甲南大学での学生自死事件、その後 (4)

前3回の記事に続き、昨年4月に取り上げた事件

甲南大学での学生の自死事件(以前の記事)

についての続報である。「一連の経過」改訂版を下に示して連載を始める:

【概要再掲】2018年3月11日、甲南大学文化部(文化系サークルの集合体)において、歴代部長を中心とした部活動の上級生が大学公認部の権限を利用し、目障りな下級生を排除するための名誉棄損誤情報をでっち上げ、意図的に外部に流布した。これが重大なパワーハラスメント事件の発端である。以下、ご家族の手記から続けて引用する:

【抗議の自死】

中井ハラスメント委員長、秋宗学生部長の発言の後、遂に「抗議の自死」に至った。

被害者学生は、警察が第一発見者となるように工夫し、他者に迷惑がかからない配慮をして、自死を決行した。命懸けで、警察に甲南大学ハラスメント被害を届けたのである!

被害者学生の様子がおかしいと心配した友人から、自死の当日に学生部窓口に連絡があったが、応対した大学職員は、「そんなに大事(おおごと)にしていいのか」として、直ぐに対応しなかった。そして、かなりのタイムラグの後、中村英雄学生部事務部長から被害者学生の自宅に電話があったのは、自死の後であった。このとき遺族が甲南大学と直接交わした会話は、約30秒のみである:「これまで何度も抗議した。取り返しのつかないことが起こってしまった」との遺族の言葉に対して、中村学生部事務部長は、間を置かず「わかりました。弁護士の名前を教えて下さい」との言葉だけで終わった。

○ 抗議の自死後

被害者学生側の当時の代理人弁護士は、代理人として被害者学生とのやり取りは行っていたが、大学に文章を出すことは無かった。学生の自死後、遺族に「もっと早く伝えるべきだったが、自分の子供が甲南学園の中学に通っているので、これ以上この件に関われない」と代理人契約は打ち切られた。遺族は当時の弁護士を信じていただけに大変なショックを受けた(当時の代理人が決定したいきさつ:被害者学生と母が、2018年6月、かかりつけ医の紹介で、ある弁護士を尋ねたところ「自分は甲南大学大学院の関係者なので適任者を紹介する。君は非常にしっかりした人物なので、以後は自分で弁護士と相談し、親は大学に出向かない方が良い」と言われ、そのアドバイスで当時の代理人が決まった)。

現在の代理人弁護士に出会うまで、何人もの弁護士と話をしたが「甲南大学」と聞くと皆一変して無理だと断られた。これまでにも甲南ハラスメント問題は水面下で何度もあったらしいが、恐らくこのような事情でメディアで大きく報じられていないだけであることが遺族には漏れ聞こえてくる。

○ 母が、知人・友人・恩師達から聞いた被害者学生の様子

自宅に弔問に訪れてくれた当時のあるアルバイト先の店長曰く、「平素一番いきいきと仕事をしていたのに、3月のパワハラ後の時期、あまりに落ち込んだ様子だったので理由を尋ねると、『部長に嫌われて、その他と結託して悪い噂を流され、はぶられている。部活辞めたくないけど回避できない。大学に言ったが取り合ってくれなかった。みんなで丸め込んでいる。』と話した後『でも僕は、頑張ります。』と言っていた。」という。

一緒にアルバイトをしていた長年の親友は、「普段から部活動を誇らしく語っていた。だからこそ面くらった、自分の居場所が居場所じゃ無くなる辛さをその様子から感じた。当時の甲南大学の酷い対応を思い起こせば、悲しみと憤りが蘇る」という。

被害者学生は、おおらかで優しく小学校・中高の親友達からも人望厚く、直接指導を受けた恩師たちは一様に、「純真で責任感強く、人一倍努力家で、将来が楽しみだった」と無念の涙を流してくれた。(遺書には)家族全員と親友に、愛情あふれる自分の思いを綴り残している。また、自分が受けた被害の記録と、甲南大学及び加害者学生への抗議文もしっかりと綴り日付と名前のサインを記している。

【自死後の甲南大学の無責任な対応】

○ 甲南大学の隠蔽体質

甲南大学ハラスメント委員会は、本件の虚偽情報の拡散について、「現在に至ってなお格別問題視すべき事情までは無いといえる」と学生の被害を無かったものとした。被害者学生は、秋宗学生部長からの「どう処分してほしいか」という問いに対して「加害者部長の交代・当該部活動の休止」の2点を示したが、処分はされず、偽情報が打ち消されない状況の中で、文化会学生から被害者学生には、「団体を軽く見ている」という発言も飛び出した。早期に加害者に常識的な人間教育を行わなかった甲南大学の罪は深い。我が息子は、2018年3月以降、大学の対応に傷つきながら、徐々に聴力を失いつつも、自身の名誉回復に全力を尽くした末、同年10月抗議のために命を絶った。

甲南大学は、自らの大学の学生が、学生生活に関係する事柄を理由にして、しかも、大学にもその問題を訴えかけていたにも関わらず、命を絶ったというのに、学生の自死がわかった後も、遺族と向き合って言葉を交わすことはなかった。遺族と関わることを避けていた。その一方で、甲南大学は加害者学生及びその家族とこっそり会合し、いまだに加害者学生も「自分たちに問題は無い」と未だ当方への謝罪はない。

魅力ある他大学にも複数合格していたのに、本人が地元での起業を目的として「甲南大学」を選び、それに賛同してしまったことを遺族は心から後悔している。

大学においても、例えば旅行会社と同じように、万一の問題が起こった時に、初めてその大学の本当の価値が露呈するだろう。

しかし残念ながら、甲南大学は時代に逆行した「村社会」で、被害は隠蔽され、問題行動があっても、外部に漏れなければ誰も責任を取らない。被害内容の聞き取りは、途中から虚偽の自白を強要するようなやり取りに変容し、「やっていないから、言っていない!(父母の会事務局職員・会長も確認)」の学生の声を、甲南大学はメディアに「横領の事実は無かったものの男子学生が誤解を招く発言をしていて、他の学生が横領は真実と信じたのはやむを得ないと判断した。一連の本学の対応に問題はなく、第三者委員会の調査には応えられない」と更に誤解が生じるコメントを発し論点をすり替えた。それは、更なる惨憺たる名誉棄損のハラスメント行為である。

問題を問題としない甲南大学・Konan Universityの常識の感覚が一般社会常識とはズレていること、そうしなければ「2018年問題」(注2018年をめどに18歳以下の人口が減少期に入ることで、学生獲得戦争が過熱し、大学の倒産もありうるという問題)に対し甲南大学が生き残れない程の切羽詰まった状況であることを、母親は息子の自死を通じて嫌というほど知ってしまった。

パワハラ発生後、せめて、甲南大学が加害者部長を交代させるとか、適切な文章を出すなど何らかの適切な対処をしていれば、こんなことにはならなかっただろう。

「被害者学生自死」後に、非公開で当該部と加害者学生に軽微な「注意」など発しているが、「アリバイ工作」以外何の意味も無く、かけがえのない命は取り返せない。

○ 報道後の甲南大学の無神経な対応

2019年4月「甲南大学生自死報道」の後に、甲南の公式ネットMy KONAN上で「本学学生に関する報道について、(言い訳中略)本学の対応に問題は無かったと考えていますが、(言い訳中略)改めて心よりご冥福をお祈り申し上げます」という無神経な記載を見つけた。

甲南大学は、ひたすら「言い訳」を繰り返すのみである。学生を抗議自死に追いやり、1年半後に報道で暴かれ、ネット上で被害者に「冥福」という言葉を使うデリカシーの無さには、改めて驚いた。

かけがえのない大切な体は骨になっても、魂は、現在も信念を貫いて存在している。

○ 被害学生や家族に投げられた酷い言葉の数々

被害学生が抗議の自死に至るまでの間、あれほど、母親も言葉を尽くして何度も抗議したのに、甲南大学は被害者学生の基本的な人権さえ保護することなく「被害者と加害者の言い分が違うので、まだ納得できない」等とし、

加害者学生はラインで一斉連絡しながら排除目的のハラスメントを実行したのに(連載2回目に掲載)、「加害者達の口裏合わせだとは思わない」と取り合わなかった。

被害学生は、「何度も聞くと君の説明内容が異なっている」とも言われた。基本的な説明は何も変わっていない。何度も聞かれ、説明の仕方が変わった言葉尻を捉えられた。被害者を守るという発想は、かけらもなかった。毎回、怒りを通り越して呆れるばかりで、心身共に疲弊させられた。

ふりかえれば、甲南大学は、初動の間違いを引き返して訂正・謝罪せず、被害者学生と家族に以下のような暴言の数々を浴びせ続けた。

「大体君ね、いつまでそんなことを言っているの?黙らなければ君の就職にも響く」

「大学側はこれ以上に君を陥れることはしない」

「部のハラスメントとは?何のことですか」

「残念ながら君を要注意人物とみなす」

「君やったと言ったよね?」

「ハラスメントは認められなかった。現在に至っても問題だとは大学は認識していない」

「実社会では問題のあった人物が自分から辞めるのは普通のことだ(被害者に対して)」

「全部録音していますか?全部録音していなければ、うちの大学の学生の人数は多いのだから、いちいちこんな問題を覚えていられませんよ」

「いつまでも、そんなことばかり言っているから、もうお宅とは話をしたくないのですよ」「お母さんにも伝えた(?)、ハラスメントは個人対象であり、それを理解して訴えたはず」

 録音記録を全部文章化し書きだせば、まだまだありキリが無い。誰がこれらの「学生人権蔑視発言」をしたかは、当人がこの文章を読めば直ぐに、ぐさりと心に思い当たるだろう。

中井伊都子ハラスメント委員長は、「本学(甲南大学)における『キャンパスハラスメント』については規程第2条第1項各号に定義されているところ、本件においては、同項第3号『課外活動も含め学修活動のすべての領域において、優位な立場にある者が、その立場等を利用し、教育指導上逸脱した行為・言動によって相手方に心的傷害を与え活動意欲を失わせること』に該当するか否かを判断することとなる」とした上で、本件の問題点を指摘しつつも、「格別問題視すべき事情まではない」などと被害実態を無視し、『いずれも、キャンパスハラスメントに該当しない』」という甲南オリジナルの法を適用した。更に酷いことには、さも被害者学生に問題があるかのような、「被害トラブルについての苦情を書いた文章の内容が場違いなものであった」「部が組織的に情報を流している事実が確認できなかった」「部長らによる嫌疑の内容の周知は徒らに申立人(被害者学生)の悪事を広めるために行われたものではなく、(中略)逸脱した行為・言動であったとはいえない」等々の無茶苦茶な文言で「キャンパスハラスメントとは認定できない」という結論へと終着させた。そして、中井副学長(当時)、秋宗学生部長からの面談での最後の言葉掛けは、耳を疑うかのような「困った場合は力になるので、いつでも申し出てほしい」との、2018年3月からの経緯に真っ向から逆行する伝達であった。

「大学のどこに言えばいいのか。瑕疵で済まされているが、自分はダメージを負っている。納得がいかない。警察に届けることも考えている」と訴える当時の息子の心中を思い起こすほどに、なお悲痛である。

今となっては、一時でも甲南学園に関わったことが、遺族として無念極まりない結果となった。「人間教育」に合致しないイメージ営業優先の大学コンプライアンスを掲げ『閉鎖的な教育現場での言葉が学生を死に追いやった事実』を認識し、(大学の担当者は)生涯その事実を心に刻んで間違いを悔いて欲しい。

【なんの反省もない甲南大学】

甲南大学を信じて入学したことを悔やんでも悔やみきれない日々が、自死被害者学生とその遺族には、これから先も永遠に続くだろう。

より酷くなっていく甲南大学の高圧的な態度に、被害者学生は2018年6月以降母親に話していたーー「甲南大学∞マークは首を絞める綱にしか見えなくなってきた」と。

甲南大学HPより↓↓↓)

甲南大学を語るには5つ目のキーワード【ハラスメント】が要りそうである。

 

 

甲南大学での学生自死事件、その後 (3)

前々記事,前記事に続き、昨年4月に取り上げた案件

甲南大学での学生の自死事件(以前の記事)

についての続報である。また「一連の経過」を再掲して連載を始めたい:

2018年3月11日、甲南大学文化部(文化系サークルの集合体)において、歴代部長を中心とした部活動の上級生が、大学公認部の権限を利用し、目障りな下級生を排除するための名誉棄損誤情報をでっち上げ、意図的に外部に流布した。これが重大なパワーハラスメント事件の発端である。以下、ご家族の手記からの引用の続きである:

○ ハラスメント委員会への申立て

2018年5月には、被害者学生の名誉回復を求める文章を、長坂悦敬学長・吉沢英成理事長にも、母親直筆の手紙の形で直接手渡しており、大学トップもハラスメント問題をもちろん承知であった。(それでも)全く大学の動きが無いため、被害者学生と家族は、甲南ハラスメント委員会へ被害を届けた。

その後、中村英雄学生部事務部長・秋宗秀俊学生部長(教授)・中井伊都子ハラスメント委員長・父母の会事務局・ハラスメント委員会教授陣の連携により、学生の被害は救済されると思いきや、全く逆で、被害者学生と家族を疲弊させ、貶める方向へと進んでいった。

被害者学生と家族にとっては、時間ばかりが浪費され、SNS等で被害者学生に対する中傷が蔓延するとともに、甲南大学は被害者学生を救済するどころか、被害を無かったものとして徹底的にもみ消す行動に出た。

以下はこの間被害者学生が親友に送った一連のメールである:

 

被害者学生と家族にとっては、常識的に、そのような大学の対処は想定外であった。思い起こせば、「必ずちゃんとする」という甲南大学の発言を素直に信じたことが更なる悲劇の始まりであった。今となっては、2018年5月の時点で、甲南大学ハラスメント委員会ではなく、新聞報道やSNS上で抗議するべきであったと強く後悔している。

○ ハラスメント委員会の無責任な対応

その後も、甲南大学側は延々と答えを引き延ばし中傷被害が拡大した。

2018年9月11日、「ハラスメントが大学には起こらなかった。問題があったとは考えていない」というハラスメント委員長・中井伊都子当時副学長(現学長)は、公式コメントを発し、それは被害者学生を深く傷つける結果となった(下部に掲載は学長への報告文書)。しかも「甲南大学はハラスメントと認定しない」の対処が後押しとなって、加害者学生は更なる中傷文章を発した

その状況を被害者学生が納得できる訳もなく、大学に抗議を継続した結果、対応していた中井伊都子副学長・秋宗秀俊学生部長(教授)・中村英雄学生部事務部長らの被害者への言動と公式文章は被害者学生を貶める内容へとエスカレートしていった。

 

○ 大学に被害を訴えたために、逆に大学から被害を受ける

「自分を強制退部させたやり方が社会では通用しないやり方であり、部として問題だと考えているので処分に値する」という被害者学生の訴えに対して、中村部長は、「会社では、もし何か不祥事があった場合、自主的に会社を辞めるように勧めるやり方はある。当該部のやり方は社会で通用しない方法というわけではない」と被害者学生に発言した。

事件発生当初から抗議自死後までも続く一連の甲南大学の言動は、社会一般では通用しない

「君の言動が問題であったと考えている」という被害者学生の将来をぶち壊す甲南大学の的外れな発言に口をつぐむことなく「加害者を放置すれば、(甲南大学内では)また同じことが起こってしまう。自分はダメージを負っている」と被害者学生が大学職員に理路整然と抗議しても、全く対応されなかった。甲南大学・複数職員による、被害者学生一人を(3対1等で)無理やり屈服させて黙らせようとする被害者学生とのやり取りが繰り返された。

ハラスメント委員会での教授陣による「どの行為がキャンパスハラスメントに該当すると考えているか?」の質問の繰り返し。ハラスメント認定無し。それ以降、中井ハラスメント委員長・秋宗学生部長・中村学生部事務部長3人による面談は、理不尽で高圧的な到底納得できない内容であった。(傲慢不遜な一連の甲南関係者の言動記録は現存)その後も、反省無き当該加害者部員の無神経な言動・中傷も続いた。

被害者学生は、ハラスメント被害について、中井ハラスメント委員長に最後の最後まで電話で抗議したが、専横な返答に対して「もう僕は、それでもいいです」と電話を切った後「甲南大学はレベルが低すぎる!」と顔を真っ赤にして、こぶしを握り締めて憤慨していた。その時の息子の姿と声が、今も母親の脳裏に焼き付いている。「自分の将来についてじっくり考える」と母親に話し「もう甲南にいても何もならない。辛いだけや。勉強に関係なくいい学校じゃない。」と無念な気持ちを親友に伝えた。

心労から片耳の聴力も失った。

その後 (4)に続く。

甲南大学での学生自死事件、その後 (2)

前記事に続き、昨年4月に取り上げた案件

甲南大学での学生の自死事件(以前の記事)

についての続報である。まず「一連の経過」の表を再掲して連載を始めたい:

2018年3月11日、甲南大学文化部(文化系サークルの集合体)において、歴代部長を中心とした部活動の上級生が、大学公認部の権限を利用し、目障りな下級生を排除するための名誉棄損誤情報をでっち上げ、意図的に外部に流布した。これが重大なパワーハラスメント事件の発端である。以下、ご家族の手記からの引用の続きである:

【事件概略

事の起こりは、2018年3月11日、甲南大学が公認する部活動において(歴代部長を中心とした)上級生が部の権限を利用し、目障りな被害者学生の存在を排除するために、名誉棄損誤情報をでっち上げ、意図的に外部に吹聴したパワーハラスメントである。

被害者学生が事件直後に大学に被害を申し出たにも拘わらず、甲南大学の適切な対応が成されず学生の被害は拡大していき、同年5月以降の甲南大学パワーハラスメントの隠蔽を目的とする対応(甲南大学によるアカデミックハラスメント)が被害者学生を自死へと追いやった。

【甲南大学公認文化会・公認部の名誉棄損パワハラ発生~抗議自死までの経緯】

○ 部の上級生による名誉毀損パワハラの発生

被害者学生は、2017年入学以来、甲南大学公認の文化部活動において、中高一貫進学校での豊富な行事参加経験を基に、1年生でありながら学園祭企画等で統率力を発揮した。また、次期部長のポジションに決定し、他大学との連携活動も責任感を持って行っていた。

自分の考えと常識を持ち合わせ、上級生の理不尽な要求(無理やりの髪染め・合宿での深夜に及ぶ飲食会合の強制、部の計画性の欠如)があったが、それに迎合することなく、部長らの行動の倫理的間違いを指摘・注意した。

結果的に、その経緯によって部長ら上級生からは目障りな存在になってしまった。しかし、被害者学生は、仲間として部員を信じて積極的に部活動に参加していた。まさか上級生の妬み嫉みを生み出し、彼らの悪質なハラスメントで自分の学生生活が台無しになるとは、全く予測できなかった。

学年末、2018年3月、当時の歴代部長3人(4年男子元々部長・3年女子元部長・2年女子当時部長)は結託し、被害者学生を部から排除することを目的として、周到な計画の下、無実の被害者学生を「2017年度11月文化祭の売上げを横領した人物」に仕立て上げ、強制退部とした。更には、部長の権限を利用して、他のクラブへの入部拒否の要請文(甲南公式部捺印)を出した。その偽りの情報は、甲南大学のみならず、他大学にも吹聴された。

このパワーハラスメントは、「通り魔に刺されたような被害」でショックが大きかった。

部長を中心とした部内の上級生たちは、被害者学生(気に入らない人物)を排除する方法をライン等で繰り返しミーティングし、犯罪的な中傷をでっち上げ、平穏だった被害者学生の学生生活を破壊する異常な行動を引き起こした。

被害者学生は、甲南大学の学生相談窓口に相談をした。SNS上でも理不尽な中傷被害を受けている被害者学生に対して、甲南大学中村英雄学生部事務部長は、「知らない人がほとんどだから気にすることはない」と何度もやり過ごした。被害者学生は担任教授にも付き添いを依頼し、甲南大学学生部に再度被害を申し出た。事件発生当初より、学生が横領をしていないことは残されていた伝票上も明らかで、それを証言する経理の学生の存在もあった。秋宗学生部長が事件聞き取りを開始したが、被害者の痛みを理解している様子は無かった。

3月より名誉回復の処置(正門掲示板やMy KONAN=甲南大学在学生HPへの訂正と名誉回復文章の掲示)を何度も要望した。ようやく5月の連休明けに、甲南大学が特別な処置と称する文章が正門前に掲示された (下の写真のポスター)。ところが、特別な処置と称するそのポスターは、当時の大学HPのハラスメント一般に関する解説頁を単にカラーコピーしたものに過ぎず、何らの名誉回復の内容も含まれていない。これは、大学当局のこの事件に対する鈍い感覚とやる気・真剣味の無さを象徴しており、その内容の無さゆえに、その後も被害者の悪い噂の拡大は止まることは無かった。

念のために拡大してみると

やはり大学HPのハラスメント関連ページのコピーであった。なお、自死事件後の現在では、ハラスメント説明ページは、事件当時のハラスメント定義と比較すると、2018年のハラスメント自死事件が定義内容に当てはまらないように修正され、より簡略化した内容の文章が掲載されている。

(現在の甲南大学HPのハラスメント関連ページ)

https://www.konan-u.ac.jp/life/campus_harassment/

○ 大阪法テラスで弁護士にも相談

2018年5月になっても適切な対応が無いため、被害者学生は大阪法テラス・弁護士への相談に出向いた。5月18日、母親が甲南大学に出向き、中井当時副学長(現学長)、秋宗学生部長(現学部長・理事)、中村英雄学生部事務部長に面談し「法テラスに相談している」と伝えると、甲南大学側は、甲南大学学生部個室で被害者学生の母親に「申し訳なかった。対処に困っている。加害者学生はおそらく反省していないので、訓告か勧告を考えている」と発言していた。しかし、実際には被害者学生名誉回復への大学の適切な対応はなされず、中傷被害は拡散し続け、被害者学生は体調を崩していった。

5月25日、危機感を感じた母親は、甲南大学による名誉回復のための文章の掲示を求め、原案を甲南大学・学生部において中村学生部事務部長に目の前で書かせ(甲南父母の会事務局立会い)その場でコピーも取ったが、その文章の公表は実現せず、現在も闇へと葬られたままである。以下がその時書かせた文章(中村学生部長直筆)のコピーの写真である

(かすれて読みにくい部分もあるので活字にすると)

その後 (3)に続く。

甲南大学での学生自死事件、その後 (1)

昨年(2020年)4月本ブログに掲載の甲南大学についての記事

甲南大学で学生が自殺 サークルのトラブルに大学が責任をもって関与せず/新潟大学/群馬大学(最近のアカデミックハラスメント例 (4))

の続報を、ご家族の手記を引用する形で掲載したいと思います。

本件は一個人の問題でなく、社会問題として検証する必要があると考えます。そのために、当事者学生ご家族のご協力を得て、本記事の掲載が実現されました。事件よりほぼ2年余りが経過しようとする今、大学側からの誠意をもった対処がない一方で、学内的にも社会的にも事件が忘れられようとしています。事件発生から現在に至るまでの甲南大学の表の顔と裏の顔の使い分けに、ご家族は強い嫌悪感と憤りを抱いておられます。この記事では、ご家族提供の事件の資料などをご紹介しつつ、そのような目的に添うべく、本事件を振り返ってみたいと思います。

(1)ご家族の手記

 はじめに

甲南大学の学生が抗議の自死を行った。

その学生の母親が現在の心境を語ってくれた。

まずはその母親の言葉から、連載を始めたい。

母親の言葉

甲南大学は、多額の学費を徴収しながらアカデミックハラスメントを行った。

最愛の息子は、延々と甲南大学に振り回され、自分の尊厳を守る最終手段として「抗議の自死」に至った。自死から、2年と2か月が経過したが息子の魂は今も生きている。

抗議の自死直後の甲南大学の倫理観が欠如した対応

息子の抗議の自死の後、甲南大学から私には、一本の電話、弔電、弔問等一切無い。息子の自死後、甲南大学が先ず実行したことは、「甲南全職員に被害者に個別に接してはいけない」という箝口令である。その後私が甲南大学に様子確認で訪れた折、中村英雄学生部事務部長、中井圭吾学生課長らと遭遇したが、彼らは無言で私の顔を睨みつけ、不敵で無礼極まりなかった。息子の自死直後に、ある祝賀会の場で「喜びに溢れる」という言葉の公への発信があったが、息子の命の尊さを土足で踏みにじる耐え難いものであった。

(自死後1ヶ月に満たない時期に開催された文化会表彰式・祝賀会)

表彰式・祝賀会が開催された11月16日は、抗議の自死からまだ一月も経っていない時期である。この日の表彰式・祝賀会は、自死前にアカデミックハラスメント対応をした学生部 (秋宗学生部長) 主催で、吉沢理事長も出席した。抗議自死の遺書には「甲南大学の対応 (中略 )文化会での名誉毀損行為、」という記載も残されている。

かけがえのない最愛の存在を失い、私たち遺族には、言いようのない怒りと虚無感、悲しみで息をするのもつらい時間がこれからも続く。

純真な学生が大学に被害を訴え、必死で対応を求め続けたにも拘わらず、その後の甲南大学のアカデミックハラスメント対応が学生を自死にまで追いやった。不祥事の自覚症状がないのか、甲南大学の倫理観の欠如は、怒りを通り越して気持ちが悪い。

抗議の自死に対し、原因の調査すらしようとしない。無神経な態度は続いている。

抗議の自死から1年が経過し、私は代理人弁護士を通じて甲南大学に第三者委員会設置を申し入れた。甲南大学吉沢理事長からは、「甲南大学の対処に問題はない。審議を了しており、今後調査するつもりはない。」という内容の手紙を代理人経由で受け取った。

息子の存命中から自死後も、一連の無礼な甲南大学の態度は、被害者である息子の尊厳と家族の心身を深く傷つけ続けた。息子の自死から約1年半後、私はようやく代理人を通じて、「甲南大学」吉沢理事長・長坂学長を大阪弁護士会館に呼び出したが、吉沢理事長は遺族との面会を拒否したまま、誠意ある対応は一切なく現在に至る。

自死後遺族と対面した際の学長の姿勢

2019年3月14日の大阪弁護士会館での吉沢英成理事長面会拒否・長坂学長との対面では、いかにして最愛の息子の平和な学生生活が破壊されていったか、抗議自死までの経緯を確認した。「甲南大学は、学生生活の安全を確保すべきではなかったのか、悪質なパワーハラスメントから被害者を守るどころか加害者に何の処罰も行わすハラスメント自体を無かった事とした。その名誉棄損によって平和な学生生活が破壊され、聴力を失う等、取り返しのつかない被害を受けた上に、大学の傲慢で杜撰な対応は、被害者学生を抗議の自死にまで至らせた。」という内容について、そして、これまでの甲南大学対応の異常性経緯を改めて息子が残した言葉等生きた足跡の爪痕を見せながら、代理人と共に、長年家族ぐるみの付き合いがある母の友人立会いの下、遺族の生の声で訴え抗議した。

「なぜこのような学生自死事件が起こったと考えるか。」と対面の長坂悦敬学長(現理事長)に私が問い詰めたところ、長坂学長は、「対応した彼ら彼女らにも問題があるかもしれないが、学生全般のレベルが低いから。」という言葉を口ごもりつつ残して去っていった。同席で息子の担任教授は、「責任感のある学生だった。もっと適切な対応が成されるべきだった。」と長坂学長の隣で発言してくれた。その後、甲南大学代理人から口頭で「香典にしては多額、命の値段には程遠い金額」の提示があったが、命の尊さを無視した内々の陳腐なもので、遺族としては到底受け入れられない。

更に呆れることには、被害者学生を自死へと追い詰めた甲南大学関係者達は、その後昇格人事で、中井学長の紅白スーツ姿笑顔の写真が(自死報道後、写真差し替え)ネット上に掲載されていた。

(中井伊都子学長就任写真・甲南大学人事決定写真)

代理人による記者会見と甲南大学によるさらなる追い打ち

吉沢元理事長を筆頭に、長坂当時学長(現理事長)、中井当時副学長(現学長)の『表の顔・裏の顔』のギャップには強い嫌悪と憤りを感じる。

学生の「命がけの抗議」に対し、甲南大学は、反応しないまま風化を望みつつ、遺族には組織権力という暴力を振り回した。

甲南大学に入学したことは、我が息子とその家族にとって、人生の痛恨の極みである。

甲南大学学生自死事件は、個人の不幸な問題という範疇ではなく、社会問題として世の中に問いかける必要性を遺族は痛感し、代理人が記者会見を開き、新聞・テレビ報道へと踏み切り、報道がなされた。

「甲南大学生抗議自死」新聞報道に至るまで事件は隠蔽され、遺族には面会拒否の裏側で、吉沢理事長は祝辞で「人間的な豊かさを持たすには、直接的なフェイスtoフェイスの関係を豊かにすることが重要になる。」同じ壇上での長坂学長の祝辞は「正志く強く朗らかに進んでいきたい。」と公言している。尊い命を悼むことなく、大学幹部らが笑顔で繰り返し開催する盛大な祝賀会開催・乾杯の様子は、遺族の心情を深く傷つけた。

(2019年4月21日、吉沢英成理事長、長坂学長ら、久本神戸市長、井戸兵庫県知事と共に神戸ポートピアホテルパーティ会場壇上にて盛大に鏡割り・祝賀会)

被害者学生を抗議の自死に至らせてもなお、甲南大学の反省、被害者学生と遺族に対する誠意ある対応は全く無い。それは一般社会の常識では考えられない惨憺たるものである。

しかも、各種報道の後、メディア・ネットによる甲南大学の名誉棄損発言、低俗で稚拙なSNSへの書き込みがなされた。これは被害者学生の尊厳をさらに深く傷つけるものであり、今後、遺族は毅然とした態度で対応する。

(ニュース映像写真)

(毎日新聞記事)

https://mainichi.jp/articles/20200308/k00/00m/040/328000c

https://mainichi.jp/articles/20200329/k00/00m/040/206000c

:昨年4月の本ブログ記事に抜粋を掲載しています。

(朝日新聞)

https://www.asahi.com/articles/ASN3B72LCN3BPIHB028.html

(神戸新聞)

https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/202003/0013180260.shtml

(産経新聞)

https://www.sankei.com/west/news/200310/wst2003100004-n1.html

以上の「ご家族の手記(母親の言葉)」は、ともすれば一時の感情に任せて書かれたものと思われがちだが、次に示す一連の事件の経過に対応したものである。

 

甲南大学で学生が自殺 サークルのトラブルに大学が責任をもって関与せず/新潟大学/群馬大学(最近のアカデミックハラスメント例 (4))

【甲南大学】

 「部費横領」トラブルで大学対処せず、学生が自殺

 毎日がコロナ関連のニュースで明け暮れる中、3月9日 、ある学生の自殺が報じられた。但し、関西ローカルかも知れないので、埋もれてしまわないことを切に祈るものである。以下に、精力的に報道を続けている毎日新聞の記事から主に引用しつつ、事件を見ていく。

http://mainichi.jp/artticles/20200329/k00/00m/040/206000c

http://mainichi.jp/articles/20200308/k00/00m/040/328000e?cx_fm=mailhiru&cx_ml=article

http://mainichi.jp/articles/20200309/ddp/041/040/009000c

https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/202003/0013180260.shtml

https://digital.asahi.com/articles/ASN3B72LCN3BPIHB028.html?iref=pc_ss_date#

https://digital.asahi.com/articles/DA3S14399168.html?iref=pc_ss_date#

 概要:甲南大学2年の男子学生が、2018年10月、自殺していたことが分かった。その原因は、「学園祭の模擬店の売上金を横領した」などの誤った事実を理由に文科系クラブを強制退部させられ、その情報が広まったことであるらしい。実際には横領の事実はなく、学生は名誉回復のための対応を大学に求めたが実現せず、その後命を絶った。大学側は「一連の対応は問題なかった」としているが、遺族は検証のための第三者委員会の設置を求めている。しかしながら未だに実現していない。

 事実経過:

  • 18年3月 「この学生が(17年11月の)学園祭の模擬店の売り上げを横領した」などの誤った情報が部長らによって部員に周知され、学生は退部勧告を受けた後、強制退部させられた。

 部長は25の文化系団体の部長らで構成する甲南大学公認:「文化会」でも学生の入部を拒否するよう要請。学生は入部を希望した複数の部の関係者に「ブラックリスト入りしている」などと言われた。

 学生は、退部勧告を受けた直後から大学の学生部に相談し、関係者間で横領の事実がなかったことを確認した。これを受け、

  • 18年5月 (当該の)部長が「明確な確認を取らないまま、横領したと断定してしまった」などとする謝罪文を学生に渡し、強制退部と他の部への入部拒否の要請をそれぞれ撤回。

 学生は「事実無根の情報が拡散してしまった」と訴え、名誉回復のために謝罪文の掲示などを大学側に求めたが、遺族によると、大学側は「知らない人がほとんどだ」などとして、応じなかった。学生は同月、学内のキャンパスハラスメント防止委員会に苦情を申し立てたが、同委員会は

  • 18年9月、横領したと誤解されるような発言を学生がしていたなどとして当該部長らの行為はハラスメントに該当しないと判断した。
  • 18年10月 自殺。遺書には「自殺に至った主な原因は3月に起こった部および文化会による名誉棄損などによる精神ダメージ(中略)甲南大学の対応も遅く私は限界となりました」などと記されていた。
  • 19年10月 遺族は、甲南大学を経営する学校法人甲南学園に、事実究明と大学側の対応を検証するための第三者委員会の設置を求めたが、法人側は「一連の対応で不適切な点があったとは考えていない」などとして拒否。遺族は「息子の抗議に真摯に向き合うべきだ」と話す。

不誠実な対応に終始し「幕引き」を急ぐ法人:

 法人は(毎日新聞の)取材に「可能な限りの対応をしてきており、問題があったとは考えていない。しかし、一人の学生の貴い命が亡くなってしまったという結果については誠に残念、遺憾としか言いようがない」などと回答している。(加害者である)部長の代理人(多分弁護士)は「亡くなった学生やご遺族の主張が客観的に正しいかはわからない」などと答えてもいる。

ハラスメント委員会の実態 本当に「不適切な点」は無かったのか?:

 その後の取材により、ハラスメント委員会の調査過程などに関し、1) 聴取を行った学生や教職員の人数、肩書も不明なこと2) 調査の詳細は苦情申し立て者にも「開示できない」とされているなど、多くの疑問点が明らかになってきている。

 1) については、例えば、委員会の構成は(公開されている規程によると)副学長(中井伊都子氏)、学生部・学長室事務部・総務部の各部長、学長が指名する専任教員であるらしいが、男子学生が直接聴取を受けた3名以外は他の委員の名前や委員会の開催回数などは明らかにされていない。また、他に聴取を受けた学生や教職員の人数、肩書なども不明のままである。

 さらに、学生が聴取の際訴えた「(当該部長が他部に出した入部拒否要請の)撤回文は名誉回復になっていない。部に非があったことを完全に表にし、部が誤っていることを明らかに示してもらいたい」という内容が、委員会でどう受け止められたのかを検証しようにも、委員会の議事録は学生への聴取録を除き非公開である。

 2) については、一連の毎日新聞の質問に対する法人側の対応は以下のとおりである;

(委員会の調査の客観性や中立性はどう担保されたのか)外部の専門家を委員会に出席させたのか?(規定に「必要と認めるときには外部専門委員等を委員会に出席させることができる」とある):「出席していない。審議の過程で外部専門家である弁護士に、随時、意見を求めていたから」

苦情申立者に議事内容を開示するか?:「保護すべき個人情報が多く開示できない」

苦情を審議したハラスメント委員の名前や肩書、委員数、議論の経過は?:「学内手続きの経緯詳細及び特定の教職員・学生にかかる情報などについては答えを差し控える」

 これらの大学の態度に関し遺族は「息子の悲痛な状況が拡大していくのを無視した大学の対応そのものが(第二の)ハラスメントだ。大学が息子を自死に至らせた経緯が闇のままなのはおかしい」と批判する。この一連の経緯からは、どう見ても法人側の対応が適切であったとは言えない。甲南大学は関西では、多くの社長や経営者を輩出している大学で、その子弟が多く通学・卒業していることでも有名である。当時の甲南大学は100周年(実際には大学設立70周年)に向けて異様な熱気を帯びており、大学イメージアップの広報のためには学内のハラスメント事件をもみ消し、その後の(第二のハラスメントによる)学生抗議自死をも隠蔽する必要があったためではないだろうか。今こそ大学側は、猛省して遺族に謝罪と補償をすべきであろう。

大学における第三者委員会

 本ブログのめざすものや初期の記事でも度々述べてきたように、日本の大学における様々なハラスメント事件に関する学内の調査委員会は、基本的に適切に機能している例は殆ど無い。その意味で現状では各組織の自浄能力に期待するのは無理であり、外部の人材を含む第三者委員会の速やかな設立をめざすべきことを一貫して主張してきた。勿論ハラスメント事件が起きたとき、それに対する最初の対処法として、該当組織の適切な部署に訴えることは悪くはない。しかし並行して第三者委員会設立も進めるのが望ましい。なぜなら学内委員会は色々な点で歪められ、スピードも遅くなることが多く、その結果、緊急避難的な対策は行えても原因追及や加害者への処分などは往々にして当事者の学生などが卒業後ということになる場合が多い。被害者がいなくなるので、加害者の処分がうやむやになり、結局加害者は「やり得」ということが永年繰り返され、結果としてその組織のハラスメント体質がいつまでも改善されず、被害者。自殺者が続くという悪循環になりがちである。

 実際、学校問題の被害者遺族でつくる「全国学校事故・事件を語る会」の内海千春代表世話人は、本事件に関し「大学内で作られた調査組織は大学教授らが委員を務めるので、もっともらしく見える。しかい、外部の目が入っていなければ、組織防衛のために情報が操作される恐れがある。大学が『不適切な対応はしていない』と主張するなら、十分な情報開示や外部の目を入れて検証するなど、説明責任を果たすべきだ」と指摘している。

 小中高校のいじめによる自殺や長期欠席の調査をめぐっては、文部科学省のガイドラインが弁護士や精神科医、学識経験者らで構成する第三者委員会を設置するよう教育委員会や学校法人などに求めている。その中立性を確保するために、学校側と被害者遺族側のそれぞれが推薦した団体から委員を選ぶなどの形式で設置された委員会もある。

 大学や研究機関が第三者機関設置に極めて消極的なのは多分多くのやましい事例をひた隠しにしてきたからであろう。世界をけん引すべき「知の砦」としては本当に恥ずべき情けない話である。

大学における自殺調査の法的枠組み

 ハラスメント事例、学生の自殺事件などに関し、第三者委員会がほとんど設置されない現状は、大学でのみ自殺調査の法的枠組みが無いことにつながっている。即ち、小中高校のいじめに関しては上述の仕組みがあり、労働者が受けるハラスメントについては、2020年6月施行のパワハラ防止法などで事業主に防止措置が義務付けられている。これに対し、殆どの大学は、学生が利用できる相談窓口を設けたり、ハラスメントに関する規程を形式的に整備したりしているが、相談対応や調査の具体的な手法は各大学の判断に委ねられており、調査の公平・中立性を担保する法的な仕組みがない。まずは以下の住友先生のご発言にあるような、全国的なガイドライン制定をめざす動きを作り、関連する条例や法の整備に向けた努力を続ける必要がある。

大学生の自殺統計

 本ブログの初期の記事でも触れたように、日本は諸外国に比べ若年層の自殺者が多いことが知られているが、毎日新聞の記事によると、2018年に自殺した大学生は336人に達する。原因・動機別(重複有)では「学校問題」145人でトップで(43 %)、以下「健康問題」79人、「家庭問題」35人と続く(厚生労働省などの統計による)。

 これに関連し、学校での事件事故の調査に詳しい京都精華大学の住友剛教授(教育学)は次のように話しているという:「大学側の対応に問題があると疑われるケースでは、大学が自らの対応が適切だったかを外部の有識者による第三者委員会を設置して検証すべきであり、その方が大学側の真摯な姿勢を示すことにもなる」、「学生がどのように追い詰められ、大学がどう対応したかについて、国や公的機関が全国の実態を把握し、ガイドラインを作ることが望ましい」。

甲南大学キャンパス・ハラスメント防止ガイドライン

https://www.konan-u.ac.jp/life/campus_harassment/

 もしこの記事をお読みの方で、いわゆる学校問題で深刻な悩みを抱えている方、もしくはそのような友人をご存知の方は、自死を考える前に是非以下に挙げる組織や団体ににアクセスして欲しい。勿論本ブログでも相談は受け付けて力になれるようサポートします。

参考・関連リンク(毎日新聞掲載のものを転載)

03-5286-9090 年中無休 pm8時-am5:30 但し、火曜日 pm5時-am2:30、木曜日 pm8時-am2:30

 

【新潟大学】

50代准教授がセクハラ 停職1ヶ月 

 まず大学側の発表を見てみよう:

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令和元年9月11日付け 職員の懲戒処分について

2019年09月13日 金曜日   お知らせ

 このたび,下記により令和元年9月11日付けで本学職員を懲戒処分としましたので,お知らせします。

事案の概要

 本学自然科学系准教授(男性,50歳代)は,平成28年から平成30年にかけ,研究室の所属学生に対して,学部学生のテストの採点を行わせるなどのアカデミック・ハラスメント行為及び女子学生の容姿や身体的特徴,服装に関する発言を行うなどのセクシュアル・ハラスメント行為を行ったことにより,学生に精神的苦痛を与え,修学上の環境を悪化させたものである。

処分の内容   停職1月

今後の再発防止策等

服務規律の確保について,今後一層の徹底を図ることとしています。

学長のコメント

 学生に精神的な苦痛を与え,修学環境を悪化させるようなハラスメント行為があったことは,新潟大学の職員としての自覚と責任に欠け,誠に遺憾であり,被害を受けられた学生に深くお詫び申し上げます。
 今後このようなことが起こらないよう,職員に対するより一層の規範意識の徹底を図り,再発の防止に努める所存です。

本件に関するお問い合わせ先

総務部労務福利課
電話 025-262-6032

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毎日新聞の記事

https://mainichi.jp/articles/20190913/k00/00m/040/065000c?pid=14606

により補足してみる。

 新潟大によると、准教授は2016-18年にかけ、自身の研究室に所属する大学院修士課程の男子学生3名、女子学生2名に学部生の講義のテストの採点をさせるアカハラをした。また、この女子学生2名に対し、足や胸に関する発言をするなどのセクハラをした。

 18年春に5人全員が学内のハラスメント窓口に申し立てて発覚、新潟大は5人全員を他研究室に異動させ、ハラスメント委員会で調査していた。准教授は不服申し立てをしており、「ハラスメントという認識はなかった」と話しているというが、同委員会はハラスメントがあったと認定した。学長のコメントは上記引用文書にある。

 なかなか難しいところであるが、この規模にしては処分が軽すぎる気もするが。

 

【群馬大学】

医学部教授がアカハラ 大学側公表せず 

 こちらの方は何故か公表もされない事例らしいが、

https://mainichi.jp/articles/20190529/k00/00m/040/024000c?pid=14516

毎日新聞が入手した文書によれば、群馬大学は2019年春、医学部に在籍の男性に対する医学研究科の男性教授によるアカデミックハラスメントを認定していたという。大学側は認定自体を公表しておらず、取材に対し詳細の説明を拒否。当該教授に対する処分の有無や男性への賠償などについても回答しなかった。

 当該教授は医療倫理に関する必修科目の授業を担当。男性は2年時の2016年度に乗降したが、単位を認定されず留年。17年度も再履修した。その再履修で必要な「補習」について、男性は教授から出席不要との連絡をメールで受けたという。さらに教授は男性に対し再試験を受けさせなかったという。

 大学が男性側の申し立てを受けて18年末に設置した「ハラスメント調査委員会」は19年春、教授が男性に対し、補修を受けさせなかったことと再試験を受けさせなかったことの二つの行為をアカハラと認定した。大学側は毎日新聞の取材に対し、このアカハラ認定も含めて「被害者と加害者のプライバシー保護のため回答を控える。回答する予定もない」とコメントした。(これに関し)アカハラに対処する基準などについて文部科学省国立大学法人支援課の見解を確認したところ、「特に指針は示していない。各大学で独自に対応している」と答えたという。

 なお群馬県の地方新聞である上毛新聞のこの件に関する過去の記事はもう閲覧が不可能であった。地方新聞と地方大学との癒着と情報隠ぺいはよくある話で今更驚かないが、学生の自殺や覚せい剤がらみの事件などは、こういう癒着で殆どもみ消されていることは知っておかねばならない。頻繁に、あったことが無かったことにされているのは、何も隣国の話ではなく現実にこの日本でも身近に起こっている。

 群馬大学医学部と言えば、多くの方が亡くなった一連の医療過誤事件が記憶に新しい。また、これもその酷さで記憶されている方も多いと思うが、2014年にも同じ医学部の40代教授が女性研究者へのパワハラで懲戒解雇されている。

https://www.huffingtonpost.jp/2014/11/20/gunma-university-power-harassment_n_6195436.html

 これは、2012年1月から13年8月にかけて、研究室の助教と講師の男女計5人に、退職や休日出勤を強要。「結婚△出産×」などの発言で結婚や出産をする女性研究者を非難し、「ポストを空けるため(他大学に)応募しろ」などと言い、3人が精神的な病気で休み、2人が退職した。教授は大学に発言を認めたが、一部は「指導の範囲」と話していたという。この案件は何故か公表されている。ただいずれにしても、っ群馬大学、特に医学部の問題体質は一向に改善されていないようである。一応大学のホームページには、ハラスメントの解説や相談の連絡先は記載されているものの、有効に機能している気配はない。

 会社などのパワーハラスメントなどと比べると、学生や大学院生は、加害者である教職員に対して圧倒的に力の差は大きく弱い立場であり、さらにはその現場を短期間で去ってしまうという事情がある。本当に、被害者の救済を迅速に進めるためには、(大学の良識などに頼っても当事者には期待できないので)そろそろ文部科学省がガイドラインの議論・提示を行い、各大学などで、迅速な問題解決を促す仕組みづくりを進めねばならない。