の子ども達」(徳間書店)、「新版 パレスチナ」(岩波書店)等の著書もある。
  • 取材・報道の傍ら、救援活動にも尽力。1991年「チェルノブイリ子ども基金」設立、ベラルーシやウクライナの病院等に日本から医療物資や医療費などの支援を行った。1994年「パレスチナの子どもの里親運動」を設立、難民キャンプに「子どもの家」を建設。福島原発事故後は、「DAYS放射能測定器支援基金」、「DAYS被災自動支援募金」を立ち上げ、2012年には福島原発事故で被爆した子どもたちの健康回復のための保養センターとして、NPO法人「球美の里」設立。なおチェルノブイリ救援について2001年にベラルーシから国家栄誉勲章を、2011年にはウクライナからウクライナ有功勲章を受けている。
  • 2018年12月26日の週刊誌によるセクシャルハラスメント報道をきっかけに同日付けでデイズジャパン社の取締役を解任された。

 b) デイズジャパン社の概要

  • 設立の経緯:1987年、広河氏は講談社の「DAYS JAPAN」編集部に、当時編集長であった土屋右二氏からの誘いを受けて参画、1998年の創刊号から廃刊となる1990年1月号まで同誌の発行に携わった。その後、広河氏と講談社「DAYS JAPAN」元編集長の土屋右二氏、デザイナーであった川島進氏とで「DAYS JAPAN」復刊をめざし、同人らが取締役となって2003年にデイズジャパン社を立ち上げた。月刊誌「DAYS JAPAN」は2004年3月の創刊号から2019年3月の最終号まで、通算183号を発行した。
  • デイズジャパン社は、雑誌・書籍の出版、写真展・報告会の開催、災害被災地等で行う救援活動の請負及び情報提供サービス等を目的としており、「DAYS JAPAN」誌の発行のほか、書籍の出版や写真展等のイベントに加え、写真コンテストであるDAYS国際フォトジャーナリズム大賞を主催していた。
  • 会社役員等:設立時は代表取締役広河氏、取締役土屋氏及び川島氏、監査役が守屋氏(前述)。以降広河氏が代表取締役を務めていたが、2018年12月26日の解任以降は川島進氏が代表取締役に就任している。(その後)2019年11月20日小川美奈子氏が取締役社長に就任し12月30日付けで退任している。2019年3月31日株主総会決議(発行済株式数200株、現在の株主は守屋、広河、川島、土屋、富岡、小川の各氏らしい)によりデイズジャパン社は解散。現在は川島氏が代表清算人となり清算手続中。

 c) デイズジャパン社の財政

  • 定期購読者の存在と広河氏の圧倒的存在感

 雑誌「DAYS JAPAN」は、創刊前から定期購読者を募集して確保し、それによって維持できる程度の売り上げを見込んで創刊されたようである(広河氏の説明による)。この異例なことが可能であった背景には、初期の購読者の中には、当時既に広河氏が書いていた「HIROPRESS」の購読者や以前からの広河氏の著作の愛読者、支援者が多かったためと考えられる。これらの雑誌創刊に至る経緯や初期の財政的基盤を従来からの支援者に依拠して作っていたこと等から、DAYS JAPAN誌における広河氏の圧倒的な存在感はよく分かる(これこそが長期で広範かつ悪質なハラスメントの背景である)。

  • 決算報告

 直近第15期(2017/10/1~2018/9/30)の決算報告概要は下記の通りである。売上高の相当割合が定期購読に占められていたので、定期購読者を増やすこと、既存の定期購読者の継続がデイズジャパン社の売り上げ確保には非常に重要であった。

定期購読売上高 約5,900万円(約61%)、取次店売上高 約1,400万円(約15%)、その他商品売上高 約1,400万円(約14%)、広告収入 約1,000万円(約10%) 合計 9,700万円。

  • 守屋監査役及びアウレオ社による支援

 アウレオ社は守屋氏が、1997年に創業した健康補助食品等の製造・販売をする会社で、関連会社として健康補助食品等をネット販売する株式会社シェアワールドをもつ(こちらの代表取締役も守屋氏)。広河氏との最初の接点は、DAYS JAPAN創刊より10年以上前のパレスチナ里親支援活動であったらしいが、2003年頃から広河氏がDAYS JAPAN 創刊のための支援を求める活動を進める中で守屋氏が多額の寄付をし、株主になることと監査役に就任することについての広河氏の打診に応えたという経緯があったようである。以下、アウレオ社及び守屋氏による経済的支援を列挙する:

  • 大口株主になる(筆頭株主)。
  • 発刊前に数百冊の定期購読を約束し14年半(350万円/年)継続。総額約5,000万円。
  • DAYS大賞のスポンサー、総額1,400万円(14×100万円)
  • DAYS JAPAN誌への広告費用 各号30万円。
  • 広河氏の活動自体への支援:

映画「人間の戦場」*製作費用(上映による収入で足りない分)、保養施設「球美の里」へバス1台。

* http://www.ningen-no-senjyo.com/

  ただしアウレオ社は、デイズジャパン社で人手が足りないときや広河氏が対応したくない人事上のトラブルが発生したときなどに、同社の社員をデイズジャパン社に出向させて働かせるということまで何度も行っており、その人件費は全てアウレオ社が負担していたらしい。後述のように、この事情が広河氏によるハラスメントをより複雑化・助長していた面もあることは見逃せない

 そういう問題はあるにしても、アウレオ社、守屋氏による支援はデイズジャパン社の存続を財政面で支えた「大スポンサー」であったことは間違い無い。しかもそれは、デイズジャパン社、広河氏を無条件で支える一方通行という形でなされたようである。

*この原稿執筆中の1月12日、ハラスメント被害者の一人によるデイズジャパン社を訴えた損害賠償請求が提訴されたというニュースが流れた**。これは恐らく本件に関連して最初に司法的判断を求めるものになると思われる。

** https://mainichi.jp/articles/20200112/k00/00m/040/053000c

DAYS JAPAN広河隆一氏による「性暴力事件」について (3)

広河隆一氏「性暴力事件」に関連する本ブログの記事について

 これまで(1)(2)で見て来たように、この事件は、限られた業界・分野で強大な権威をもつ人物が自分の特定分野における業務上の実績・権威に基づく周囲の畏怖、尊敬の念を、無意識に又は意識的(故意)個人的・性愛的関係における魅力・好意に刷りかえ(圧倒的勘違い)、自分の性的暴力を継続したり正当化しようとしたきた典型例でもある。ところが、アカデミックハラスメントを主に扱う本ブログでも既に多くの類似例(以下参照)が報告されている。

アメリカサイエンス(学術)界のセクハラ事件 (1)

アメリカサイエンス(学術)界のセクハラ事件 (2)

セクハラ常習教員がのさばりはびこった結果組織モラルが崩壊 (1)

セクハラ常習教員がのさばりはびこった結果組織モラルが崩壊 (2)

セクハラ常習教員がのさばりはびこった結果組織モラルが崩壊 (3)

 アカデミックハラスメントでは、政界、マスコミ・ジャーナリズム業界等で最近話題になってきた「性暴力」事件が、大学・研究機関や学会等では、話題になり難い故に、もっと頻繁かつ悪質な形で起きていること、を是非判って頂きたいと思います。考えてみれば、政界、ジャーナリズム業界、(医)学会のいずれもこれまで男性が圧倒的な力を持ってきた業界です。出生率が上がらないのは残念ながら女性の人権を無視し続けてきた男性のせいであるのは間違いないようです。

 アカデミックハラスメンについては、あなたの親族・友人やあなたの大切なご子弟が、このような被害を日常的に受けている可能性は決して稀ではない、ということを再認識して頂きたいです。注意深い眼で是非周囲を眺めて頂き、おかしいなと思ったら是非声を上げて下さい。もちろん所属組織外のわれわれに連絡頂いても結構です(ご相談・お問い合わせ メニュー参照)。

DAYS JAPAN広河隆一氏による「性暴力事件」について (2)

「その後」の経過

 3月20日のDAYS JAPAN最終号の発行後の動きは余り多くないようである。目に付いたものは以下の記事であるが、見落としがある可能性があり、その場合はお赦し頂ければ幸いである。これに関しては、参考になるまとめサイトの記事https://togetter.com/li/1330896もあるので、是非ご参照頂きたい。

 

2019/3/22 写真誌(DAYS JAPAN)元スタッフ・元社員らが「DAYS元スタッフの会」https://days-former-staffs.jimdofree.comを結成。これまで同誌などに関わったスタッフらに連帯を呼びかける声明も発表。「証言を集め、問題を多方面から検証したい」としている。 

https://www.kanaloco.jp/article/entry-155962.html

https://www.kanaloco.jp/article/entry-160098.html

https://www.asahi.com/articles/ASM3N6VFDM3NUCVL01V.html

  「元スタッフの会」のホームページ上にある「会」発足声明、ケース集のページは是非訪れて頂きたい。前者には、<会の目的>、<会発足の経緯>、<呼びかけ>が含まれており、特に<会発足の経緯>には、(1)で触れたDAYS JAPAN 社の人事の「混乱」に絡んで、被害者を含む当時の事情を知るスタッフがほぼ全員排除されたことが述べられている。また、外部の第三者委員会の検証に協力しないもう一つの理由として「当時の社員数名が『検証に応じてなされた証言を役員が検閲するか』を確認したところ、『会社に不利益になるものを載せないのは当然だ』との回答があった。自分たちの証言が意図的に改変、もしくは隠蔽されることを懸念している」とし、独自の取り組みを進める拠り所としている。 

2019/3/24 シンポジウム「広河隆一氏の性暴力から考える」(主催:早稲田大学ジャーナリズム研究所)が開催され、ジャーナリストら約160人らが参加。 

https://www.kanaloco.jp/article/entry-156475.html

https://mainichi.jp/articles/20190326/k00/00m/040/361000c?pid=14516

https://buzfeed.cpm/jp/akikokobayashi/days5?bffbjapan&utm_term=4ldqpgp#4ldqpgp

  上記記事によれば、登壇者は週刊文春で問題を最初に報道したライターの田村栄治氏、バズフィードジャパンの小林明子チーフニュースエディター、「メディアにおけるセクハラを考える会」代表の谷口真由美・大阪国際大准教授、後藤弘子・千葉大大学院専門法務研究科長。司会はアジアプレス・インターナショナルの野中章弘代表で、各識者が最終号の検証報告をどう見るか、意見を述べたようである。他に、参加していた津田大介氏(ジャーナリスト)やフェミニズム思想に詳しい岡野八代・同志社大教授らも発言したという。ここでは特に、谷口氏と後藤氏の意見を紹介する:

 谷口氏;「(検証号)第2部(後述)への協力依頼があったが断った。事前に広川氏の面談調査の結果もわからないということだったので、協力しようがないと判断した」、その上で「この段階では検証になっていない。資料的価値があるかもしれないが、報道の自由は何のためにあるのか。性暴力被害に真摯に向き合っているのか」と問いかけたという。

 後藤氏;「広河氏がどう責任を取るのか、DAYSとしてどう責任を取るのかが全く見えない報告書」と感想を述べ、「刑法の強制性交罪の成立には暴行や脅迫が必要という『暴行脅迫要件』を取り上げ、「2017年の刑法改正時にこの要件の撤廃を求める声が強く上がっていたが、実現しなかった。『暴行がなければ性暴力に当たらない』という主張は加害者の典型的な弁明だ。ここで広河氏の『合意だと思っていた』という主張を掲載することで、今後同種の事案で加害者が『合意』を主張する際にこれが利用されるのではないかと危惧している」と話したという。 

3月20日最終号の内容について

第1部:検証委員会報告

 (1)で述べた3氏(金子雅臣、上柳寿郎、太田啓子)がメンバー。「会社の干渉なく独立して検証を行うことを条件として3人は委員として就任した」とされ、「休刊後も関係者のヒアリングを続け最終報告をめざす」ようである(ネットで発表?)。上記の幾つかの記事やシンポジウムで指摘されているように、広河氏の面談調査(聞き取り)結果がメインで被害実態の調査や検証結果は無い。この調査は、「担当者」が聞き取りを行い、広川氏の主張に逐一考察を加える形式でまとめられていて、「広川氏個人の、極めて不十分な個別の問題点が次々と指摘され、注意に鈍感な子どもに行うような「説教」が行われている印象である。その一方で、圧倒的な権力をかさにきて行ってきた多くのセクシャルハラスメント(性暴力)、それと表裏一体であったパワーハラスメント、さらにはそれらを許容してきた取り巻きの人々などの問題、などの具体像が殆どなく、全体像が極めて見えにくくなっている。この問題の根本的解決には、最終報告書を待つしか無いのであろうか?果たしてそれは十分なものになるのか、今後も注視して行きたいと思う。以下にはQ1~Q8まである問答の内、Q1とQ6について、広河氏の解答と調査担当者の見解を要約して載せる:

Q1 デイズジャパンで扱ってきた性暴力と自分の性暴力の違いは?

(広河)DAYS JAPANはこの15年間40~50もの多くの「女性に対する暴力」に企画を取り扱ってきた。発刊の志の幾つかの柱の一つでもあった。それゆえ「私は自分が性暴力で女性を傷つけていることを指摘されても、当初は全く理解できませんでした」。そこで、もう一度考えたとき「私がDAYSで扱った『女性への暴力』は『あからさまな暴力』、『身体的な暴力』と捉えていたが、、、、『あからさまでない暴力』、『非身体的な暴力』は無視していたことに気づいた」。非身体的暴力によるその及ぼす傷の深さ等について、私の被害者が10年後でもPTSDを発症していることを知り、はじめて加害の可能性を認識することが出来た。これまでは「女性への暴力の一面しか取り上げることが出来なかった。

(調査担当者)外見的には、氏の言う「合意」に基づく「性的な関係」は「あからさまな暴力」とは一見全く無縁に見えるが、実は地続きの同根の問題である。問題の焦点は「暴力的かどうか」の外見ではなく、まさに意に反した強制されたものかどうかである。この意味で本来重なるべき二つのテーマが広河氏の中で(都合良く)分離されていることが大きな疑問となっている理由である。この問題に氏は真正面から答えねばならない。

Q6 「不本意な合意」「合意の強要」

(広河氏)私は、相手の同意があればそれはセクハラではないと考えてきた。(しかしながら)相手がいくら合意しても、その合意の中身は本意ではなく、仕方なく、つまり合意せざるを得ない立場や力関係で合意しているのだと考えるべき、という考え方は私に取っては新しいものであった,,,この中身や深さは、正直言って中々理解することは困難であった。男女間では合意があればいいのだと考えていて、田村氏が女性達を取材した結果では、合意は認められると述べていたから、まさか私の行為が「性犯罪」として週刊文春に掲載されるとは思ってみなかった。

私に対して、「強姦」とか「レイプ」という言葉で批判がされている。それに対して「合意があった」のだからそれらには当たらない、またあからさまな暴力などは用いていないのだから、それらと私の例とは一緒にしないで欲しい、などと(自己防衛の)言葉を繰り返してきた。しかし私自身も「強姦」とは何かというとき暴力や脅迫を思い浮かべるいわゆる「強姦神話」に影響を受けてきたことがわかってきた。

被害を行けたという方には謝罪しなければならない。「性暴力」や「セクハラ」、「パワハラ」に対する認識を深めながら、事実を確定する作業も行い、被害者にはきちんと謝罪を出来るようにしたい。

(調査担当者)広河氏は当初「暴力は無く」、「合意があった」として女性(達)との性的関係がレイプに当たらないのは当然だとしていたが、その後「非身体的暴力」、「不本意な合意」という言葉を知り、相手との関係性における自らの地位が、相手に「不本意な合意」を強いていた可能性について言及するに至っている。氏が「合意」と感じていたものは、不本意に「合意」せざるを得なかったという状況であり、はじめから合意しないという選択肢がほぼ存在しない状況における「合意の打診」は実質的には「合意の強要」に等しい。

 ただそもそも、なぜ当時、氏が「当該女性達との間で対等に自由な合意を形成できる余地があった」と考えたのかはやはり疑問である。氏にはどこかで、相手が自分に向ける敬意や信頼を利用し、それに乗じて若い女性と性的関係をもつことが出来るという意識はあったのではないか。問題は、「僕『の仕事』に魅力を感じたり憧れたりしていた女性達」が氏に向ける敬意の目線を、氏が勝手に恋愛感情や性愛的な行為に読み替え、それに基づいて行動していたことである。これらの行動を自己正当化する根拠として、形式的「暴力が無く」、見かけ上の「合意があった」と強弁しているだけの気がするがどうであろうか?

第2部:「性暴力ハラスメント」にみる構造とは?についての意見

 この部分の責任編集者は林美子氏で、肩書きはジャーナリスト、「メディアで働く女性ネットワーク(WiMN)」代表世話人、元朝日新聞者記者、などとある。多分、ネットや業界では有名人なのではないかと思われるが、素人の1読者にとっては(説明が無いので)なぜ林氏がえらばれたのか、どうして適任なのかもピンと来ないのが正直なところである。そうなると提示された内容で判断するしかないが、「広河氏の性暴力をどう考えるか」という編集責任者を引き受けた思い(経緯)について書いた文章に簡単にコメントしてみる。

 朝日の記者時代からの広河氏との付き合い(その際は氏がそういう人物であることに「全く気付かなかった」としている)に触れた後、今回の最終号の編集依頼があったときのDAYS JAPANからの説明を紹介している。すなわち「最終号を、広河氏の事件を含め、性暴力やセクシャルハラスメントが蔓延する日本社会の構造について読者が考えるきっかけとしたい、それがジャーナリズム雑誌としてのDAYS JAPANの最後の務めだ」というものであったらしい。この時点では、林氏自身は、やめていった編集部員だけでなく肝心の被害者からも殆ど話を聞けないまま最終号を出すことになるとは予測していなかったかも知れない。しかしながらこの説明により編集責任を引き受けたことが、第1部の不完全さにより、結局広河氏の件を日本社会の構造一般の問題に薄めてしまおうというDAYS JAPAN側の(無意識の?)意図に結果として協力することになっている気がしてならない。検証号で必要なのは、いまさら上から目線で読者を「指導」するのでなく、一つ一つの具体的事実の詳細な発掘・調査と広河氏本人への確認であろう。それをやらないまま、加害者本人に弁明の機会のみを与えることはあってはならない。まさに、第1部の不完全さが第2部の意義を台無しにしている可能性は大きい。以下、「性暴力を理解する」、「権力とは何か」、「同意と合意」、「ハラスメントとは何か」という記述が続くが、以下の内容と重なることも多いのでここではあえてスルーする。

 インタビュー記事などを寄せた方々(9名)もいずれも詳しく存じ上げないので、これも私自身が勉強になった(刺激を受けた)と思うものを幾つか紹介するに留める。まずは全員の記事の小見出しと筆者を記しておく(敬称略)。これで内容もかなり推測できる。

1) 男性は女性を鏡にする自称「反権力、反体制」男性が陥る「権力志向」   伊藤公雄(京都産業大学客員教授)

2) セクハラ「常態化」するメディアメディア・記者こそ生活感・人権感覚を取り戻そう 南 彰(日本新聞労連中央執行委員長)

3) 自分の持つ影響力や権力に自覚を 

大澤祥子(一般社団法人ちゃぶ台返し女子アクション共同代表理事)

4) 対等でなければ同意はない同意がない性的行為は性暴力である

山本 潤(一般社団法人Spring代表理事)

広河氏の性暴力事件について「刑事的に責任を取らせるのはおそらく難しい」としつつその必要性を考えたいとしている。その中で、「加害者が『同意があった』と誤信したら無罪になってしまう」日本の現状に対し、ドイツの刑法、及びイギリスの性暴力対策法の考え方を紹介している。

ドイツでは、2016年の刑法改正で、加害者による暴行脅迫は性犯罪の成立要件ではなくなったという。またイギリスの「対策法」では、「能力」と「自由」がそろって初めて「同意」ができる、と書いてあるという。ここで「能力」とは、年齢や、知的障害の有無、酩酊状態かどうかといったことで、「自由」とは、暴行・脅迫や上位にある地位の利用がなく、その人が断る自由が保障されていること、であるというすなわち、対等という関係がなければ同意というものは存在しない従わなければいけない状態があればそれは性暴力だ、ということになる。

また、組織における「権限」について、上のものが持つ権限はきちんと仕事をするための権限であって、(相手に同意を得ず)性行為をするための権限でも、怒鳴ったりしてストレスを発散する(パワハラをする)権限でもない、という基本的な指摘もしている。大切なのは、「女性を同じ人間だと思い」対等に扱えるかという点で、外国で見かける性的に成熟した対等な関係で、高め合い尊重し合う関係が日本ではなかなか目に見えないとされる。Springの活動を通じ目指していることは、「同意がない性的行為は性暴力」という認識を世の中の当たり前にすることで、特に今は、刑法の暴行脅迫要件の撤廃について活動をしている、すなわち、「性行為に同意はなかったが、暴行脅迫も無かったから有罪にできない」みたいなおかしな話は終わらせたいという。

5) セクハラを周囲が黙認することは加害者にお墨付きを与えていること

牟田和恵(大阪大学大学院人間科学研究科教授)

「権力」関係はどんなにミクロでも「認知のゆがみ」を引き起こし、無自覚かつ残酷なセクハラ、パワハラを引き起こすことが指摘されている。それと同時に、第三者(傍観者)による黙認は加害者の許容(と被害の一層の拡大・長期化)につながることも述べられ、特に男たちが声を上げることの重要性を説いている。「男の加害者は男が注意すれば聞く。だからこそ大多数の男性の意識を変えていかなくてはならない」としている(高齢男性の私も実感として賛成)。性暴力や性被害を扱う視点を加害者〜男性から被害者〜女性へ変えていかないといけない、という結論は重要であると感じる。

6) 人間を「モノ」として見る価値観が、差別と暴力の構造を生んでいる

野中章弘(アジアプレス・インターナショナル代表)

7) 広河氏の問うた戦争被害者への視点とは何だったのか

玉本英子(ジャーナリスト)

8) 左翼の男性たちに告ぐ 反省することは大事ですよ

濱田すみれ(アジア女性資料センター事務局)

「一言で言うなら、(これまで散々セクハラ、パワハラをやってきた)左翼の男たち、いい加減にしろ!ってことですね」。同感。家庭生活における両性の平等をうたっている「(憲法)24条を変えさせないキャンペーン」も重要だと感じる。多分全ての根はそこかも知れないと思う。

9) 閉鎖的な組織に潜むカリスマによる性暴力

白石 草(OurPlanet-TV代表)

「なぜ、これほど過酷な被害が、長い間封印されていたのか」という問いから始まる寄稿は、広河氏がまさに「人権派のカリスマ」であったことによる圧倒的な権力格差とそれを許した周りの人間・組織にその答えを見出しつつ、新しいメディアに相応しい新しい組織規範を紹介している。オルタナティブメディア(↔マスメディア)が掲げるべき条件(*1)がそれであるが、これが既に1960年代に提唱されているのには正直驚いた。また、実際に「組織内で声を上げることや被害を訴えることの難しさ」についても提案がある(高齢男性である私にとっても、第三者として加害者に注意することさえ大変勇気がいったので、この難しさは少しは想像できる)。それは、現在ある、子どもへの暴力防止プログラム「CAP (Child Assault Prevention)」(*2)のような道具・技術を背景にした取り組みがメディアで働く女性には必要ではないか、という指摘である。「このような性暴力やそれを生み出す構造を改善するには、加害者を減らすしかないが、加害者は殆どの場合無自覚なのでそれには膨大な時間がかかる。なるべく早く密室での次の被害者をなくすためには女性自身が自分の権利を主張し、自らの体と心を守るしかない」としている。

*1 「Zマガジン」を立ち上げた社会活動家、マイケル・アルバートによる(訳:神保哲夫『オルタナティブ・メディア〜変革のための市民メディア入門』より。

*2 日本でプログラムを扱っている団体は現在2つあると思われる(東日本と西日本?):

https://cap.j-net, https://j-capta.org/cap/index.html

 最後のコラム「OUTLOOK」を本号にも書かれている斎藤美奈子さんの記事が経営陣の問題に明確に言及・危惧していることが印象に残る。

DAYS JAPAN 広河隆一氏による「性暴力事件」について (1)

(1) 大体の事実経過

この「事件」については既にご存知の方、びっくりされた方も多いと思うが、未だ混乱が収束したと言う状況ではないこの時期(2019年8月現在)に、あえてこれまでの経過と事件の内容・本質について、本ブログ(アカデミックハラスメント情報資料室)の関係者でDAYS JAPAN の一読者の立場から、出来る範囲でまとめ、コメントを試みたい。

まずおおざっぱな事実経過は次のようなものであろうかと思われる(細かい点は正確でない可能性有り)。

 

2018/12/26  この日発売の「週刊文春」19年1月3日・10日号は、広河隆一氏(*1)が事実上主宰していた雑誌DAYS JAPAN (*2) の元ボランティア等7人の女性達による、広河氏の10年に渡る性暴力・セクハラ被害の証言 (*3) を掲載・告発。     

       同日、広河氏自身から短いコメント(*4)が出され、またDAYS JAPAN発行元((株)デイズジャパン)からもコメント (*5) が発表された。

       デイズジャパン社からのコメントでは「広河氏が被害者の方々の尊厳を傷つけてしまった」と詫び、広河氏の代表取締役等からの解任を報告している。また「弊社として、広河氏の言説を看過するわけにはいかず、これに与する立場ではない」として、本人に今後の誠実な対応を求めると同時に雑誌刊行への取り組みの意志を示している。

2018/12/31   (株)デイズジャパンより2回目のコメント(6*)。事件の検証をDAYS最終号(もともと3月末で休刊予定)で公表すると表明。

       この声明では、上記7名以外にも「性暴力」被害者がいたこと、「性暴力」とは別に社員・協力スタッフに対するパワハラともいわれる事例があったことなどを認め(度々の問題提起に対し会社として真摯な対応をして来なかったが)、具体的に踏み込んだ内容となっている。今後については(責任者を入れ替え?)引き続き広河氏個人に対する調査と誠実な対応の要請を続ける他、会社についても今回の問題について「組織としてのありよう」を検証し、最終号で公表するとしている。

 2019/1/31    8人目の被害者が毎日新聞に実名手記を発表。タイトルは「性犯罪の温床を作り出したデイズジャパンの労働環境」で、編集部での過酷な長時間労働やハラスメントが蔓延していた実態を詳述し、広河氏の性暴力が永年隠蔽されてきた背景を分析している。すなわち会社ぐるみで許容されてきたパワハラ体質と性暴力は密接に関係していた訳である。 

http://mainichi.jp/articles/20190131/k00/00m/040/128000c

同日     「週刊文春」2019年2月7日号は、元アルバイトの女性による新たな性暴力被害の証言を掲載。広河氏からの依頼で海外取材に同行した際、現地で部屋が一つしか用意されておらず、取材先の男性スタッフ達から性交渉の依頼があること(真実か?)を伝えられた上で「彼らとセックスするか、僕と一つになるか、どっちか」と迫られたと言う。それから2週間は「悪夢のような日々」であったと語っている。

 2019/2/15    DAYS JAPAN社、最終号の発売を1ヶ月延期すると発表。当初2月20日発売の予定であったが、広河氏によるセクハラ・パワハラ行為についての会社としての検証記事を掲載するとしていた。発売を320日に延期し、3・4月合併号とする (7*)

       この間の編集部、取締役会、検証委員会の変遷に関しては注8*で触れているが、何れにしても、雑誌の最終号で今回の事件の検証を担うべき中心メンバーを巡る混乱振りは素人目にも明らかである。私自身、ジャーナリスム業界や出版界を殆ど知らないので、次々出て来る個人名にコメントのしようも無いが、雑誌を支えてきた人々が受けた衝撃の大きさがその混乱に現れているのだろう。

       次の記事では、本事件の「検証」をめざし、3月中旬に刊行された3・4月合併号(最終号)を紹介し、重要と思われる幾つかの論点(広河氏個人、雑誌デイズジャパンは説明責任を果たしたか?個人及び会社の検証は十分に進んだか?広河氏、或はデイズジャパンの「実績」は全否定されるべきか?)について一読者の観点からコメント・感想を述べてみたい。

 参考記事

https://wezz-y.com/archives/62586

https://abematimes.com/posts/5471992

https://businessinsider.jp/post-182763

https://biz-journal.jp/2019/02/post_26520.html

https://buzzfeed.com/jp/akikokobayashi/daysjapan

DAYS JAPAN 2019年2月号、3/4月合併号(最終号)

 (2) 注1*~8*

*1広河隆一氏 人権派フォトジャーナリストとして知られ「被害者の立場に立って」パレスチナ、チェルノブイリ、福島等についての取材・報道に取り組み、2004年より15年にわたり報道写真誌「DAYS JAPAN」の編集長や発行人をつとめた。75歳。

*2 DAYS JAPAN 一時期定期購読者数は一万人を超えたとも言われる。また、世界的な報道写真賞でもあるDAYS 国際フォトジャーナリズム大賞を主催し、ここ何年かは世界の報道写真家に多くの(副)賞を選考・贈呈している。各地でこの写真誌の「読者会」なるものも結成され、写真展を企画するなど草の根的な支援層も日本各地にあったもようである。

*3性暴力・セクハラ被害の証言 証言の詳しい内容は、元記事を参照されたいが、例えば、2007年頃編集部でアルバイトをしていたジャーナリスト志望の女子大生:広河氏から「僕が写真を教えてあげる」と都内のホテルに誘われ、セックスに持ち込まれた。かねてより編集部内での師の権力を目の当たりにしており「逆らってはいけない人」との思いがあったため断れなかった。その後も業務で叱責されたあとに性交を強要されるなどしたが、立場的に「ここで見放されたらジャーナリストの道は開けない」と思い込み応じてしまった。2008年頃編集部で働いていた当時18歳の女子大生:氏からアシスタントの話をもちかけられたが「アシスタントになるなら一心同体にならないといけないから、体の関係ももたないといけない」と言われ、ジャーナリストの夢のためにセックスに応じた。女性は「断ったら弟子失格の烙印を押されるのではないか」との思いからその後も関係は続いた。その結果。女性は「中くらいのうつ」と診断され、大学を休学、DAYS JAPAN編集部からも離れた。その後写真から離れた生活を送っていたが、東日本大震災の際に広河氏から「アシスタントとして一緒に来ないか」との連絡を受け、夢を諦めきれずに同行。しかしその出張先でも、高熱と薬の副作用で意識朦朧の中、性交を強要された。他にもDAYS JAPAN に関わっていた複数の女性が、「写真を教える」という名目のもとヌード撮影を強要されたり、肉体関係をもつよう誘われたりした過去を暴露している。編集部内で、広河氏によりその圧倒的立場を利用したセクハラが多くの女性に対し長期間行われていたという許し難い恥ずべき状況があったことは疑う余地はないようである。

文春の直撃取材に対し、広河氏自身は女性達との肉体関係は認めつつも「望まない人間をホテルには連れて行かない」、「僕に魅力を感じたり憧れたりしたのであって職を利用したつもりはない(良く聞く論法!)」と反論・弁明している。

 

*4 広川氏自身からのコメント(全文写し)

週刊文春2019年1月3日・10日号に私に関する記事が掲載されました。

この記事に関して、私は、その当時、取材に応じられた方々の気持ちに気がつくことが出来ず、傷つけたという認識に欠けていました。私の向き合い方が不実であったため、このように傷つけることになった方々に対して、心からお詫び致します。

なお、今回の報道により、私は、株式会社デイズジャパンの代表取締役を解任され、取締役の地位も解任されたこと、またNPO法人沖縄・球美の里についても、名誉理事長を解任されたことをご報告いたします。

2018年12月26日 広河隆一

 

セクハラ行為自体についての言及・謝罪は全く無いまま、直撃取材時の反論から唐突にお詫びに転じているがその理由は違和感がある。果たして「向き合い方」の問題だろうか?「気がついていなかったから」あるいは「傷つけたという認識はなかったので」行為自体は仕方が無かったとでも言っているように聞こえる(轢き逃げと同じ?)。

 

*5 デイズジャパン社からのコメント(コメント全文)

読者のみなさまへ

  週刊文春201913日・10日号に掲載された広河隆一氏の記事に関して

  週刊文春2019年1月3日・10日号に掲載された広河隆一氏の記事に関して、本年12月24日、広河隆一氏(以下「広河氏」)から取材を受けたとの報告があり、弊社としては、直ちに広河氏に対して、聞き取りを行いました。

  その結果、広河氏としては、その当時、取材に応じられた方々の気持ちに気がつくことが出来ず、傷つけたとの認識を持っていなかったこと、傷つけたとの認識を持ち得ないまま今日に至ってしまったことを確認しました。

長年にわたってDAYS JAPAN誌の編集長・発行人としてかかわってきた広河氏が、被害者の方々の尊厳を傷つけてしまったことに対して、弊社として、心からお詫び申し上げます。

弊社としては、DAYS JAPANが標榜する理念に照らしても、極めて深刻な事態だと認識し、こうした事態を踏まえ、昨日、臨時取締役会を開催し、広河氏を代表取締役から解任し、また、臨時株主総会を開催し、取締役からも解任いたしました。広河氏との関係も清算中です。

弊社として、広河氏の言説を看過するわけにはいかず、これに与する立場ではないことも鮮明にいたします。

広河氏が、自ら本件について誠実な対応を取ることを求めるとともに、弊社としても、弊社の存在意義をふまえ、最後までDAYS JAPANの刊行に取り組む所存です

末尾ながら、読者の皆様を始め、広河氏とともに活動してきた方々の信頼を失わせる事態となってしまったこと、また関係者の方々に多大なるご迷惑とご心配をおかけしましたこと、深くお詫び申し上げます。

2018年12月26日 株式会社デイズジャパン

広河氏からのコメントと同じくハラスメンと行為自体についての言及は無い。自体の深刻さは指摘しているものの「なぜ深刻なのか」についてもはっきりしない。今後の本人、及び雑誌としての誠実な対応は最低限の義務であり、多くの人々が関心を持ち続けるであろう。

 6*(2回目のコメント全文)

みなさまへ

週刊文春2019年1月3日・10日号の取材に応じられた方々をはじめ、被害にあわれた方々とご家族・関係者の方々、また読者の皆様へ深くお詫び申し上げます。

本年12月26日付の弊社の声明及び広河氏のコメントが発表されて以降、多くの方々からご意見をいただきました。なかには、弊社サイトに掲載した広河氏のコメントについて、「デイズジャパンはあのコメントで良いと思っているのか」と言う厳しいご指摘もありました。

弊社は、本年12月26日付の声明でも明らかにしたように、広河氏から記事の件について報告を受けて以降、継続的に広河氏に対して聞き取りを行っており、声明を発表した後も続けております。聞き取りを通じて、記事で取材に応じられた方々以外にも、同種の件があったことを確認いたしました。

また、弊社においては、今回報じられたような「性暴力」とは別に、(広河氏による?)社員や協力スタッフに対するパワーハラスメントと評価されるべき事態が複数回ありましたが、個別的な対応に留まってきました。

  過去のこれらの問題について、社員や協力スタッフから問題提起があったこともありましたが、会社として被害を受けた方の訴えに真摯に対応し、二度とそうした被害が生じないよう全社を挙げて対策をとることをせず、会社として取り組むべきことを取り組まないまま今日に至ってしまいました

今回の報道を契機として、あまりにも遅すぎましたが、広河氏個人の責任とは別に、弊社としての責任を痛感しているところです。

現在、弊社は、今回の報道を機に就任した弊社代理人を責任者として、広河氏個人の過去の言動による被害実態について調査を行うとともに、広河氏を絶対化させてきた会社の構造・体質についても、役員など関係者への聞き取りなどの調査を行っているところです。

弊社としては、広河氏の解任によって今回の件が終結させられるとは考えておりませんし、そうあってはならないと考えています。広河氏に対しては、これまでの広河氏自身の言動によって被害を受けた方々に誠実に対応することを求め続けていきますし、弊社としても、自らのこの間の組織のありようについて真摯に検証し、弊社雑誌「DAYS JAPAN」の最終号において公表する予定です。

2018年12月31日    株式会社デイズジャパン

7*  デイズジャパンは発売延期の理由を、最終号では「検証委員会の報告に加え、人権や差別をテーマに掲げている団体・個人においても不可視化されてしまう女性差別・ハラスメントの問題に取り組み伝えていこう」と考え「最終号の編集委員を、これらの問題に取り組んできた方々へお願いし、発売を1が月延期することで、現在出来ることを見て頂く」ということにしたと述べている。また検証委員会のメンバーとして次の3名も公表している(8*)。委員長 金子雅臣氏(一般社団法人 職場のハラスメント研究所 代表)、委員 上柳敏郎氏(弁護士)、委員 太田啓子氏(弁護士)。

8* 人事・検証体制の混乱

素人が理解するのはかなり困難を伴うが、この経緯をネット情報など

 https://bunshun.jp/articles/-/10742

 をもとに辿ると大体次のようになりそうである。

1月19日発行の2月号に「編集部の今後の方針と次号について」というメッセージがあるが(内容には後で触れる)、末尾には、DAYS JAPAN編集長 ジョー横溝、編集部 小島亜佳莉、金井良樹 とある。しかしながらほぼ10日後の1月末、ジョー横溝編集長は辞任するが、2月初めの集会で「なぜ15年間みんな黙ってきたのか、掘り起こさないといけないと言ったんですが、それが上に通じず、僕はDAYSを去ることになりました」と語ったと言う。

また「新しい代理人」として2018年末に任命した馬奈木誠太郎弁護士を2週間足らずの2月13日で解任し、次の新しい代理人として、竹内彰志、稲村宥人両弁護士が決まったようである。そして彼らと会社執行部(取締役会?)により、「第三者性を担保した」検証委員会を1月末までに発足させたと言う。検証委員会の委員長には金子雅臣氏(労働ジャーナリストで社団法人「職場のハラスメント研究所」所長)、委員には記述の通り、上柳敏郎氏、太田啓子氏の両弁護士が選ばれた。

今ひとつこの間全く見えないのは会社執行部、即ち取締役会の構成である。広河氏の解任後代表取締役(及びDAYS発行人)に選ばれたのは川島進氏で、DAYS創刊号からアートディレクターをつとめ、デイズジャパン設立当初からの取締役・株主でもある。二人の付き合いは30年以上前に遡り、講談社時代 (1988-90) のDAYS JAPANでともに仕事をした後も広河氏の多くの著書で、装丁やデザインを担当、氏とは盟友ともいえる間柄らしい。最終号の発行責任者はこの川島進氏であった。もう一人の取締役は広河氏の妻で(2018年11月就任)大手出版社の編集者で広河氏の著作の編集も担当しているらしい。即ち 公私とも極めて関係の深い人物である。

3人目の取締役は、先述の講談社「DAYS JAPAN」で編集長をつとめた土屋右二氏で、やはりデイズジャパン設立時からの取締役である。「広河君のことは同士だと思っていた」らしいが性暴力の報道を受け決別を決意、デイズジャパンには1月には取締役辞任の通知を出したと言う。川島氏からは「取締役は3人必要なので辞任は認められない」と言われたが、もうデイズジャパンには一切関わらないと話したという(多分1月末時点)。

バンカ島事件 (3)

世界的な反性暴力の潮流の中で日本(人)は今後何をすべきか?

昨年のノーベル平和賞

  記事(1) の中で、リネット・シルヴァーさんは、最近の#MeToo運動がブルウィンクルさんの告発に確信を与える(勇気付ける)ものになったと言及しているが、注目すべきフレーズとして、”(it’s known) rape and sexual assault are used as weapons in war”レイプや性的暴行は戦争における武器として使われてきたがある。この表現は、昨年のノーベル平和賞が強姦被害者を支援する活動家、ナディア・ムラド氏とデニ・ムクウェゲ医師の二人に与えられた際、ノーベル賞委員会が授賞理由としてあげた「戦争の武器として性暴力が使われるのを終わらせようと努力して」きて、「そのような戦争犯罪について社会(世界)が認識し戦っていくよう、重要な貢献をした」という文章中の表現とほぼ同じである。

BBCの記事*1によれば、二入の業績は以下のように要約できるであろう。

https://www.bbc.com/japanese/45760596

ナディア・ムラドさん:イラクの少数派ヤジディ教徒で、過激派「イスラム国」(IS)に拷問、強姦された(3ヶ月にわたりISに性奴隷として扱われ、繰り返し売買され、性暴力を含む様々な形で虐待された)のち脱出し、ISに捕らわれたヤジディ教徒解放に奔走した。ISから脱出して間もない頃BBCから受けたインタビューで、匿名での撮影とインタビューを断り「いいえ、私たちがどういう目に遭ったのか、世界に診てもらいましょう」と述べたという。現在は国連親善大使として人身売買被害者の救済のため活動し、強姦など性暴力が戦争の武器として使われる現状に対して国際社会として取り組むよう訴えてきた。2016年授賞したバーツラフ・ハベル人権賞の授賞スピーチでは、ISによる犯罪を国際裁判所に裁いてもらい、戦闘手段としての強姦に厳罰を適用するよう、国際社会に訴えかけた。

デニ・ムクウェゲ医師:婦人科の医師であるムクウェゲ氏は紛争の続くコンゴ民主共和国東部で強姦被害者の治療に同僚たちと取り組み、戦争の武器として使われる性暴力による重傷に対する治療法を確立してきた。患者の人数は約3万人と言われる。被害者の多くは、性器など身体に深刻な重傷を負っている場合が多く、それに対する再建手術などの治療法を確立し、被害者に提供してきた。2008年には、国連人権賞、ナイジェリア紙が選ぶ「今年のアフリカ人」など様々な賞に選ばれたほか、2014年には、欧州議会が優れた人権活動家に贈る「思想と自由のためのサハロフ賞」を授賞。現在国連平和維持部隊の警護を受けながら、コンゴ東部ブカブのパンジー医院で生活している。戦闘行為としての強姦を厳しく取り締まるよう、国際社会に呼びかけてきた。

日本で相次ぐ性暴力事件に対する無罪判決

  これに対して最近の日本における酷い状況はどうだろう?THE BIG ISSUE JAPAN 360号の「雨宮所凛(あめみやかりん)の活動日誌」によれば、この3、4月性暴力事件に対する無罪判決が相次いでいる。3月12日福岡地裁:テキーラなどを飲まされた女性が性的暴行された事件において、男性が無罪判決。3月19日静岡地裁:強制性交致傷罪に問われた男性が無罪。3月28日静岡地裁:実の娘を12歳から2年間性的暴行をした罪に問われていた父親が無罪。理由は、「家が狭い」から家族が気づかなかったのはおかしい、長女の証言は信用できないなどである。4月4日名古屋地裁:中学2年生の時から実の娘に性的虐待をしていた父親が無罪、などである。

 わずか1ヶ月ほどの間に続いたこれら一連の司法判断を受けて、4月11日午後7時から東京駅近くの広場で開催されたのが、性暴力と性暴力判決に抗議するスタンディングデモであった。底冷えする夜であったのに400人もの女性が全国から駆けつけた。手にしたプラカードには「裁判官に人権教育と性教育を!」、「おしえて!性犯罪者と裁判長はどう拒否したらヤダって理解できるの?」、「Yes Means Yes !」などの文字があった。

 最初は著名人が判決への怒りをスピーチしたものの、途中からは多くの参加者(性暴力、セクハラを受けてきた人、17歳の高校生、50代女性、、、)が飛び入りでマイクを握り思いの丈を語ったという。ここでは、紹介されている発言を再掲して、われわれが向かうべき次のステップへのきっかけとしたい。

 「子供の頃に強制わいせつの被害に遭いました。20歳になってから記憶が蘇って、PTSDの症状で学校に行けなくなりました。夜も眠れませんでした。もう10年以上経ちました。非正規で、バイトして、ギリギリで生活してて、それでやってるバイトでセクハラ。ふざけんじゃねえよ!!どうして被害に遭う私たちが社会を転々としないといけないんでしょうか?」「幼馴染だった友人は、家庭内暴力の末に、性的虐待の被害にも遭って、24歳で自殺しました。助けてくれる大人はいませんでした。今日、たくさんの人が花を持って集まった。その花をどうか、生きられなかった私の友達や誰かの友達に、たむけてあげてください」

日本人男性として思うこと

  バンカ島事件については、私自身最近まで詳細は知らなかったが、今回の記事を契機に色々調べてみて、この事件は、従軍看護師とはいえ歴とした民間人で、例え捕虜であったとしても当時でさえ人権はある程度尊重されていたゆえに、虐殺(銃殺)など到底有りえないことだと思われる。それに加え、銃殺の前に強姦するというのは常軌を逸しているという気がする。しかも同様のことを香港、フィリビン、バンカ島と続けて行っているのはほぼ確実である(同じ聯隊かも?)。これらの事実はこの日本軍兵士による強姦・虐殺という一連の行為が戦局などに追い詰められた突発的な行為でなく、大隊のかなり上まで承知していた計画的な犯罪であったことを示唆している。「南京虐殺被害者はもっと少なかった(そもそも無かった!)」とか「朝鮮人慰安婦は強制してやらせたものではない」と幾ら宣伝しても、この事件の本質を見ると世界の世論に対する説得力に著しく欠けていると言わざるをえない。

 この事件の酷さには、私自身日本人(高齢)男性として、そのような祖父、父をもったことを大変恥ずかしく思う。そして、加害者の側からもっと様々な事実の発掘に努める必要があったのに、全くそのようなことが出来ていないことも深く反省している。もちろん今からでも遅くないので(余り時間がないが)やるつもりではあるが。

 このバンカ島事件についてのBBCの記事への大手マスコミの反応は殆ど無かったが、時々話題になるこのような「昔の出来事」に関し、世間一般のいつもの言説は、サトウ氏の見解にもあった「どこの戦争でもあること」、「戦争中の異常な状況下だから仕方ない」、「占領軍も日本でやっていた」、「加害者も被害者ももう殆どいないからもういいんじゃないの!」「加害者も多く戦死しているのだから罪には問えないよ」等の緩くかつ乱暴なものである。本当にこのようなぬるま湯的な総括で世界は許してくれるのかを真剣に考えるときに来ている気がする。このような過去をもつ日本こそ率先して戦争犯罪(慰安婦)博物館などを設立し、戦争犯罪に関する世界的な客観的かつ第三者的な研究拠点を作ると同時に、戦争犯罪を厳しく追及し裁く国際裁判所等も誘致すべきではないだろうか。公正な国際裁判における加害者への厳罰こそが戦争犯罪もしくは戦時下性暴力を減らす大きな一歩となると考えられる。とりあえず今はせめて伴走者(#WithYou)として走り始めることを誓いたいと思う。

バンカ島事件 (2)

日本軍兵士により虐殺された看護師らは多分殺害前にレイプされていた!

 実は、(1)の事件は、既に26年前(1993年)日本人研究者によって公けにされていた。以下にそのことを報道したオーストラリアの新聞記事を翻訳して紹介する。

*1 22 Sep 1993 – Murdered nurses were probably raped by Japanese officers, says academic, Trove ノーマン・アブジョレンセン(署名)

 日本人学者の研究*2によると、第2次大戦時、バンカ島において日本軍に虐殺された21人のオーストラリア人従軍看護師達(のグループ)は、ほぼ確実に殺害される直前に日本軍兵士によりレイプされていたが、そのレイプの事実は彼女らの(名誉ある)記憶を守るため(永年)隠されていたということである。

 そのような苦難を生き延びた看護師のただ一人の生存者、(シスター)ヴィヴィアン・ブルウィンクルは、オーストラリア当局への説明の中でレイプについて一切言及していない。

 この大量虐殺の報告は、当時の呆然としていたオーストラリア(の人々)を恐れさせると同時に激しく怒らせることになった。「オーストラリア国立大学における日本」という国際会議で今日(1993年当時)タナカユキ(田中利幸)氏(現在=1993年当時メルボルン大学教員)により発表された論文によれば、(様々な)証拠は、シスターブルウィンクルは「調査に際し、彼女の亡くなった同僚達をレイプの犠牲者として知られるという不名誉から守るため真実を述べなかった」ことを示唆しているとしている。シスターブルウィンクルも負傷して死に瀕していたが、その後陸地に戻ることができた(虐殺は海岸の海の中で行われた)。

 その看護師達は、1942年2月11日(日本軍による陥落より4日前)シンガポールから避難したが、彼女らが乗船した船(ヴァイナブルック号)は、日本軍の飛行機により爆撃され、スマトラとバンカ島の中間で沈没した。12人の従軍看護師を含む多くの乗客が溺死したが、他の人々は最大4日も漂流したのちバンカ島に辿り着いた。彼女らは日本兵によって捕らえられ、男性(殆どが英国人兵士)とは分離させられた後(海中で)銃殺された。そのとき彼女らは全員オーストラリア軍従軍看護師の制服を着用し赤十字の腕章を着けていたというのに、である。

 タナカ氏は次のことは極めて重要であると述べている:日本兵らは、銃剣により殺害した英国人兵士の遺体は海岸に放置したのに対し、彼女らの体の「証拠」は後に残されないように確認していた。

 終戦後直ちに、オーストラリア軍調査委員会は加害者の探索を開始した−(なぜなら)(岐阜歩兵)第229聯隊(聯隊長田中良三郎少将、事件当時大佐)第1大隊の何人かの日本兵は(後で判ることだが)バンカ島事件の2ヶ月前香港で起こった(英国人)看護師に対するレイプ・虐殺事件に関与した疑いで既に英国により取り調べを受けていたからである(調査委員会は田中良三郎少将を逮捕したが、聯隊はガダルカナルでほぼ全滅したため証言者が殆どいなかったようである*3。第1大隊長(折田優少佐、事件当時大尉)は、戦後ロシアに抑留されていたが、その後東京に戻ったものの、(裁判で)尋問される前に自殺している(タナカ氏の著書*2によると、1948年6月16日舞鶴に帰還した後、6月19日に米軍に身柄を引き渡され、巣鴨拘置所に拘留された。その勾留中の9月に窓ガラス修理用の道具で首の血管を切って自殺し、起訴には至らなかった)。

タナカ氏は、英国とオーストラリア両国の調査による文書から、次のように推定している:即ち、バンカ島でオーストラリア軍看護師を虐殺した兵士達は、殆ど確実に、香港で英国人看護師をレイプし虐殺した兵士達で同一である。この理由により、オーストラリア軍看護師はやはり虐殺される前にレイプされていたと考えられる。

タナカ氏の論文は次のことも明らかにしている:日本人だけがレイピスト(強姦者)ではなく、(最近の文献によれば)1945年10月に呉で日本人一般市民への一連のレイプ事件が占領軍により起こされたが、その(加害者の)中にオーストラリア軍兵士も含まれていたということである。

ある研究者は、警察により募集された売春婦は「防火線」の役割を果たしたと言っている:「オーストラリア兵は最悪だ。彼らは若い女性をジープに引きずり込み、山の方を拉致した後レイプした。私はほぼ毎晩彼女らの助けを求める悲鳴を聞いた」。戦争時のレイプや日本で言うところの「慰安婦(売春婦になることを強いられた、多くの場合外国人女性)」について多くの研究実績をもつタナカ氏は「戦争とレイプは同じ種類の事柄であり:即ち、それらは本質的に互いに関係している」。(以下省略)

2* 田中利幸『知られざる戦争犯罪―日本軍はオーストラリア人に何をしたか』大月書店、1993年12月2日第1刷発行、ISBN 4-272-52030-X

3* https://ja.wikipedia.org/wiki/バンカ島事件

  • 田中利幸氏について

https://ja.wikipedia.org/wiki/田中利幸

田中氏は1949年5月福井県生まれ(70歳)の歴史学者で、広島市立大学教授を経て、現在ドイツのハンブルグ社会研究所で「紛争時の性暴力」研究プロジェクトメンバー。従来は知られていなかった日本軍による戦争犯罪の事例を紹介してきた。戦争犯罪に関しては、加害者が被害者でもある両面性、戦争犯罪の普遍性といった問題意識も有し、アメリカ軍など連合国側による戦争犯罪との比較研究も進めている。また、第2次大戦時日本軍の「人肉食」への言及でも知られている。これらの「業績」に対し、いわゆる「右翼」の側から「反日デマ」、「国賊」等口汚いネットバッシングも受けている。