20年間続くパワーハラスメント(甲南大学)(1)

最近、甲南大学における新たなパワーハラスメント事件の通報と告発が本ブログにありました。その当事者Sさんによると、この事案の根っこは何と20年前に遡ることができ、加害者教員は一度裁判で敗訴したにもかかわらず現在もハラスメントは続いており、被害者も相当な数に登るようです。

われわれは、この常態化した悪質なケースの詳しい経緯を紹介し、その実態の徹底的な暴露・告発を進めたいと思います。そして、その案件の本質的解決(加害者の退場と職場の正常化)をめざします。

  • 甲南大学専任教員であるK教授は、2002年准教授だった時から多数の非常勤講師へのパワーハラスメントを続けていた。その結果、まず2007年、耐え兼ねた非常勤講師数人が「関西圏非常勤講師組合」(以下「組合」)に助けを求めた。

 ここで、当時の「組合」の機関誌を引用する:

 

関西圏大学非常勤講師組合機関紙「非常勤の声」第12号

  • 2008年甲南大学側と「組合」側が話し合い、(一旦)パワハラ問題は決着(2008年4月1日)

「組合」の見解は:

甲南大学で 6 年前から専任教員Kによって複数の非常勤講師へパワーハラスメントが行われ、被害者である組合員 Aさんの訴えにもとづいて、組合が大学側に調査と適正な処分を要求していた問題で、2007年2月の団体交渉で、大学側は調査委員会の設置を約束していたが、2008 年3月13日にその最終報告が組合に対して行われた。大学は組合の申し立てをすべて事実として認め、非常勤講師 A さんに謝罪するとともこの専任教員を懲戒処分にしたと報告した。

また、このパワハラ問題の被害者であり、今回の調査に協力をしてくれた元非常勤講師の人たちに対しても、大学から報告と謝罪をする予定であることを明らかにした。

こうした問題は再発防止策をとることが重要であり、これについても組合が要求していたが、

1 .非常勤講師との話し合いの席には可能な限り第三者に同席してもらうこと。

2.「減ゴマ・雇い止め」もしくは「減ゴマ・雇い止めを連想させる表現」

(たとえば「いっしょに仕事ができない」とか言った表現)を不用意に用いないこと。

3.減ゴマ・雇い止めを非常勤講師にお願いしなければならない事態にいたった場合には、教授会に諮り、非常勤講師にその理由を十分に伝えた上で了解を求め、処理を進めること。

4.専任教員 Kは A 組合員に文書で謝罪すること。

以上の 4 点が確認された。

専任教員が自分の好悪の感情や、自分の言いなりになるかならないかというような基準で非常勤講師の担当コマ数を増やしたり減らしたりすることから生じる減ゴマ・雇い止めのトラブルが後を絶たない。

そもそも専任教員には人事権はないのだが、専任教員は非常勤講師の担当する授業をコーディネートすることから、専任教員の中にはあたかも自分が人事権を持っており、好きなように非常勤講師の担当を増やしたり減らしたりする権限を持っているかのように錯覚している場合がある。それがこうしたトラブルの原因になっている。

大学自身が、非常勤講師に授業を担当させるということは、有期雇用契約にあたるということを正しく理解することが必要であるのは言うまでもないが、さらに専任教員のさじ加減ひとつで非常勤講師の雇用を左右できるものではないということを、専任教員にきちんと教育しなければならない。

 

「非常勤の声」第15号

  • しかしそれ以降も、組合と大学側が合意した4項目は守られて来なかった!この間ずっと大学当局はこの教員Kを擁護し、パワハラを容認!

合意が無視されてきた具体的な状況は以下のようであった:

1 .非常勤講師との話し合いの席には可能な限り第三者に同席してもらうこと。

⇨担当者会議に、センター長と事務室の方一人が同席しているが、K教授が非常勤講師を理不尽な理由で叱責しても誰も止めに入らない。まったく同席する意味がない。

2.「減ゴマ・雇い止め」もしくは「減ゴマ・雇い止めを連想させる表現」(たとえば「いっしょに仕事ができない」とか言った表現)を不用意に用いないこと。

⇨担当者会議に、体調不良と子供の手術で欠席せざるを得なかった非常勤講師にK教授は「どんな事情であれ、会議に欠席した者には僕なりの措置を取るしかない」と脅した。全く変わっていない。つまり、反省していない。

3.減ゴマ・雇い止めを非常勤講師にお願いしなければならない事態にいたった場合には、教授会に諮り、非常勤講師にその理由を十分に伝えた上で了解を求め、処理を進めること。

⇨教授会に諮られたことは一度もないと思われる。先にK教授が直接非常勤講師に電話をかけ、「時間調整上、仕方ない」と言うので、講師は受け入れるしかない。その後、K教授が事務室に連絡し、事務室から非常勤講師にメールが来る。

4.専任教員 K は A 組合員に文書で謝罪すること。

⇨K教授からの謝罪は何の意味もない。この合意が成された2008年以降も、パワハラ行為が止むことはなかった。むしろ、更にエスカレートしている。K教授は勿論のことそれを放任した学校側にも管理責任が問われる。

甲南大学学生自死事件(2018年)の責任者は誰か?

甲南大学被害者学生は、なぜ、どのような経緯で、死ななければならなかったのか。甲南大学で、学生へのハラスメント被害はどのようにして隠蔽されていったのか。

今後の学生が安心して過ごせる学校となるために、学生を死に至らせた甲南大学の不適切な対応を改めて糾弾せざるを得ない。

 被害者学生の遺書には「自殺に至った主な原因は、(中略)文化会による名誉毀損などによる精神ダメージです。(中略)甲南大学の対応も遅く私は限界となりました。以上のことにより3月より精神が著しく削られ私は自殺します。」と記されている。(遺書に名前記載がある)加害者学生への適正な処分も大学からは行われていない。事件隠蔽の中、甲南大学は被害者学生死亡のわずか5日後、半年を切った100周年を盛り上げるキャンペーンを大学HPでアナウンスし(下1枚目写真)、更に約1ヶ月後には文化会表彰式:祝賀会を開催しており(下2枚目写真)、在校生に死者を出した当事者・責任者として何の反省も無いどころか事件の無視・隠蔽をしている。
 
 しかしながら、抗議自死の翌年(2019年)、ハラスメント対応当事者である中井伊都子氏は、甲南大学の学長就任、同時に国連人権理事会諮問委員にも就任している!自分の大学の学生の人権さえ守れない人物がどうして国連人権関連組織の諮問委員なのか?なお、歴代甲南大学学長(長坂氏、中井氏)の定番挨拶締めの言葉として「是非とも、甲南関係者からの苦言、提言、ご意見をよせていただきたい。皆さまのご意見に耳を傾けて人物教育してまいります」という文言がある。事件当時、それを信じた被害者学生と家族は、どれだけ甲南大学側に直訴したことか。(甲南大学/中村英雄氏、秋宗秀俊氏、中井伊都子氏、長坂悦敬氏、父母の会経由で吉沢秀成氏、ハラスメントメント委員会の複数教授陣、中村圭吾氏、その他事務員らに直訴)。しかし、逆に圧迫面談で神経を削がれ無駄に時間ばかり引き延ばされた末、見殺しにされて抗議の自殺に至ったのである。その後の遺族からの言葉も無視されたままである。

当該学生が所属していた文化会表彰式:祝賀会(当該学生被害抗議自死後1ヶ月未満で開催)(前列左から、1人目:秋宗秀俊(元文化会学生部長)、4人目:長坂悦敬(元学長)、5人目:吉沢秀成(元理事長)

 甲南大学が公言している「人物教育」とは程遠いこれらの対応は社会的に不適切であり、被害者学生の「人権」は今現在も踏み躪られたままである。被害者学生と遺族にとっては、遺憾以上の気持ちで、これまでの経緯は命に関わる辛い「精神的虐待」である。2019年の一連の新聞報道、2021年5月国会での発信(参議院文教委員会での質問)-文科省大臣答弁(本ブログバックナンバー2021年6月6日記事参照)の後も、風化による泣き寝入りを待つだけの当大学の姿勢を、元在校生の家族として大変恥ずかしく思う。2021年12月に甲南大学に向けて出された文科省からの「遺族に真摯に対応するように要請しております」という通達すら大学当局からは無視されたままである。これらを考えると、被害者学生の遺族は上に明らかにした大学執行部・幹部らの責任をどこまでも追求し続けると共に、そもそも「大学自治」自体に問題があり、重大なアカデミックハラスメント事件を適切に解決できない(私立を含む)大学に対しては「被害者学生の権利を守る法」を国会において是非早急に整えてもらいたいと考えている。