大学生の自殺について(3)-2

山形大学のケース (2)

ちなみに山形大学での自殺はその後も続いている.

  • 2017年2月 工学部の男子学生(当時3年)
  • 2017年10月4日、24日 それぞれ男子学生.いずれも小白川キャンパスで.

2017年10月25日 山形大学の学生専用のホームページに、突然小山清人学長からのメッセージが掲載される((3)に別掲).自殺者数は2年間で4人にも!  後の3件について、大学側は自死なのか事故なのかも含め何の説明もしていない.

また、別のパワハラ事件も起きている.同大xEV飯豊研究センター(山形県飯豊町)で,所長による複数の職員へのパワハラ疑惑が発覚している.大学は当初1月中旬を目処にパワハラ疑惑の調査を終えるとしていたが、現在(2018年4月)は事実上無期限で調査が進められている.これについてはマスコミで既に報道があるが、機会を改めて触れる.

文書開示問題

  • 3件の文書開示請求に対する山形大の全面不開示決定(2017年8月22日〜9月13日付).

 3件とは、 1)当該事案(男子学生に自殺)に関する第三者委員会調査報告書等、2)工学部で過去5年間にあったアカハラ関連事案関連文書、3)職員組合が開示請求した労基署による是正勧告書.決定通知書には開示背級に該当した文書名の記載が無かった上、不開示とした具体的な理由も記していなかった.

  • 総務省情報公開・個人情報保護審査会「違法」答申(2017年12月8〜19日付).

 3件の不開示決定について、「(不開示理由の提示を定めた)行政手続き法に照らして違法」と指摘.決定を「取り消すべきである」と大学に答申した.

 (審査会事務局によると)2016年度に出された全答申1198件のうち、決定「妥当」は912件(76.1%)、山形大への答申のように、「妥当でない」に分類されたのは、75件(6.3%)であった.答申1件当りの審査期間についても、全答申の平均が249.5日だった一方で、同大に出された3件は平均60.3日という異例の早さで「違法」と結論づけられていた.

 これに対し大学は、「審議期間2ヶ月は最短だと、答申を受ける際に説明を受けた.現在は指導に沿って適切に情報公開している」と話す一方,1)該当文書の名称、2)開示しない部分、3)その理由,を列挙した別紙を添付した上で部分開示した.また2018年4月2日の定例記者会見で小山清人学長は、「開示に関するルールの解釈が大学と総務省とで違っていた」と釈明.審査会の答申は、「不開示にするなら理由をしっかり提示するようにとの指導だった」と説明している.

大学生の自殺について(3)-1

山形大学のケース(1)

大分大学のケースとほぼ同時期、2015年11月に山形大学工学部で男子学生が自殺した。この件の事実経過をまず見ておく(主な出展は「河北新報」の一連の記事による)

2014年後期 ハラスメント加害者である助教の研究室への配属が決まる.

2015年4月〜 上記助教の研究室に所属.助教は長時間の説教をする等アカハラを繰り返した.

2015年8月 大学院入試受験.助教の圧力を恐れ(「(助教に)何を言われるかわからないから」と言って)大学院での研究室変更を希望しなかった(調査委員会の聞き取りに対する両親の話)。

2015年11月 指導教員の助教によるアカハラを苦に自殺.

2016年6月 第三者調査委員会報告書作成.「助教によるアカハラがあったこと」、「アカハラと自死には因果関係があること」、「大学が両親の相談に対処しなかったこと」等を認める.

2016年10月 山形大、「長時間の説教を繰り返す等の行為はアカハラに当たる」として、助教を懲戒処分.この処分書は、裁判で大学側証拠として提出された.

2017年5月 両親は大学と助教に損害賠償(1億1959万円)を求めて山形地裁に提訴.

2017年7月25日 第1回口頭弁論 調査委員会の報告書、原告側証拠として提出される.大学側は答弁書で、「報告書は聞き取りが不十分」等として因果関係を否定.2017年8月、初めて自死が公になる.

2018年1月16日 山形地裁で弁論準備手続き.

  • 調査委員会構成メンバー:経済学者(山形大名誉教授)、臨床心理学者、精神科医、弁護士の外部有識者4人.遺族側は、委員達がこの種の事案に精通しており、聞き取りの対象者も広く関係者を網羅しているとして、「証拠提出した調査報告書の信用性は極めて高い」と強調している.
  • これに対し大学側は、「事実関係の確認が不足している」「そのまま大学の判断とはならない」と主張.学生の自殺とアカハラの因果関係を認めていない(2017年12月現在).

以下、調査委員会報告書(2016年6月作成)によるアカハラ行為

1)自殺する2日前、卒業研究の中間発表練習会で、研究内容の不備を他の学生の前で厳しく指導されていた.(同じ研究室の学生・院生等らへの聞き取りによると)助教は、発表内容だけでなく学生の研究姿勢も批判.学生は発表会の後、「卒業できないかも知れない」と思い悩んでいた.助教は研究室の学生が質問しても「自分で調べろ」という立場で、具体的な指導をすることは少なかったという.

2)自殺した学生は、助教が過ごす室内に必要な実験器具が置かれていたため、他の学生より助教と過ごす時間が長かった.

3)学生は、助教の機嫌を損ねると、叱責や人格を否定するような発言を浴びせられる危険があると感じ、「気軽に質問したり本音を伝えたりすることができなかった(推測).

4)自殺の数ヶ月前、必修科目の中間試験と研究室の研修旅行が同じ日程になった際、学生が試験を受けたいと申し出たのに対し、助教は「研究と授業のどっちが大事か」と詰問、研修旅行への参加を半ば強制していた.

 

セクハラ常習教員がのさばりはびこった結果組織モラルが崩壊 (3)

米国のセクハラ常習教員との大きな違いは、A教授が無名であったことで学会的にも目立つ存在では無かった。その結果、大学内外で常習的セクハラが問題にされることを世論の盲点を利用してうまくすり抜け、(組織の中枢に)居座り続けることになった。こうなると教職員全体のモラルも次第に低下する。なぜなら、少々のことでは何ら処分を受けることは無いと高を括る教職員が増え、人権意識はさらに低下してハラスメント加害者は増えると言う悪循環に陥るからである。実際この組織では、ハラスメント委員会は殆ど機能していず、過去10年以上に渡り外部に発表された不祥事は1件も無い(?)一方で、教員が学生に「手を出す」例が目立つようである。例えば数年前にも、若手教授Eが女子大学院生と不倫の末離婚したケースが知られている。

今後高等教育機関等への就職・進学などを考えておられる生徒・学生の皆さんやその父兄の方々には、希望異動先をきちんと調査され、このような組織.機関だけは何としても避けて頂きたいと思います。

セクハラ事例 [p1806-180531] (3)(北信越、教育機関)(資料有、特定開示可能)

セクハラ常習教員がのさばりはびこった結果組織モラルが崩壊 (2)

しかしながらA教授は、所属組織内ではセクハラ常習教員としてそれなりの処遇に甘んじて来たが、あるとき組織の執行部に接近し入り込む機会を得た。他組織の教員はA教授の「前科」を知らないので、表面的な判断に基づき執行部への参加を許してしまった。古参教授の一人であったDはそのことに気付いて危機感を抱き、当時の学長と相談して公益通報制度によりその不正を告発したが、事態の混乱を恐れる事務局長(大学の事務方トップ=理事)は、情報提供者に圧力をかけつつ、最初の公益通報委員会でその告発を却下する結論を誘導し、結局A教授の件はそれ以上議論されることはなかった。理由としては、被害者本人からその後の訴えが無いこと、被害者への二次ハラスメントになりうること、性犯罪における刑事事件の時効が過ぎていること等があげられたが、急いで結論を出すため被害者への事情聴取等は一切なされなかった。その結果、新しい学長のもとA教授は執行部メンバーとして居座り続けている。

セクハラ事例 [s1806-180530] (2)(北信越、教育機関)(資料有、特定開示可能)

大学生の自殺について (2)-2

大分大学のケース (2)

この経過は実は特筆すべきものであることに注意したい。なぜなら、

  • 本人が死亡し加害者が退職後も、大学が代理人(親族)の申し立てを受け入れ、第三者委員会を設置して調査を進めたこと。これは従来、日本の大学等で一般的であった、ハラスメント事案の調査を内部的な狭い範囲の調査のみで済ませ、その間に遺族を説得して外部調査の要求や裁判を放棄させるやり方とは明らかに一線を画した取り組みである。
  • 大学は、調査結果を比較的詳しく公開し、多角的に認定したハラスメントにつき大学の責任を認めると同時に関係者の処分を行ったこと。第三者委員会を設けて調査しても、外部は言うまでも無く、組織内部や遺族にさえ公開が制限されるケースは珍しくない。加害当事者のみでなく監督責任者の処分まで公開するのは前向きの姿勢である。これらはコンプライアンス的にもしっかりした対応であり、遺族との示談成立を後押ししたのではないかと推測される。

実際対照的なケースとして、「日大生の連続【アカハラ自殺】」が挙げられる。日大の獣医学部が背後にアカハラがあったと思われる2人の学生の自殺者を出し、その内一人の院生の遺族が調査委員会の設置と教授会での議論を求めたものの、執行部は無視を続けた。学部関係者はアカハラによる自殺を組織的に隠した疑いを示している。関係ネット媒体による「遺族が望む調査委を設けない理由」を問う取材に、「事件」の起きた学部の学部長は「取材拒否」の文書を返送した。

私たちの自己紹介でも述べたように、高等教育研究機関自らによる、様々なハラスメント事案についての客観的な調査=自浄能力は、殆ど期待できないのが現状である。第三者機関による調査とハラスメント認定、関係者の処分(公表が望ましい)を問題解決の標準的なプロセスとすべく、今後も継続的な努力が必要である。(A)

セクハラ常習教員がのさばりはびこった結果組織モラルが崩壊 (1)

 ある大学の教授Aは40代で着任当初から様々なセクシャルハラスメントを常習的に繰り返し、その期間は既に20年にも及ぶ。日常的な犠牲者は研究室に配属された女子学生・院生で、研究室内でその種の行為が絶えず、ある学生Bさんからは保健センターを通じて学長に直接訴えが出された。また、出張先で別の大学院生Cさんの部屋を度々尋ねるという行為も繰り返された。さらには、その間に、事務職員、大学の他職員の配偶者や大学に出入りしている企業の社員(いずれも女性)にまでハラスメントを行っているという証言もあった。保健センターのスタッフは、A教授への警報を多くの然るべき関係者に伝えるということを日常的に心掛けていたようである。

 ところが、初期はハラスメント対策等が未整備であったこともあり、当人は何ら厳しい指摘や処分等を受けることは無く、わずかにBさんのケースに関連して(理由を明示しない形での)Bさんの研究室所属変更が認められたのみであった。ただ、このとき当時の学長の事情聴取に対し、A教授を採用した前学長のもとへ駆け込み、善後策を相談している。

セクハラ事例 [s1806-180530] (1)(北信越、教育機関)(資料有、特定開示可能)

A教授セクハラデータ1

 最初の報告書は関係者へのヒアリング結果をまとめたもので、これをもとに、この事案の告発は学内公益通報制度を利用して行われた(学内ハラスメント委員会は実質的に機能していなかったようです)。最終ページの告発状は、学内の通報とほぼ同時に文科省へ提出されたものである、ということでした。

A教授セクハラデータ2

 これらは、ハラスメント被害者からの訴えにより「研究室の変更が認められた記録」である。当時の教授会の関連資料で、指導教員がT教授からM教授に変わったことが公式に記録されている、ということでした。

A先生セクハラデータ3

 内部の公益通報制度による告発に対して、ほぼ1か月の「放置」の後になされた回答である。もとから調査要求に対応する気は無く「面倒なことはさっさと幕引きしたい。そのためできる限りの形式的理由を考えました」という事務当局の意向と焦りが透けて見えます。なお、「放置」の期間中に「情報提供者」を恫喝しつつ「事情聴取」を行ったことも明らかになっている一方で、被害者の調査(特定)の努力や直接のアクセスの試みは一切無かったようです。具体的な当事者を特定しないで強引に結論を出すという拙速な対応はよほど「やましい」ところがあるのでしょう。

A先生セクハラデータ4

 データ3の回答を受け、告発者が「公益通報支援センター」に連絡・相談したときの文書ということです。

注)これらの資料で上記記事内A教授、BさんはそれぞれT教授、Aさんになっています。

大学生の自殺について (2)-1

大分大学のケース (1)

2015年2月、当時20代であった経済学部3年の学生が自殺した。この事案の経過を以下に要約する。

2014年7月-2015年1月、指導を受けていた講師から研究発表内容等に関し、LINE等による執拗な否定・叱責を受けた。ほぼ1年後の2016年3月、その講師は任期満了で退職。

2016年6月、大分大学は記者会見で、その講師の行為はアカデミックハラスメントにあたると認定した上で、調査委員会を設置し自殺との因果関係を調べると発表。これは被害者の父親からの「(これまでの)内部調査ではハラスメントと自殺との因果関係が明らかにされていない」との申し立てを受けた措置。

2016年12月、第三者委員会の報告書を発表(関係者22人から事情を聴き、被害者のスマートフォンからLINEの記録を調べた)。被害学生が生前に遺書を2回書いていたこと等から、アカデミックハラスメントで精神的に追い込まれたと判断し、「指導・教育を逸脱した」と元講師の責任を認めた。また、この元講師の指導態度に問題があると周囲の人たちが元講師を指導する準教授に相談したのに、准教授が詳しく調べなかったことも指摘。学生の安全に配慮する大学の注意義務違反も認定。

2017年1月、大分大学、当時の監督責任を問い、前経済学部長とゼミを指導する準教授を戒告処分。月末、大学と遺族で示談が成立。(管理人A)

https://mainichi.jp/articles/20161228/k00/00m/040/157000c: http://naka3-3dsukihatenablog.com/entry/2017/08/01/073000: https://ringosha.jp/oita-university-academicharassment-akahara-31178

「ダウン症は社会コストだ」と発言する教員

大学院生のAさんはダウン症の社会参画に対する研究を行っていた。Aさんの研究発表会の場で、教員Yは「ダウン症は社会コストである」と発言した。その研究会の出席者は全員、ショックを受け言葉を失うとともに、この心ない発言に深く傷ついたAさんは、しばらく大学に近づけなくなった。

パワハラ事例 [p1804-180523](関西、教育機関)

学生に暴力をふるい、教授会でその学生を嘘つき呼ばわりする

大学院生のCさんは入学後、本人の意思とは無関係にあてがわれた2人の指導教員XおよびYと折り合いが悪かったので指導教員変更の希望をXに表明したところ、Xは毎月行うCさんとの面談で、Cさんを追い詰め、ある日のことついに暴力に及ぶに至った。Xから暴力を受けたCさんはうつ状態となり、文章が書けなくなって、けっきょく進級判定のための論文を遅れて出した。それを根拠として、YはCさんの「進級不可」を判断し、教授会はそれを組織決定した。その後も、XとYはCさんを執拗に攻撃し、Cさんはけっきょく退学を余儀なくされた。

なお、暴力を受けた直後に、Cさんは人権委員会にその暴力を提訴した。人権委員会はおざなりの調査をしたのちに「ハラスメントは確認されなかった」と結論を出した。ところがXは教授会でこのプライベート事案を、Cさんの実名を挙げて報告し、その際に「ハラスメントは認定されなかった」と虚偽の表明をした。Yも「Cさんは嘘をついている」とXを擁護。そのため、全教員は、Cさんが嘘をついたと判断して、結果的にCさんの人権は損なわれた。

パワハラ事例 [p1805-180523](関西、教育機関)