山形大学のケース(1)
大分大学のケースとほぼ同時期、2015年11月に山形大学工学部で男子学生が自殺した。この件の事実経過をまず見ておく(主な出展は「河北新報」の一連の記事による)
2014年後期 ハラスメント加害者である助教の研究室への配属が決まる.
2015年4月〜 上記助教の研究室に所属.助教は長時間の説教をする等アカハラを繰り返した.
2015年8月 大学院入試受験.助教の圧力を恐れ(「(助教に)何を言われるかわからないから」と言って)大学院での研究室変更を希望しなかった(調査委員会の聞き取りに対する両親の話)。
2015年11月 指導教員の助教によるアカハラを苦に自殺.
2016年6月 第三者調査委員会報告書作成.「助教によるアカハラがあったこと」、「アカハラと自死には因果関係があること」、「大学が両親の相談に対処しなかったこと」等を認める.
2016年10月 山形大、「長時間の説教を繰り返す等の行為はアカハラに当たる」として、助教を懲戒処分.この処分書は、裁判で大学側証拠として提出された.
2017年5月 両親は大学と助教に損害賠償(1億1959万円)を求めて山形地裁に提訴.
2017年7月25日 第1回口頭弁論 調査委員会の報告書、原告側証拠として提出される.大学側は答弁書で、「報告書は聞き取りが不十分」等として因果関係を否定.2017年8月、初めて自死が公になる.
2018年1月16日 山形地裁で弁論準備手続き.
- 調査委員会構成メンバー:経済学者(山形大名誉教授)、臨床心理学者、精神科医、弁護士の外部有識者4人.遺族側は、委員達がこの種の事案に精通しており、聞き取りの対象者も広く関係者を網羅しているとして、「証拠提出した調査報告書の信用性は極めて高い」と強調している.
- これに対し大学側は、「事実関係の確認が不足している」「そのまま大学の判断とはならない」と主張.学生の自殺とアカハラの因果関係を認めていない(2017年12月現在).
以下、調査委員会報告書(2016年6月作成)によるアカハラ行為
1)自殺する2日前、卒業研究の中間発表練習会で、研究内容の不備を他の学生の前で厳しく指導されていた.(同じ研究室の学生・院生等らへの聞き取りによると)助教は、発表内容だけでなく学生の研究姿勢も批判.学生は発表会の後、「卒業できないかも知れない」と思い悩んでいた.助教は研究室の学生が質問しても「自分で調べろ」という立場で、具体的な指導をすることは少なかったという.
2)自殺した学生は、助教が過ごす室内に必要な実験器具が置かれていたため、他の学生より助教と過ごす時間が長かった.
3)学生は、助教の機嫌を損ねると、叱責や人格を否定するような発言を浴びせられる危険があると感じ、「気軽に質問したり本音を伝えたりすることができなかった(推測).
4)自殺の数ヶ月前、必修科目の中間試験と研究室の研修旅行が同じ日程になった際、学生が試験を受けたいと申し出たのに対し、助教は「研究と授業のどっちが大事か」と詰問、研修旅行への参加を半ば強制していた.