立教大学 セクハラ対応の拙さを認め総長が引責辞任
最近の毎日新聞やCheristian Todayなどによれば、2018年に発覚したセクハラについての初期対応の誤りで、郭洋春(カクヤンチュン)総長が引責辞任する(今年度末=来年3月)という。
https://mainichi.jp/articles/20200515/k00/00m/040/197000c
https://mainichi.jp/articles/20200516/ddm/012/040/061000c
https://www.christiantoday.co.jp/articles/28055/20200515/rikkyo-university-sexial-harassment.htm
記事から拾った経緯はまとめると大体次のようになると思われる:
*2018年6月、1件目の被害深刻。郭氏は当時の副総長二人に対応を指示。副総長らは加害教員の所属学部と調査し(人権ハラスメント対策センターに相談しないまま)、
*2018年12月、学部長による厳重注意処分とした。加害教員は当時学内で要職を務めていたが、郭氏は解任しなかった。しかし、
*2019年3月、学内の「人権ハラスメント対策センター」が「処分は軽すぎる」と指摘したため、郭氏はこの時点で加害教員を要職から外した。再調査の途中の
*2019年7月、加害教員が厳重注意処分を受けた後に2件目のハラスメント事件を起こしていたことが発覚。
その後大学は外部有識者を交えた委員会を設立し(今年3月まで)、郭氏(総長)らの一連の対応についても検証した結果、二人の副総長に加え、被害申告があった後も加害教員を要職に留まらせた早朝にも責任があるとの結論に至ったという。
*2020年3月(23日付)、2件のハラスメント事案を起こした教員を懲戒解雇。
2020年5月(8日)、学校法人立教学院の理事会で、ハラスメント行った教員の任命責任と監督責任、また初期対応の責任を重く受け止め、任期途中での辞意を表明。同日理事会が申し出を受理。その結果、郭氏は新型コロナウイルス感染拡大に伴う対応にめどをつけて今年度末で(副総長を)辞任することになったという。なお、初期対応に当たった副総長二人、池上岳彦教授(経済学部、統轄副総長=後任は野沢正充教授(法学研究科))、松尾哲久教授(コミュニティ福祉学部)も誤りを認め、既に辞任している(2019年6月30日付、7月4日の学部長会議で承認)。
しかしながら、大学はこの間の経緯(事案の中身や加害教員の氏名等)については「被害者のプライバシー保護のため」として公表してないので、詳細は不明のままである。
郭総長は1959年東京都で生まれている在日朝鮮人である。加害者教員も韓国人教員であったらしく、そのため当初処分をしなかったのでは、という憶測もある。また、ネットでは、「ハラスメントで執行部の、特に総長が引責辞任することは珍しい」という反応もあるらし。確かに、日本全国の他大学では、もっぱら加害者に責任を押し付けるのみで、任命・監督責任を明確化しケジメをつけたという例は私の知る限りはでなく、率直に評価すべきかもしれない。ただ注意すべきは、副総長二人も含め、彼らは大学を辞めるのではなく単にその地位を退くだけである点である。大学全体の評価を著しく下げたという意味では管理責任はもっと大きい気もするのであるが、それでも他大学よりはマシというべきか。
日本大学 アメフト事件の1年前にサークル活動で起こっていた悲惨な事件
またも週刊文春であるが(2020年5月7・14日号)、アメフト部で例の「悪質タックル事件」がおきた2018年の前年、もっと悲惨な事故が日大のサークルである「プロレス研究部」で起きていた。被害者Aさんの父の話:「息子は就職することもかなわず、ずっと自宅やリハビリ施設での両様生活を余儀なくされているます。しかい、大学側は真摯に事故原因を究明することもなく。『こちらに責任はない』と言い切った。『ふざけるな』という気持ちでいっぱいです。
他の記事なども参照して、大体の経過をたどると以下のようであるらしい。
*2015年、Aさん(他の私立大学の2年生)日大のプロレス研究会「NUWA」に入る。
Aさんによると「プロレスが昔から好きで、ネットでたまたまNUWAのホームページを見つけたんです。『他大学も歓迎』とあったので、入会しました」。それから週に2回ほど、日大法学部6号館で開かれる練習に参加。
*2017年、当時サークル内で、Xという学生にいじめられていた(Aさんの脛をたたく、食費を出させる、の他に、Aさん(4年生で就活中)をサークルに残らせるために「留年しろ」と脅す、授業に出るため練習を断ったAさんにしつこく「出て来い」と連絡するなど)が、ある日Xから「試合でバックドロップをかけられるように」と言い渡され、Xの後輩のY(体格は良いが試合は未経験)との練習を強要された。当時Aさん(身長166cm、63kg)はそれまで主に「お笑い試合」に出場しているようなメンバーだった。
注1)サークルNUWA:日本大学のプロレス研究会(他大学の関連団体ともにときどき学園祭等で「興行」を行ってきた。学生プロレスはコミカルなお笑い的プロレス等を含む趣味的な興行が主流であったが、若干のOBが芸能人になったことも有り、次第に社会的に認知されるようになった。この事故を受けNUWAは、現在は活動停止から解散になっている。
注2)バックドロップ:相手の背後から脇の下に首を入れ、相手のタイツのベルトを掴んで後方に投げ飛ばす荒っぽい危険な技。受け身をとれない状態で技を受けると頸椎の重大な損傷に繋がり、プロの試合でも実際に負傷者が出ている。
*2017年8月1日 それまでの練習中もXは、受け身を取るのは格好悪いので「首から落ちろ、首から!」というような命令を再三強要していたらしいが、この日はYがAさんに3度バックドロップをかけた後、Xの「見栄えが悪い。振りぬく感じが足りない」という指示がさらにあり、YはAさんを思いきり後方に投げ飛ばした。周囲のメンバーも「Aさんが完全に上半身をフリーに(受け身を取らずに?)投げられる技を受けるのは初めてだったので『大丈夫かよ』と心配していたという。
投げられた後、首の脱臼による凄い痛みのため意識はあったが、急に息苦しくなりそのまま救急車で病院に搬送された。診断は重症の脊髄損傷。緊急手術が施され何とか一命はとりとめたが、今も首から下が自力で動かせない全身不随の状態になった。
*2017年8月~2018年12月 その後周囲の助けもあって大学は卒業したが、体の状態は戻らなかった。また、事故についての調査と見解を日大側に求めたが、「サークル活動中に起こった不慮の事故」との見解を口頭で告げられただけで、まともに取り合ってもらえなかった。Yは一度見舞いに来たがから謝罪は無かったという。
*2018年12月、Aさんは日大とX、Yに対し、5000万円の損害賠償を求める(民事)裁判を起こした。司法関係者によると、日大は「サークルの連絡会を開催して活動内容について注意喚起した。大学として十分な措置を講じた」と反論し、真っ向から争う姿勢を見せている。XとYはAさんを「長年の経験者」とし、Aさんが怪我をした投げ技についても「Xの指示はなかった」と主張しているという。
ちなみに、6月に管轄の神田警察署に被害届を提出。2020年3月10日に、XとYは業務上過失傷害の疑いで書類送検されている。初公判は5月21日に予定されていたらしいが、果たして開かれたのであろうか?
文春の最近の取材申し込みに対しても、Yは携帯で今回の事故の件を尋ねると「ちょっと今忙しいので後ほどで」と切れ、その後は不通。Xは携帯に出ず、留守電とメールで取材を申し込むも締め切りまでに応答無し。日大企画広報部広報課は「係争中であるからお答えを控えさせて頂く」と回答があったようである。
学生同士のいじめ・トラブル
この事件は、学生同士のサークル活動に絡む「いじめ」に端を発し、大学当局の放任ともいえる無責任な管理体制の中で、取り返しのつかない結果を招いてしまったと言う点で、極めて残念な事件である。小中高でのいじめの体験を相対化できないまま大学に来てもいじめを続けている大学生には、大学・サークル活動の自治等を牧歌的に与えるのではなく、これらの点をしっかり教育するか厳格に管理することが大学には求められよう。また、被害を受けた当事者・家族には、被害の訴えに対し誠実に対応してくれるところが殆ど無い現状がある。両事件とも既に裁判が進んでいるので、今後の動向もしっかり追跡したい。
大学側の不誠実な対応
日大は、Aさんが日大生ではなくプロレス研究会の会員でもないので(事前に提出するべき研究会名簿に名前が入っていなかった)、保険対象ではないため(賠償金を払いたくないため?)ひたすら練習中の事故で片付けようとしているとも推測される。研究会の顧問は法学部の教員が配置されており、大学としてのサークル活動の管理責任はあったと思われる。事件について公表し、加害学生を処分し、謝罪を行わせるべきである。
この点についても、前記事の甲南大学の例と似ており、何らかの不都合な理由により謝罪と賠償責任を果たすべき問題からひたすら逃亡しようとしている。
なぜか大手のマスコミ(新聞テレビなど)には取り上げられず!?どこかからの圧力か?