文科省、指導死児童についての初の実態調査へ(2/3)増えている若者の自殺、調査範囲をハラスメント自死大学生、専門学校生にも速やかに拡大を!

 

(2)増えている若者の自殺、調査範囲をハラスメント自死大学生、専門学校生にも速やかに拡大を!

最近のニュース記事

「去年の全国で21,881人がみずから命絶つ児童・生徒は過去最多」

2023年3月14日NHKニュース

によれば、厚生労働省発表の確定値で、昨年(R4年=2022年)1年間の自殺者総数は21,881人、その内児童生徒の自殺者数は計514人(高校生354人、中学生143人、小学生17人)で、統計がある昭和55年(1980年)以降、初めて500人を超え、過去最多となったということです。厚生労働省は「子供や中高年男性で増えていて、各種相談支援をさらに進めるほか、会計省庁と連携して対策を進めたい」としています。

関係する背景(統計)

  • 若年層の死因に占める自殺の割合

 厚生労働省「人口動態統計」によると、R2年における我が国の年齢階級別にみた死因は、10~39歳(男女計)の全年齢階級で第1位が「自殺」であった。その割合は「10~14歳」では全死亡の約29%を、15~29歳では、50%以上を占め、「不慮の事故」や「悪性新生物」による 死亡を大きく上回った(下図)。とくにこの50%という数字は深刻に捉えるべきであろう。

  • 外国との比較

 世界保健機関の令和元年のデータによる と、我が国の15~24歳の自殺死亡率は経済協力開発機構(Organisation for Economic Co-operation and Development, OECD)加盟国38か国中、男性は第9位、女性は第7位 となった。なお、国によって一部欠損している期間も あるが、確認できた期間の傾向として、いず れの年齢階級においても日本は、韓国、アメ リカ及びカナダとともに、ヨーロッパ諸国 (イギリス、イタリア、ドイツ及びフランス) と比較すると高くなったことがわかっている。

  • 過去10年程(2009~2021)の児童生徒及び学生等*自殺者数の推移

*小学生は 「児童」、中学生と高校生は「生徒」、大学生と専修学校生等は「学生等」と表記。

最近のデータとしては次の2つの図表が挙げられる(少し古いが):

2011年の大津いじめ自殺報道以降、現在のコロナ禍中に至るまで、自殺者数、自殺率(10万人当たりの自殺者数)とも急激に上昇していることがわかり、その原因究明が早急に必要であるが、報道のあり方も関係している可能性がある。

上のグラフは、近年のこの上昇傾向が学生等(学生+専門学校生)の自殺者数にも同様に現れていることを示している。上昇が始まっている平成30年(2018年)はコロナ禍以前であり、やはりこの原因もはっきりしない。

また、大学生、専修学校生などの自殺についての統計には、

a) 令和 3 年度 国立・公私立大学死亡学生実態調査

b) 令和 3 年度 国立・公私立大学死亡学生実態調査ー結果まとめ

などがある。これまで国立大学に関する統計は存在したが、広く公私立大学(短期大学含む)にまで拡大された調査結果はどうも令和2年が初めてだったらしく、上記の報告は2回目(令和2年の実態を反映)のものである。資料a)の1ページ目を載せる:

これによると、回答があった932大学(学生数約280万人、回答率82.5%)のうち、死亡学生数は636人、自殺又はその疑い331人となっている。回答率約80%考慮すると、実際の自殺者数は約400人と推定できる。これらの調査は、問題意識をもつ関係者によって自主的になされた調査の結果であり、「結果まとめ」にも個々のケースについての詳しい報告は無い。本統計の関係者は詳細の報告を受けていないか、それ自体各大学に任され、明らかにさされていないと思われる。即ち、これまで、文部科学省は大学生の死亡や自死事件に関して、何ら調査をすることもなく、ましてやそれらの実態についての詳しい調査や原因究明に関しては、当事者=大学等に任せて放置してきたと言うことである。「大学の自治」に任せるという言い訳がこれまで度々都合良く使われたきたが、このブログでも散々述べてきたように、これらの問題に関しては、残念ながら大学あるいはその教職員等は自己保身や文科省対策のため事件の隠蔽を図るのみで、学問の府としての良識を期待することは到底望めない。それどころか、大学執行部は学生の自殺や覚せい剤関連の事案については、しばしば(特に地元の)マスコミにはかん口令を敷くことは日常茶飯事である。小中高校では、いまや普通に設置される、外部のメンバーが参加した自殺事案に関する第三者委員会は、大学についてはこれまで一度も設けられたことは無く、学内関係者のみの調査委員会が作られ、大学に都合の良い「結論」を出して終わりということが多い。

 文部科学省は、これまで置き去りにされてきた、ハラスメント自死学生・専門学校生の諸事案に対する調査を大学に強力に指導することから始め、第三者委員会の設置を促してその調査活動を具体化させ、委員会の報告・結論・提言に積極的にコミットするべきである。

 最後に、 大学生・専修学校生等の自殺をめぐ る状況(原因・動機)に触れておこう。少し古い(~2014)資料:

第2節 若年層の自殺をめぐる状況

によれば、次のような考察がなされている。

 ”大学生の原因・動機をみると、男性におい ては、「学業不振」、「その他進路に関する悩 み」、「うつ病」、「就職失敗」の比率が高い。 自分の将来の進路、就職、それらに大きな影 響を与える学業を悩みとするものになってい る。専修学校生等の男性の自殺者においても 男性の大学生と同じ傾向である。 平成26年の全年齢の完全失業率35が3.6であ るのに対して、15歳~24歳の年齢階級での完 全失業率は6.3であるように、若者の就職をめ ぐる環境が依然厳しい中で、就職や進路が大 きなプレッシャーになっていることがうかがわ れる。  女性の大学生や専修学校生等の自殺の原 因・動機をみると、大学生と専修学校生等と では、その両者には大きな違いはない。男性 の大学生や専修学校生等と比較すると、「うつ病」が高くなっている一方、「学業不振」、 「その他進路に関する悩み」、「就職失敗」は 低くなっている。 景気の変動に伴い就職状況が厳しくなった り、あるいは競争の中で、学業の成績や就職 が期待したものにならなかったりすること は、学生の努力だけでは避けがたい面がある。”

 現在(2023)においては上記理由のみならず、大学生自殺の原因として「指導死」(ハラスメント)もあるとの報告が、被害者学生の家族から文科者や自治体に伝えられている。当ブログ管理人にも被害者学生遺族からの悲痛な訴えが寄せられており、次回記事でその詳細を再度明らかにしていきたい。

 

 

文科省、指導死児童についての初の実態調査へ (1/3)30年遅れた対策、「第三者委員会」のひどさ

  • 30年遅れた対策、「第三者委員会」のひどさ

去る3月3日のN H Kの報道https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230303/k10013997881000.html

によれば「教員による不適切な指導によって児童や生徒が自殺に追い込まれる、いわゆる『指導死』について、文部科学省が初めて実態の把握に乗り出す」(以下「…」は記事からの引用)ことがわかったということです。

 いわゆる児童同士、生徒同士のいじめ問題については、いまだに地方に丸投げ気味で不十分ですが、ある程度の「指導」(調査への介入や職員の派遣等)をしてきた文部科学省ですが、教員が絡む、或いは教員のいじめ・パワハラが原因の児童・生徒の「自死」事案に関しては、これまでは児童・生徒・若者自殺全体の統計に含めるのみで、その数や個々の事案の詳しい実態解明については殆ど無視・放置の姿勢を続けてきました。すなわち「毎年、児童や生徒の自殺の件数や当時の状況などについて、全国の教育委員会を通じて調査しているが、教職員による不適切な指導があったかどうかを回答する項目はなかった」ということです(例えば、文科省資料「いじめの状況及び文部科学省の取り組みについて」令和4年11月24日)。

資料2-1

 近年、特に部活動等での指導者の暴力により、多くの児童・生徒が自死に追い込まれる事件が頻発していることを考えると信じられない鈍い対応だと考えられます。このような対応は、いまだに一部の教員と父兄に残るに古い聖職論を隠れ蓑にしたものであり、教員自らが崩壊させた教育現場におけるサボタージュ・責任逃れ、或いは現場からの逃亡と言っても過言ではありません。

 この動きに関し「自殺した児童や生徒の遺族らは、教職員の不適切な指導によって自殺に追い込まれることを指導死と呼び、実態の解明を求める活動をして来ました」ということです。実際、ご子息の(教師からの暴行後の)自死をきっかけにほぼ30年前からこの問題に取り組んで来られた内海千春さん(全国学校事故・事件を語る会代表世話人)は、ご自身の経験も含め「多くの自殺や死亡事故で遺族は学校側から十分な情報提供を受けられず、その延長線上で設置される第三者委員会に不信感を抱くのは当然だ」としています。このような実態は2019年に同会と毎日新聞の共同で行われたアンケート結果からも明らかです:

学校事故アンケート 国は被害者に聴け 全国学校事故・事件を語る会代表世話人、内海千春さん – 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20191109/ddm/003/040/137000c

学校事故アンケート 寄り添わぬ第三者委 委員に市の元顧問弁護士 名乗らず、聞き取り調査 – 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20191109/ddm/003/040/136000c

ここで一番の問題は、「事故」に際して全国各地で設置されている第三者委員会で、「実態が明らかでなく課題が多い」とする遺族側に対し、行政は「対応はうまく行っている。批判的な声をあげているのは一部の被害者でしかない」と考えており、その溝は深いと言えます。

【上記の毎日新聞記事より引用】

子供の自殺が起きたときの背景調査の指針(改訂版)【概要】

子供の自殺が起きたときの背景調査の指針(改訂版)

 このタイミングで開始される国の実態調査においては、これまで置き去りにされてきた被害を受けた当事者側(自死遺族)側から話を聞くということをぜひ真剣に進めてもらいたいと思います。この点に関しては、これまでも再三当事者の方から文部科学省に要望がなされています:

「第三者委実態調査を」 学校事故、文科省に被害者の会 – 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20191213/ddp/041/040/016000c

学校事故・自殺めぐる第三者委は「被害者への配慮」を忘れてはいないか – 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20191108/k00/00m/040/305000c

「こうした中、文部科学省は(やっと)今年度分(令和4年度?)の調査から、自殺した児童や生徒の状況の選択肢に『教員による体罰、不適切指導』という項目を新たに設け、初めて実態の把握に乗り出す」ということです。教科書の検定問題や道徳教育には執拗に「指導」を続ける文科省がこと教職員が行ってきた差別・いじめ・パワハラには、何も「指導」が出来ないのはどういう理由があるのでしょうか?

ご家族の代理人弁護士が文部科学省に要請書を提出(2023年1月)−甲南大学学生自死事件(2018年)

このブログでも報告して来たように、本事件のご家族と代理人は文部科学省に対し、この数年間、事件への誠実な対応に関し、甲南大学を適切に指導するようたびたび申し入れてきた。しかしながら、文科省職員と甲南大学職員との事務的なやり取りはあったであろうが(と信じたい)、甲南大学の姿勢には何ら変化はなく、相変わらずダンマリ(無視?)を決め込んだままである。

こうした状況を変えるべく、年明けの1月30日、代理人弁護士が文科省に対し、以下のような「通知書(対応の要請)」を送付した。文科省による早急かつ具体的な対応、すなわち甲南大学に対し、自死家族への一刻も早い誠実な諸対応をすべく指導することを強く希望するものである。

以下に「通知書」を掲載する:文科省宛「通知書」pdf版

文部科学省正面玄関

通知書(対応の要請)

文部科学省 高等教育局 学生・留学課厚生係 御中

前略 私は、神戸市東灘区にある私立甲南大学(学校法人甲南学園が設置)に通学していた○○○○君の母○○○○の代理人をつとめる弁護士です。貴省に対し、甲南大学に対し、以下のとおり、適切な指導をするよう要請します。

1 2018年、甲南大学に在学中の○○○○君が大学への抗議の自死を行い、その翌年の2019年には、甲南大学のウェブページに下記の内容が掲載されています。

すなわち、「Student First 教職員のための学生支援ガイドブック

【2019年改訂版】第4部 学生支援事例集」

https://www.konan-u.ac.jp/life/student_counseling/teachers/ において

  Q8. 脈絡のない言動をする不安定な様子の学生がいたとき

としてQを作成し、「統合失調症のような心の病が原因である可能性も考えられ、その場合は専門的な援助を必要とするので注意が必要です。」としたうえでの回答を掲載していますが、これは、亡くなった○○○○君本人及び遺族の感情を著しく損なうものであり、不適切であると考えますので、指導いただきたいと考えます。

2 ○○○○君は甲南大学に在学中に、別紙の経過を経て、抗議の自死をしました。未だに大学において、第三者による死亡の検証等は行われておりません。

この間、甲南大学関係者は、学生をハラスメント被害から救済するのではなく、「(○○○○君が横領した等という虚偽情報が学内に拡散したため他の文化部の入部を拒否された場面に関し)○○○○君から脈絡もなく、攻撃的に話をしたことから、あのような状況になったと思われる」等と発言し、○○○○君の必死の訴えを封じ込めようとしたこと、ハラスメント被害事態すら無かったとしました。

このような、被害者からの訴えを脈絡がない等と決めつける甲南大学組織の高圧的なハラスメント隠蔽の結果が、被害者学生を自死に至らせました。

3 生前には、被害者学生の発言をその真意を十分検討することもなく、ハラスメント被害を法テラスや弁護士にも相談していた○○○○君に対して、当大学は「脈絡のない発言」という言葉を用い耐え難い心労を与え、さらには、抗議自死の翌年に「話す内容が理解しづらく脈絡のない独り言のようである」場合に統合失調症の可能性があるなどとする上記の記述は、内容においても、ハラスメント対応問題点の根本的な差し替えが行われており、本人の尊厳を著しく傷つけるという点からも、極めて不適切であると考えます。

 この点、御省から、しかるべき指導をされたく本書を送付した次第です。

4 また、当該自死事案に関する遺族への対応について、令和4年3月14日付で、御省が「大学に対し、御遺族に対して丁寧に説明することなど、真摯に対応するように要請しております。こちらの要請に対して、大学からは、丁寧に対応していくとの回答をいただいております」とのご連絡をいただいておりますが、未だに大学側からは、何の連絡もなく、この点も引き続きしかるべく指導をしていただきたいと考えます。

以 上

添付資料(省略)

  甲南大学関係者による「何の脈絡も」ないと決めつけた発言の記録

  前回の御庁からの回答書

令和5年1月30日

また、事件の概要も再掲する:別紙「事件の概要」pdf版

兵庫県庁旧庁舎

【事件の概要】

○○○○君は、平成29(2017)年4月、甲南大学に入学し○○部に所属しました。

1年生にもかかわらず、学園祭企画を発案・成功させ、次年度の部長予定者となり、関西圏の10の大学で結成する課外活動団体である「△△会」の会長に就任するなど、統率力を発揮し真面目に活動したがゆえに、不運にも部内の上級生に嫌われる結果となりました。

 平成30(2018)年3月、甲南大学○○部の歴代部長を中心とした上級生は、○○○○君を一連の課外活動から排除する目的で、計画的なハラスメント行為に及びました。その内容は、甲南大学学園祭・平成29(2017)年11月に○○部が出店した模擬店の売上金を1年生の○○○○君が横領した等と経理上なんの根拠もないにもかからず、事実無根の誤情報を捏造し、その名誉棄損情報を○○部内に吹聴し、○○○○君は強制退部となりました。平成30(2018)年3月18日、甲南大学公認の○○部・部長名によって、○○○○君が会長を務める△△会宛に、「○○○○君を強制退部とした」との通知を発しました。

○○○○君は、直ちに甲南大学学生部へ被害を訴えたにもかかわらず、甲南大学の適切な対応が行われず、被害はより拡大していきました。

○○部長は、部長名で甲南大学公認の全文化活動団体と任意活動の各種団体に「入部拒否の要請」を発しました。同年4月11日、甲南大学秋宗秀俊学生部長(教授)及び中村英雄(職員)学生部部長の監督下にある甲南大学公式文化会において、それが受理されたことにより、○○○○君による横領がなされたとの虚偽の情報が関西一円の学内外に爆発的に広まってしまいました。

甲南大学学生部では、事件発生直後からの○○○○君本人からの被害の訴えが無視されたばかりでなく、被害者学生への安全配慮の重大な違反があり、○○○○君は甲南大学ハラスメント委員会へ被害を届けざるを得なくなりました。

実際には、横領の事実はなく、最終的には○○部部長もこれを認めているにも関わらず、その後の学生部及びハラスメント委員会における職員とのやり取りは、被害者を被害者として認めず実質泣き寝入りを促すもので、耐えがたい心的ダメージを被害者学生とその家族に与える結果となりました。

ハラスメント委員会委員長であった当時の副学長・中井伊都子氏(現学長)は、同委員会において「ハラスメント行為はなかった」との判断を行い、加害者学生たちへの懲戒処分もなされませんでした。事件発生から7カ月間に渡り、○○○○君は甲南大学に適切な対応を求め続けましたが、大学は、大学のブランドを守ることを優先し、大学組織によって事件は隠蔽されました。

 

2018年10月、○○○○君は、最終手段として、自身の尊厳を守るための自死を決行しました。「名誉棄損による精神的ダメージ(中略)甲南大学の対応の遅さにより神経が著しく削られ私は自殺します。」と遺書を記し、その被害の記録一式を残しています。

甲南大学において当時必死に甲南大学に被害を訴えていたにも関わらず、中井伊都子氏(当時副学長・現学長)ら大学幹部からは被害者として扱われず、高圧的な態度で泣き寝入りを強いられ、それまでの平和な学生生活は破壊され、結果的に、自身を名誉棄損からの尊厳を守る手段として、まじめな学生が抗議の自死に至りました。中井伊都子氏は不適切なハラスメント対応を行った大学側の中心人物の一人ですが、学生死亡の直後には学長に就任しています。そして、大学は、大学の不適切な対応のため学生自らが命を絶ったという事実があるにも関わらず、いまだこれを検証しようとすらしていません。

その一方で甲南大学当局は、事件当時学内「ハラスメント委員会」の委員長を務め、この事件について「ハラスメントではない」という結論を出した現学長中井伊都氏を先頭に、「人物教育を理念として掲げる甲南大学」と公言し、学生集めのキャンペーンを続けている。

例えば、以下は「大学コンソーシアムひょうご神戸」http://www.consortium-hyogo.jp/ の関連ページに掲載されている、昨年12月7日に行われた「賛助会員と加盟校の懇親会」の内容抜粋である。中井伊都子氏はこのコンソーシアムの理事長を務め、大学の宣伝(合同進学説明会等)にも利用している。

12月7日(水)18:00より神戸ポートピアホテルにて、『賛助会員と加盟校の懇親会』を開催しました。当日は、賛助会員企業28社49名、加盟校25校39名、神戸市長代理1名他97名にご参加頂きました。

【理事長挨拶】

先ず、甲南大学学長の中井伊都子理事長より開会の挨拶があり、「大学コンソーシアムひょうご神戸は、地域ひょうごで活躍する人材を育てていくため、ひょうご神戸で学ぶ学生たちの活動の場と学修の機会を益々豊かなものにするべく、産官学連携のプラットフォームとして今後も引き続き尽力する」との決意を述べられました。

理事長 中井伊都子氏の挨拶

最初に述べた「通知書」は上記の産官学連携の間の中心である兵庫県(知事)にも送付されている。

20年間続くパワーハラスメント(甲南大学)(3)

公判概要(後半)(引き続き新世紀ユニオン「委員長のブログ」からの引用)

この裁判は甲南大学とK教授を被告とするが、甲南大学側はほとんど争わず、書面も出さない。K教授側は全面的に争い、判決まで行くすう勢にあったが、この勇気ある証人C先生の登場で長年非常勤講師にパワハラを繰り返してきたK教授が敗訴することは決定的となった。原告のBさんは判決を望んでいたので、解決金が高額なものでない限り、裁判官が考えている和解が成立する可能性はなくなった。

 また、原告は2017年2月17日に甲南大学キャンパスハラスメント調査委員会の調査報告書の「提出命令申立書」を提出していた。この調査報告書は原告のB先生が個人で大学に開示を求めて拒否されていたものである。この「調査報告書」が2017年3月に開示された。

  • 2018年12月、大阪地裁で判決、部分的勝利!

判決主文は

1 被告らは、原告に対し、連帯して55万円及びこれに対する平成28年9月9日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。

2 原告のその余の請求を棄却する。

3 訴訟費用は、これを4分し、その3を原告の負担とし、その余を被告らの負担とする。

4 この判決は、第1項にかぎり、仮に執行することができる。

との内容であった。

 部分的な勝利に終わった原因は1名の証人が尋問の段階で証人に出るのをドタキャンしたことによる(証人尋問で原告のBさんは2名の証人を用意し陳述書も出来ていた。ところが不思議な事に、原告弁護士が「1名でよい」といい、この結果裁判官が被告側の証人の証言を採用した)。

 B先生は支持者と相談した結果、原告としては費用等の面から控訴しなかった。被告の内甲南大学は判決を受け入れるとの意向が弁護士に伝えられたが、パワハラの調本人である被告のK教授は高裁に控訴するとともに、金40万円の保証金を積んで強制執行の停止を申請し、裁判所はそれを認めた。高裁ではK教授の控訴人側との争いとなったが裁判の中で甲南大学側が提出した調査委員会報告は、K教授のパワハラを部分的に認めており、この点に限り勝訴となった。被告の甲南大学側が控訴しなかったのもこの報告がパワハラを部分的に認めていたためであろうと推測できる。

  • 2019年5月、大阪高裁で勝訴判決!

 甲南大学K教授の権威主義に基づくパワハラについて、大阪地裁での一部勝訴事案で、一方の甲南大学側が判決を受け入れ、慰謝料を支払ったのとは対照的に、他方の被告側のK教授が控訴した事案の判決が、5月17日大阪高裁であった。(この事案では被控訴人側は代理人なしで闘った)。

 この控訴審では、K教授は非常勤講師達に白紙の紙に署名させたうえで証拠を偽造し、パワハラを否定する戦術に出てきたが、証拠の偽造に反発し怒った何人かの非常勤講師が勇気を奮い起し、陳述書を提出したことが勝訴につながった。判決は、主文「本件控訴を棄却する、訴訟費用は控訴人の負担とする」という、被控訴人(=パワハラの被害者のB先生)の勝訴となった。

 

  • 甲南大学に団体交渉を申し入れ

 2019年7月、ユニオン側は団体交渉申し入れ書を送付した。大学への団体交渉はたいてい時間が取れる夏休みになる。それはこちらの参加希望者も大学関係の組合員が多く、夏休みが都合がよいと判断したからである。

団体交渉の議題は、大阪地裁判決ならびに高裁判決の確定を受けて、パワハラの再発防止、並びに原告側の証人となった、また陳述書を提出した非常勤講師への報復の阻止等になる予定だった。

 

申し入れを撤回!?

しかし、甲南大学のコンプライアンス担当中井 伊都子 氏より、組合員の加入通知書を求められたので、やむなく団体交渉申し入れを撤回した。ユニオン側が送った書面の内容:

2019年7月14日

神戸市東灘区岡本8-9-1

甲南大学副学長

コンプライアンス担当

中井 伊都子 殿

 

 

大阪市福島区鷺洲3丁目9番13号

新世紀ユニオン

執行委員長 ***

 

通知書

2019年7月8日付け貴大学に申し入れました団体交渉は、当ユニオンの組合員であるB先生を原告とする大阪地裁平成28年(ワ)第8478号 損害賠償事件の判決について貴大学は争うことをしませんでしたが、同じく被告の貴大学のK教授は大阪高裁で敗訴し、高裁判決はすでに確定しています。

当ユニオンが貴大学に団体交渉を申入れたのは、このパワハラ事案の再発防止と事案の争議を終結させ、委員長のブログ上の貴大学関連の記事の削除を行うための手続きであり、他意は有りませんでした。当ユニオンは組合員やサポーター組合員が貴大学に何人いるかなどは現時点で公表できません。

したがって貴大学が既に退職している***氏以外に、当ユニオンの加入通知書を求めても現段階では期待に応えられません、つまり労使関係を証明できません。それゆえ、今回の団体交渉申し入れを撤回することとします。

当方は、貴大学の立場上ネット上に甲南大学関連の記事が残る事態はよくないと判断し、団体交渉を申入れたものであり、貴大学が団体交渉を望まないのであれば、決して無理強いするものではありません。

なお、当ユニオンは団体交渉以外の交渉は行わない決まりになっており、したがって団体交渉以外の交渉は致しません、ご了承下さい。なお、この書面への返信は必要ありません。以上

20年間続くパワーハラスメント(甲南大学)(2) 

 

  • 2002年以降現在まで、K教授によるハラスメント行為は止んでいない!

具体的には:(項目別を優先、必ずしも時系列ではない)

1. 以前のパワハラ事案で、非常勤講師に個人的にメールや電話をしてはいけないルールを決めたにも関わらず、なりふり構わず続けている。

2. 少しでも自分の気に入らない行為(翌年度の要望調査に、現の週2回出講から1回に変更したり、K教授が会長を務める学会に出席しなかったり)をした講師を研究室に呼んで白紙を渡し、その場で「辞職願」を書かせる。

3. 一人の非常勤講師宛てのメールを、自分の権威・怖さを示そうと、故意に非常勤講師全員に転送し、恐怖を与える。

4. 非常勤講師に自分の前で、模擬授業をさせる。教え方が下手だと言いがかりをつけ怒鳴る。また、模擬授業の際、いきなりキレてマーカーを投げる。

5. 非常勤講師に、授業ごとに毎回授業報告書を書かせ、提出させる。

6. 翌年度授業調査に関する要望欄に「できれば〇〇科目を担当させて頂きたい」と書いただけで、電話して怒鳴る。

7. 自分が会長を務める「○○学会」への入会を強要する。学会に出席しない非常勤講師に嫌がらせをする。ある講師は、夜8時頃研究室に呼び出され、北区の自宅から1時間かけて甲南大学K教授の研究室まで行ったが、K教授は不在で何度も電話をしたが出なかったと言う。その後もこの件に関し、何の弁明も謝罪もない。

8. 担当者会議ごとに、名指しはしないものの、必ず非常勤講師の授業に関して非難・叱責をする。例えば、「読解の授業なのに、会話をする先生がいる」、「シラバス通りにしない先生がいる」、「授業で歌を教えている先生がいる」など。そもそもこれらのコメントもでっち上げかもしれない。

9. 担当者会議の際、些細なミスをした一人の講師をみんなの前で非難する。また、担当者会議に、やむを得ない事情で欠席した非常勤講師に「どんな事情であれ、欠席した者は今後措置を取る」と脅す。

10. 学生評価が悪かったという嘘をつき、授業数を減らす。

11. 妊娠した先生に、年度の途中で妊娠したら辞めることになっていると嘘をつく。

12.  非常勤講師に「お前には能力がない」、「お前を首にする」という発言を繰り返す。

13. いきなり教室に押しかけて来たり、突然電話して研究室に来るように命令する。

次項で述べる2016年に起こされたK教授のパワハラを告発する裁判に関して:

14. パワハラ裁判で、パワハラはあったと事実を述べた非常勤講師に、巧妙かつ陰湿な手口で(授業の)コマ数を減らさざるを得ないように仕向ける。

15. パワハラ裁判の時、非常勤講師を一人ずつ研究室に呼び、争点となったメールを受信していない旨を記した文書にサインしろと、証拠隠滅を図る。

まさに「やりたい放題」?である。大学は管理能力ゼロなのだろうか?

 

  • 2016年、勇気ある一人の非常勤講師(Bさん)が訴訟を起こした!

公判概要 前半(新世紀ユニオン* 委員長ブログ**から引用。次の記事で概要後半、詳細な中身を示す予定)

*https://21c-union.com/

**http://shinseikiunion.blog104.fc2.com/

2015年、非常勤講師Bさんは2ヶ月にわたるK教授によるパワーハラスメントを受け、体調を崩して退職させられた。加害者がなんの処罰もされず、自分が被害を受けただけの結果の不当性に怒りが湧き、甲南大学に質問・パワハラの調査報告書の開示などを求めた。しかし甲南大学はパワハラ調査報告書の開示を拒否。加害者には注意だけ、被害者は退職という、被害者救済の視点が微塵もないことに怒りを覚え、2016年8月、Bさんはやむなく大阪地裁に損害賠償請求訴訟を起こした。この間大学指導部はこのK教授を放置。

この提訴に対し、10月、甲南大学側から不可解な答弁書が出る:K教授のハラスメント行為と使用者責任を認めながら、「その余は争う」との態度を示す。すなわち、「原告は自主退職で賃金を失ったのであり」逸失利益については「因果関係がない」として争う、としている。K教授の弁護士からも答弁書が出るが、「認否反論の準備ができていない」として、追って準備書面で行う、として認否を行わず。11月、K教授側の認否(=準備書面1)が出る。パワハラを「全面否認・争う」内容。

2017年2月、裁判官から和解の提案有り。甲南大学は裁判官に「新世紀ユニオンが委員長のブログに書くから裁判書面は提出しない」と表明したぐらい早く終わらせたい様子。大学はパワハラについても管理責任も認めているので和解で裁判を終わられたい意向のよう。できれば原告が求めている「調査報告書」も開示したくないと思われる。

K被告側の主張は、教授と非常勤講師の関係を労働契約に基づく業務上の指揮命令権として捉えており、パワハラも業務命令として正当化している。原告の「非常勤講師と言えども、独立した教育者であり、教育権があるし、人格権を侵害するハラスメントは指導ではない、パワハラである」との考えと真っ向から対立している。

2017年3月、原告側の陳述書(証人のC先生)提出:この陳述書はキャンパスハラスメントを全面否定しているK教授の主張を打ち砕く決定的内容で、その赤裸々な陳述書が示しているのは甲南大学が加害者のK教授を擁護してきた姿勢の誤りを明らかにする内容でもある。

陳述書の内容:例えばK教授が、多くの先生が「過去に辞めていったこと」(に関し、)「忠実でないなら辞める勇気を持たなければならない」という趣旨の発言をしたこと。各非常勤講師が模擬授業をすると、K教授のコメントは授業内容とは関係の無いもので、大勢の前で教師の癖を指摘して恥をかかせるようなものであったこと。K教授の言動が高慢で、とても威圧的であったこと。突然マーカーを放り投げるなどするので、K教授と働く多くの非常勤講師が「多大な恐怖心を抱いていた」ことなどが記述されている。

大阪地方裁判所・高等裁判所

20年間続くパワーハラスメント(甲南大学)(1)

最近、甲南大学における新たなパワーハラスメント事件の通報と告発が本ブログにありました。その当事者Sさんによると、この事案の根っこは何と20年前に遡ることができ、加害者教員は一度裁判で敗訴したにもかかわらず現在もハラスメントは続いており、被害者も相当な数に登るようです。

われわれは、この常態化した悪質なケースの詳しい経緯を紹介し、その実態の徹底的な暴露・告発を進めたいと思います。そして、その案件の本質的解決(加害者の退場と職場の正常化)をめざします。

  • 甲南大学専任教員であるK教授は、2002年准教授だった時から多数の非常勤講師へのパワーハラスメントを続けていた。その結果、まず2007年、耐え兼ねた非常勤講師数人が「関西圏非常勤講師組合」(以下「組合」)に助けを求めた。

 ここで、当時の「組合」の機関誌を引用する:

 

関西圏大学非常勤講師組合機関紙「非常勤の声」第12号

  • 2008年甲南大学側と「組合」側が話し合い、(一旦)パワハラ問題は決着(2008年4月1日)

「組合」の見解は:

甲南大学で 6 年前から専任教員Kによって複数の非常勤講師へパワーハラスメントが行われ、被害者である組合員 Aさんの訴えにもとづいて、組合が大学側に調査と適正な処分を要求していた問題で、2007年2月の団体交渉で、大学側は調査委員会の設置を約束していたが、2008 年3月13日にその最終報告が組合に対して行われた。大学は組合の申し立てをすべて事実として認め、非常勤講師 A さんに謝罪するとともこの専任教員を懲戒処分にしたと報告した。

また、このパワハラ問題の被害者であり、今回の調査に協力をしてくれた元非常勤講師の人たちに対しても、大学から報告と謝罪をする予定であることを明らかにした。

こうした問題は再発防止策をとることが重要であり、これについても組合が要求していたが、

1 .非常勤講師との話し合いの席には可能な限り第三者に同席してもらうこと。

2.「減ゴマ・雇い止め」もしくは「減ゴマ・雇い止めを連想させる表現」

(たとえば「いっしょに仕事ができない」とか言った表現)を不用意に用いないこと。

3.減ゴマ・雇い止めを非常勤講師にお願いしなければならない事態にいたった場合には、教授会に諮り、非常勤講師にその理由を十分に伝えた上で了解を求め、処理を進めること。

4.専任教員 Kは A 組合員に文書で謝罪すること。

以上の 4 点が確認された。

専任教員が自分の好悪の感情や、自分の言いなりになるかならないかというような基準で非常勤講師の担当コマ数を増やしたり減らしたりすることから生じる減ゴマ・雇い止めのトラブルが後を絶たない。

そもそも専任教員には人事権はないのだが、専任教員は非常勤講師の担当する授業をコーディネートすることから、専任教員の中にはあたかも自分が人事権を持っており、好きなように非常勤講師の担当を増やしたり減らしたりする権限を持っているかのように錯覚している場合がある。それがこうしたトラブルの原因になっている。

大学自身が、非常勤講師に授業を担当させるということは、有期雇用契約にあたるということを正しく理解することが必要であるのは言うまでもないが、さらに専任教員のさじ加減ひとつで非常勤講師の雇用を左右できるものではないということを、専任教員にきちんと教育しなければならない。

 

「非常勤の声」第15号

  • しかしそれ以降も、組合と大学側が合意した4項目は守られて来なかった!この間ずっと大学当局はこの教員Kを擁護し、パワハラを容認!

合意が無視されてきた具体的な状況は以下のようであった:

1 .非常勤講師との話し合いの席には可能な限り第三者に同席してもらうこと。

⇨担当者会議に、センター長と事務室の方一人が同席しているが、K教授が非常勤講師を理不尽な理由で叱責しても誰も止めに入らない。まったく同席する意味がない。

2.「減ゴマ・雇い止め」もしくは「減ゴマ・雇い止めを連想させる表現」(たとえば「いっしょに仕事ができない」とか言った表現)を不用意に用いないこと。

⇨担当者会議に、体調不良と子供の手術で欠席せざるを得なかった非常勤講師にK教授は「どんな事情であれ、会議に欠席した者には僕なりの措置を取るしかない」と脅した。全く変わっていない。つまり、反省していない。

3.減ゴマ・雇い止めを非常勤講師にお願いしなければならない事態にいたった場合には、教授会に諮り、非常勤講師にその理由を十分に伝えた上で了解を求め、処理を進めること。

⇨教授会に諮られたことは一度もないと思われる。先にK教授が直接非常勤講師に電話をかけ、「時間調整上、仕方ない」と言うので、講師は受け入れるしかない。その後、K教授が事務室に連絡し、事務室から非常勤講師にメールが来る。

4.専任教員 K は A 組合員に文書で謝罪すること。

⇨K教授からの謝罪は何の意味もない。この合意が成された2008年以降も、パワハラ行為が止むことはなかった。むしろ、更にエスカレートしている。K教授は勿論のことそれを放任した学校側にも管理責任が問われる。

甲南大学学生自死事件(2018年)の責任者は誰か?

甲南大学被害者学生は、なぜ、どのような経緯で、死ななければならなかったのか。甲南大学で、学生へのハラスメント被害はどのようにして隠蔽されていったのか。

今後の学生が安心して過ごせる学校となるために、学生を死に至らせた甲南大学の不適切な対応を改めて糾弾せざるを得ない。

 被害者学生の遺書には「自殺に至った主な原因は、(中略)文化会による名誉毀損などによる精神ダメージです。(中略)甲南大学の対応も遅く私は限界となりました。以上のことにより3月より精神が著しく削られ私は自殺します。」と記されている。(遺書に名前記載がある)加害者学生への適正な処分も大学からは行われていない。事件隠蔽の中、甲南大学は被害者学生死亡のわずか5日後、半年を切った100周年を盛り上げるキャンペーンを大学HPでアナウンスし(下1枚目写真)、更に約1ヶ月後には文化会表彰式:祝賀会を開催しており(下2枚目写真)、在校生に死者を出した当事者・責任者として何の反省も無いどころか事件の無視・隠蔽をしている。
 
 しかしながら、抗議自死の翌年(2019年)、ハラスメント対応当事者である中井伊都子氏は、甲南大学の学長就任、同時に国連人権理事会諮問委員にも就任している!自分の大学の学生の人権さえ守れない人物がどうして国連人権関連組織の諮問委員なのか?なお、歴代甲南大学学長(長坂氏、中井氏)の定番挨拶締めの言葉として「是非とも、甲南関係者からの苦言、提言、ご意見をよせていただきたい。皆さまのご意見に耳を傾けて人物教育してまいります」という文言がある。事件当時、それを信じた被害者学生と家族は、どれだけ甲南大学側に直訴したことか。(甲南大学/中村英雄氏、秋宗秀俊氏、中井伊都子氏、長坂悦敬氏、父母の会経由で吉沢秀成氏、ハラスメントメント委員会の複数教授陣、中村圭吾氏、その他事務員らに直訴)。しかし、逆に圧迫面談で神経を削がれ無駄に時間ばかり引き延ばされた末、見殺しにされて抗議の自殺に至ったのである。その後の遺族からの言葉も無視されたままである。

当該学生が所属していた文化会表彰式:祝賀会(当該学生被害抗議自死後1ヶ月未満で開催)(前列左から、1人目:秋宗秀俊(元文化会学生部長)、4人目:長坂悦敬(元学長)、5人目:吉沢秀成(元理事長)

 甲南大学が公言している「人物教育」とは程遠いこれらの対応は社会的に不適切であり、被害者学生の「人権」は今現在も踏み躪られたままである。被害者学生と遺族にとっては、遺憾以上の気持ちで、これまでの経緯は命に関わる辛い「精神的虐待」である。2019年の一連の新聞報道、2021年5月国会での発信(参議院文教委員会での質問)-文科省大臣答弁(本ブログバックナンバー2021年6月6日記事参照)の後も、風化による泣き寝入りを待つだけの当大学の姿勢を、元在校生の家族として大変恥ずかしく思う。2021年12月に甲南大学に向けて出された文科省からの「遺族に真摯に対応するように要請しております」という通達すら大学当局からは無視されたままである。これらを考えると、被害者学生の遺族は上に明らかにした大学執行部・幹部らの責任をどこまでも追求し続けると共に、そもそも「大学自治」自体に問題があり、重大なアカデミックハラスメント事件を適切に解決できない(私立を含む)大学に対しては「被害者学生の権利を守る法」を国会において是非早急に整えてもらいたいと考えている。

甲南大学から(学生死亡後4年経って)初めて遺族に封書届く!

①甲南大学から被害者遺族への手紙: 

 4年放置後にやっと届いた紙一枚!?

2018年の甲南大学によるハラスメント被害者である学生の死亡に対し甲南大学は自死学生への最低限の処理も放置してきた。最近、その事実を遺族が(全国)大学生活共同組合に連絡したところ、甲南大学から、(学生死亡後4年も経って)初めて遺族に封書で手紙が直接届いた。その内容は、「学生カードに入金されている残高を返金する」というもので、所定の用紙が入っていたが、添えられた手紙が遺族に送付するには全くふさわしくないイラスト印刷の紙片であった。

甲南大学から最近送られてきた「紙片」

この4年間、甲南大学から学生死亡に対する弔意は一切皆無で、それ自体著しく常識が欠けているが、今度は、大学生協から送付されたメッセージ用紙が、遺族に全く配慮のないイラスト付のものであり、遺族の気持ちをさらに逆なでしている。当ハラスメント事件は2021年国会で問題となり(本ブログ記事)、その後文科省から甲南大学へ、「遺族に対して真摯に対応するよう要請しております」という文章が出されている。その文科省要請に「はい」と甲南大学側は返答したものの、その後も放置を続けていることは許せない行為である。抗議自死した元在校生やその遺族には文科省の要請をも無視した厚かましい恥知らずな姿勢を示す一方で、高校生、新入生・在学生やその父兄、OBの教員、財界人には、恣意的な誤った薔薇色のイメージのみを宣伝して学生集めに汲々としている。まさに、大学広報内容と遺族に対する態度の間には甚だしいギャップがあり、この「恐ろしい二枚舌」で世の中に偽りの大学像を発信し続けている(最近の大学HPでも顕著)

②有識者会議を経た「学校法人制度の法改正」への文科省の動き

最近、文科省有識者会議の一つでは、次のような議論がなされている:

「学校法人制度の概要及び私立学校法の改正について」(令和4年度学校法人監事研修会)

https://www.youtube.com/watch?v=eLGiHaYHZeQ(資料)

このyoutubeから抜粋して、少し述べたい:

資料17ページ

(赤枠部抜粋)

学校法人における自律的なガバナンスの改善に資する仕組みを構築するため、理事畏の解職に関する規定の追加を検討するなど、社会の変化を踏まえた学校法人制度の在り方について不断の見直しに努めること。また、学校法人の不祥事や不正等が繰り返されることのないよう.これらに対する告発が隠蔽されずに適切に聞き入れられる仕組みの構築等、より実効性のある措置について速やかに検討すること。

衆参両議院の委員会において、以上のような附帯決議がなされたにもかかわらず、甲南大学では4年前の学生自死事件に関し、依然として何ら誠実な対応をしていない。そもそも、当時「ハラスメント委員会」を主導し、当該学生を抗議自死に追い込む、「ハラスメントではない」という結論を導いた人物(中井伊都子氏)がなぜその後、常任理事、学長に就任できるのか?遺族の悲痛な声が国会に取り上げられても学内の誰もこのことを指摘し問題化出来ないのか?公共性・公益性を有する学校法人は社会に説明責任を果たす必要がある。

中井伊都子氏近影

私立大学法人では不祥事発生の背景となるガバナンス不全の構造的リスクがしばしば見受けられ(資料p19)、それゆえに法律の成立いかんにかかわらず、今後この法人=甲南大学が社会の信頼を得るためにも改革を先んじて取り入れてほしい(資料p21)と考える。

資料19ページ
資料21ページ

私学ガバナンス会議の議論に関連し、家族が文科省に申し入れ―甲南大学事件―

最近相次ぐ私立大の不祥事(理事長が逮捕された日本大学の事件を含む)を受け、私立大学のガバナンス強化をめざし、いわゆる「私立学校法改正案」が昨年から文科省の有識者会議で議論されてきた。まず20年1月に設置された有識者会議は21年7月に改革会議となり、12月に改正案を示したが、私学側の猛反発に会い、今年1月新たな会議*を作った。

*学校法人制度改革特別委員会https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/daigaku/010/index.html

3月に明らかにされた報告書案では、

  • 理事会に対する評議委員会の監督権限の強化
  • 私立学校法に贈収賄罪や特別背任罪を新設すること

が盛り込まれている。すなわち、理事長への権限集中や評議委員会(現行制度では理事長に諮問機関)のチェック機能形骸化を防ぐ仕組みづくりを提言している。

https://news.yahoo.co.jp/articles/4cd329c30246204c05a29b7683340b28387d4df1

具体的には、理事の解任について評議委員会の関与を強化し、法令違反など問題のある理事は評議委員会が理事会に解任請求し、放置された場合は訴訟を起こすことが出来るとした。また、これまで認められてきた、理事と評議員の兼任も禁止する。

これに関しては、早大総長の田中愛治氏、元衆議院議員の塩崎恭久氏、東大大学院教授の両角亜希子氏がそれぞれの立場から意見を述べている次の記事が興味深い。

https://digital.asahi.com/articles/ASQ1G2W2XPDFUPQJ01C.html?oai=ASQ5B53M1Q5BUTIL00Q&ref=yahoo

 学校法人制度改革特別委員会第4回会議には、全私学連合から「学校法人ガバナンス改革に関する考え方」なる文書が資料として提出され、

それについての説明を上記田中愛治氏が会議の中でも行っている:

第4回会議議事録

われわれが注目する文言は、この資料の「なお書き」の中にある、以下の文書である:

○ 理事に法令違反もしくは社会的規範から逸脱した行為があったと相当の根拠をもって疑われる事態が発生した場合、もしくは監事による理事会への是正勧告に理事会が従わないなど理事会が自浄作用を発揮出来ない場合には、評議員会が理事長または理事、もしくはその双方を解任する権限を認める。

同様の項目が評議員、監事に対しても続き、いわゆる「三すくみ」の仕組みを提案している。両角亜希子氏の上記論評によれば、大学に自浄作用が期待出来ないとき、或いは行政指導で改善が見られない場合、文科省は「立ち入り検査や、理事・幹事の退任勧告といった措置を取ることができる」ということです。

しかしながら現状では、問題のある大学幹部に対する文科省からの言葉のみによる指導には強制力がありません。

上記のような議論の進展を前提にすれば、既に各地の私学で数多く頻発している様々な不祥事に対し、本法律を先取りする形での文科省からの強い働きかけ・指導があって然るべきではないだろうか?

 

大学ハラスメント被害学生の家族による切実な申し入れは以下のような形で行われた:

文部科学大臣、及び学校法人制度改革特別委員会委員各位 殿

 

 大学理事の社会通念に反する誤りが是正されていない事実を、大学ハラスメント被害抗議自死学生遺族としてご報告します。新聞社の調査報道による根拠のある情報、遺族の言葉として、甲南大学において学生を自死へと追い詰めた人物が学長・理事に就任し、大学から学生の死への対応が一切 皆無である事実を「アカデミックハラスメント情報室」HPに投稿しています。 大学として間違いがあったにも拘らず是正されていない実例として、文科省と学校法人制度改革特別委員会委員の皆様に (本事例を) ご承知おきいただきたく存じます。よろしくお願いします。

 

2022年5月10日

甲南大学事件被害学生家族

 

結局は5月に、文部科学省はこの改正案を今国会へ提出することを見送った。

https://digital.asahi.com/articles/ASQ3K6JTDQ3KUTIL031.html?oai=ASQ5B53M1Q5BUTIL00Q&ref=yahoo

夏の参院選との絡みはあるが、1日も早くこの種の法律が成立・施行され、殆ど野放し状態にある、理事や大学執行部へのガバナンス強化への第一歩として機能することを期待したい。

最近甲南大学のホームページで公表されているKONAN TODAY 58には次のような記述がある:

「人間教育率先の理念をより高いレベルで実践する意欲と経験に満ちた新たな布陣」?「前例のない危機も乗り越える100年かけて培われてきたKONANの土台の確かさ」?「ハラスメントを放置したまま『人間教育』などと笑顔で世の中に発信するギャップに、抗議自死学生の家族としてやり切れない思いです」(被害学生家族)。

質問書に文科省から回答! 甲南大学事件(本ブログでこの間の経緯を紹介中)

2021年11月10日に、末松信介文部科学省大臣宛に、甲南大学ハラスメント抗議自死学生の母として代理人から質問書を送付し同年1130日までに回答を求めたところ、文部科学省省(高等教育局 学生・留学生課 厚生係)から回答がありました。以下に質問書の抜粋と回答書を公開します。赤線は、ご家族によるもので、回答の重要と思われるところです:

(文部科学省HPより)

 

質問書(抜粋)

質 問 書

末松信介文部科学大臣 殿

(所管 高等教育局)

前略 私は、神戸市東灘区にある私立甲南大学(学校法人甲南学園が設置)に通学していた*****君の******の*******です。以下の点をについて、ご質問しますので、令和3年11月30日までにご回答下さい。

次の点をふまえ、質問をします。

【事件の概要】

 自らの大学に所属する学生が、大学公認の活動がきっかけとなり、また、その後大学による適切な相談支援がなされない中で抗議の自死をしたにも関わらず、

 甲南大学では、大学に学籍があった当該学生の死に際して、一般社会の常識からかけ離れた対応がまかり通っています。その後、**君に自死の原因となる対応を行った当事者である中井伊都子氏が大学の象徴的存在である学長に就任し、公には「甲南大学は、みなさんの健康・安全と学修を守るために全学を挙げてサポートシステムを展開してまいります。ぜひ安心してください。」と笑顔でコメントを発信しています。

 現在に至っても、被害者自死学生に対する甲南大学からのお見舞やお花等、弔意の意思・謝罪は一切皆無で、重大な人権侵害に対する何らの問題意識・反省はありません。

 遺族の告発によって、2020年3月の新聞・TV報道で事件が明るみになりましたが、その際、甲南大学は「大学の対応には問題は無い」とのコメントを行っており、更に酷いことには「**君が問題になるような発言をしていた」とメディアを通じて発信しており、被害者が死に至っても大学による名誉棄損被害を受けています。

 私どもの要望する第三者による公正な調査を拒否し、未だに検証作業すらも行われていません。

【国会での質疑】

 この問題は、令和3(2021)年5月13日に開かれた参議院文教科学委員会においても取り上げられています(本ブログ6月の記事を参照して下さい)。(以下略)

【毎日新聞の報道】(略)

【遺族の訴え】

 わが国において、少子高齢化、子どもの自殺等が社会問題とされ、安心して子どもを産み育てられる環境を実現することの重要性が指摘されています。

 しかし、親が大切に産み育てた子どもが、大学生にまで成長し、高額な学費を支払った教育の場で、パワーハラスメントによって平和な学生生活が破壊され、やむなく遺書を残して自死に至っても、事実関係を調査し、再発を防止する制度等は公に検討されておらず、個人の問題として放置されています。

 また、私立大学の自治の名の下に、学生の命を守るという基本的な事項について、大学に対する国または地方公共団体からの適切な指導監督がなされておらず、本件では、深刻な被害が隠蔽され、被害者が泣き寝入りを強いられる一方で、アカデミックハラスメントに加担した当事者が学長に就任している現状さえあります。このような営利優先の無責任な教育方針下では水面下での学生の被害や自殺者が後を絶つことはないでしょう。「改めなければ、今後も同じことが起こってしまう」と生前、被害学生が大学に直訴しています。命をもって抗議した学生の存在を被害者として大学は今も扱いません。国として、私立学校に対する適切な監督のあり方について考え直すべき時期に来ているのではないでしょうか。

【質問事項】(以下の回答文を参照して下さい)

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