「看護学校パワハラ撲滅プロジェクト」始動!

「すべての看護学生が夢や希望を持って看護師になれること」を目指します

1昨年来、北海道立江刺高等看護学院、千葉の木更津看護学院、岐阜県の看護専門学校などで教員による理不尽なパワーハラスメント、アカデミックハラスメントが相次いでいることは新聞やTVで度々報道されていますが、相次いで自殺者が出る事態に至っており、問題は深刻です。

報道例には

看護学院のパワハラ自殺、北海道が遺族に謝罪 母「許していない」毎日新聞 2023年5月16日

木更津看護学院 ハラスメントあった? 第三者委調査報告で会見 2022年12月28日 NHK千葉放送局 ちばweb特集

等があります。

現場のハラスメントに対する意識が極めて低い一方で、看護学校を管轄する都道府県には、小中学校・高校での児童・生徒のいじめに関する「重大事態」に類するものへ対応する機能や人材、あるいはハラスメントのガイドラインなどもほとんど無いという現状です。

このような状態を何とかすべく、最近の事案をきっかけに、この4月「看護学校パワハラ撲滅プロジェクト」が発足し、活動が開始されました。是非、下記ホームページを参照して頂ければ幸いです:

https://change-school.org/

詳細は上記HPに譲りますが、その最初の重要な活動の一環として、SNSを通じた看護学生の実態調査を行っています。また、その回答に基づくレポートが順次HP上で公開されています。

もし身近でそのような例を見聞きする方々がおられましたら、ぜひ調査にご協力頂くとともに、孤立している当事者・家族の皆様が、必要に応じて相談などをされることをお勧めします。

文科省、指導死児童についての初の実態調査へ(3/3)なぜ甲南大学学生自死事件に取り組み続けるのか?

(3)なぜ甲南大学学生自死事件に取り組み続けるのか?

本ブログでは、この間、いわゆる2018年度に起こった甲南大学における学生自死事件とその後について、今日に至る一連の経過を報告してきました。

【事件の経緯ー再録】 2018年3月、被害学生は甲南大学:学生部に部活動ハラスメント被害を訴えたが放置され、同4月には当時所属していた部の部長名で全ての甲南大学公認文化会ー関西圏10大学合同活動する団体へと「名誉毀損:誤情報」が流布された。秋宗秀俊学生部長(当時)による黙認で被害が拡大したため、同5/22、被害学生は甲南大学キャンパスハラスメント防止対応委員長(当時):中井伊都子氏に直接苦情処理を申し出た。同5/26には、被害学生母親が長坂学長(当時)ー吉沢理事長(当時)に被害救済を訴えたが被害学生の名誉回復には至らず結果的に放置された。同9/19、中井伊都子ハラスメント委員会委員長は、被害学生を学内に呼び出し「今もなお問題になっているとは言えないと判断している、学長から学生部長に対し部の指導指示が出されている、強制退部手続きの問題としての指導は行うが恐らく処罰はくださない」との説明(残された記録引用)があり、被害に対する名誉毀損救済は皆無となった。「誤情報拡散、強制退部はハラスメントではないのか、大学のどこに言えばいいのか」と訴える被害学生の声は無視され、大学側の高圧的な態度で事件は隠蔽された。同委が「ハラスメントと認定しない」との結論を出した約1か月後に被害者学生は命を絶った。「自殺に至った主な原因は3月に起こった部および文化会による名誉棄損による精神的ダメージ(中略)甲南大学の対応も遅く私は限界となりました。以上のことにより3月より精神が著しく削られ私は自殺します」との遺書を記し被害者学生が自殺したその翌年、中井伊都子氏は、甲南大学学長:甲南大学理事へと昇進。2023年現在に至るまで甲南大学側から遺族への対応は皆無で、第三者委員会設置拒否、文科省からの対応要請にも無反応のままである。

以下は2020年の新聞記事です:

甲南大生自殺、ハラスメント委調査「闇のまま」 議事録非開示 外部専門家参加せず  毎日新聞 2020年3月29日

「横領」誤情報で甲南大生自殺/上 ハラスメント認定せず 遺族が検証要望も拒否 /兵庫  毎日新聞 2020年4月5日

甲南大生自殺 ハラスメント委の調査過程、客観性乏しく不透明のまま  毎日新聞 2020年4月6日

「横領」誤情報で甲南大生自殺/下 調査過程、不透明のまま 客観性乏しい学内委 /兵庫  毎日新聞 2020年4月6日

(1/3)で述べた文科省の決定に関し、この事件の遺族は次のようにその思いを述べておられます:

【ブログ「管理人」様 **(弁護士)先生

今日の夕方のニュースで教師の不適切な指導による学生(児童・生徒)の自殺「指導死」の実体を文科省が調査するという速報が流れました。今回は高校生までが調査の対象ですが、ようやく山が動き出したように思います。(これまで30年近く)文科省へ遺族が被害を訴え続けてようやく今回の調査につながりました。当事者家族らとは、学校事故を語る会で何度かお話ししましたが、現在大学生の家族として声をあげているのは当方だけです、、、「大学が文科省の指導対象外である理不尽な事実」を是非取り上げて欲しいです】

また、

【私立大学の自殺者数が表に出て来ないのは、そもそも、大学側が外部に学生死亡の事実を隠蔽し、報告していないからです。】

とも仰っておられます。(2/3)の記事からも分かる通り、文科省は自死大学生に関する統計調査は、国立大学のみしかやっておらず、ましてや個々の事例に関し、詳細な調査は一切行っていません。前述の、関連団体による全国の国公市私立大学に関する調査も昨年度やっと2回目であり、回答率は約80%であることから、2割の(私立?)大学が調査要請を無視、あるいは無回答していることがわかります。以下の甲南大学の文書からは、おそらく甲南大学もこの種の調査には応じていない可能性が指摘できます。ましては、専修学校(看護学校など含む)に関しては、文科省以外の管轄でもあるので、さらに(全国的)統計などが無いのが現状かと思われます。

実際、代理人弁護士からは

【甲南の代理人から私になされた回答のうち、そもそも死亡事故について大学内には文書が存在せず、その理由として、報告する義務が無いからだとする文書を(もらっているので)それを添付しました。(以下に画像)】

という連絡もあります。まさに「無かったこと」として文科省とマスコミ・世間に都合の悪い(大学の評判を落とす)事実を隠蔽し続ける態度は「ハラスメントはなかったとする」大学当局の「結論」以降、全く変わっていません。

続いてご遺族は【文科省の指導死調査も大学は枠外に置かれており、指導死を行った人物の学長就任や耳障りの良い公言はどこからも正される事無く、被害者学生とその遺族は悲痛な泣き寝入りを現在も強いられています。文科省は(私立大学の自己採点:自治に任せて助成金や補助金支給の増額を検討するのではなく)、早急に大学指導死の実態調査を行い、大学において指導死を出した私立大学には、その責任を負うよう指導してください。よろしくお願いいたします】

と再度文科省への要望を述べられています。

 2年前の国会質問後には文科省は「指導した」と言っていますが、大学は何らそれに対する誠実な対応はしていず、相変わらずご遺族無視の学生の命の存在すら無かったかのような姿勢を続けるのみです。われわれはこの種の事案を粘り強く発信し現状を何とか変えるべく、文科省や各大学に引き続き訴えていきたいと考えています。

 もし身近に、似たような自死例をご存知あるいは経験され、大学当局や文科省にまともに取り合ってもらえず、無視(無かったことに)されたり裁判を思いとどまるよう説得されたようなご経験をお持ちの方は、是非情報をお寄せ下さい。古い事案でもこれからまだやれることがあるかも知れません。

文科省、指導死児童についての初の実態調査へ(2/3)増えている若者の自殺、調査範囲をハラスメント自死大学生、専門学校生にも速やかに拡大を!

 

(2)増えている若者の自殺、調査範囲をハラスメント自死大学生、専門学校生にも速やかに拡大を!

最近のニュース記事

「去年の全国で21,881人がみずから命絶つ児童・生徒は過去最多」

2023年3月14日NHKニュース

によれば、厚生労働省発表の確定値で、昨年(R4年=2022年)1年間の自殺者総数は21,881人、その内児童生徒の自殺者数は計514人(高校生354人、中学生143人、小学生17人)で、統計がある昭和55年(1980年)以降、初めて500人を超え、過去最多となったということです。厚生労働省は「子供や中高年男性で増えていて、各種相談支援をさらに進めるほか、会計省庁と連携して対策を進めたい」としています。

関係する背景(統計)

  • 若年層の死因に占める自殺の割合

 厚生労働省「人口動態統計」によると、R2年における我が国の年齢階級別にみた死因は、10~39歳(男女計)の全年齢階級で第1位が「自殺」であった。その割合は「10~14歳」では全死亡の約29%を、15~29歳では、50%以上を占め、「不慮の事故」や「悪性新生物」による 死亡を大きく上回った(下図)。とくにこの50%という数字は深刻に捉えるべきであろう。

  • 外国との比較

 世界保健機関の令和元年のデータによる と、我が国の15~24歳の自殺死亡率は経済協力開発機構(Organisation for Economic Co-operation and Development, OECD)加盟国38か国中、男性は第9位、女性は第7位 となった。なお、国によって一部欠損している期間も あるが、確認できた期間の傾向として、いず れの年齢階級においても日本は、韓国、アメ リカ及びカナダとともに、ヨーロッパ諸国 (イギリス、イタリア、ドイツ及びフランス) と比較すると高くなったことがわかっている。

  • 過去10年程(2009~2021)の児童生徒及び学生等*自殺者数の推移

*小学生は 「児童」、中学生と高校生は「生徒」、大学生と専修学校生等は「学生等」と表記。

最近のデータとしては次の2つの図表が挙げられる(少し古いが):

2011年の大津いじめ自殺報道以降、現在のコロナ禍中に至るまで、自殺者数、自殺率(10万人当たりの自殺者数)とも急激に上昇していることがわかり、その原因究明が早急に必要であるが、報道のあり方も関係している可能性がある。

上のグラフは、近年のこの上昇傾向が学生等(学生+専門学校生)の自殺者数にも同様に現れていることを示している。上昇が始まっている平成30年(2018年)はコロナ禍以前であり、やはりこの原因もはっきりしない。

また、大学生、専修学校生などの自殺についての統計には、

a) 令和 3 年度 国立・公私立大学死亡学生実態調査

b) 令和 3 年度 国立・公私立大学死亡学生実態調査ー結果まとめ

などがある。これまで国立大学に関する統計は存在したが、広く公私立大学(短期大学含む)にまで拡大された調査結果はどうも令和2年が初めてだったらしく、上記の報告は2回目(令和2年の実態を反映)のものである。資料a)の1ページ目を載せる:

これによると、回答があった932大学(学生数約280万人、回答率82.5%)のうち、死亡学生数は636人、自殺又はその疑い331人となっている。回答率約80%考慮すると、実際の自殺者数は約400人と推定できる。これらの調査は、問題意識をもつ関係者によって自主的になされた調査の結果であり、「結果まとめ」にも個々のケースについての詳しい報告は無い。本統計の関係者は詳細の報告を受けていないか、それ自体各大学に任され、明らかにさされていないと思われる。即ち、これまで、文部科学省は大学生の死亡や自死事件に関して、何ら調査をすることもなく、ましてやそれらの実態についての詳しい調査や原因究明に関しては、当事者=大学等に任せて放置してきたと言うことである。「大学の自治」に任せるという言い訳がこれまで度々都合良く使われたきたが、このブログでも散々述べてきたように、これらの問題に関しては、残念ながら大学あるいはその教職員等は自己保身や文科省対策のため事件の隠蔽を図るのみで、学問の府としての良識を期待することは到底望めない。それどころか、大学執行部は学生の自殺や覚せい剤関連の事案については、しばしば(特に地元の)マスコミにはかん口令を敷くことは日常茶飯事である。小中高校では、いまや普通に設置される、外部のメンバーが参加した自殺事案に関する第三者委員会は、大学についてはこれまで一度も設けられたことは無く、学内関係者のみの調査委員会が作られ、大学に都合の良い「結論」を出して終わりということが多い。

 文部科学省は、これまで置き去りにされてきた、ハラスメント自死学生・専門学校生の諸事案に対する調査を大学に強力に指導することから始め、第三者委員会の設置を促してその調査活動を具体化させ、委員会の報告・結論・提言に積極的にコミットするべきである。

 最後に、 大学生・専修学校生等の自殺をめぐ る状況(原因・動機)に触れておこう。少し古い(~2014)資料:

第2節 若年層の自殺をめぐる状況

によれば、次のような考察がなされている。

 ”大学生の原因・動機をみると、男性におい ては、「学業不振」、「その他進路に関する悩 み」、「うつ病」、「就職失敗」の比率が高い。 自分の将来の進路、就職、それらに大きな影 響を与える学業を悩みとするものになってい る。専修学校生等の男性の自殺者においても 男性の大学生と同じ傾向である。 平成26年の全年齢の完全失業率35が3.6であ るのに対して、15歳~24歳の年齢階級での完 全失業率は6.3であるように、若者の就職をめ ぐる環境が依然厳しい中で、就職や進路が大 きなプレッシャーになっていることがうかがわ れる。  女性の大学生や専修学校生等の自殺の原 因・動機をみると、大学生と専修学校生等と では、その両者には大きな違いはない。男性 の大学生や専修学校生等と比較すると、「うつ病」が高くなっている一方、「学業不振」、 「その他進路に関する悩み」、「就職失敗」は 低くなっている。 景気の変動に伴い就職状況が厳しくなった り、あるいは競争の中で、学業の成績や就職 が期待したものにならなかったりすること は、学生の努力だけでは避けがたい面がある。”

 現在(2023)においては上記理由のみならず、大学生自殺の原因として「指導死」(ハラスメント)もあるとの報告が、被害者学生の家族から文科者や自治体に伝えられている。当ブログ管理人にも被害者学生遺族からの悲痛な訴えが寄せられており、次回記事でその詳細を再度明らかにしていきたい。