前記事で、伊藤詩織さんが米国「TIME」誌の2020年版「世界で最も影響力のある人100人」に選ばれたことに触れた。伊藤詩織さんに関するネットやマスコミ上の記事や言説はフェイクや中傷も含め枚挙に暇がないが、現在今一度再確認したいことは次の2つである。詳細な全体像はデイリー新潮の一連の記事(44件)
https://www.dailyshincho.jp/search/?kw=伊藤詩織さん&disp_page=1&sid=ergc7tnolmlq0gjqclk5u7t7h5
に詳しいのでそちらに譲り、肝心な部分のみ下記に抜粋してまとめる。
1.本事件はもとTBSワシントン支局長山口による卑劣な性犯罪=性暴力事件である!
事件の簡単な経過を上記デイリー新潮の記事の引用で見てみよう:
(https://www.dailyshincho.jp/article/2019/12250800/?all=1)
(https://www.dailyshincho.jp/article/2019/12260800/?all=1&page=2)
「2015年4月3日、TBSのワシントン支局長だった山口記者が一時帰国した折、ニューヨークで知り合い、TBSに働き口を求めていた詩織さんと会食した。山口記者のホームグラウンドである東京・恵比寿で2軒目までハシゴしたところから意識を失った彼女は、その後タクシーに乗せられた。タクシーはシェラトン都ホテルへ。山口記者の部屋に連れ込まれ、翌日未明、性行為の最中に目が覚めた」
「4月30日に警視庁高輪署が詩織さんからの刑事告訴状を受理。捜査を進めた結果、裁判所から準強姦(当時)容疑で逮捕状が発布された。6月8日、アメリカから日本に帰国するタイミングで山口記者を逮捕すべく署員らは成田空港でスタンバイした。しかし、その直前に逮捕は中止。捜査員は目の前を行く山口記者をただ見つめることしかできなかった。中止の命令は、当時の警視庁刑事部長で現・警察庁ナンバー3、官房長の中村格(いたる)氏によるもので、彼自身、「(逮捕は必要ないと)私が決裁した」と本誌(週刊新潮)の取材で認めている」
「(中村格=)官邸絡みのトラブルシューター・守護神・番犬たる部長。その命を受け、捜査の仕切り直しを担った警視庁本部からの書類送検を受けた東京地検は、ほぼ1年後の16年7月に不起訴と判断。詩織さんは17年5月、検察審査会に審査申し立てを行なったものの、9月に「不起訴相当」の議決が出ている」
「勝訴判決の前、詩織さんは週刊新潮の取材に応じてくれた。まずは、17年5月の実名による告発会見から振り返って、
『あの時は、自分の生活がこれからどうなってしまうのか全く想像ができないままその場に臨みました。時間が経過し、今は自分の生活や仕事も少しずつ取り戻しながらも、この事件に向き合えていることは私にとって大きなことで、周囲の支援してくださる方に感謝しています。この民事訴訟を通じ、私が求めていたのは裁判の判決自体ではなく、それまでの刑事事件の手続きでは分からなかった部分を明らかにすることでした。ホテルのドアマンの方がお話ししてくださるようになったのも、訴訟を提起したからだと思っています』
法廷で、山口記者が事件後に詩織さんに宛てたメールと陳述書の中身に齟齬があることなどが明らかになったのも、訴訟を提起した成果と言える。
『裁判で色々な証言や主張が公になり、そうしたことからも、訴訟はとても有意義なものでした。またこの間の様々な出会いから、事件のトラウマにどう向き合えばいいのかヒントを貰うこともできました。性犯罪に関する刑法の規定はまだまだ改善の余地があり、見直しは必要だと思っています。他にも被害者のサポートなど変えなければいけない部分はかなりあるはずです。でも、2年前と比べると、こうした議論が活発になってきたのは本当に良かったことだと思いますし、あの頃に見ていた景色とは確実に変わってきている部分もあるなと感じています』」
「去る(2019年)12月18日の10時30分、東京地裁709号法廷。時の宰相とそれにかしずく官邸官僚トップを巻き込んだ裁判に審判が下った」「12月18日に東京地裁が下した判決は、山口記者は詩織さんに対し、330万円の金員を支払えというもの。詩織さんの全面的な勝訴であるが、会見で山口記者は控訴の意向を示している。だから、2020年以降に両者は、東京高裁で更なるお上の裁きを待つことになる」
他の諸記事も合わせて読むと、山口の行きつけの店に2件付き合わされた伊藤さんは、ホテルに向かったタクシーの中で吐いたり殆ど歩けなかったようなかなり酷い状態であった(逮捕状請求に向け警視庁で捜査が進んでいた際、ホテルのドアマンが証言した「幻の陳述書」に詳しい。現在進行中の控訴審で重要な役割を果たすと予想されている)。これに関して伊藤さんは、飲んでいる際にデートレイプドラッグを使われたという強い疑いを持っている。また、事件後伊藤さんに宛てたメールの中で、山口は、レイプに際して避妊具を使わなかったことを認めた上で「自分の精液は薄いから妊娠の心配はない」などど嘯いている。これは正しく卑劣な性犯罪以外の何物でもないだろう!
写真はたまたま本事件の現場となったホテル。風評被害補償は山口氏に請求されるべきであるが、誠実なベテランドアマンの証言が近いうちにホテルの評判を取り戻すことに貢献するであろう。
2.準強姦容疑による山口逮捕もみ消しは菅総理(当時官房長官)側近=中村格官房長(警察官僚出身)により行われ、中村は次期警察庁長官への昇格が濃厚!
上に引用したように、中村氏の意図的な介入は彼自身が認めている:(再引用)
「4月30日に警視庁高輪署が詩織さんからの刑事告訴状を受理。捜査を進めた結果、裁判所から準強姦(当時)容疑で逮捕状が発布された。6月8日、アメリカから日本に帰国するタイミングで山口記者を逮捕すべく署員らは成田空港でスタンバイした。しかし、その直前に逮捕は中止。捜査員は目の前を行く山口記者をただ見つめることしかできなかった。中止の命令は、当時の警視庁刑事部長で現・警察庁ナンバー3、官房長の中村格(いたる)氏によるもので、彼自身、「(逮捕は必要ないと)私が決裁した」と本誌(週刊新潮)の取材で認めている」
この中村格は事件当時、警察官僚の交代劇が進みつつある中で、次のような位置(No. 3)にあり、現在は次期警察庁長官への昇格が噂されている。自ら「警察いらん!」を地で行くようなこういう人物が警察のトップになることは、black jokeであるのみならず、まさしく警察の権威そのものの大失墜であろう。以下引用(https://www.dailyshincho.jp/article/2020/01120600/)
「2019年12月26日の「首相動静」欄に、こんな文言が掲載された。
『警察庁の栗生俊一長官、松本光弘次長、北村博文交通局長、大石吉彦警備局長、警視庁の三浦正充警視総監、斉藤実副総監と会食』
『首相が警察幹部を労った、いわゆる“お疲れ様会”ですね。すでに官邸には、新しい長官と総監の人事が伝えられています』
順当に行けば、1月のどこかの閣議で人事が了承されることになる。
具体的には、栗生俊一長官が退任し、その後に松本光弘次長が、三浦正充警視総監が退任し、斉藤実警視庁副総監が、それぞれ新たに就任する。両者の人事は同時ではなく少しずれる可能性はある。そして、この会食の場にはいなかったあの中村格官房長が警察庁ナンバー2である次長の席に就任予定なのだが、そこに触れる前に、長官人事について説明しておこう。
栗生氏は2018年1月に就任し、任期は2年ということになる。就任前にはパチンコ業者からの付け届けを示唆する怪文書が出回ったこともあった。2017年12月19日配信記事「警察庁幹部がパチンコ業者から付け届け!?“告発”の裏で繰り広げられる人事の暗闘」では名を伏せて報じられているが、このときターゲットになったのが、長官就任前の栗生氏だった。
「栗生さんは最終的には官房副長官のポストに就きたいと思っている。このポストは長らく内閣情報官を務め、国家安全保障局長に就いた北村滋さんも関心を示している。栗生さんは昭和56年入庁で、北村さんは55年入庁。1年違いの二人は犬猿の仲なんですよ」(同)
その栗生氏の跡を襲う松本氏は、警察庁外事情報部長時代には『グローバル・ジハード』(講談社)という書籍を上梓し、その後、警備局長→官房長→次長と順調に出世すごろくのマスを進んできた。もっとも、さる警察庁関係者によると、
「警察庁出身で官邸を仕切る杉田さん(和博官房副長官)が『松本長官』には難色を示してきました。ウマが合わないと言ってしまえばそれまでですが、杉田さん好みの報告の仕方があって、松本さんはそれに馴染まなかったことが確かにありましたね。ただ、仮に松本さんが退任、あるいは総監に就いた場合、栗生さんが3年目に突入することになる。“いつまでやるんだ!!”って声はかなり聞こえてきていました。オリパラ警備で何かあったら最低でも長官・総監のどちらかは詰め腹を切らされますから、なかなかつらい役回りとも言えますね」
「中村氏は菅義偉官房長官の秘書官を長らく務め、その絶大な信頼を得てきた。山口氏逮捕(その官邸ベッタリぶりもデイリー新潮の記事に詳しい)の中止命令をする一方、安倍首相元秘書の子息による単なるゲームセンターでのケンカに捜査一課を投入し、相手を逮捕するという離れ業もやってのけたのは「週刊新潮」が報じた通り。官邸絡みのトラブルシューター・守護神・番犬たる部長が、いよいよ警察庁長官の座に手をかけたということになる。
準強姦逮捕状の握り潰しが露見した当時、国会議員だった元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士は、その頃から捜査の大きな問題点を指摘していた。
『この事件では、そもそも逮捕状が出ていたのに、当時の刑事部長が途中で捜査を止めてしまうというまったく異例の判断がされました。そのことが起点となり、法治国家としてはあるまじきその後の流れができてしまったのだと考えています。というのも、刑事事件の捜査においては、強制捜査の有無が証拠の集まり方を左右することになるからです。被疑者が逮捕されていないのに、被疑者と親しかったり、利害関係を有している関係者が、捜査に積極的に協力することは、はっきり言ってあまりありません。やはり被疑者を逮捕してはじめて、関係者たちはことの重大さに気づき、捜査にきちんと協力するようになるものなのです』(週刊新潮19年12月26日号に寄せたコメント)」
最後に指摘しておきたいのは、この事件、裁判の進展に関する日本のマスコミの報道の仕方とネット世論の動向である。マスコミは最初から被害者による「稀な」告発としてその正当性を正面から報道しようとせず、「売名行為だ」というネット世論盛り上げに大きく貢献した。そこから端を発したネット民(特に安倍政権支持者)は、日本の#MeToo運動は政化したことにより、進化・発展しなかった」と主張するに至っている。果たして事件を政治化したのはどちらの側なのか?そして、真実を述べているのはどちらなのかを、日本の世論より遥かに早く判断し報道して来たのが、世界のマスコミ・世論であろう。